あらすじ
「教えてください。彼女を殺したのは誰ですか?」
本屋大賞2019発掘本で話題になった社会派ミステリー!
神奈川県川崎市で、14歳の女子中学生・冬野ネガが、同級生の春日井のぞみを殺害した容疑で逮捕された。
少女は犯行を認めたものの、動機は一切語らない。
県警捜査一課の真壁は“半落ち”のままの容疑者に納得がいかず、所轄の生活安全課の女性刑事・中田蛍とともに捜査を続けると、やがて意外な事実が浮かび上がってきた。
ネガは母親の映子と川崎市登戸のボロアパートに暮らしている。
母はあまり働かなくなり、生活保護も断られた。
まわりに頼れる大人や友人がいないネガだったが、あるとき運命的な出会いがあって……。
単行本刊行時からSNSでじわじわと噂が広まり、本屋大賞2019発掘本でも話題となった隠れた傑作が待望の文庫化。
現代社会の暗部を描いた話題作!
「面白い作家が、凄い作家になる瞬間がある。本書を読んだとき、天祢涼は凄い作家になったと、感嘆した」(細谷正充)
「彼女を死に至らしめたのは社会ではないか? 社会派×青春×ミステリーの見事な融合。本書に出会えてよかった」(ベル 文学YouTuber)
解説・細谷正充
※この電子書籍は2017年9月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
哀しくも美しい子供たちの物語。
殺人、イジメ、子供貧困、裏切り、家庭環境とテーマは限りなく重く悲しいが、ストーリーや表現が巧妙で物語に深く引き込まれる。
冒頭、メインの1人の少女が殺された後の捜査から始まり、その捜査を担当する刑事の現在視点と犯行を自供した少女の過去視点が交錯しながら物語は進む。
物語中盤、メインの少女達が自分達の置かれた立場に悩み、葛藤しながらも希望に向かって生きていく様はまるで青春ドラマのようにも思うほど美しい。
物語の後半、彼女達には何の責任もないにも関わらず、畳み掛けるように不幸が次々と生じ、読者共々どん底に突き落とされる感覚を味わう。
最終盤の展開はミステリー読者であれば概ね予想できるものではあるが、それでも表現や緊張感から衝撃を受け、涙が止まらなくなる。
少女達の繊細な心情の表現はもちろんだが、特に母親のリアルな毒親描写は苛立ちすら覚えるほど巧みである。
おすすめの一冊であることには間違いないが、かなり心を抉られる物語なので、心に余裕がある時に読んでもらいたい。
Posted by ブクログ
電子書籍で購入。通勤中、憤り、けれど、私自身も気づけないし何も出来ないんだろうなあというモヤモヤを抱きつつ読んでいました。内容も好みでしたし、後半のスピード感も好きでした!
Posted by ブクログ
仲田シリーズ一作目。
中学生少女が容疑者の殺人事件で、同級生を殺したと自供するものの
動機などは一切、話そうとしない少女。
天祢涼さんの作品はとにかく読みやすくて
表現も分かりやすいので、スムーズに読めました。
すべての真相と真実を知ったとき
衝撃だけじゃなく、こんなに切ない気持ちになったのは
久しぶりだったような気がします。
こういう社会派ミステリーを読むと
物語に入り込みすぎて重い気分になってしまうけど
読んでおくべき、自分に吸収できて良かったと思えます。
今作も自分の中に大事にしまっておきたい作品になりました。
Posted by ブクログ
ミステリながらも、その謎が明かされていくにつれ社会問題についても考えさせられるすごい作品だった。
終わり方も、この問題に答えがないことを暗示しているようでとても良かった。
Posted by ブクログ
「希望が死んだ 夜みたいに真っ暗な この国で」
作中にも出てくる一文ですが、これがこの本を表す言葉ですね
貧困✖️青春
貧困は親が悪いのか?セーフティネットが緩い国が悪いのか?
簡単に出ないこの問題に翻弄される子供たち
劣悪な環境だからこそ芽生えたネガとのぞみの友情
束の間に見えた希望と打ち砕く現実に胸が苦しくなります
物語りをハッキリした形で終わらせなかったのも、わたし的には良かった
Posted by ブクログ
初読作家さんです。
大変重たいテーマを抱えた作品で、時に苦しくなりましたが、時々感じられる救いに助けられました。面白いという言葉は合わないですが、とても興味深く先を知りたいと思わせてくれました。
Posted by ブクログ
これは参った。何の変哲もない殺人が、その真の姿を現していく様に読む手が止まった。
劇中に登場する記者の言葉は真面目だが、それだけ、なのだろう。己の仕事を全うする、ネタを手に入れたい、ただそれだけだからほんの少しの言葉で正体を見抜かれた。
だが、自分ならどうだろうか。安易な言葉をかけはしないだろうか。
幸運な者と不運な者、そこの線引きはどこにあるのか。目の前の人を偏見の目で見ていないか。その人の背景にまで目を向けているか。短い項数ながらに重たい小説だった。ぐうの音も出ない。
Posted by ブクログ
ミステリ作品と読むか、ジュブナイル的な作品として読むかで評価が分かれる作品だと思う。
過去と現在、二つの視点から物語は進むためある意味、“過去”のシーンにおけるラストは決定している。が、減速気味になるラストシーンをミステリにおけるどんでん返しを行うことにより加速力を得、面白くしている。正直、めっちゃ面白い。
読み終えたあとに感じる題名の重さ、体感して欲しい。
Posted by ブクログ
貧困と一括りにしても、努力できる余地が残されている貧困とそうでない貧困がある。 刑事は自分が、「親が苦労して、自分は勉学を努力する余地があった」のに対して、容疑者であるネガが、「努力できる余地がない」貧困にいるのだと気づいた。 最低限、「努力をできる余地」「希望を持てる環境」を作るのが、国が用意すべき貧困対策のラインだと思った。 「あんたたちにはわからない」とネガに言われた刑事たちが、ネガの状況を想像して真実に迫っていく。見る視点によって、同じ人の性格・行動がこうも違った目で見られるというのも面白かった。
Posted by ブクログ
著者サイン本とあって、ビニールのかかった本を手に取りました。天祢涼さんの二冊目です。わずかな取り調べの時間の中に盛り込んである内容の多さに驚きました。貧困の当事者の描写がどこからどこまでも。
Posted by ブクログ
小学生の時、ご飯を残そうとしたら「世の中にはご飯を食べたくても食べられない人たちがいる」と叱られた。
真っ先にアフリカの子供達が思い浮かんだ。
歳を重ねるにつれ、貧困は自分達と違う国だけの問題ではないと知るようになった。
中には努力せずに自堕落な生活を送り続けた結果、つまり自分のせいで貧困に陥った人たちもいると思う。
けれど努力できる環境じゃなかった人たちに、「努力しなかったあなたが悪い」と言えるほど世の中は平等じゃないとも気づいてしまった。
私自身すごくお金持ちの家に生まれたわけでも類稀なる才能を持って生まれてきたわけでもないけど、当たり前のように寝るところと食べるものがあって、それなりにしたいこともさせてもらって、勉強のためには支援を惜しまずにしてくれたと思う。
この差は本人の努力だけに寄るものでは決してないし、努力しても「普通」にすら達することが難しい環境もあるんだと思う。
希望がない人生や、希望を知らない人生をどうやって頑張って努力して生きろというんだろう。
ずっと未来への希望を持ちながら生きてこれた私にはわからない。わからないけど、やっぱり自分が希望を持てない状況になったとき、頑張って生き続ける自信はない。けど死ぬのも怖い。どんな死に方も絶対に痛いし、怖いと思う。
生きてるだけで感謝って言葉はある程度恵まれた環境にいてこそ生まれる言葉だと思う。本当に生きることに絶望してる人たちは一体何に感謝すればいいんだろうと思う。
もちろん恵まれた環境にいても、ある程度努力が報われる環境にいる人たちも生きてることが辛いと思うことは沢山あると思う。
けど、少しでも心に余裕があり、人との関わりによって生きることに希望を見出せてる人たちが、自分の近くにいる絶望の中にいる人たちに手を差し伸べることができたら、社会はもう少しだけ生きる希望を持てる場所になるんじゃないかと思う。
私も、困ってる人がいたときに手を差し伸べられるような精神的・経済的余裕を持てるようになりたいし、今の自分の生きることの希望でもある(綺麗事かもしれないけれど)。
長い人生の中で、どこかでこの本に出会って、同じような考えを持つ人が1人でも多く増えたらいいなと思った。
ここ数年でベストな一冊
話の構成力もさることながら、それぞれの登場人物の書き分けが凄まじい。
ストーリーもテーマに沿ったもので、その用意周到さに驚かされる。
凄い作品だ。
Posted by ブクログ
やはり子供ものには弱い。
結末も想像できなかった。
この作家さんの本はいつもすごく考えさせられて、リアルに感じる。
暗い内容だから、人に薦めるって感じではないけれど、私にはとても心に残ってしまう。
読んで良かったと思う。
Posted by ブクログ
正直に言えば、細かい部分にリアリティを欠いていて残念な印象を持った。
しかしメインストーリーはきちんと社会問題について採り上げていたり、終盤の二転三転ひっくり返されるような読書体験は非常に楽しめました!
読んでいる間はずっとドキドキしていましたw
Posted by ブクログ
貧困に翻弄される2人の少女たち。今の時代の日本の貧困とアフリカの子どもの貧困を比べる教師。
自分にとことん甘く、こどもを犠牲にする親達。
貧困を受け入れようとする子どもたちの姿が切なかった。
Posted by ブクログ
4.2/5.0
貧困問題が軸になる苦しくて重たい内容だけど、それがミステリーと上手く融合していて、一つの素晴らしいエンタメになっていると感じた。
Posted by ブクログ
同級生殺害の自白から始まり、貧困や格差、生活保護制度の問題など、現代社会の暗部をあぶり出す物語。
裕福な家庭と貧困家庭という、接点のなさそうな二人の関係が少しずつ明らかになっていく過程は、ミステリーの面白さと社会派小説の深みをあわせ持つ。
一度はまり込むと抜け出しにくい「貧困のループ」や教育格差が、子どもから希望を奪っていく様子がリアルに描かれている。
ラストは単なる悲劇ではなく、社会の仕組みが導いた必然として胸に迫る。
謎解きの魅力を保ちながら、支援が届かない現実や無関心への問いを投げかける、心に余韻を残す一冊。
Posted by ブクログ
どうか幸せになってほしい。結末は余韻を残し、読者に委ねられる。この子達は社会に振り回されてる親に振り回されていて、末端に行くほど遠心力って強くなるから、とんでもない重圧の中生きていたはず。辛い。
Posted by ブクログ
とても苦しくて辛かった。
本当に14歳の少女は同級生を殺したのか??
事件の真相は衝撃だった。
真壁と仲田のコンビが
少しずつ謎を解き明かしていく。
貧しいこと、親が守ってくれないことで起こる様々な出来事
それぞれの登場人物の感情があふれでて
ツンとした痛みがわいて
苦しかった。
助けてあげたい。
でも結局何もできない。
最近読んだ
黄色い家、触法少女、そして希望が死んだ夜に。
たまたま選んだ本だけど全て貧しさ、未成年、ネグレクト、虐待など
世界がつながっているようで
なぜこの3冊を続けて読むことになったのか
自分が本を選んでいるようで
実は本が本を呼んでいる、そんな力も感じた。
Posted by ブクログ
泣けた。
2人の友情と希望を打ち砕かれる苦しさと辛い切ない結末に。
とにかく周りの大人がクズばっかりでしんどい、、、完全に経済的DVでしょ…まだまだ子どもの2人はどうしたら良かったんだろう?
「あの子の殺人計画」も虐待児の話だったけど、
ミステリーとしてはこっちの方が流れが自然で好き。今まで読んだ天袮作品の中では(と言ってもそんなにないけど)1番好きかも。
真壁刑事はずっと好きになれなかった!努力してないって。努力するには少しは地盤が固まってないと無理なんだよな。最後はそれに気づいてネガに寄り添ってくれてたけど。常に仲田刑事のことをナチュラルに軽んじてる感じが嫌だった。
Posted by ブクログ
すごいズシンときた社会派ミステリー。
のぞみもネガも(実際にはネガは生きているけど)、大人の都合で作られた貧困に振り回されて、殺されたんだと思った。
自分も貧困家庭で育ったので、どうしてもネガに感情移入してしまい、真実が明かされるたびしんどくて、ネガやのぞみを想って憤ってしまった。特にネガの母親の行動や言動が…「仕方ない」を免罪符すんな!
この物語はフィクションだけど、絶対にこの問題は日本のどこにでも起こっている。
Posted by ブクログ
あまりにも悲しい事件。
真犯人は小説内の言動から目星がついたものの、動機は読み切らないとわからない。どんだけの闇があるんだ、という話。
平均的な生活をしている人に、日本にどれだけの生活困窮者がいるかわからない、と言われているけど、こう書いてもらうと、どれだけ隠れた貧困があるのか恐ろしくなる。
貧困が故に、本来バイトをできないはずの中学生が自らもしくは親の命により深夜労働。おそらく現実の報道でこのニュースを見たら、遊ぶ金欲しさに中学生が勉強もせずに働いていたんだろう…と思ってしまうかもしれない。家庭環境が報道されても、深く考えることもせずに同情だけして終わりかもしれない。
Posted by ブクログ
ネガちゃんとのぞみちゃんの意外な共通点と葛藤と絶望が詰まっていた。
支援を受けることは恥ずかしいこと、という悲しい風潮はやっぱり今も至る所にあって、実際支援を受けていても口に出すことは絶対にしなかったり、隠す人の方が多い。
解説にあった、「SNSの普及で人々の明暗をはっきりさせている」というのも、何だか分かってしまって辛い。
Posted by ブクログ
結構重い話でした。
厳しい状況でも努力して勝ち上がっている人もいる、という慰めは努力することのできる状況にあるからいえる言葉だなと。毎日働かない、生活保護を受けるのも拒否する家庭で生活費のために子供が夜に働かざるを得ない状況でどうやって将来のために努力できるんだ?と思いました。
刑事の真壁が捜査をしていく中で、自分が母子家庭で貧乏な中でも努力が実って今がある、という考えだったのに自分はなにもわかっていなかったと容疑者に伝える場面がとても印象的でした。
天祢さんの他の作品を読んだ時も思いましたが、いわゆる「自己責任」という考えは、人によってはあまりに残酷です。
Posted by ブクログ
タイトルに惹かれて購入。
社会派ミステリーを読むのは初めてで、興味のある貧困について学びながら、物語を読み進めることができて面白かったです。
途中、予想通りの展開かくらいに思ったら、思わぬ人が犯人で驚きでした。
次回作も読んでみようと思ってます。
Posted by ブクログ
その時見たランキングに入っていて評価も高かったのでなんとなく手にした作品。
期待以上に良かったです。
終盤の二転三転する展開や、こんな細かいことが後の伏線に…という描写はまさに好み。
中学生ふたりの心情とタイトルが合わさり重たい気持ちになるがそれを含めて楽しめました
Posted by ブクログ
同じ中学に通うネガとのぞみ。
のぞみを殺害したと自供して逮捕されたネガ。
同級生という以外に接点のなさそうな2人の本当の関係がわかっていき、そして本当のことが明らかになる。
なんてつらい、かなしい話だ。
私はもう40のおばさんだけど、中学高校時代の友達と一緒に過ごしたわくわく感を、ふたりの関係性が明らかになる中で感じていた。
本を読みながら、私もネガと同様に希望を感じでいたんだ。
そして、そこからの落差を私も味わった。
どん底にいつづけることより、希望を知ったあとに、その希望が失われたときのほうがつらい。
誰かに希望を味わわせてしまったことは、罪なのだろうか。
貧困と、行き渡らない社会保障。不都合なことはなかったことにしようとする大人達。
希望が失われたこの世界で、わずかな希望をたぐりよせようとしていた少女たち。
のぞみの死は、避けられないものだったんだろうか。私はそうは思わない。
のぞみがネガとお菓子食べながらおしゃべりできていたら、ネガの顔を見ることができていたら、思いとどまれた可能性が高いと、私は思う。
死ぬのが怖いから仕方なく惰性で生きている感覚、私も分からなくはない。惰性の生の中で、ちょっと笑えることとか、少し元気が出ることがあって、そんな些細なことに多くの人は生かされている。
そういう1日1日が積み重なるなかで、楽しいと思えるものや、大切だと思えるものに出会え、生きる目的がみつけられる。私の人生はそうだった。
だから、私はのぞみを殺した犯人を許せない。どうせ死ぬつもりだったなら…なんて動機にならない。憎い。
もしのぞみの計画通りに運んでいて、ネガとお菓子食べながらおしゃべりしていたら、のぞみは生きていたと私は思う。私はそう思いたいのだ。
このシリーズ、本当に好きなんだけど、つらいなぁ。
Posted by ブクログ
救いがなさすぎる。生活保護を受けられず、希望も奪われたネガにとってのぞみと心中することが唯一の選択肢のように思えてしまった。そんな中のぞみに先立たれてしまったら、ネガは生きていけるのか。真壁が何か言おうとするところで話が終わるけど、ネガの救いになる言葉があるように思えなかった。
展開が気になってサクサク読めたし、どんでん返しも良いけど、手に汗握るようなドキドキハラハラはなく、ラストはもやっとした気持ちのまま終わったので面白かったー!という満足感は少なめだった。