あらすじ
「忘れようとしていた痛みが「ここ!」と叫んでいる」
――――作家・町田そのこ(「解説」より)
大ヒット作家・木爾チレンの「伝説の衝撃作」、ついに文庫化!
希望と絶望、羨望と嫉妬……
愛憎渦巻く、狂気の物語。
若くして小説家デビューを果たし、その美貌と才能で一躍人気作家となった東山冴理。
しかし冴理は人気絶頂のさなか、突然、筆を断った。
一体なぜ――。
やがて30年の時が経ち、冴理のもとへ、ひとりの女性編集者が執筆依頼に訪れる。
すると冴理は語り始める。
心の闇に葬った、戦慄のその過去を……。
これは才能を信じて生きた女性作家ふたりの光と影、あるいは愛憎の極致。
魂が震える傑作!
著者渾身の「文庫版あとがき」、作家・町田そのこ氏による「解説」も特別収録!
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Posted by ブクログ
一人の作家とその作品を愛した女性のストーリーです。作家が作品を生み出す大変さを垣間見ることができました。
初めて読んだ作家さんだったのですが、とても好きになりました。ほかの作品も読んでみたいです。
Posted by ブクログ
好き嫌いは分かれそうですが、チレンさんの飾りっ気のない文体に、本書で虜になりました。読書を始めて日が浅いので、一冊読むのに時間が掛かってしまうのですが、本書は続きが気になって1日で読んでしまいました。2人の天才女性作家の物語を通して、愛について改めて考える機会になりました。それは恋人に対してだけでなく、両親や友人に対しても、きちんと受け取られる形で渡していかないと虚しいなと思いました。
Posted by ブクログ
木爾チレン氏の小説は初めてでした。
ふたりの対照的な女性作家が主人公になりますが、病弱で入退院を繰り返していた天音は冴理の小説で勇気づけられ、元気になり、憧れの冴理に近づきたいと、同じ高校、大学に進みます。
しかし、近づけば近づくほど緊張で、思ってもみないことを言ってしまったり、余計なことをしてしまったり。。
私もその気持ちが分かります。
そうしたことで、冴理は目の前に現れた後輩であり、天才的な小説家を自分以上の才能を持つ女性に畏怖、妬み、嫉妬心を持つようになります。
友だちであれば近づいて交流することも可能だったでしょうが、同じ小説家として、徐々に自信をなくして嫉妬から殺意に変わるほど、苦しめられます。
しかし、後半の天音の日記からも分かるように、冴理に対する思いが歯車を狂わせ、冴理を苦しめていたのだと気付きます。
しかし、もうすでに遅く、互いに分かり合えないままとなってしまいます。
そんな痛みと孤独が冷静さを失って恐ろしい小説を描いてしまう冴理。
この孤独感というものは、作家なら誰しも味わうと聞いたことがあります。
この小説を書いた著者も孤独ゆえの痛みや苦しみがあり、それをこの小説に綴ったように思われます。
最後まで読むと本当に深い感動を覚えました。
お薦めの一冊です!
Posted by ブクログ
作家の光と影を描く木爾チレン氏の本書は、創作の背後に潜む痛みと矛盾を、平易でありながら情感豊かな文体で描き出した作品である。
若くして才能を認められた女性作家・冴理と天音は、貧困や病を抱えながら筆一本で道を切り開き、互いを敬意と羨望の入り混じった眼差しで見つめ合う。しかし「書ける/書けない」「期待される/応えられない」という葛藤は次第に嫉妬と焦燥を生み、二人の道筋を大きく分かつことになる。視点が切り替わるたびに明暗が交錯し、才能への羨望が狂気へと変わる過程は、凄惨さと同時に奇妙な美しさを帯びて胸に迫る。
文庫版あとがきと町田そのこ氏による解説も、創作の業と救済というテーマを立体的に照らし出している。創作にまつわる人の弱さと誇りを、娯楽性を保ちながら見つめた本書は、作家という存在に関心をもつ読者に広く勧めたい一冊であり、読後に静かな余韻が残る。
Posted by ブクログ
女の嫉妬をリアルに描かれている。
自分より顔の可愛い子、スタイルのいい子、男の子からモテる子、好かれている子
どうしても自分と比べて、自分よりも優れているところを見てしまう。
殺したいとまでは思ったことがないが、いなければよかったと思うことはある。
自分がいなくなればいいとも思ったことがあります。
言われるまでもなく、「神に愛されていた」は闇の小説です。
私は闇の小説を読むことで自分と同じ気持ちの人がいることに救われます。
素敵な作品をありがとうございます。
Posted by ブクログ
作家の苦悩を題材に光と闇が交差する物語。
なぜかスラスラと気持ちよく読めてしまう不思議な一冊。
この‘’不思議‘’は、あとがきを読むと解明できた。この「なぜかスラスラと読めてしまう」現象は著者である木爾チレン先生の特徴らしい。私は今年の初め頃から読書の沼にハマった、まだまだひよっこの読書初心者だ。恥ずかしいことに語彙も多くないため、知らない単語や見たことすらない漢字を見つける度に、読む手を止め、スマホに持ち替えて検索をしている。思えば、本作は圧倒的にそのスマホの出番が少なかった。これは意図したものだとあとがきには書かれており、そのせいで著者の本は「若者向け」だと言われ、その事に悔しさを憶えた日もあるとも書かれていた。
本書の内容はフィクションではあるが、あとがきには著者のリアルな苦悩とそれでも前を向き描き続けようとする力強さを同時に感じた。
最近Xで「読書はお金のかかる趣味だ」とするツイートを見かけた。私も初心者ながらに、そうだよなあ...と思った。しかし本書を読むことで、一冊、一冊に込められる作家さん方の想いや、生み出すことへの痛みがどれ程のものか、少しではあると思うが知ることができた。読書は決して安い趣味ではないが、一冊からから得られる知識や感性、さらには「文字が、こんなにも色鮮やかである」ということを感じさせてくれる‘’本‘’を私はやはり買わずにはいられないと思った。
Posted by ブクログ
泣いた。私の知らない愛の深さを見ることができました。木爾チレン先生があとがきに“私はこの小説がとても好きだ。”と書かれていましたが、私もとても好きです。
Posted by ブクログ
神に愛されていた/木爾チレン
久しぶりに心に響く名作に出会えた。
愛情、嫉妬、憎悪、尊敬、色んな感情が入り乱れてごちゃごちゃになりました。
痛みの連鎖、タイトル意味、終わり方、最高でした。
またいつか再読したいと思える傑作でした。
ありがとう。
Posted by ブクログ
若く才能溢れる女性作家の冴理と天音。片や貧困から、片や病から抜け出して名声を手にし、互いの才能を認め合いながらも真反対に行き違う2人の天才の愛憎の物語。
書ける/書けない
売れる/売れない
期待される/期待されない(応えられない)
成功の影にある焦燥と孤独⸺どれも作り話とは思えない生々しさがあって圧倒された。冴理と天音の互いへの嫉妬と羨望が混ざり合い、渦巻きながら紙面越しにこちらに押し寄せてくるような感覚。
2人の視点が変わると見え方もがらりと変わる。嫉妬心が生んだ狂気の行く末が悲しくもあり、美しくもあり。
決して軽く読み流せない内容の重さなのに文体は軽やかで読みやすく、あとがきから作者の小説家としての矜持と生み出すことの苦悩を垣間見、それらすべてを併せたものすごい一冊を読んだんだと改めて思った。重く残る余韻がひどく心地良かった。
Posted by ブクログ
先生の名刺になりそうな作品。
狂った愛と、創作の痛み。
まさに木爾チレン先生自身が「膿を絞るように」書かれたのだろうなと思うほど、創作の痛みを感じます。
前半は1人の女性作家人生が淡々と続きます。
けど、後半が狂気。
女性作家を愛するが故に拗れていく女性作家の人生が絡んでくる。
たしかに、なんとなく『夜は短し 歩けよ乙女』っぽい構図な気がします。
果たして天音は、人生あれで良かったんだろうか…
Posted by ブクログ
薄々と感じてはいたものの、天音の愛は想像を超えた。いや、天音だけでなくこの一冊に本当の愛が詰まっているように思えた。最後に持ってきたこの作品のタイトル、心を掴まれました。
Posted by ブクログ
もう面白くて面白くてあっという間に読み終わった。
視点が変わるだけでこんなにも違うのかと…!
本当に狂気の物語すぎて恐ろしい!!!!
文体も読みやすくて好きでしたჱ̒ ᷇ᵕ ᷆ )
Posted by ブクログ
最初から最後まで面白くて夢中で読んだ。
冴理の話だけでも面白かったのに
天音の話になってまた違う角度で
見え方がガラッと変わって益々面白かった。
あとがきで泣きそうになったのは初めて。
他の作品も読んでみようと思ったけど、
これからの作品も楽しみになった。
Posted by ブクログ
初めての作家さん
とても面白く読みやすかった
最終章はちょっと駆け足すぎる気もしたし
プレリュードはもっと感情が欲しかった
あとがきも良かった
Posted by ブクログ
尊敬と嫉妬、光と闇そして希望と絶望。互いに反した言葉でありながら、互いが居ないとその魅力が無くなってしまう。そんな感情を抱きあった2人の女性のすれ違いの物語。元来、人間はかくも美しかったのだと気付かせてくれた最高の一冊でした。
Posted by ブクログ
なんだろう?結末が予想できそうでできない。誰も悪くなくて誰もがいじわる。歯車が狂っていく様子が気になって一気読みしてしまった。初めての作家さんだったけど面白かった!
Posted by ブクログ
木爾チレンさんの作品は初。
1ページ目を読み始めた時から その描写に心を奪われる。
読みだすのがもったいないくらいに…。
過酷な過去を持つ東山冴理は闇と痛みを、
白川天音は、希望と光を描く作家。
東山冴理は 新人賞をとり小説家デビューを果たし
それを追うように 天音も新人賞を取りデビューを果たす。
2人はお互いに意識し始めるが、
冴理は自分にはない天音の才能に嫉妬し、
次第にスランプに落ちてゆく。
天音さえいなければ…そんな思いが冴理の闇をどんどん深くしていく。
天音を貶めようとするまでに…
しかし…
あとで語られる天音の生き様が涙を誘う展開になっていた。
一度は筆をおいた冴理だったが…
小説を書くという事の厳しさ、苦悩をひしひしと感じさせられた。
人間の嫉妬と愛憎、光と闇、希望と絶望、痛み…を
小説家としての視点で描いた、すばらしい作品でした。
ぜひたくさんの人に読んでほしいと思いました。。
Posted by ブクログ
冴理と天音の関係を通して、「愛」というものの形の多様さや、
いなくなってから知ることの痛みを強く感じました。
苦しくて胸が締めつけられるのに、どこか温かい。
そんな不思議な読後感が残りました。
主人公の目線で描かれる物語と、
他の登場人物の目線から見える物語は、決して交わらない。
だけど、それって現実でもきっと同じで、
読者という第三者だからこそ、そのズレや想いのすれ違いに気づけるのかもしれません。
私自身の人生の中にも、そういうことは日常的に起きていると思います。
だからこそ、誰かに腹が立ったり、苦手だと思ったとき、
その人の背景や気持ちを少しでも考えられるようになりたいと思いました。
自分を犠牲にしてまで誰かを想う、
母性とはまた違う愛のかたち。
そんな愛を、どこか羨ましいと感じました。
Posted by ブクログ
神と崇めたくなるくらい、大切で大好きな人。
その人のためになると思ってしてきたことが、結果的に裏目裏目に出てしまって。。気持ちがまっすぐ伝わらなすぎてもどかしい。
愛がもっと単純なものであったら、苦しい思いをしなくてよかったのかと思ってしまいます。
闇が照らす、考えさせられます。
Posted by ブクログ
一気読みした。おもしろい。
東山冴理パートを読みながらも、そういうことなんだろなぁと勘付かせるようないろいろはあって、ということは語り手である冴理も薄々思ってはいたんだろうにな。
私にも人生を変えてくれたと思うような存在はあるけど、外側から見たら歪んだように見える愛とか崇拝とかを持てることはある意味羨ましく感じる。
だいぶピュアじゃないと無理だもん。
ここに出てくるふたりが書いた作品、めちゃくちゃ読みたいな。
あと内容には関係ないんだけど、誤植がちょいちょいあって気になった。粗削りだな、そういう意図か?と思ったけど違うよなきっと。
Posted by ブクログ
「否定することは、自分の可能性を縮めることだ」
まさにこの言葉の教訓となるような小説だと感じた。
自分はM1の頃にこの言葉も出会い、少し変われたと思う。冴理にはこの傾向がかなり強い。否定が強いものは、視野が狭まり、自身に対する賞賛にすら気づかない、気づけない、という方が正しそう。
対象に天音は、言葉足らずな印象。
考えることは大事、でも言わないといけない言葉は必ず存在するし、何処かできりをつけて言わないといけない。
そんな両者の視点、思想、人間性を考えさせられる面白い小説だった。
Posted by ブクログ
自分より優れている人物と比較してしまう、嫉妬と羨望の気持ちで押しつぶされそうになる描写が丁寧に描かれていた。それだけでなく実は狂気じみた純愛描写もあり、読んでいて強く惹き込まれた。2人のすれ違いの様子を目にしてとても胸が締め付けられるような気持ちになった。
どこかに書いてあった「真夏のような笑顔」という表現も鮮烈で、あまりにも天才かと思いました。
Posted by ブクログ
物事はなんと多面的なんだろうと改めて感じる物語。
そして人間も。
周りにいる大勢の人間の感情とその環境でひとりの人間は大きく変わる。
冴理と天音、冴理と茉莉、絡み合うことによって同じ人間でも形も色も変わる
後半は読み進めるうちに溜まっていったモヤモヤやトゲトゲが溶け出していった
小説とは関係ないが作者は小説クリエーターけんご氏と結婚されているんですね。それが一番驚いたことかも…
Posted by ブクログ
大絶賛されていたポストを見て手に取ったので、面白かったけどちょっと期待値を上げすぎた感がある。
Twitterでフォローはしないけどタイムラインは追うとか、嫉妬と自尊心のせめぎ合いがリアルだったけど、冴理と天音の関係性は、わりとすぐ予想がついたので、天音の手記を読みながら、やっぱりなぁと答え合わせをした感じだった。
作家同士として出会わなかったら良い関係を築けたのかもしれないけど、天音が茉莉のようになれたかというと難しかっただろうな。
Posted by ブクログ
同じ物語の持つ二面性、光と影もしくは表と裏が巧みな整合性を持って描かれてました。異常な狂気性に「そこまで?!」と思う事もありましたが、楽しめた事は間違いありません。