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4.0魔都ロンドン 時間の迷宮を彷徨う 18世紀初め、ロンドン大火後の首都再建計画の一環として市内各所に建設中の7つの教会に、異端の聖堂建築家ニコラス・ダイアーが秘かに仕掛けた企みとは。一方、それから約250年後、現代のロンドンでは教会周辺で少年ばかりを狙った連続殺人が発生、有力な手掛かりもないまま深まる謎に、捜査を指揮するホークスムア警視正は次第に事件の奥に潜む闇に吞み込まれていく。時を超えて反響しあう2つの物語の結末は……。円環する時間と重層する空間を通して魔都ロンドンを彷徨う都市迷宮小説。「『魔の聖堂』は機知に富んだ不気味な想像力の作品であり、複雑なプロットを有し、人類の堕落した本質に対する懸念が繰り返し執拗なまでに描き込まれている」(ジョイス・キャロル・オーツ)。デヴィッド・ボウイが愛読し、アラン・ムーア(『フロム・ヘル』)らに影響を与えた、ウィットブレッド賞、ガーディアン小説賞受賞作。
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3.0敗戦70年を迎えるあたりから、戦後思潮を問い直す従来の動向を大きく乗り越える著作が世に問われるようになった。そこでは戦後史の「正体」や戦後日本の「核心」が焦点になっている。 ここで分析の俎上に載せられるのは「戦後日本の国体」(篠田英朗)である。暗黙の前提として受け容れられてきた日本国憲法と日米安保条約からなる戦後体制に根本的な疑義が突きつけられるようになったのである。 「一五年安保」における国論の混乱は、こうした疑義に拍車をかけている。 本書は、「戦後民主主義」の旗手とされる丸山眞男の思想と行動を辿ることで、この問題を捉え直そうとする試みである。 戦後の「政治の季節」に颯爽と登場して以降の丸山像は果たして実像を反映したものなのだろうか? 彼の人民主権理解はいかなる過程で獲得されたものなのか? 「六〇安保」以降の日本政治思想史講義はいかなる射程を有していたのか? 本書では、処女作「政治学に於ける国家の概念」以降の丸山の論文、座談、書簡、講義録を広範かつ詳細に検討しながら、これらの問題に明解な回答を与えていく。その先に戦後日本と未来の新たな形が浮かび上がる。渾身の書き下ろし。
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-過ぎし日のイギリス王室と上流階級の世界 エリザベス女王とその妹・マーガレット王女の幼なじみとして、王女の女官として、公私ともに王室一家のそばで生きてきた男爵夫人の回想録。 1932年、著者はレスター伯爵の長女として生まれた。両親とも、女王の女官やその父王の侍従を務め、著者は女王の戴冠式で、6メートルの裳裾を持って付き従う大役を仰せつかる。一方、23歳で結婚した富豪の夫は、才能と魅力に恵まれつつも度を越したエキセントリックさで、国内外で騒動を引き起こす。喜びも不幸もけた外れの結婚生活だった。 波瀾の日々の支えが、立場の差はあれ気の合う友人のマーガレット王女だった。同時に、型破りな王女の女官が30年も務まったのは、極端な性格の夫に接し慣れていたからでもあった。イギリスでも毀誉褒貶相半ばする王女だが、慈善事業に熱心で常に前向きなその生き方を、そして女王の素顔や王室の人々を、著者は魅力的に描き出している。他に登場人物はスペンサー伯爵(ダイアナ妃の父)、レーガン大統領夫妻、イメルダ・マルコス、ミック・ジャガー夫妻、デイヴィッド・ボウイら、錚々たる顔ぶれ。
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-絶望の青春──ジャック・ロンドン自伝的物語 20世紀初めのアメリカ西海岸オークランド。若い船乗りマーティン・イーデンは、裕福な中産階級の女性ルースに出会い、その美しさと知性に惹かれるとともに文学への関心に目覚める。生活をあらため、図書館の本を読み漁り、独学で文法と教養を身につけたマーティンは作家を志し、海上での体験談、小説や詩、評論を次々に書いて新聞や雑誌に送るが一向に売れず、人生の真実をとらえたと思った作品はルースにも理解されない。生活は困窮し、絶望にかられ文学を諦めかけたとき、彼の運命は一転する。 理想と現実の狭間で闘い続ける若者の孤独な栄光と悲劇を、自らの体験をもとに圧倒的な熱量で描くこの小説は、多くの作家や芸術家に影響を与え、読者の心を揺さぶり続けてきた。一世紀前の主人公の苦闘は、苛酷な格差社会の入口に立つ現代の若い読者にも切実に受け止められるだろう。
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-劇作におけるフォルマリストの系譜 歌舞伎を「旧劇」とした新劇は、1960年代後半~70年代前半にアングラ演劇によって乗り越えられたのだ──といった歴史観が、今も大勢を占めている。新劇とアングラには巷間言われるほど断絶はなく、明治期以来の非伝統的な演劇はみな小劇場というカテゴリで括られうる──といった見方もあるが、それはまだ少数派だ。本書は、この二つの史観を包含する視座を提示し、その鍵は三島由紀夫であると主張する。 アングラ以後の世代の劇作家たちを「三島の子どもたち」と見なそう。アングラとその後の小劇場は、三島の開き直りの上に開花した運動だ。原型的モチーフを織りなおす三島の「意匠」は井上ひさしと寺山修司を後押しし、「本物/贋物の対立」という三島のテーマは、別役実、つかこうへい、野田秀樹や平田オリザまでもが駆使するツールとなった。 三島由紀夫の「遺伝子」は、演劇においてどのように継承されたか? 岸田國士や福田恆存を皮切りに、アングラからメタシアター、アンドロイド演劇まで、50年間の劇作家たちによる「様々なる趣向」を検証! 松尾スズキやケラリーノ・サンドロヴィッチ、岡田利規や藤田貴大ら現代演劇の旗手も視野に収めた、正統なる現代演劇史。
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4.0南極大陸に建設された新国家の首都〈星の都〉で発生した奇病〈自己撞着狂〉。発病者は自らの意志に反して愚行と暴力に走り、撞着狂の蔓延により街は破滅へと向かう――未来都市の壊滅記「南十字星共和国」。15世紀イタリア、トルコ軍に占領された都市で、スルタン側近の後宮入りを拒んで地下牢に繋がれた姫君の恐るべき受難と、暗闇に咲いた至高の愛を描く残酷物語「地下牢」。夢の中で中世ドイツ騎士の城に囚われの身となった私は城主の娘と恋仲になるが……夢と現実が交錯反転する「塔の上」。革命の混乱と流血のなか旧世界に殉じた神官たちの死と官能の宴「最後の殉教者たち」など、全11篇を収録。20世紀初頭、ロシア象徴主義を代表する詩人・小説家ブリューソフが紡ぎだす終末の幻想、夢と現、狂気と倒錯の物語集。アルベルト・マルチーニの幻想味溢れる挿絵を収録。
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4.0未来論が流行している。背景には、危機と不確実性がある。一九七〇年代に流行した折には、資源危機と南北対立を受けていた。本書は、著者が二十五年にわたって「未来学」で発見した、さまざまな側面に光を当てる。 とりわけ、科学的な予測と根拠のない憶測の間に横たわる、未来をめぐって生じる葛藤に、フランクフルト学派の批判理論の観点から光を当てる。 未来は時間なのか場所なのか、あるいは、時間は円環なのか直線なのか。未来について人々が思考をめぐらせてきた三千年にわたる歴史は近代以降、マルサス的な終末論とテクノオプティミズムの両極端で宙ずりになっている。 こうした未来論の整理は、未来を論じる学問的素地がほとんどない日本ではより重要である。一九七〇年前後、小松左京、梅棹忠夫らが未来学の創設を目指し、機運が高まった時期もあったが、その後日の目を見ず、現在に至っている。 預言者からSFまで、ルネサンス・啓蒙思想からテクノトピアまで、人類が夢見た未来を概観するはじめての入門書。オックスフォード大学出版局の入門シリーズ(VSI)の待望の翻訳。
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-マイケル・サンデル激賞! 「よりよき再建」に向けて 新自由主義の40年から訣別し、不平等から気候変動まで〈新しい社会〉に赴くための世界的権威の処方箋! 新型コロナのパンデミックは、もしそれが起こらなかったら、動き出すのに何十年もかかる流れをたった一年で創り出した。私たちを歴史の変曲点に導いたのだ。この歴史的契機を生かせば、一人ひとりの運命、人類を形づくる潮流を転換できる。 新自由主義を基礎とする現在の支配的な経済モデルは40年にわたり不平等の拡大、極度の貧困、環境破壊を生み出してきた。 しかし、パンデミックが新自由主義への弔鐘を打ち鳴らし、他者にリスクを転嫁する自由市場システムの限界を決定的に浮き彫りにした。民営化・規制緩和・労働組合への攻撃・減税・教育福祉予算削減の時代はようやく終わったのだ。 本書の白眉は、未来の鍵を握るのは中国だとしたところだ。アメリカが単独で世界的な事柄を決定することはもうない。新型コロナは、中国よりもアメリカの経済に大きな打撃を与えたのである。 著者は現在、オックスフォード大学教授(開発学)。これまで、欧州復興開発銀行、OECDで勤務経験があり、南部アフリカ開発銀行総裁、ネルソン・マンデラ大統領顧問、世銀副総裁なども歴任してきた実務家でもある。
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4.3新しい世界を信じて夢見た 彼らが練習した未来へ 著者は、社会問題に独創的な想像力で対峙する、韓国で最も注目される新鋭作家である。 光州事件、釜山アメリカ文化院放火事件からの時間を、歩きながら思索し、つながりあう五人の女性たち。今を生きる・過去を理解する・未来を思うことを重層的に描く物語。 スミと幼馴染のジョンスンはホテルで会って話している。東京の大学院に留学し、仕事に追われる自分に不安になるスミ。ジョンスンは東京で結婚し離婚して、育児の悩みや経済的な苦労を抱える。スミはこの日の朝まで、親戚のユンミ姉さんと一緒にいた。ユンミ姉さんのことをしっかり記憶にとどめておきたいとスミは強く思う。 1980年代、釜山に住む中学生のスミの家に、刑務所を出た大学生のユンミ姉さんが突然やってきた。彼女がアメリカ文化院放火事件の実行犯の一人だと教えてくれたのはジョンスンだった。ある日、ユンミ姉さんがバスで光州へ行くと言い、スミが同行することになる……。 ソウルに住む作家の「私」は釜山を訪れた際、不動産を所有しながら一人で暮らす六十代の女性、チェ・ミョンファンと出会い、その生き方に刺激を受ける。そして、ずっと興味を持っていた釜山アメリカ文化院放火事件に、チェ・ミョンファンも遭遇していたと知り……。 釜山アメリカ文化院放火事件に関わる人々は「来たるべき未来を練習した人」とされ、「私」は現地周辺を歩きながら、当時の人々が何を思い、記憶し、来たるべき未来の練習をしていたか、息をするような等身大の感覚で肉薄していく。 「私」は『チボー家の人々』を心の拠り所にし、ジャックの存在を自身の内にあたたかく感じ取る。人々が練習した未来は今日に続き、悩みながら懸命に生きる読者一人一人と強い信頼を結ぶ。
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-夢を幻視する「レクイエム」 「能はアレルゲンフリーの演劇だと、わたしは思っている。それだから、わたしは能に惹かれている。」(本書「前口上」より) 能のフォーマットを応用し、ついえた「夢」を幻視する、レクイエムとしての音楽劇――岡田利規による「能楽集」の全貌が、ついに明らかに! 東京オリンピック2020招致のため、2012年に新国立競技場の設計者としてコンペで選ばれた天才建築家ザハ・ハディド。その圧倒的な造形のビジョンを白紙撤回され、その後ほどなく没した彼女をシテとして描く「挫波」。夢のエネルギー計画のため、1985年の着工以来一兆円を超す巨額の資金が投じられたものの、一度も正式稼動することなく、廃炉の道をたどる高速増殖炉もんじゅについて謡う「敦賀」。 表題作二曲のほか、夢幻能と間狂言に今日的なキャラクター(六本木駅に現れる金融トレーダーの幽霊、都庁前駅に現れるフェミニズムの幽霊、『ハムレット』のせりふを覚える舞台女優)を登場させ、資本主義に飲み込まれている現代日本の姿を描いた「NŌ THEATER」とともに、演劇論(「幽霊はアレルギー症状を引き起こさない」、「能は世界を刷新する」)を併録する。
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3.0民主主義はどこへ行くのか? 民主主義の危機が問われるいま、その普遍的な「理念」と具体的な「実現」とはどのようなものなのだろうか。 本書は、ポスト・トゥルース的な右派ポピュリズムが席捲するように見える現代の民主主義の危機を理解し、それに応答するために、民主主義の普遍的な理念とその具体的な実現の両方に軸足を定めつつ、古代から中世・ルネサンス、社会契約論から十九世紀のマルクス主義などの進歩主義、第二次世界大戦の衝撃から二十世紀後半の社会運動、そして現在進行中の出来事へと論を運ぶ。 さらには、気候変動、パンデミック、排外主義的なポピュリズムの席捲などを見すえて、民主主義の「未来」を覗き見ようと試みる。 政治学史ではここ数十年、ケンブリッジ学派の台頭や個別的な研究の深まりのなかで、〈どう生きるべきか〉という規範的な問いはややもすれば後景に退いてしまった。 広く長い歴史的視座で簡潔にまとめられた本書は、「民主主義」を思考するための新たなスタンダードとなるはずだ。オックスフォード大学出版局の人気シリーズの待望の翻訳! 「合衆国権利章典」「人および市民の権利の宣言」「世界人権宣言」を付す。
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-何が前例なきことなのか? 過去数十年で最も景気が良い時に政権与党が敗北する。すべての政党がエリートを攻撃する選挙運動を展開し、選挙前よりもエリート主義的な議会が誕生する――。 最近の政治は筋が通らないことばかりだ。いったい何が起きていて、それはなぜ起きているのか。本書は、手垢のつくほど語られてきた民主主義の危機について比較分析から迫る試みだ。 徹底的に歴史とデータを洗う中で、前例なき事態がいくつか見えてくる。 ひとつは、幾多もの戦争や経済危機があったにもかかわらず、過去200年の歴史で30年間にわたって平均所得が減少したことは一度もなかったということだ。これは文明的な規模での変容と言える。 もうひとつは、伝統的な政党制の崩壊であり、弱い政党による激しい党派性だ。 ポピュリストの不満がいくら正当化されるといっても、一時しのぎにすぎない。私たちは依然として他の誰かに支配されなければならず、自分が好まない政策や法律に従わなければならないという避けがたい事実にぶつかる。「何が起こり、何が起こりえないのか」について世界的権威が掘り下げた結論!
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3.5SNSが政治を溶かす 民主主義の危機――。こう言われて何が思い浮かぶだろうか? ファシズム、暴力、そして世界大戦の夜明け……もし、こうした1930年代の光景が浮かんできたなら、それこそ危険な兆候だ(苦笑)。 本書によれば、1930年代が再現されることはまずない。過去のある時代が衝撃的だからと言って、それに固執しすぎると、より重要な他の時代の教訓を見逃すことになる。 もし、いまの危機と似ている時代があるとするなら、それは1890年代だ。貧富の差が拡大、ドレフュス事件はじめ陰謀論が跋扈し、ポピュリズムが生まれたあの時代である。このときは革新主義と世界大戦で危機を乗り越えたが、現在その選択肢はない。 本書では、クーデタ・大惨事・テクノロジーという観点から民主主義の崩壊をシミュレートする。そこにトランプはいない。中国の権威主義体制も民主主義を覆すには至らない。 では何が脅威なのか? 「トランプは登場したが、いずれ退場していく。ザッカーバーグは居続ける。これが民主主義の未来である」。ケンブリッジ大学政治学教授が描く、異色のデモクラシー論!
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3.7「革新」的経済学の全貌 MMT(現代貨幣理論)が現代経済学のパラダイム・シフトを推し進める状況下、その鍵を握る重要人物としてハイマン・ミンスキーへの注目がかつてないほど高まっている。 ミンスキーと言えば、これまで「金融不安定性仮説」を中心に理解されてきた。先の金融危機でも「ミンスキー・モーメント」ないし「ミンスキー・クライシス」という言葉が金融関係者の間で囁かれた。 ミンスキー自身、金融的ケインジアンと呼ばれることを好んだものの、それは壮大なミンスキー理論の一端にすぎない。本書では、ミンスキーを「不均衡」「不安定性」という観点から読み解く。 とりわけ「安定性が不安定性を生み出す(Stability is destabilizing)」という彼自身が残した印象的な言葉を繰り返し省みる。これにより、「均衡」をベースに構築された正統派経済学に対する「異端派」としてのミンスキーの立ち位置が鮮やかに浮かび上がる。 さらに、従来、全く見落とされてきた「最後の雇い手」という、貧困と失業に対するミンスキーのアプローチを本書ではしっかりと位置付けている。ミンスキーの弟子かつMMTの旗手がその源流に向かった最良の入門!
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4.3内戦下の祖国シリアに一時帰還した作家が、絶え間ない爆撃の下、反体制派の人々の間で暮らしながら、それぞれの苦悩と挫折に耳を傾けた1年間の記録。語り伝えることを通じて、内戦の過酷な現実と向き合う、世界16か国で翻訳された話題作。 アサド大統領と同じくイスラーム教アラウィー派に属する一族の出身である著者は、2011年以降、一貫して反アサド政権の立場をとり、逮捕・拘束を経て同年夏にシリアを脱出した。本書は、2012年8月から2013年7月まで、3度にわたって祖国に戻り、兵士から女性や子供まで、反アサド政権の立場にあるさまざまな人々の声を集め、その体験を書き綴ったものである。 拠点としたのはシリア北西部のイドリブ県サラーキブ市で、住民である協力者一家の庇護を受けて取材を進めた。証言者の数が増えていくと同時に戦況は変化し、協力者一家の大半は出国を余儀なくされていく。 小説家、ジャーナリスト、編集者として活躍するかたわら、著者は女性の自立や子供の教育を支援するNPO団体を設立し、活動を続けている。近年のシリアを見据える新しい世代の特色を鮮やかに示すと同時に、内戦下で生きる市井の人々の声を拾い上げた記録文学の白眉。
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-名曲と偉大な音楽家へのオマージュ 2000年秋のある晩のこと。それまで新聞でポピュラー音楽の評論家を務めていた著者は、ふとした思いつきで行ってみたクラシック音楽のリサイタルで、はじめて耳にするバッハ『無伴奏チェロ組曲』の、地味ながら豊かな、素朴なようで洗練された音楽にすっかり魅せられてしまう。たった1台の楽器が4本の弦で奏でる、この曲の何がこれほどまでに人を惹きつけるのか? この曲はどういう背景から生まれ、どのような道をたどって、現代のわれわれのもとへやってきたのだろう? 本書は実際の『チェロ組曲』の構成を模して、「第一組曲」から「第六組曲」までの6章がそれぞれ「プレリュード」「サラバンド」などと題された6つのパートに分かれている。それぞれの「組曲」で著者は、作曲者バッハと曲を世に広めた功労者カザルスの生涯を語りつつ、ミッシャ・マイスキーやピーター・ウィスペルウェイらチェリストたちのインタビューもまじえて、この楽曲のなりたちや受容について考察する。 大学で史学を専攻し、ジャーナリストとして音楽に接したのち、現在はドキュメンタリー番組に携わる著者ならではの、音楽と『無伴奏チェロ組曲』への愛あふれる1冊。
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3.8北村紗衣さん推薦! SF/現代ホラーの産みの母の人生 『フランケンシュタイン』はメアリ・シェリーが十代で執筆した代表作だが、人口に膾炙している怪物の視覚的イメージが先行しているからか、この物語が誕生した伝記的な背景は、この有名すぎる作品ほどは知られていない。 メアリ・シェリーの作家人生は、彼女の両親である急進派思想家のウィリアム・ゴドウィンとフェミニズムの先駆者と呼ばれるメアリ・ウルストンクラフトの出会いから宿命づけられていたといえる。 本書で綴られるメアリ・シェリーの伝記的な情報は、『フランケンシュタイン』の思想のバックボーンと彼女が生み出したほかの小説や旅行記とどのようなつながりがあるかを理解するうえで、不可欠なものである。 メアリが実人生で体験する苦しみ――産褥熱による母の死、流産、夫パーシー・シェリーの死、生き残った一人息子をめぐる義父との協議など――と『フランケンシュタイン』以降のメアリ・シェリーの思想と行動も瑞々しい筆致で描かれている。 女性作家として、あるいはシングルマザーとして直面した問題意識がいかに形成され、作品として結実したか、余すことなく論じた記念碑的名著! [目次] 謝辞 第1章 遺産 第2章 ゴシックの叛逆 第3章 『フランケンシュタイン』 第4章 初期の女性の語り手──『フランス、スイス、ドイツ、オランダの一地域をめぐる六週間の旅行記』、『マチルダ』(一八一七~一八二一年) 第5章 『ヴァルパーガ』、『最後のひとり』、『パーキン・ウォーベックの運命』、そして新たな『フランケンシュタイン』(一八二一~一八三一年) 第6章 最後の仕事、一八三五~一八四四年 訳者解説 読書案内 図版一覧 訳注
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-1800年、アンリ・ベール(ことスタンダール)はナポレオン戦争に従軍し、後年このときの記憶を書きとどめた。第一次世界大戦が間近い、不穏の気配ただよう1913年には、ウィーンからヴェローナ、リーヴァに向かったドクター・K(ことカフカ)が日記をのこした。1980年、カフカの足跡を追って同じ旅をした語り手の〈私〉は、死と暴力の予感におののいてヴェローナから逃げ帰った。その7年後、当時の記憶を書き記そうとかつての道をたどり直し、最後に自分が捨てた故郷に立ち寄った。 〈私〉の旅、カフカの旅、スタンダールの旅―時を超えて重なり合う旅のどこにも、永遠の漂泊者「狩人グラフス」が影を落とす。さまざまなものや人が響き合い、時間と場所を越えて併存する。本書はゼーバルト初の散文作品であり、「ベール あるいは愛の面妖なことども」「異郷へ」「ドクター・Kのリーヴァ湯治旅」「帰郷」の4篇を収録。 「たえず動いている乗り物のなかの想念に似て、消えては結び、やってきてもつれ合い、断続して定めがたい。つまりはもっとも現代的な散文表現というものだ」。池内紀氏による巻末の解説「言葉の織物」から引用。
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4.5ある島の〈ノアの箱船〉の物語 ブッカー賞ほか最終候補作 優生学の名のもと、実在の島マラガに起きたことを題材に、美しい詩的文体で描きだすある島の年代記。 一七九二年、逃亡奴隷のベンジャミン・ハニーはアイルランド出身の妻ペイシェンスと共に様々な林檎の種を持ってメイン州の小さな無人島にやってきた。ふたりは苦労して林檎園を作り上げ、島はアップル島と呼ばれるようになる。 それから約百年、ハニー家の子孫と肌の色も様々な島民は、豊かな自然のなかでつましくもひっそりと穏やかに暮らしていた。そこへ一九一一年、理想に燃える白人の元教師マシュー・ダイアモンドがやってくる。ベンジャミンのひ孫にあたるエスターは、ダイアモンドの善意は理解しながらも心をざわつかせるが、彼の指導で何人かの子どもたちは絵画や語学、数学の才能を花開かせていく。 ある日突然、本土から知事の命で委員たちがアップル島の視察に現れる。いきなり子どもたちの頭に測定器を当ててなにやら書き留め、子どもたちは怯え、大人たちは反発する。やがて島と人々を襲う大きな悲劇とは――。 刊行直後から話題を呼び、ブッカー賞、全米図書賞、国際ダブリン文学賞などの最終候補作に選出された。美しく痛切な祈りの物語。
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4.0ブルトンが絶讃した狂気と幻覚の手記 ペルシア語文学史上に現われた「モダニズムの騎士」による、狂気と厭世に満ちた代表作を含む中短篇集。「人生には徐々に孤独な魂をむしばんでいく潰瘍のような古傷がある」——生の核心に触れるような独白で始まる「盲目の梟」。筆入れの蓋に絵を描くことを生業とする語り手の男が、心惹かれた黒衣の乙女の死体を切り刻みトランクに詰めて埋めにいくシュルレアリスム的な前半部と、同じ語り手と思しい男が病に臥しての「妻殺し」をリアリスティックに回想する後半部とが、阿片と酒精、強烈なペシミズムと絶望、執拗に反復されるモチーフと妄想によって複雑に絡み合う。ドストエフスキーやカフカ、ポーなどの西欧文学と、仏教のニルヴァーナ、イランの神秘主義といった東洋思想とが融合した瞠目すべき表題作と、さまざまな傾向をもつ九つの短篇に加え、紀行文『エスファハーンは世界の半分』を収める。解説=中村菜穂
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4.02016年11月、「トランプ・ショック」の陰でいきなり高額紙幣の廃止を宣言し、インド国民のみならず国際社会の度肝を抜いた首相ナレンドラ・モディ。そのカリスマ性や高い実務能力、大胆な政策、巧みな官僚操縦、そしてエリート階級の出身ではないたたき上げという点で、「インドの田中角栄」とも評される人物だ。本書は「SNSフォロワー数世界一のリーダー」と言われるモディの姿を通して、現代インドの政治、経済、社会、外交を概観し、南アジア情勢と日印関係についてわかりやすく解説した入門書である。 伸長著しいインドの台頭ぶりを示す指標は枚挙にいとまがない。しかし、存在感と重要性が増す一方で、インドは依然として「わかりづらい」という印象を持たれがちだ。「牛の保護」が重大な政治的・社会的イシューとなっているのはなぜか。今なお続くカースト制度や宗教対立の背景には何があるのか。地域と国際社会でのインドの興隆は日本にとって何を意味するのか。また、米中とどのように距離をとっていくのか――。長年にわたって南アジア研究に携わってきた著者がこうした疑問に丁寧に答え、巧みな筆致で現代インドの諸相をあぶり出す。写真・図版多数収載。
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3.5※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 【この電子書籍は固定レイアウトで作成されており、タブレットなど大きい画面の端末で読むことに適しています。】 新書みたいにスラスラ読める! 文法用語や表に頼らない、大評判の画期的入門シリーズ。 「しくみ」がわかれば、外国語は楽しい。 《しくみ》シリーズの3大特徴 ★言葉の大切なしくみ(=文法)がわかる ★しくみを読者みずからが発見していく構成で通読できる ★言葉の楽しさ、面白さ、そして発想の多様さを実感できる 外国語を始める人も、その予定はない人も。 まずは寝ころんで、コレ読んで。 名前しか知らなかった"言葉"が、あなたのお気に入りになるかも。 *収録音源は無料でダウンロードできます。
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-デカルト、パスカル、ニーチェなど、後世の思想家たちに影響を与えた、フランス・ルネサンス期の思索と経験の書『エセー』。随筆という意味での「エッセイ」の出発点であり、数々の名句が散りばめられた知識人の教養書としても知られる。 いつかは挑戦してみたい古典の名著ではあっても、その分量(全3巻107章、白水社版で全7冊、2000ページ超!)に尻込みしてしまう読者も多いだろう。でも心配ご無用。 『エセー』を気軽に味わうための格好の案内図となるのが本書である。「仕事について」「名声について」「結婚について」「夫婦について」「快楽について」「老いについて」……テーマごとに印象深い名言が厳選されており、テーマを眺めるだけでもモンテーニュの関心が身近で日常的な、我々人間にとって普遍的・根源的な問いであることがよくわかる。『エセー』に正しい読み方などない。どこからでも気になったところを好きなように読んで構わないのだ。宮下志朗氏による新訳の軽妙さにも、親しみが増すこと間違いナシ。「名言篇」に続く巻末の「要約篇」では、『エセー』全章の内容がコンパクトにまとめられており便利。1日1名言で、『エセー』があなたの「人生の書」となるだろう。
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-※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 聞く+書くでリスニングのはじめの一歩を いつまでも単語の読み方があいまい。知っている単語のはずなのに聞き取れない。繰り返し聞いて慣れるしかないの? リスニング初級者ならだれもが抱える悩みです。聞き取りのコツ、文法や表現を丁寧な解説で確認しながら、聞いて書く練習を重ねます。文字の読み方からやさしくスタートし、短文、会話にステップアップ。「音がわかる」、そして「聞いて意味がわかる」へ、リスニング力アップ!★音声アプリ無料ダウンロード
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4.0死者の身代わりの世代 吉田満『戦艦大和ノ最期』が刊行されて半世紀以上が経過した。同書は、吉川英治の勧めで僅か「一日を以て」書き上げられ、小林秀雄に見出されて『創文』創刊号に掲載されるも、占領軍によって発禁処分となった衝撃の初出から今日まで、絶えることなく読み継がれてきた戦争文学の不朽の名作である。 狭義の文芸の世界にとどまらず、組織人にとりわけ愛読されたのは著者の来歴が大きい。 吉田満は1923年生まれ。府立四中、東京高校、東京帝大法学部とエリートコースを歩むが、太平洋戦争末期、学徒出陣に伴い海軍に入隊。少尉として戦艦大和に乗り込み、大和を旗艦とする第二艦隊の沖縄特攻作戦、「天一号作戦」に参加し、奇跡の生還を果たす。この記録が『戦艦大和ノ最期』である。 戦後は日本銀行に入行。ニューヨーク事務所や人事課長といった要職に就き、考査役、政策委員会庶務部長、局長を経て、監事にまで登り詰めるが、この監事在職中に56歳で急逝した。 戦後、鶴見俊輔、江藤淳、加藤典洋らによって論じられてきた吉田。本書は「キリスト者」吉田に力点を置きながら新事実によって新たな吉田像を模索する試みである。戦中派の死生観の内奥へ。
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-痛いのに笑える、世界の傷をえぐる文学 わたしはわたしを見たい。ぐるぐるほとばしる独白が、きれいごとの光景を暴く! ラッキーガールの認知戦を語る『家系図』も併録。【第70回岸田國士戯曲賞受賞作品】
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3.82021年ノーベル文学賞受賞! 初期代表作 舞台は20世紀初頭、現在のタンザニアの架空の町。主人公ユスフの12歳から18歳までの成長の過程が辿られ、東アフリカ沿岸地域の歴史的な大転換期が、少年の目から語られる。 宿を経営するユスフの父親は借金に行き詰まり、裕福な商人アズィズに借金の形に息子を差し出す。ユスフは使用人(奴隷)として働き、内陸への隊商で莫大な富を得ているアズィズの旅に加わる。 互いに争うアラブ人、インド人、アフリカ人、ヨーロッパ人のいくつもの勢力を目撃し、さまざまな経験を積んだユスフは次第に自らの隷属状態について疑問を抱きはじめる……。 作家は1948年ザンジバル(現在のタンザニア)生まれ。革命の混乱を受けて67年にイギリスに渡る。ケント大学で博士号を取得。ポストコロニアル文学を教えながら執筆活動を続け、現在、同大学名誉教授。これまでに長篇10作を発表し、1994年に刊行した4作目となる本書『楽園』はブッカー賞およびウィットブレッド賞の最終候補となる。2021年にノーベル文学賞を受賞する。 巻末に「ノーベル文学賞受賞記念講演」を収録。
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3.0「最果ての島」からの問い インド洋東部、インド領アンダマン諸島の孤島・北センチネル島。世田谷区ほどの広さのこの小島に暮らす人びとは長年、外界との接触を拒み続けてきた。しかし2018年、若いアメリカ人宣教師が上陸を試みて島民に殺害される事件が発生。国際的に報道されたことで、現代にも「未知」が存在することに世界は驚愕したのだった。 本書は、事件の20年前に偶然この島の存在を知った著者が、これまで可視化されることのなかった島民の実態に迫ろうと、長期にわたり取材・調査し続けてきた記録である。現地訪問の体験や、限定的とはいえ島民と接触した人類学者の証言、周辺諸島の事例を手がかりに、接近と拒絶の歴史を丹念にたどる。 「つながる」ことが是とされる現代社会において、彼らが「つながらない」ことを今日まで続けられたのはなぜなのか。そして、外部の人間は「文明」の名のもとに彼らをどうとらえてきたのか。北センチネル島とそこに暮らす人びとの姿から浮かび上がるのは、結局のところ、人間とはどのような存在なのかという根源的な問いである。 「最果ての島」から、文明と人間の在り方を見つめ直す傑作ノンフィクション。 [目次] 第I部 祝福されし島々 第II部 一回目の旅 一九九八年 第III部 二回目の旅 一八五七─一九〇〇年 第IV部 三回目の旅 二〇二〇年 情報源と補遺/謝辞/訳者あとがき/写真・図版クレジット
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4.0※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 【この電子書籍は固定レイアウトで作成されており、タブレットなど大きい画面の端末で読むことに適しています。】 新書みたいにスラスラ読める! 文法用語や表に頼らない、大評判の画期的入門シリーズ。 「しくみ」がわかれば、外国語は楽しい。 《しくみ》シリーズの3大特徴 ★言葉の大切なしくみ(=文法)がわかる ★しくみを読者みずからが発見していく構成で通読できる ★言葉の楽しさ、面白さ、そして発想の多様さを実感できる 外国語を始める人も、その予定はない人も。 まずは寝ころんで、コレ読んで。 名前しか知らなかった"言葉"が、あなたのお気に入りになるかも。 *収録音源は無料でダウンロードできます。
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5.0「ヨーロッパの祖母」となった都市の盛衰 ローマ帝国の中心がコンスタンティノープルに移った4世紀末、西方に新しい都が台頭する。イタリアの都市ラヴェンナにおいて、アリウス派のゴート人とカトリックのローマ人は競って、比類なき建造物とモザイクを次々と創りだした。以来300年にわたりこの町は、学者・法律家・職人・宗教人を魅了し、まぎれもない文化的・政治的首都となる。この特筆すべき歴史をみごとに蘇らせて、本書はイスラーム台頭以前の地中海世界の東西の歴史を書き変え、ビザンツ帝国の影響下にラヴェンナが、中世キリスト教世界の発展にとっていかに決定的な役割を果たしたのかを明らかにする。 全37章の多くは、皇后ガッラ・プラキディアやゴート王テオドリックら支配者から、古代ギリシアの医学をイタリアに蘇らせた医師の業績まで人物に注目しつつ、多様な民族・政治宗教勢力のるつぼであったこの都市がヨーロッパの基礎を形づくっていくさまを追う。そして、都市史をより広い視野から地中海の歴史のなかに位置づける。 美しい図版と最新の考古学の知見によって、ヨーロッパと西方の文化へのラヴェンナの深い影響について、大胆かつ新鮮な解釈を提供する1冊。
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4.01755年、首都壊滅す──その地震は歴史を変えた 1755年11月1日、万聖節の朝、ポルトガルの首都リスボンで発生した大地震は、大航海時代以来交易都市として栄えたこの街を一瞬にして壊滅させた。市内各所で発生した火災は瓦礫と化した街を焼き尽くし、さらに大津波が人々を襲った。死者2万5千人以上、ヨーロッパ史上最大の地震災害である。しかし、首都壊滅の危機に国家の対応は素早く、国王ジョゼ一世から全権を委ねられた大臣カルヴァーリョは、直ちに被災者の救援と食糧配布、遺体の処理、治安維持などの対策に着手し、その後新たな都市計画のもと首都再建に乗り出した。同時にこの国を支配していた教会・貴族勢力を排除して、ポルトガルの近代化が進められていく。地震の甚大な被害は忽ち各国に伝えられ、聖職者や思想家、科学者たちにも大きな衝撃を与え、様々な議論が沸騰した。 一国の首都を直撃した大地震として関東大震災とも比較され、地震・火災・津波の複合災害として東日本大震災以降再び注目を集めるリスボン大地震の実態と復興の足取りを史料を駆使して鮮やかに描き、社会・経済・科学・思想・宗教など広範囲に及んだ影響をたどる歴史ノンフィクション。
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-20年間の「旅の記録」 この20年間はどんな時代だったのか? 浮かび上がってくるのは、「公共性」・「性」・「文明」という巨大な問題群だ。 著者は第一論集『ショッピングモールの法哲学』で、1970年代以降の政治理論、とりわけ正義論の枠組みを「郊外」という具体的な場で再考してみせた。社会の境界で考えるという基本姿勢は第二論集である本書でも変わらない。 著者の大きな転換点となったのは2003年のいわゆる「性同一性障害」特例法の立法運動だ。そこで拓けた地平は、法を根幹から見つめ直すだけでなく、法と政治、法と社会の関係を問い直すものだった。 こうした視座は「立憲主義」が時代のキーワードとなった2010年代に計り知れない意味を持った。ジェンダー/セクシュアリティ、移民/難民はじめ、よりいっそう先鋭化していく問題について、政治的、社会的足場を重視しつつ、分析することを可能にしたのだ。 著者は、スナック研究を軸に「夜の公共圏」を提唱したことで知られる。もちろん、そこにも「公共性」・「性」・「文明」という問題が貫かれている。社会の最前線を走り抜けてきた法哲学者の「旅の記録」。
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4.0テクノ封建制下の「君主論」 〈捕食者プレデターの時代の到来だ。今後、世界各地では、解決すべきことはすべて火と剣によって解決される。〉(本書「はじめに」より) 国連総会から、砂漠のダボス会議、AI帝国の布教セミナーまで……権力闘争の最前線は、「捕食者の時代」に突入した! 国家元首たちは残忍な言動を厭わず、テック企業の億万長者たちはルール無用の加速主義で抵抗勢力を征服する。AIは、もはや制御不能な存在だ。彼らによって自由は貪られ、私たちの自由は奪われてゆく。 私たちの「新しい君主」とはどのような人物で、どのように付き合ってゆくべきだろうか。はたして、あなたの階級を上下させるのは誰だ? 本書は、リベラル民主主義を食い破るものたちの権謀術数が恐いほどわかる、テクノ封建制下の『君主論』。マキャヴェリの名著の現代版として、カオスが常態化する世界の(オールド・メディアが伝えない)舞台裏を、臨場感とともに明らかにする。 〈狂気の世界政治、その「戦場」を直視せよ。〉──吉田徹さん(同志社大学政策学部教授)推薦。 [目次] はじめに 第一章 2024年9月、ニューヨーク 第二章 2012年3月、フィレンツェ 第三章 2024年11月、リヤド 第四章 2024年9月、ニューヨーク 第五章 2024年11月、ワシントン 第六章 2017年11月、シカゴ 第七章 2024年9月、モントリオール 第八章 1931年9月、パリ 第九章 2024年12月、ベルリン 第十章 1998年10月、ローマ 第十一章 2023年5月、リスボン 第十二章 2024年12月、リュザン 訳者あとがき/参考資料/注記
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3.5
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-二つの喪失からの再出発 2022年5月、「無言館」は開館25周年を迎える。戦没画学生の作品を展示するこの私設美術館には毎年多くの見学者が訪れ、館長として活躍する著者の評価も高い。 しかしながらここ数年、著者は二つの大きな喪失を体現した。 一つは「無言館」の本家ともいえる「信濃デッサン館」を閉館したことである。このデッサン館は、著者が畏怖する村山槐多など、夭折した画家たちの作品や関係資料などを収蔵・展示してきたが、運営が困難となり、長野県立美術館に多くを売却・譲渡することとなった。 もう一つは十万人に一人以下という陰茎癌と診断され、手術によってペニスを失ったことである。長年疥癬に苦しんだり、講演中に脳出血で倒れたりと、病気につきまとわれる著者にとって、これは人生を見つめ直すほどの大きな衝撃だった。 この二つの大きな喪失によって、出生から現在まで、改めて半生を振り返り、自らの存在を確かめようとしたのが本書である。あえて負の部分を晒すことで、逆に傘寿を超えた著者の新たな野望すら見て取れ、不思議な共感を呼び起こす自伝的作品ともいえる。
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4.3
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5.0「全能の神は初めに庭園を造った。それは本当に人間の楽しみの中で最も純粋なものである」フランシス・ベイコンは、「庭園について」という一文をこう始めている。ルネサンス・イタリアにおいて、庭はそれ自体が時代のもっとも繊細な美学の具現化であると同時に、ペトラルカやボッカッチョの抱いた自然観を反映し、占星術の思想によれば植物は地上の星であった。庭は読み解きを必要とする総合芸術だったのである。 歴代の教皇たちやメディチ家ら貴紳たちが、財を蕩尽してつくりあげた庭は、最先端の自然科学・工学技術や博物知識の集積場であり、古代彫刻や同時代アートの屋外展覧スペースであり、強力な政治的メッセージを発するプロパガンダ装置でもあった。ラッファエッロの名を知らしめることになった、ヴァティカン宮殿の「署名の間」の傑作壁画は、部屋から外を眺めたときに生まれる視覚効果を意識して描かれている。室内装飾も庭と同じグランド・デザインの一部であった。 本書では、ヴィッラ・デステに至る数々の名苑奇園を具体的に読み解いていく。狭義の庭園史や美術史の枠におさまらない、領域横断的な視点をもったルネサンス文明史である。
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5.0極右台頭を徹底解剖する 二〇二四年六月の総選挙で、フランスの極右政党「国民連合」(旧国民戦線)が大躍進した。本書は、この政党を率いてきたルペン親子とその台頭についての書き下ろしである。 「国民連合」が人種排外主義を標榜する極右であることに間違いはない。しかしこれは単なる右翼・極右ではない。この政党はそれなりにフランス人の心をとらえ、時には国民の反発と怒りさえ織り込み済みの上で勢力を拡大してきたのだ。 本書は、ジャン・マリ・ルペンの生い立ちからはじめて、国民戦線の結党とその時代背景をまずは取り上げる。そこで浮かび上がるのは、一九六八年の「反体制」思想である。 こうして「ごろつき」集団として誕生した国民戦線はその後、理論化と党組織の近代化に取り組み、次第に「ナショナリスト左翼」を標榜するようになる。鍵となるのは「脱悪魔化」と「ライシテ」だ。 かつてのごろつきは、いまやフランス共和国の根幹の原理である「ライシテ」を受け入れ、この「政教分離」というデモクラシーの観点から、移民問題を唱えるようになっているのだ。極右の台頭をフランス現代史から説き起こした記念碑的著作。
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5.0※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 必須熟語1300を効率よく学習 約1300の重要な熟語を単語別に収録。知っている単語の知識をもとに、効率的に熟語が学べます。すべての熟語に例文付きだから、状況に合わせた意味が理解できます。 重要度を3段階に整理し、学習の進度の目安となるようにしました。対義語や類義語を関連付けて覚えられるよう、補足説明も充実。仏検対策や、作文や会話の表現力アップに最適です。仏和・和仏索引付き。
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4.5皇女にして、西洋古代・中世でただひとりの女性歴史家 歴史学は何のためにあるのだろうか? 私たちがより良い未来を生きるためである。しかし辛い日々を送る者にとって、歴史学が生きる糧となることもあった。歴史学が男の学問だった西洋古代・中世にあって、アンナ・コムネナは、不幸な我が身への慰めを歴史学に見いだした。ビザンツ帝国中興の祖である父アレクシオス一世の治世を描いた『アレクシアス』は、こうして誕生した。 権威ある「緋色の生まれ」としての誇り。皇帝である父への敬愛。皇妃となっていたはずの人生。ヨハネス二世となる弟との確執。アンナは、政治や戦争といった公のことがらについて真実を伝えるのが歴史家の務めであることを承知のうえで、自身の人生や溢れくる思いまでも歴史書に盛り込んだ。 本書は、第一部でアンナ・コムネナの数奇な生涯を語り、第二部では、ビザンツ歴史文学の最高傑作と言われる一方で批判も受けてきた『アレクシアス』を、ビザンツの歴史学や歴史書の性格、ビザンツ知識人にとって歴史学とは何だったのかという文脈から分析する。そして、長らく指摘されてきた年代の誤りの謎や、世界の翻訳者たちが苦心してきた不可解な記述の謎をも考察していく。
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-与太郎は、ほんとうに馬鹿なのか? 馬鹿げた話やデタラメな話を「与太話(噺)」というが、これは古典落語にしばしば登場する〈与太郎〉から来ている。与太郎とは、定職にもつかずブラブラしていつも失敗ばかりの粗忽者、なのになぜかのんきで楽天的なお調子者といったところか。 フランスにも、この与太郎キャラを描くのが抜群に巧い作家がいる。レーモン・クノー(1903-76)である。代表作は映画化もされたスラップスティック・コメディ『地下鉄のザジ』や、たった一つの出来事を99通りの文体で書き分けた『文体練習』など。実験的文学集団「ウリポ」の中心的メンバーとしても知られ、ガリマールの『プレイヤード百科事典』の監修責任も務めた。 深刻ぶったり難解ぶったりするのが大好きなフランス現代小説において、しかも第二次世界大戦前後という切実な時代に、知の巨人のようなクノーは『わが友ピエロ』、『ルイユから遠くはなれて』、『人生の日曜日』といった作品で、「世の中ついでに生きている」ようなのんきな男たちを次々に創り出した。それはいったいなぜか──。クノー小説における愛すべき〈与太郎〉たちを通し、我々の通念を揺さぶる「知」や「真実」を問う。
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-世界文学の極北〈残雪コレクション〉開幕! ぼくの家族はみな他人にはいえない秘密をもっていた。変わり者で、リュックを背負い、甲羅をつけた昆虫を思わせる父親。夜は姿を消し箱の中で眠るという母親は、皮膚に針を刺して水を絞りだす。喘息を治すためミミズを食べる妹は横暴で、ぼくを馬鹿にしきっている。二階の住人で妹の婚約者は医者にも探偵にもなり、天井に貼りつき床を這いまわる。廊下に住む檳榔(びんろう)売りの女は実は叔母で、かつて父と密通していたらしい。異形の家族の奇妙な日々と、鳴りわたるような孤独を超現実的手法で描き、作者が「難解ではあるが、とりわけ好きな作品」と語る表題中篇。夜、草地の外れに建つ家にたどりついた〝わたし〟が陥るカフカ的な不条理状況を綴った「帰り道」。ある日、母親がたらいの水に溶けてしまう「汚水の上の石鹼の泡」ほか全五篇。付録として「残雪との対談」、近藤直子「夜の涯の家――「帰り道」を読む」を併録。
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-1989年に起きた一連の出来事が、急速に歪められ、忘却されつつある。その中心にあるのが六四・天安門事件である。 従来、「民主化の第三の波」(ハンチントン)や「国家超越的な共同社会」(M・ウォルツァー)への動きと理解されてきた〈一九八九〉は、いつのまにか「新自由主義革命」として矮小化されつつある。「民主化」ではなく「新自由主義」の確立がこの画期を特徴づけるというのだ。 果たしてそうなのだろうか――。本書はこの疑問から出発している。 「新自由主義革命」と事態を捉えた場合、30年後に緊迫化した香港情勢はどう理解すればいいのだろうか。また「紅い帝国」(李偉東)として世界に君臨しつつある習近平体制と民主化という視角なしに果たして対峙できるのか。 本書は、アンドリュー・ネイサン、胡平、王丹、張博樹、李偉東、矢吹晋、石井知章、及川淳子という、これ以上望めない世界的権威が六四と一九八九という歴史的事件に挑んだ。 その中核にあるのは、危機に瀕しているデモクラシーと市民社会の擁護である。過去のものとして暴力的に忘却されつつある両者をいかに恢復するか。その答えが六四・天安門事件にあるのだ。現代のはじまりとしての一九八九へ。
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3.0全米図書賞受賞作品、ロシア人と社会の真実の物語 ソ連崩壊後の4半世紀の間、とりわけ長期にわたって支配が続くプーチン時代の激変、クリミア併合からウクライナ戦争に至る底流にはなにがあるのか? 1980年代に生まれ、プーチン時代に成人したジャーンナ(父親ボリス・ネムツォフ)、マーシャ、セリョージャ(祖父アレクサンドル・ヤコヴレフ)、リョーシャの男女4人の人生と家族の群像が活写される。そして精神分析医アルトゥニャン、世論調査機関レヴァダ・センターの社会学者グドコフ、プーチン時代に頭角を現す極右思想家ドゥーギン(3人はロシア社会を理論的に分析する役割)の軌跡を加え、波乱の時代を紡ぎ出す。 プーチン政権を歓迎した多くのロシア人は、安定と権威を渇望するようになった。プーチン時代は法が恣意的に運用され、人びとは恒常的な不安状態に置かれる。市民をそのような状態に置いておくのは、全体主義の要諦なのだ。それはソ連時代の「ホモ・ソヴィエティクス」(思考停止・体制依存型人間)が死滅していなかったことを示している。まさに「再発性全体主義」が支配する社会になったのだ。 ハンナ・アーレント賞受賞ジャーナリストによる、渾身のノンフィクション! [目次] 登場人物 プロローグ 第1部 ソ連に生まれて 第1章 一九八四年に生まれて 第2章 試された人生 第3章 特権 第4章 ホモ・ソヴィエティクス 第2部 革命 第5章 白鳥の湖 第6章 ホワイトハウスの処刑 第7章 だれもが富豪になりたがる 第3部 ほころび 第8章 抑圧された悲しみ 第9章 懐かしの歌 第10章 再び振り出しに 第4部 復活 第11章 死後の生 第12章 オレンジ色の脅威 第13章 家族・性・権力 第5部 抗議 第14章 奪われた未来 第15章 ブードゥシェヴォ・ニエト 第16章 白いリボン 第17章 マーシャ 二〇一二年五月六日 第6部 弾圧 第18章 セリョージャ 二〇一三年七月一八日 第19章 リョーシャ 二〇一三年六月一一日 第20章 分断された国民 第21章 ジャーンナ 二〇一五年二月二七日 第22章 永久戦争 エピローグ 謝辞 訳者あとがき 原注/本書に関係する時代の主な出来事(一九八五~二〇一五年)
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-前衛芸術と共産主義を 思想家が語る現代史 十月革命後(一九一七年~四一年)、ロシア・アヴァンギャルド運動の旗手は、共産主義といかに闘ったか? すなわち、芸術の諸領域(文学、絵画、音楽、演劇、映画……)の創り手たちと国の政治指導者たちが、イデオロギーや多様なイズムとどんな関係を取り結んでいたのかという問題を、ブルガリア出身の哲学者トドロフ(一九三九年~二〇一七年)は、その遺著において探究する。 ゴーリキーをはじめ、メイエルホリドやマヤコフスキーからブルガーコフ……ザミャーチンやショスタコーヴィチ、エイゼンシュテインまで! 15人のロシアの前衛芸術家たちの人生とともに「時代精神」を鮮やかに描き出してゆく。 〈本書は、集団肖像と全体主義政権を前にした芸術家の個人肖像という、大きなふたつの部からなる二枚つづきの絵というかたちを取っている。[…]個人肖像のほうは、画家カジミール・マレーヴィチという、ひとりの芸術家の経歴を綿密にたどっている〉(「序文」より)。 ロシアの前衛芸術と共産主義を巡り、思想家が語る現代史。マレーヴィチ伝も白眉な、比類なき文化史。カラー図版を10点収録。 【目次】 序文 革命を前にした創造的芸術家たち 第一部 愛から死へ 第1章 革命の衝撃 ブーニン、言葉の批判 一九一七年のブルガーコフ ゴーリキー、〈啓蒙〉の信奉者 メイエルホリド、熱狂 革命に奉仕するマヤコフスキー 自然の力に耳を傾けるブローク パステルナーク、共感と留保 ツヴェターエワ、思想よりも人間を 第2章 自分の道を選ぶ ピリニャーク、言い逃れをする抵抗者 マンデリシターム、匿名のビラ ザミャーチン、最初のディストピア バーベリあるいはありえない嘘 ブルガーコフ、悪魔を憐れむ歌 一致を求めるパステルナーク 第3章 文化的反革命 ショスタコーヴィチ──音楽と言葉 エイゼンシュテイン、勝った者が負けになる 第4章 死亡者名簿 第2部 カジミール・マレーヴィチ 第1章 革命の陶酔 第2章 ユートピアを生きる 第3章 アヴァンギャルド芸術家の旅程 第4章 芸術それ自体 第5章 幻滅の年月 第6章 共産主義の批判 第7章 逃亡と監禁 第8章 絵画への回帰 第9章 最後の探求 エピローグ 革命後 ▪ 謝辞 訳者あとがき ▪ 文献 ▪ 原註 ▪ 訳註 ▪ 図版一覧
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-ロシア正教の倫理と共産主義の精神 ロシアの共産主義はナショナルな特徴に根ざす現象であり、マルクス主義的な見地からのみでは決して説明しえない──ベルジャーエフは、ロシアにおけるボリシェヴィズムの必然性を、キエフ・ルーシから連綿と続くキリスト教精神と、インテリゲンツィアによって編まれる歴史・思想史のなかに探っていく。「ロシア本国において一九九〇年代から、ベルジャーエフも含めて、一九世紀末から二〇世紀初頭に登場したあまたのロシアの宗教哲学者たちが、西欧とは異なるロシア独自の精神的価値として、高く評価されるようになった。しかし、今日では、こうした見かたもまた一面的なものとして克服を迫られている。ベルジャーエフによる「ロシア的理念」にたいする批判的分析は、ベルジャーエフ自身も含めたロシア思想を新たな視点から再検討するうえでも重要な示唆を含んでいる」(本書解説[佐藤正則・九州大学教授]より)
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3.5※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 【この電子書籍は固定レイアウトで作成されており、タブレットなど大きい画面の端末で読むことに適しています。】 新書みたいにスラスラ読める! 文法用語や表に頼らない、大評判の画期的入門シリーズ。 「しくみ」がわかれば、外国語は楽しい。 《しくみ》シリーズの3大特徴 ★言葉の大切なしくみ(=文法)がわかる ★しくみを読者みずからが発見していく構成で通読できる ★言葉の楽しさ、面白さ、そして発想の多様さを実感できる 外国語を始める人も、その予定はない人も。 まずは寝ころんで、コレ読んで。 名前しか知らなかった"言葉"が、あなたのお気に入りになるかも。 *収録音源は無料でダウンロードできます。
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5.0欺瞞、密約、だまし討ち 死後七〇年以上経った今日なお、トーマス・エドワード・ロレンスは二十世紀のもっとも謎に満ちた、毀誉褒貶相半ばする人物の一人であろう。本書はロレンスの評伝だが、けっして「聖人伝」ではない。第一次世界大戦中、ロレンスをはじめアラブ世界を舞台に暗躍した四人のスパイと彼らを取り巻く人間模様から、ヨーロッパ列強が中東という壺の中に手を突っ込んでかき回すさまを描いた歴史ノンフィクションである。 ロレンスほど有名ではないが、本書で重要な役割を果たす三人とは、表向きは大学講師だが、英国を欺くためオスマン帝国と共謀し、愛人のロシア系ユダヤ人医師を諜報活動に利用していたドイツのスパイ、K・プリューファー。ルーマニア系ユダヤ人の農学者で、オスマン帝国統治下のパレスチナで祖国建設のために奔走するシオニスト、A・アーロンソン。そして米東海岸の名門の出で、大手石油会社の調査員から米国務省の情報員に転身したW・イェールである。 戦況によってめまぐるしく変わる彼らの立ち位置を丁寧に追い、今日の中東紛争の淵源となった時代を躍動感あふれる筆致で描いた注目の歴史大作! 「現代史アーカイヴス」として復刊。 【目次】 表記・出典について はじめに 第一部 第一章 聖地の「プレイボーイたち」 第二章 変わり種 第三章 別のところ、別のいいもの 第四章 最後の一〇〇万まで 第五章 あきれた混乱 第六章 秘密を守る人たち 第七章 背信 第二部 第八章 戦いを交える 第九章 キングメーカーになる男 第十章 無の中に収まって 第十一章 欺瞞の霧
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3.5史学・考古学双方の研究を駆使して描く実態 ローマ帝国は衰亡したのか、独自の価値をもつ「古代末期」という新しいポジティヴな時代と捉えなおすべきなのか。本書は長年のこの議論をわかりやすく解説しつつ、「ゲルマン民族が侵入してきたとき、経済や社会に何が起き、人びとの暮らしはどう変化したのか」を、文献史料や陶器・家畜の骨・建築物(の跡)などを使い、史学・考古学双方の研究を駆使して描き出している。 ローマ帝国はさまざまな方法で経済的発展を促進し、税収による莫大な金銭を再分配した。ライン川とドナウ川に沿って駐屯していた職業的な軍が五世紀に崩壊すると、給料を得ていた何万もの兵士たちの購買力も失われ、彼らの装備を製作していたイタリア北部の工場も姿を消した。また皇帝たちは自身のために、交易を円滑にするインフラを維持したが、実際には貨幣は徴税官よりも商人や一般市民の手に渡るほうがはるかに多く、道路を旅するのも、軍より荷馬車と駄獣のほうがずっと頻繁だった。帝国の終焉とともに、これらへの設備投資は劇的に減少した。結果、地域の農業・工業の専門分化や作物・工芸品の換金が困難になると、住民はより生産性の低いシステムへの回帰を強いられ、人口は減少していく。 ローマ帝国の洗練された生産・流通システムがひとたび崩壊してしまうと、地域によっては先史時代の水準にまで後退し、回復には数世紀を要したという事実は、かなり衝撃的である。英国ペンクラブのヘッセル=ティルトマン歴史賞受賞。
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4.0連邦議会襲撃に至る20年間の軌跡 2013年、米主要紙誌の特派員として十年に及ぶ海外生活から帰国した著者は、熟知していたはずの祖国アメリカが大きく変貌してしまったことに驚愕した。自分が浦島太郎になったかのような感覚を覚えるほどに、そこかしこで変化が起きていたのだ。その変化をもたらしたものは何なのか。トランプを大統領にまで押し上げたうねりの源はどこにあるのか。混沌の中から何か新しいものが生み出されようとしているのか。それを突き止めようと取材を開始する。 著者は、自分の人生で大きな関わりを持つ三つの場所(コネティカット州グリニッジ、ウェストヴァージニア州クラークスバーグ、イリノイ州シカゴ)を再訪する。取材対象は医師からヘッジファンド業界に転身するもインサイダー取引で犯罪者になったかつてのエリートに始まり、兵役を終えて帰国するも精神を病み殺人を犯してしまう元海兵隊員まで多岐に及んだ。彼らの人生の軌跡をたどることで、アメリカに「分断」や「怒り」をもたらした生々しい現実が浮き彫りになる。 「トランプ再来」に揺れるアメリカを理解するうえで重要な視座を提供する傑作ノンフィクション。 [目次] プロローグ 1 ゴールデン・トライアングル 2 遺憾の意 3 丘の上の宝石 4 泥の街 5 みんながやっていることだから(その1) 6 みんながやっていることだから(その2) 7 みなさまがた 8 ヤク漬け 9 購買力 10 タマなし野郎 情報源についての解説
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4.21991年のソ連崩壊後、ユーラシア大陸の中央に位置するカザフスタンは、独立国家の建設、計画経済から市場経済への移行という、大きな変化を潜り抜けてきた。その過程で、国のありかたや人びとの生活はどのような変化を遂げてきたのだろうか。 豊富な資源をもとに経済発展を続けるカザフスタンは、いまや新興国のなかでも優等生の一国に数えられる。 独立前からカザフ人のあいだにみられる特徴のひとつに「コネ」がある。そして、市場経済移行後に生活のなかに蔓延しているのが、このコネクションを活用して流れる「賄賂」である。経済発展がこれまでの人びとの関係性を変え、社会に大きなひずみが生じているのだ。 本書は、市場経済下、警察、教育、医療、ビジネス活動など、あらゆる側面に浸透している「賄賂」を切り口に現在のカザフスタンをみていく。賄賂は多かれ少なかれ世界中の国々でみられる現象だが、独立後のカザフスタンは、それが深刻な社会問題を生み出している典型的な国のひとつである。 ここから見えてくるのは、人びとの価値観の変容だけでなく、ほんとうの「豊かさ」を支える社会経済システムとはどのようなものかという問題だ。豊かさを追い求めた、この30年の軌跡。
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3.9四半世紀分のキシモトワールド リディア・デイヴィス、ルシア・ベルリンなど数々の名翻訳で知られる著者は、エッセイストとしても絶大な人気を誇る。本書はデビューエッセイ集『気になる部分』(白水社刊、2000年)以降に様々なメディアに寄稿した、単行本未収録の文章を集大成したものだ。 全三章で構成。第一章は、「前世が見える」という人に教わった著者の前世の物語「わからない」、一度も訪れたことのない場所を精緻な妄想で描写する「ここ行ったことない」等、ヴァラエティ豊かなエッセイを集める。 第二章は、書評の意味を崩壊させてしまった伝説の朝日新聞連載「ベストセラー快読」、子供のころ猿のように繰り返し読んでいた本を今読んだらどうなるのか実験した「もう一度読んでみた」等、本にまつわる文章でまとめた。 さらに第三章として、キシモトワールドのエッセンスを凝縮したようなウェブ日記「実録・気になる部分」等、2000年代の「日記」を収録。いずれの章も、抱腹絶倒、奇想天外、虚実の境をまたぎ越す著者の真骨頂が堪能できる。 危険防止のため、電車の中では読むことをお控えください。
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4.2ノーベル文学賞受賞作家の最新長篇! 作家のキョンハは、虐殺に関する小説を執筆中に、何かを暗示するような悪夢を見るようになる。ドキュメンタリー映画作家だった友人のインソンに相談し、短編映画の制作を約束した。 済州島出身のインソンは10代の頃、毎晩悪夢にうなされる母の姿に憎しみを募らせたが、済州島4・3事件を生き延びた事実を母から聞き、憎しみは消えていった。後にインソンは島を出て働くが、認知症が進む母の介護のため島に戻り、看病の末に看取った。キョンハと映画制作の約束をしたのは葬儀の時だ。それから4年が過ぎても制作は進まず、私生活では家族や職を失い、遺書も書いていたキョンハのもとへ、インソンから「すぐ来て」とメールが届く。病院で激痛に耐えて治療を受けていたインソンはキョンハに、済州島の家に行って鳥を助けてと頼む。大雪の中、辿りついた家に幻のように現れたインソン。キョンハは彼女が4年間ここで何をしていたかを知る。インソンの母が命ある限り追い求めた真実への情熱も…… いま生きる力を取り戻そうとする女性同士が、歴史に埋もれた人々の激烈な記憶と痛みを受け止め、未来へつなぐ再生の物語。フランスのメディシス賞、エミール・ギメ アジア文学賞受賞作。
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3.0コーランにもとづく、「服従」しないための療法。 フェミニストでありながら、イスラムのスカーフを被ること─。これは、スカーフを女性差別の象徴としてみなす西洋のフェミニストたちに理解されにくく、議論の的となってきました。でも、それが、ナディア・エル・ブガの流儀です。宗教に敬虔であることとフェミニストであることは、矛盾しません。 イスラムというと女性蔑視の因習的な宗教という先入観や、テロと短絡的に結びつける傾向もあるでしょう。そんな誤解や偏見は、イスラム法を学んで、モスクで講和を行なう専門知識をそなえたナディアが、丁寧にときほぐします。 この本は、イスラムの聖典をひもときながら男女平等を説き、セクシュアリテの封印を解く、フランスで人気の性科学医(セクソローグ)による自伝的エッセイです。 セックスやジェンダーに悩むひとに、コーランにもとづく、「服従」しないための療法を! 診療室をおとずれる多様性をかかえた患者の生に寄りそってきた著者ならではのアドバイスや語り口は、どれも魅力的で、イスラム文化のみならず性教育に関心を持つ読者にも有意義。日本の読者へのメッセージ「コロナ禍を経て、伝えたいこと。」も収録。
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4.0華麗なる時代の最後の輝きの日々 登場するのは、『日の名残り』の主人公のモデルといわれる「クリヴデンのリー卿」ことアスター子爵家のエドウィン・リーをはじめとする五人。彼らはみな、十九世紀後半~第二次大戦前のイギリスで、地方の労働者階級の家に生まれて十代前半から働きはじめる。執事になってからの、大邸宅の日常や豪華な大イベントを取り仕切る仕事。チャーチル首相や王家の人々との関わり。そして、二十世紀社会の激変に翻弄されながら、華麗な貴族の時代の終わりを目の当たりにする哀しみ……。華やかなまま引退する者もいれば、悲運に見舞われた雇用主一家にあくまで忠義を尽くす者、〝旧時代の雇い主〟の要求と〝新時代の部下〟という現実の板ばさみになって苦しむ者など、その結末はさまざまだ。 五人それぞれが一人称で語る人生の物語は、楽しい読み物であると同時に、二十世紀イギリス史の貴重な記録である。 【目次】 まえがき 1 プロローグ 2 ゴードン・グリメット ランプボーイの話 ゴードンの回想についてひとこと 3 エドウィン・リー ページボーイの話 リー氏の回想についてひとこと 4 チャールズ・ディーン ブーツボーイの話 チャールズの回想についてひとこと 5 ジョージ・ワシントン ホールボーイの話 ジョージの回想についてひとこと 6 ピーター・ホワイトリー 雑用係の話 ピーターの回想についてひとこと 7 エピローグ 解説 訳者あとがき
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-ピーター・バラカン氏推薦! 異色のビートルズ伝 時系列を大胆に再構成し、多種多様なエピソードをモザイク状に配置しながら、4人の生きた時代、ビートルズと関わった人々の人生を万華鏡のように映し出す。英国の著名なジャーナリスト、諷刺作家による悲喜こもごものポートレート。 長短さまざまな150章から成る本書は、数あるビートルズの伝記、関係者の回想録、インタビュー、日記、ファンレター、同時代の報道など膨大な資料から目ぼしい記述や発言を選りすぐり、著者自身のルポや思い出、噂話、架空の話も交えて、独自の視点で編まれたもの。第一章は伝説的なマネージャー、ブライアン・エプスタインが初めてビートルズの演奏を聴きに行く運命的なシーンで幕を開け、続く章からはエピソード同士がゆるやかに連なり、ときに思わぬ展開を見せ、読者を驚かせる。 著者一流の諷刺とユーモアを散りばめ、ビートルズの人と音楽、同時代への影響を多種多様な人々の声に語らせ、浮き彫りにする。「ビートルズがあまりに明るく輝いたため、誰でもその光線に当たった者は、それがたとえほんの一瞬だったとしても、ビートルズ神話の一部になる」(本書より)。2020年度ベイリー・ギフォード賞受賞作。
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-「角のついた兜をかぶった北欧の海賊」という、誤りを含んだ偏ったイメージで語られてきたヴァイキング。実際には兜に角はなく、平時には商人であり農民だった。そもそも「ヴィーキング(ヴァイキング)」という言葉の語源は、海賊ではなく、商業地を点々としながら活動する商人そのものを意味している。北欧のみならず、イギリス・フランス・イタリア・ギリシア・ロシア史に大きな影響を与えてきた彼らは、どんな人々だったのか。 彼らの芸術は、象徴的な抽象主義と純粋な現実主義との中間にあり、機能性と美とを同時にかねそなえた、いわば実用的理想の域にまで達していた。ヴァイキングの精神・物質生活はひとつの文化であるだけでなく、西欧のキリスト教文明に匹敵するひとつの文明である。 本書は、ルーン学、サガや詩などの史料を駆使し、ヴァイキングの陸上や船上での日常生活や年中行事の、物質的側面のみならず精神生活をも幅広く扱い、「家族」を中心とした社会を組織したその豊かで高い文化全般を詳説する。
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-歴史・人間・帝国 政治・経済・社会の制度から、科学・文学・芸術の文化までの遺産が、世界で称賛されつづけているイギリスの一九世紀。だが、このヴィクトリア朝には、つねに神話化されたイメージがつきまとう。 ヴィクトリア朝の人びととは、いったい誰のことを指すのだろうか。この時代を生きた彼ら/彼女らは近代都市社会の多くの課題に初めて直面する一方で、その世界的な行動が帝国という悪しき世界を形づくることにもなった。 それにしても、なぜヴィクトリア朝は、今なお日本を含む諸国の文化で重要な位置を占めつづけているのだろうか。「ヴィクトリアニズム」と呼ばれる特定の世界観/価値観は正当化できるのか。この時代のイギリスの実像はどのようなものだったのか。そして、その文化は世界にいかなる結果をもたらしたのだろうか。 本書は、このような問いをめぐって歴史学者が冷静な視点から論じる、ヴィクトリア朝研究の小さな名著である。今後、イギリスという国の歴史的な内情や、その栄光と秘密を知りたい読者、さらに世界の近代史への理解を深めたい読者にとっての必読書になるだろう。
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4.0豪華絢爛な宮殿の舞台裏 フランス貴族社会の象徴、ヴェルサイユ宮殿。18世紀、ここには王を頂点に1000人以上がひしめきあって暮らしていた。豪華絢爛な外観、贅沢な食事、着飾った女性たち、舞踏会や音楽会……。華やかな宮廷生活が思い浮かぶが、本書のテーマはこうした表の顔ではなく、より人間くさい日々の営みのほうにある。著者は残された書簡や官僚機構の報告書などを精力的に読み込み、宮殿での暮らしの実態をひもといてゆく。 宮殿の内部は226の居室からなる巨大迷路の様相を呈していた。広さ・設備とも許容量を超える人数が暮らすなかで、個人のプライバシーは守られていたのか。1000人分の食事はどのように準備され、消費されていったのか。安全な飲料水は確保できていたのか。入浴や排泄はどのようにしていたのか。広大な建物をどのように掃除していたのか。大量の洗濯物はどこで洗い、どこに干していたのか。華やかなイメージとは裏腹の驚くべき事実が次々と明かされる。 当時の史料からは、貴族たちの苦労がしのばれると同時に、彼らがたくましく生きていた様子もうかがえる。本書を読めば、これまでとは違った宮殿の姿が立ちあがってくるはずだ。
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-ドストエフスキーと「ロシア的精神」の要諦 「いつも私は人間を、ドストエフスキーの人間と、彼の精神に無縁な人間とに分けた」とベルジャーエフは序文で記している。この感覚は、ドストエフスキーの作品で提示される人類に普遍的な諸問題――たとえば、自由と幸福の二律背反、神なき世界で罪は存在するのか、善とは、悪とはなにか等々――を引き受けてしまった人間にとって馴染みのあるものではなかろうか。 本書は、青年期はマルクス主義者であったが、その後、キリスト者へと転向を果たし、共産主義を強く批判することになるベルジャーエフが、ドストエフスキー作品とがっぷり四つに組み、作品の登場人物たちが宣い、吐露する思想に伴走しながら、ドストエフスキーの「世界観」を明らかにするまごうことなき「古典」であり、日本におけるドストエフスキー理解にも大きな影響を与えた。同時にそれは、「ロシア的精神」に関する一個の思想書でもある。解説=堀江広行 [目次] 序文 一 ドストエフスキーの精神像 二 人間 三 自由 四 悪 五 愛 六 革命――社会主義 七 ロシア 八 大審問官――神人と人神 九 ドストエフスキーとわれわれ 解題 解説 ベルジャーエフとその『ドストエフスキーの世界観』堀江広行
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-社会政策学からマル経・近経、そしてゲーム理論へ 東京大学に経済学部が誕生したのは1919年であるが、東大が1877年に発足して以来、経済学は講座の一角を占めてきた。 本書では、東大の発足後、現在に至るまでの150年の間に、どんな経済学を研究や教育の対象にしてきたのか検証する。 なぜ東大なのか? 東大経済学部は日本の経済学界をリードする存在であり、研究や教育のスタイルは他の大学にも大きな影響を及ぼしてきたからだ。東大経済学部の歴史は、日本の経済学界の歴史そのものだと言える。 明治の大学創設後、社会政策学に始まり、森戸事件や平賀粛学で学部に激震が走り、戦後はマルクス経済学と近代経済学が二大潮流を形成したが、1980年代以降、近経への一極集中が進んだ。その後は国立大学法人化の波に洗われ、資金調達に注力する姿が浮かび上がる。 そこで浮き彫りになるのは、近現代の学術の変遷である。本書では、日本の経済学、ひいては学問が抱える課題を明らかにし、研究や教育の行方を占う。 『経済学の壁』(日本経済新聞年間ベスト経済書2位)で話題になった著者の渾身の書き下ろし! [目次] はじめに 序章 並び立つ理論と実学——フェノロサ、渋沢栄一が教壇に 文学部の履修科目だった経済学/せめぎ合う「国家の統制」と「学問の自由」/東大の源流、蕃書調所設立を主導した勝海舟/漢学者より洋学者を求めた明治政府/理財学が学科の名称に/古典派経済学を講じたフェノロサの真意/大蔵官僚が財政学を担当/実務経験を伝授した渋沢栄一/「官学」の色彩を強めた経済学/帝国大学が発足、理財学は政治学科の科目に/独立性が高い講座制発足/ドイツ歴史学派の影響が強まる/後進国・ドイツが打ち出した保護関税/新歴史学派が社会政策学会を創設/日本にも社会政策学会が誕生/自由放任にも社会主義にも反対/工場法制定を唱えた金井延/法科大学に経済学科が誕生/急ごしらえの商業学科/東京高商の昇格に反対した文部省/新渡戸稲造が植民政策を担当/ゼミナール拡充を求めたヴェンティヒ/経済学部独立への布石に/「エンゲル文庫」を購入/第3世代の教員が登場/盛り上がる大正デモクラシー運動/社会主義・マルクス主義を研究対象に/経済界から人材を求める声 第I章 新生・経済学部の苦闘——「森戸事件」で揺らぐ学問の自由 幻の「商科大学」独立案/大学令公布で急展開/7番目の学部となった経済学部/学部独立の功労者、高野岩三郎の辞職/新渡戸稲造は国連に転出/森戸論文が攻撃対象に/山県有朋、上杉慎吉からの圧力/「森戸を守れ」の声が広がる/関東大震災で建物や図書が焼失/官庁や民間から人材を登用/シュンペーターに白羽の矢/マルクス経済学研究が大きな柱に/禍根を残した「資本論テキスト事件」/限界理論から独自の配分理論へ/自由主義を基調とする社会政策を提唱/マルクス価値論を巡る論争が勃発/3グループが演じた派閥抗争/治安維持法の足音/初の適用対象となった京都学連事件/強まるマル経への逆風 第II章 「左傾教授」を相次ぎ追放——思想統制下の「日本資本主義論争」 コミンテルンに加盟した日本共産党/全国の高校・大学に社研が発足/普通選挙で存在感を示した共産党/1600人を逮捕・拘留した三・一五事件/東大新人会に解散命令/左傾教授の処分を求める/枢密院、貴族院で強硬論/大学の自治より国家の意思/河上肇の辞職に反対しなかった教授会/左翼運動を咎められた大森義太郎/大学の凋落を憂慮した森戸論文/山田盛太郎を追い詰めた共産党シンパ事件/急速に進む右傾化、相次ぐテロ事件/血盟団事件に関与した帝大生/思想弾圧に拍車をかけた蓑田胸喜/「帝大法学部は諸悪の根源」と主張/発禁となった瀧川幸辰の刑法解説書/文官分限令で休職処分に/議会で天皇機関説をやり玉に/辞職に追い込まれた美濃部達吉/労農派のライバル、講座派が誕生/逆風の中の日本資本主義論争/7年間人事が停滞した経済学部/近代経済学でも研究成果 第III章 内部抗争の果てに——平賀粛学」で人事刷新 右傾化の流れに乗った平泉澄/二・二六事件で敗北した皇道派/講座派学者を一斉に検挙/潰えた河合栄治郎の野望/「国体の本義」を全国の学校に配布/国家主義を唱える「革新派」が始動/学生の明治神宮参拝に同道/教授会で矢内原論文を問題視/経済学部は時局に寄与すべきか/大学のファッショ化を懸念した矢内原/反ファシズム統一戦線を提唱したコミンテルン/第2次人民戦線事件で大内、有沢、脇村が検挙/評議会は大内らの起訴前処分に反対/革新派が立ち上げた「戦時経済研究会」/荒木文相が大学人事に直接介入/大学自治の意義を説いた田中耕太郎/軍部批判を続けた河合栄治郎の孤軍奮闘/新総長となった「造船の神様」/河合、土方に辞職勧告/14人の教員が辞職願を提出/若手教員の残留を説得/法学部長の辞任に発展/「平賀粛学」をどう評価するか/山崎覚次郎が顧問に就任/再開した昇任人事/時局に積極対応する方針を訓示/マルクス関連書の処分を指示/土屋喬雄を休職処分に/大内らの復帰を拒んだ経済学部/学生を相次ぎ戦争に投入/戦時下で授業が困難に/山梨に疎開したアダム・スミス文庫/戦時体制下の経済学研究 第IV章 甦った学問の自由——復興に貢献したマルクス経済学者 大内、矢内原ら7人が復帰/日本経済の再建、有沢の提言/傾斜生産方式の原点に/南原総長主導で社研が発足/厳しい食糧・住宅事情/中央審査委員会は土屋喬雄を不適格に/「教育の憲法」教育基本法が施行/4長老が学部運営の中心に/助教授にも人事権を付与/マル経が復活、近経の新風も/新制大学に移行、教養学部創設で独自色/「社会科学部」創設構想が浮上/新制大学院に社会科学研究科を設置/生活苦が続く教職員と学生/授業料値上げに反対、全学連を結成/経済学部に学生自治会が発足/押し寄せるレッド・パージの荒波/全学連、全面講和運動を展開/注目集めた「曲学阿世事件」/学生の自重を求める大学当局/警察官を拘束した「ポポロ事件」/助手・特研生の待遇改善を要求/「矢内原3原則」を明記 第V章 崩れ落ちた大学の権威——東大紛争の教訓 1960年代に加速した教員の世代交代/文部省が学生と講座の増加を計画/戦後20年で教員数が倍増/経済学科主導の学部運営/「経営学科」への呼称変更で浮揚狙う/縦割り組織に回帰した新制大学院/赤門付近の新館に移転/「安保闘争」が東大でも活発に/政治に苦言を呈した総長声明/大学管理法問題が浮上/「東大パンフ」に学生自治会が反論/東大紛争の発端となった医学部インターン問題/学内に機動隊を導入、占拠学生を排除/安田講堂をバリケード封鎖、東大全共闘が発足/大河内総長の告示への反発広がる/入試中止に追い込まれる/秩父宮ラグビー場で全学集会/全国放送された安田講堂攻防戦/収束に向かった全国の大学紛争/10年近く続いた「経院紛争」/世界で同時に広がった学生運動/マル経の演習を選ぶ学生は減少傾向に 第VI章 激動期の経済学者たち——静かに進んだ近経への一極集中 教員と学生が学部再建を議論/マル経と近経の教員が討論/「理論の作り手ではなく使い手」~小宮隆太郎/八幡・富士製鉄の合併反対運動を主導/リフレ論争の原点に/アメリカ経済学界の頂点に~宇沢弘文/「社会的共通資本」に軸足を移す/華々しい学界デビューを飾る~根岸隆/「知の創造」に専念した学者人生/宇沢の指導を受けた石川、岩井、奥野/新古典派を攻撃したラディカルズ/分配の公正に焦点を絞る~石川経夫/「不均衡動学」で新古典派に挑戦~岩井克人/ニュー・アカデミズムの風/法学に失望し、経済学を志望~奥野正寛/ゲーム理論を日本に持ち込む/「ウォーキング・エコノミスト」に転身~伊藤元重/経済財政諮問会議の初代民間議員に~吉川洋/日銀総裁として異次元緩和を解除~植田和男/日銀副総裁として危機に対峙~西村清彦/大蔵省副財務官として国際交渉に臨む~伊藤隆敏/新分野「確率進化ゲーム」を開拓~神取道宏/大講座制への移行で教員人事が柔軟に 第VII章 「法人化」で変質する学問——研究の軸足をアメリカの学界に 「大学院生倍増」の目標を堅持/修士・博士の区分制度を復活/学生の成績低下を懸念/ゼミの代わりに「少人数講義」/「大学院重点化」に対応する3つの腹案/公共政策大学院が発足~政策のプロ養成を目指す/計量経済学を根付かせた市村英彦/法人化の方向を示した「遠山プラン」/強まった総長の権限/「外部資金」獲得に奔走/事務作業に追われる教職員たち/「金融学科」を設置、3学科制に/リーマン・ショックで寄付講座が廃止に/「進級振り分け制度」改革で成績が向上/修士課程の中国人留学生が急増/急減する経済学科の卒業生/加速する公務員離れの背景/附属センター設立の狙い/「ものづくり経営学」を構築した藤本隆宏/小島武仁らを海外からスカウト/文系学部廃止問題の衝撃/「日本を置き去り」にする研究者たち/一般均衡理論を土台にしたマクロ経済学が主流に/「統計的因果推論」が実証分析の発展を促す/学界での評価と世間の認知度にずれ/一進一退の世界ランキング 付記 東京大学経済学部略年譜 参考文献
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-※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 騎馬遊牧民の口承文芸を支えた言葉 中央アジア最大の面積を持ち、石油や鉱物などの資源が豊富で、ユーラシア大陸の東西を結ぶ中央回廊でも注目されるカザフスタン。居住地を定めず広大な草原を季節ごとに移動する騎馬遊牧の社会では、文字はほとんど使われず、かわりに豊かな口承文芸が発達しました。その文化を支えてきたカザフ語は主語・目的語・述語の語順や「てにをは」のような格助詞など日本語と似たところがあり、日本人には学びやすい言語といえます。会話と文法をいっしょに学べるこの本で始めてみませんか。★音声アプリ無料ダウンロード