ロシアのウクライナ侵攻の1年前に書かれたという本書は、皇帝(ツァーリ) プーチンが何をしようとしているのかを彼の側近であったクレムリンの魔術師スルコフ(作中ではヴァディム•バラノフ)に語らせる。エリツィン政権時代に築いた巨万の富をもとに政治的影響力を強めるオリガルヒや独立政治家が逮捕され、会社を奪わ
...続きを読むれ悲惨な状態に堕とされる様や、全体主義の恐怖支配へ突き進む様が事実に重ねて描かれる。
オリガルヒの一人でイギリスに亡命し自殺?したボリス・ベレゾフスキーはプーチンについてこう語る。「彼は決してやめないだろう。彼のような人間はやめることができない。これが一つめの掟だ。執念深く続け、すでにうまくいっていることは修正しない。そしてとくに、過ちを認めることは絶対にしない。」バラノフは「あなたの言う通りかもしれないが、そうした対応は野蛮なのではなくゲームのルールだ。 権力に関する第一の鉄則は、過ちを犯しても執念深く続けることであり、権威という壁に入った亀裂は、たとえわずかなものであっても表沙汰にしないことだ。モブツは、酋長が落馬しただけで殺される土地の出身者であり、この鉄則を心得ていた。彼は病気になると圧殺された。酋長は部族を守るために強くなければならない。弱さを見せた瞬間、叩きのめされ、権力の座を追われる。 こうした事情は世界中どこでも同じだ。」と返す。失権者の末路を知るプーチンも保身が故に戦争を止められなくなっているのだろうか。ロシアの現代史とプーチンの思想を知ることが出来る一冊です。