ジュリアーノ・ダ・エンポリのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
歴史が、過去が未来を教えてくれるのは「今」が長い時代のことである。変化が早く変数パラメーターが爆発している現代において、過去のパターンに当てはめて、少ないパラメーターを嵌め込んでも、未来は予測不能に目まぐるしく変化する。
このような先の見えないカオスな時代に権勢を振るうのはチェーザレ・ボルジアのような狐の狡猾さとライオンの腕力を持つ者たちだ。
サウジアラビアのサルマン、アルゼンチンのミレイ、エルサルバドルのブケレ、アメリカのトランプを例に挙げる。
また、民主主義の機能不全についてテック企業の関与を指摘しているが、そのスタートはアメリカ民主党であるという重要な指摘がある。ドナルド・トランプを生み出したのはバラク・オバマなのだ。 -
Posted by ブクログ
昔、祭りは目に見えるものだった。映像を通じて世界のどこかで行われている祭りが、目を楽しませてくれたものだ。今、祭りはSNS上で起こり、時には炎上する。SNS上の祭りがリアルな社会に影響を与えることが、さほど珍しくなくなった。
外国人ヘイトデモが、えらく頻繁に行われるようになった。一人や二人ではシュプレヒコールもか細い。しかし、どうみてもそんな人数ではない。後でわかったことだが、SNS上でデモの予定を公表し、それを見て集まってきたらしい。どうりで見かけない輩が多かった。
ドナルド・トランプ大統領の政治が、「ネットフリックスのような」政治と断じられているが、そもそもネトフリを契約していないので、イメージが湧いてこない。しかし確実に、これまでとは異なるメディアによって醸成された世論が、世の中を動かしつつある事は感じている。そして世の中が、更に複雑に絡み合っていることも。今でも全体を把握しているとは言い難い。
現実社会に有人受付やボットチャットの問い合わせの割合が増えたことだけで、かなり不便を感じているのに、世の中にはSNSを駆使した選挙で勝利を確実にする「混沌の技師」たちがいるらしい。ジャンロベルト・カサレッジオ、ドミニク・カミングス、スティーブ・バノン、マイロ・ヤノプルス、アーサー・フィンケルスタイン。彼らこそが「ポピュリズムの仕掛人」と言われている。
ポピュリズムとは、大衆からの人気を得ることを第一とする政治思想や活動だが、そもそもの大衆を操って自分が思う政治思想に共鳴させようとする操り手が今はいる。そしてその存在は、一般大衆には見えていない。その事が恐ろしい。 -
Posted by ブクログ
昔ながらの政治をニュートン政治学、今の政治を量子政治学とし、SNSの存在が量子政治学を可能にしたという。
量子政治学とは要するに分子(個人)1つ1つの挙動の傾向をコントロールするということだ。生活が苦しい人には「あなたはがんばっているのに税金を無駄遣いする政治家や、働きもせずに生活保護を受けている怠け者のせいですよ」、言葉が通じない外国人が街中に増えて不安を覚えてる人には「奴らはスパイで日本を食い物にしている」といったデマを吹き込む。
昔はそのような個別のダイレクトメールのような活動はできなかったが、今はビッグデータやSNSの情報を握り、AIを活用することで可能になった。
もはや真実は人それぞれの中にあり、各々の怒りが増幅され選挙活動に利用されている。 -
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ロシアのウクライナ侵攻の1年前に書かれたという本書は、皇帝(ツァーリ) プーチンが何をしようとしているのかを彼の側近であったクレムリンの魔術師スルコフ(作中ではヴァディム•バラノフ)に語らせる。エリツィン政権時代に築いた巨万の富をもとに政治的影響力を強めるオリガルヒや独立政治家が逮捕され、会社を奪われ悲惨な状態に堕とされる様や、全体主義の恐怖支配へ突き進む様が事実に重ねて描かれる。
オリガルヒの一人でイギリスに亡命し自殺?したボリス・ベレゾフスキーはプーチンについてこう語る。「彼は決してやめないだろう。彼のような人間はやめることができない。これが一つめの掟だ。執念深く続け、すでにうまくいっていることは修正しない。そしてとくに、過ちを認めることは絶対にしない。」バラノフは「あなたの言う通りかもしれないが、そうした対応は野蛮なのではなくゲームのルールだ。 権力に関する第一の鉄則は、過ちを犯しても執念深く続けることであり、権威という壁に入った亀裂は、たとえわずかなものであっても表沙汰にしないことだ。モブツは、酋長が落馬しただけで殺される土地の出身者であり、この鉄則を心得ていた。彼は病気になると圧殺された。酋長は部族を守るために強くなければならない。弱さを見せた瞬間、叩きのめされ、権力の座を追われる。 こうした事情は世界中どこでも同じだ。」と返す。失権者の末路を知るプーチンも保身が故に戦争を止められなくなっているのだろうか。ロシアの現代史とプーチンの思想を知ることが出来る一冊です。 -
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細かいエピソードと引用文が多くて少し読みにくかったが、それを差し引いても相当面白かったし、恐ろしくて冷や汗が出るような一冊だった。
量子力学政治において民主主義を守るにはどうしたらいいか。日本でも、これまでとは違う形のムーブメント(いわゆるポピュリスト政党、反ワクチン、財務省/こども家庭庁解体など)が顕在化する中で、政治/政府の人たちとこういったトピックを議論することが増えた。
嘆きたいことは山程あるが、まずは相手のやり方をよく知り、自分たちもそれに合わせてアップデートをすること、あわせて市民との直接の対話をもっと頻度高く、そして粘り強く続けるしかないのではないかと思う。 -
Posted by ブクログ
1529年から34年、スペインのエルナン・コルテスの一団がメキシコのアステカ帝国に上陸した時、帝国のモクテマス2世の「意味のわからなさ、蒙昧振り」を今のIN、SNSやAIの急激な浸透に対する先進各国首脳陣の「何が起こっているかわからない狼狽振り」に見立てる。アステカ帝国は即彼らに滅ぼされた。
ITプラットフォーマーを征服者(コンキスタドール)になぞらえて、各国首脳陣を技術と時代から取り残された亡国の帝王とする、喩えである。
パリ政治学院で政治学を教える元フィレンツェ副市長・元イタリア首相アドバイザーのジュリアーノ・ダ・エンポリが今世界で起こっている変化の本質をエッセイ風の軽い表現で淡々と綴る。
彼は実際の体験から、各国首脳の考えていることや行動を具体的に熟知しているので政策や対応の舞台裏がよくわかる。そのシャープな切り口に驚かされる。
戦後体制が求めた世界の平和は風前の灯火で、トランプやヴァンス、プーチンや習近平の無茶苦茶振り、イーロン・マスクやマイク・ザッカバークの強欲、サウジアラビアの皇太子ムハンマド・ビル・サルマーン(MBS)の専制強圧振りも、捕食の時代には極めて現実的で当たり前のことという。
IT・AIデジタル技術はとてつもないスピードと規模で進行し、その征服者たちは無制限の権力を行使し「新たな帝国」の力学を手に入れた。
世界は国連や米・ソ、米・中による秩序志向の安定ではなく、暴力と戦争や力による侵略が常態化する。
こうした時代に、考えられる抵抗策であり打開策はヨーロッパがやろうとしているAI帝国への知的・文化的抵抗だという。ヨーロッパが培った文化と哲学こそが鍵であるという。
著者の主張に触れて、ヨーロッパ政治の歴史的経験の蓄積がこういう発想や思考を生むのだと思い、それこそがこの捕食者たちに太刀打ちできるのかも知れないと感じさせる。
乱暴で雑然たる内容ではあるが、警醒の書である。