【感想・ネタバレ】クレムリンの魔術師のレビュー

あらすじ

「プーチンの演出家」が語るリアルポリティーク小説

「クレムリンの魔術師」として知られたヴァディム・バラノフは、ロシアの皇帝の黒幕になる前はTVのリアリティ番組のプロデューサーだったという。
〈私〉はある夜、SNSで知り合った人物からモスクワ郊外の邸宅に招かれ、その祖父の代からの「ロシアの権力の歴史」を知る。ヴァディム・バラノフには舞台芸術アカデミーで演劇を学んだ青春時代、ヒッピーの両親をもつクセニアという名の美しい恋人がいたという。
ロシアのプロパガンダ戦略やウクライナとの戦争において、彼はどんな役割を担ってきたのか? 「プーチンの演出家」の告白を元に伏魔殿クレムリンの舞台裏が明かされてゆく──。
主人公バラノフのモデルは、ロシア副首相、大統領府副長官、補佐官を歴任した、ウラジスラフ・スルコフ。エリツィン、クリントン、メルケル……実在の政治家たちも実名で登場し、ソチ冬季オリンピック開会式で赤軍合唱団にダフト・パンクを歌わせた史実なども挿話され、プーチンの権力掌握術や、ロシアの国民感情が語られてゆく。愛と権力をめぐる迫真のリアルポリティーク小説。
小泉悠さん推薦! アカデミー・フランセーズ賞受賞作品。

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Posted by ブクログ

問題は、アメリカが冷戦に勝利したと思っていることだ。冷戦が終結したのは、ロシア国民が自分たちを抑圧する政権に終止符を打ったからだ。我々は敗北したのではなく独裁から解き放たれたのだ。

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2023年08月16日

Posted by ブクログ

ロシアのウクライナ侵攻の1年前に書かれたという本書は、皇帝(ツァーリ) プーチンが何をしようとしているのかを彼の側近であったクレムリンの魔術師スルコフ(作中ではヴァディム•バラノフ)に語らせる。エリツィン政権時代に築いた巨万の富をもとに政治的影響力を強めるオリガルヒや独立政治家が逮捕され、会社を奪われ悲惨な状態に堕とされる様や、全体主義の恐怖支配へ突き進む様が事実に重ねて描かれる。
オリガルヒの一人でイギリスに亡命し自殺?したボリス・ベレゾフスキーはプーチンについてこう語る。「彼は決してやめないだろう。彼のような人間はやめることができない。これが一つめの掟だ。執念深く続け、すでにうまくいっていることは修正しない。そしてとくに、過ちを認めることは絶対にしない。」バラノフは「あなたの言う通りかもしれないが、そうした対応は野蛮なのではなくゲームのルールだ。 権力に関する第一の鉄則は、過ちを犯しても執念深く続けることであり、権威という壁に入った亀裂は、たとえわずかなものであっても表沙汰にしないことだ。モブツは、酋長が落馬しただけで殺される土地の出身者であり、この鉄則を心得ていた。彼は病気になると圧殺された。酋長は部族を守るために強くなければならない。弱さを見せた瞬間、叩きのめされ、権力の座を追われる。 こうした事情は世界中どこでも同じだ。」と返す。失権者の末路を知るプーチンも保身が故に戦争を止められなくなっているのだろうか。ロシアの現代史とプーチンの思想を知ることが出来る一冊です。

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2023年03月25日

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