作品一覧

  • 略奪される企業価値―「株主価値最大化」がイノベーションを衰退させる
    4.2
    1巻3,740円 (税込)
    真犯人は「自社株買い」。 「企業が資金を調達する場所」ではなく、「企業から資金を吸い上げる場所」と化した株式市場。 持続不可能な「略奪的価値抽出」の仕組みが企業を滅ぼす。 シュンペーター賞・マッキンゼー賞を受賞した企業組織論の権威による明快かつ緻密な分析。 本書は、30年もの経済停滞に苦しむ日本の経済政策担当者たちや経営者たちにとっては、計り知れない重要性を持っている。なぜならば、彼らがずっと追い求め、そして得られなかった「革新的企業」の理論がここにあるからだ。特に、近年は、企業の株価は過去最高値を更新して上昇し、企業の利益も好調と言われているにもかかわらず、実質賃金は下落を続け、消費も低迷するという現象が起きている。なぜ、そのような現象が起きているのか。その答えを、本書の「革新的企業の理論」が明らかにしているのである。――中野剛志「日本語版解説」より 1980年代以降、「株主価値最大化」イデオロギーが企業や経営者の行動原理を支配するようになった。そのため、「価値抽出」の制度である株式市場を介して、「価値創造」制度である企業から「価値」を「略奪的に抽出」することが常態化した。この「略奪的価値抽出」の最たる例が「自社株買い」である。 このことが、企業のイノベーションを妨げ、雇用を不安定化させるなど、経済、政治、社会に様々な弊害をもたらしていると指摘。そのうえで、社会の持続的な繁栄を取り戻すべく、「株主価値最大化」イデオロギーに冒されたコーポレート・ガバナンスを全面的に改めるべきである、と論じる。 一般的に、株式市場は、企業が生産能力への投資を行うための資金を供給し、価値を創造する制度だと考えられている。これに対し本書では、株式市場は企業から価値を抽出する制度に成り果てている、と断言する。 本書のような指摘は、これまでもあったが、「革新的企業の理論」や、「内部留保と再投資」対「削減と分配」といったラゾニック独自の視点から明快かつ緻密な分析を加えているところが、本書の愛大の特徴であり、説得力を与えている。
  • ポスト新自由主義と「国家」の再生:左派が主権を取り戻すとき
    -
    1巻3,564円 (税込)
    Make the Left Great Again! 左派の退潮が言われて久しい。 世界中が新自由主義に覆われ、格差や貧困がクローズアップされたにもかかわらず、左派への支持は広がらなかった。いや、むしろ左派への風当たりはより強くなったと言えるかもしれない。一方、右派や極右はますます支持基盤を拡大しているように見える。 左派退潮の分岐点はどこにあったのか? 左派を再興することは果たして可能なのか? 「左派を再び偉大に」することを狙う本書は、この問いに正面から答える。 1970年代、先進資本主義国では資本の収益性が劇的に低下していた。危機感を抱いた支配層は、福祉国家下の「階級的妥協」を棚上げして露骨な階級闘争を仕掛ける。 新自由主義的な再構築で起こったことは、決して国家の「衰退」や「空洞化」ではなく、〈脱民主化〉による国家主権の権威主義化だったのだ。 「国家の死」を寿いだ左派はここを大きく見誤ってしまった。そして、40年にわたり支配層から仕掛けられた階級闘争によって周縁化され、収奪された人々は極右運動に引き寄せられていった……。ポスト新自由主義世界を見通す左派再興の処方箋。
  • ミンスキーと〈不安定性〉の経済学:MMTの源流へ
    3.7
    1巻2,376円 (税込)
    「革新」的経済学の全貌 MMT(現代貨幣理論)が現代経済学のパラダイム・シフトを推し進める状況下、その鍵を握る重要人物としてハイマン・ミンスキーへの注目がかつてないほど高まっている。 ミンスキーと言えば、これまで「金融不安定性仮説」を中心に理解されてきた。先の金融危機でも「ミンスキー・モーメント」ないし「ミンスキー・クライシス」という言葉が金融関係者の間で囁かれた。 ミンスキー自身、金融的ケインジアンと呼ばれることを好んだものの、それは壮大なミンスキー理論の一端にすぎない。本書では、ミンスキーを「不均衡」「不安定性」という観点から読み解く。 とりわけ「安定性が不安定性を生み出す(Stability is destabilizing)」という彼自身が残した印象的な言葉を繰り返し省みる。これにより、「均衡」をベースに構築された正統派経済学に対する「異端派」としてのミンスキーの立ち位置が鮮やかに浮かび上がる。 さらに、従来、全く見落とされてきた「最後の雇い手」という、貧困と失業に対するミンスキーのアプローチを本書ではしっかりと位置付けている。ミンスキーの弟子かつMMTの旗手がその源流に向かった最良の入門!
  • MMT現代貨幣理論入門
    3.6
    1巻3,740円 (税込)
    第一人者による「バイブル」、待望の邦訳! アメリカで大論争、国会でも議論白熱。 いち早く日本に紹介した中野剛志氏と、「反緊縮の旗手」松尾匡氏によるダブル解説。 貨幣観を一新! MMTは、イデオロギーでもなく、願望でもなく、現実なのである。 【MMT(現代貨幣理論)の特徴】 ●日本や米国のように「通貨主権」を有する政府は、自国通貨建てで支出する能力に制約はなく、デフォルトを強いられるリスクもない。財政赤字や国債残高を気にするのは無意味である。 ●政府にとって、税金は財源ではなく、国債は資金調達手段ではない。政府が先に通貨を支出しない限り、民間部門は税金を納めることも、国債を購入することも論理的に不可能である。税金は所得、国債は金利にはたらきかけ、経済を適正水準に調整するための政策手段である。 ●政府は「最後の雇い手」として、希望する人々全員に、一定以上の賃金水準で就業する機会を約束することができる。この「就業保証プログラム」は、「完全雇用と物価安定」という公共目的に資する、強力な経済安定装置である。

ユーザーレビュー

  • 略奪される企業価値―「株主価値最大化」がイノベーションを衰退させる

    Posted by ブクログ

    日本ではアクティビストが大活躍で、多くの企業が自社株買いと高配当により、アクティビティスト達に利益を上納し、彼等が去った後は、株価低迷と余裕資金不足により、イノベーションと成長が阻害されている。また、株価上昇により,一見成功しているように見える企業も恩恵を受けているのは株主と倫理観を失って株式報酬を謳歌する経営者達だけで、労働分配率の低下による消費低迷を招いている。そろそろこの悪循環に気付くべきだと思う。

    0
    2025年08月16日
  • 略奪される企業価値―「株主価値最大化」がイノベーションを衰退させる

    Posted by ブクログ

    2024/10/01「略奪される企業価値」☆
    Predatory Value Extraction 略奪する 価値 抽出
    ウィリアム・ラゾニック ヤン・ソプ・シン
    株主価値最大化がInnovationを衰退させる
    株主還元「高配当」「自社株買い」が株主分配率を引き上げる
    賃金と投資は抑制され、成長エネルギーを喪失している
    これは私の最近の持論 まさにこの通り
    しかも新古典派経済学のインチキさと併せて糞味噌
    ただ既成の学問として新古典派経済学は君臨している恐ろしさ
    本書は大学院ゼミText並みのレベル ノートを取りながら熟読したい
    2024/10/11「略奪される企業価値」☆
    Predatory

    0
    2024年10月25日
  • MMT現代貨幣理論入門

    Posted by ブクログ

    たしかに今までの金融・財政理論とは異質だが、否定する内容ではないと思った。トリクルダウンが上手くいかなくなった時、就業保証プログラムで需要側を刺激するのは、まさにイマ使う手なのかもしれない。

    0
    2020年05月23日
  • 略奪される企業価値―「株主価値最大化」がイノベーションを衰退させる

    Posted by ブクログ

    この本は、現代アメリカ資本主義の変質を解剖している。
    著者は、1980年代以降に広がった「株主価値最大化(MSV)」というイデオロギーが、企業経営・資本市場・投資家行動を同じ方向に収束させ、企業の内部留保を再投資から自社株買い・配当に振り向ける構造を作ったと指摘。
    経営者はストックオプション利益のために株価を上げ、機関投資家は短期リターンを求め、アクティビストは還元圧力を強める。
    →このように三者が結託した「協調的略奪」が米国経済を短期志向に変えてしまった。結果、研究開発や設備投資は停滞し、賃金も上がらず、格差が拡大し、経済の成長エンジンが痩せ細ったと警告している。

    著者は最後に、自社株買い

    0
    2025年09月23日
  • 略奪される企業価値―「株主価値最大化」がイノベーションを衰退させる

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    内部留保と再投資、から、削減と分配、へ変化したことがイノベーションが起きないことの原因である。
    完全競争状態の矛盾=どうやって独占が出現するのかを説明していない。企業の生産性の違いを考慮していない。

    シュンペーターは、完全競争は劣った者であり、理想的な効率性のモデルではない=イノベーションの道筋がない。
    イノベーションは不確実、集団的、累積的、なもの。

    特許は幼稚産業保護論の関税と同じ。イノベーションの理論を前提にしている。
    過去には、そのように保護して生まれた巨大産業がたくさんあった。パシフィック鉄道、AT&T、航空路線、高速道路、インターネット、など。インフラ投資として、大学(

    0
    2024年12月24日

新規会員限定 70%OFFクーポンプレゼント!