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皇女にして、西洋古代・中世でただひとりの女性歴史家
歴史学は何のためにあるのだろうか? 私たちがより良い未来を生きるためである。しかし辛い日々を送る者にとって、歴史学が生きる糧となることもあった。歴史学が男の学問だった西洋古代・中世にあって、アンナ・コムネナは、不幸な我が身への慰めを歴史学に見いだした。ビザンツ帝国中興の祖である父アレクシオス一世の治世を描いた『アレクシアス』は、こうして誕生した。
権威ある「緋色の生まれ」としての誇り。皇帝である父への敬愛。皇妃となっていたはずの人生。ヨハネス二世となる弟との確執。アンナは、政治や戦争といった公のことがらについて真実を伝えるのが歴史家の務めであることを承知のうえで、自身の人生や溢れくる思いまでも歴史書に盛り込んだ。
本書は、第一部でアンナ・コムネナの数奇な生涯を語り、第二部では、ビザンツ歴史文学の最高傑作と言われる一方で批判も受けてきた『アレクシアス』を、ビザンツの歴史学や歴史書の性格、ビザンツ知識人にとって歴史学とは何だったのかという文脈から分析する。そして、長らく指摘されてきた年代の誤りの謎や、世界の翻訳者たちが苦心してきた不可解な記述の謎をも考察していく。
Posted by ブクログ 2020年09月02日
皇帝の娘にして西洋古代・中世で唯一の女性歴史家アンナ・コムネナーーその生涯に迫り、彼女の手になる歴史書『アレクシアス』について分析を加え、歴史学の目的や手法について考察する。
彼女は自らの不幸を嘆く。彼女の不幸とは、そして幸福とは? アンナはなぜ歴史書を記すことになったのか? 彼女は何を遺したかっ...続きを読む
Posted by ブクログ 2022年01月10日
予備知識なしでも興味深く楽しめる、しかも専門的な内容だった。ビザンツ帝国の皇女アンナの思い、考え方、歴史学に対する姿勢とそれをどう実践したかが語られる。著書の個人的な思いが含まれるのも、そうとわかって読めるので、むしろ全体を理解しやすくしている。歴史学とは何かを、垣間見ることもできる。「アレクシアス...続きを読む
Posted by ブクログ 2022年07月19日
西洋中世の女性歴史家、アンナ・コムニナの生涯と作品を一冊にまとめている。第一部では、彼女の生涯を辿り、第二部ではギリシャ以来の歴史学の伝統、作法を踏まえて、アンナ・コムニナが『アレクシアス』を書いた内容を精細に分析する。
歴史学が男性の学問であるが故に、歴史学の正統を標榜しつつも、歴史学から逸脱し...続きを読む
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