作品一覧

  • カッコウが鳴くあの一瞬
    4.0
    1巻1,584円 (税込)
    『黄泥街』で話題沸騰、残雪の不思議な世界 「彼」を探して彷徨い歩く女の心象風景を超現実的な手法で描いた表題作ほか、夢の不思議さを綴る夜の語り手、残雪の初期短篇を集成。 夢の不思議さを綴る夜の語り手、初期短篇集 わたしは駅の古いベンチに横になっていた。わたしにはわかっている、カッコウがそっと三度鳴きさえすれば、すぐにも彼に逢えるのだ。「カッコウはもうじき鳴く」とひとりの老人がわたしに告げた……。姿を消した“彼”を探して彷徨い歩く女の心象風景を超現実的な手法で描いた表題作。毎夜、部屋に飛び込んできて乱暴狼藉をはたらく老婆の目的は、昔、女山師に巻き上げられた魔法の靴を探すことだった……「刺繡靴および袁四ばあさんの煩悩」ほか、全九篇を収録。『黄泥街』(Uブックス既刊)が大きな話題を呼んだ現代中国作家、残雪の独特の文学世界が最も特徴的にあらわれた初期短篇を精選。夢の不思議さにも似た鮮烈なイメージと特異な言語感覚で、残雪ファンにとりわけ人気の高い一冊。付録として、訳者による作品精読の試み「残雪―夜の語り手」を併録した。 [目次] 阿梅、ある太陽の日の愁い 霧 雄牛 カッコウが鳴くあの一瞬 曠野の中 刺繡靴および袁四ばあさんの煩悩 天国の対話 素性の知れないふたり 毒蛇を飼う者 あとがき 残雪―夜の語り手 「曠野の中」を読む  近藤直子 [原題]布谷鳥叫的那一瞬間
  • 蒼老たる浮雲
    -
    1巻1,683円 (税込)
    遥かな風の夜の悪夢にも似た不思議な小説 隣り合せの家に住む二組の夫婦の奇妙な物語 隣り合せの家に住む二組の夫婦の奇妙な生活。異様なイメージと出来事が奔流のように押し寄せる、現代中国文学の最前衛、残雪の衝撃作。 棟続きの家に住む二組の夫婦。戸口の梶の花のにおいに心乱された更善無(コンシャンウー)は、隣家の女、虚汝華(シュイルーホア)に怪しげな挙動を覗き見られて動揺する。虚汝華の夫の老况(ラオコアン)は生活能力のない男で、しじゅう空豆を食べている。女房の好物は酢漬けきゅうり。家の中では虫が次から次へと沸いて出て、虚汝華は殺虫剤をまくのに余念がない。ある夜、梶の花の残り香の中で、更善無と隣家の女は同じ夢を見た……。髪の毛が生える木、血のように赤い太陽、夥しい蛾や蚊、鼠。死んだ雀。腐った花の匂い。異様なイメージと夢の中のように支離滅裂な出来事の連鎖が衝撃を呼ぶ中篇『蒼老たる浮雲』に、初期短篇「山の上の小屋」「天窓」「わたしの、あの世界でのこと」を収録。アヴァンギャルドな文体によって既存の文学の枠組を打ち破り、現代中国の社会と精神の構図を深い闇の底から浮かび上がらせた残雪(ツァンシュエ)作品集。 [目次] 蒼老たる浮雲 山の上の小屋 天窓 わたしの、あの世界でのこと―友へ― 訳者あとがき [原題]蒼老的浮雲
  • 黄泥街
    4.0
    1巻1,782円 (税込)
    「王子光(ワンツーコアン)」とは何か。滅びの街の物語 汚穢と奇怪な噂に満ちた街の奇妙な出来事 空から黒い灰が降り、ゴミと糞で溢れ、様々な奇怪な噂が流れる幻の街の出来事を、黒い笑いと圧倒的な文体で描いた世界文学の最前線。 黄泥街は狭く長い一本の通りだ。両側には様々な格好の小さな家がひしめき、黄ばんだ灰色の空からはいつも真っ黒な灰が降っている。灰と泥に覆われた街には人々が捨てたゴミの山がそこらじゅうにあり、店の果物は腐り、動物はやたらに気が狂う。この汚物に塗れ、時間の止まったような混沌の街で、ある男が夢の中で発した「王子光」という言葉が、すべての始まりだった。その正体をめぐって議論百出、様々な噂が流れるなか、ついに「王子光」がやって来ると、街は大雨と洪水に襲われ、奇怪な出来事が頻発する。あらゆるものが腐り、溶解し、崩れていく世界の滅びの物語を、言葉の奔流のような圧倒的な文体で語った、現代中国文学を代表する作家、残雪(ツァンシュエ)の第一長篇にして世界文学の最前線。残雪研究の第一人者でもある訳者の「わからないこと 残雪『黄泥街』試論」を併録。
  • 突囲表演
    4.0
    1巻1,650円 (税込)
    若き絶世の美女であり皺だらけの老婆、煎り豆屋であり国家諜報員――X女史が五香街(ウーシャンチェ)をとりまく熱愛と殺意の包囲を突破する!世界文学の異端にして中国を代表する作家が紡ぐ想像力の極北

ユーザーレビュー

  • カッコウが鳴くあの一瞬

    Posted by ブクログ

    最初、私は何が書かれているかわからなかった。なんど読み返してもわからない。諦めてページを進めるも、その空白が埋まることはなかった。
    けれど、面白かった。断片的ではあるが、私の中で世界が構築されていき、無秩序ではあるが、心地良かった。

    解説を読んで納得した。彼女(残雪)は、モノをモノそれ自体として描いていた。世界が世界と認識される前の、ありのままの世界として。
    一文学作品でありながら、世界の見え方を根底から覆すような、凄まじい力を持っている。

    0
    2025年06月15日
  • 黄泥街

    Posted by ブクログ

    一日中灰が降る街。
    街はあらゆる汚物に塗れ、雑多で騒がしく、住人は不潔で無知で、陰謀論と噂好きの怠惰人々。
    と想像してこんな感じかなと思っても、その何十倍も汚いのだろう。その始まりは、街の人々の行いから始まったのだから、人がこのような街にしたのだろうか。それとも街がそうなるような環境だったのだろうか。
    汚穢を気にせず、偶然から運命を妄想し、外からの権力を気にしながらも外に行こうとはしない。ぼんやりとなんだか浮かんできそうで、自分が浮かんできそうになって考えるをやめる。
    もし住人であったならもう逃げ出すしかないけれど、逃げ出すのさえ理由をつけて出ないだろう。
    この街は私の中にあるのだろうか。

    0
    2024年01月27日
  • 突囲表演

    Posted by ブクログ

    人の証言によって容姿や年齢が変わる、読んでいてもイメージが定まらない不気味さを覚えるX女史。ユニークな登場人物と荒唐無稽なストーリー。なるほど、カフカが引き合いに出されるのも理解できます。
    しかし、夢の中の情景のような荒唐無稽差ではなく、言葉数多めの状況説明なため、カフカのような不安定な情景が浮かんでこず、そこまで没頭できなかった。
    面白かったんだけど、ちょっと惜しい感じがしました。

    0
    2022年05月28日
  • カッコウが鳴くあの一瞬

    Posted by ブクログ

    噛み合わない会話
    あいまいな説明
    突然の場面転換

    あぁ、ぐちゃぐちゃの茶色の中に灰色が紛れ込み、埃となってまぶたを擦る……もうだめだ〜目が開けられない。

    しかし、
    それもやがて(「天国の会話」を過ぎた頃から)、
    当たり前にあるように何も考えずに、文字を呑んで行く。

    子どもの頃読んだ、つげ義春のマンガのような、読みたくないのに読みたくなる、不思議さ……。

    さあ、読んだから現世に戻ろうかなぁ。
    (巻末に訳者による「残雪一夜の語り手」という文章がある。まるで文学部の研究論文のようではあるが、なんとなくいま自分が読んでいたものが何であったのか、朧げにわかる……かもしれない、自信はない)

    0
    2024年02月08日

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