残雪のレビュー一覧

  • カッコウが鳴くあの一瞬

    Posted by ブクログ

    最初、私は何が書かれているかわからなかった。なんど読み返してもわからない。諦めてページを進めるも、その空白が埋まることはなかった。
    けれど、面白かった。断片的ではあるが、私の中で世界が構築されていき、無秩序ではあるが、心地良かった。

    解説を読んで納得した。彼女(残雪)は、モノをモノそれ自体として描いていた。世界が世界と認識される前の、ありのままの世界として。
    一文学作品でありながら、世界の見え方を根底から覆すような、凄まじい力を持っている。

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    2025年06月15日
  • 黄泥街

    Posted by ブクログ

    一日中灰が降る街。
    街はあらゆる汚物に塗れ、雑多で騒がしく、住人は不潔で無知で、陰謀論と噂好きの怠惰人々。
    と想像してこんな感じかなと思っても、その何十倍も汚いのだろう。その始まりは、街の人々の行いから始まったのだから、人がこのような街にしたのだろうか。それとも街がそうなるような環境だったのだろうか。
    汚穢を気にせず、偶然から運命を妄想し、外からの権力を気にしながらも外に行こうとはしない。ぼんやりとなんだか浮かんできそうで、自分が浮かんできそうになって考えるをやめる。
    もし住人であったならもう逃げ出すしかないけれど、逃げ出すのさえ理由をつけて出ないだろう。
    この街は私の中にあるのだろうか。

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    2024年01月27日
  • 突囲表演

    Posted by ブクログ

    人の証言によって容姿や年齢が変わる、読んでいてもイメージが定まらない不気味さを覚えるX女史。ユニークな登場人物と荒唐無稽なストーリー。なるほど、カフカが引き合いに出されるのも理解できます。
    しかし、夢の中の情景のような荒唐無稽差ではなく、言葉数多めの状況説明なため、カフカのような不安定な情景が浮かんでこず、そこまで没頭できなかった。
    面白かったんだけど、ちょっと惜しい感じがしました。

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    2022年05月28日
  • カッコウが鳴くあの一瞬

    Posted by ブクログ

    噛み合わない会話
    あいまいな説明
    突然の場面転換

    あぁ、ぐちゃぐちゃの茶色の中に灰色が紛れ込み、埃となってまぶたを擦る……もうだめだ〜目が開けられない。

    しかし、
    それもやがて(「天国の会話」を過ぎた頃から)、
    当たり前にあるように何も考えずに、文字を呑んで行く。

    子どもの頃読んだ、つげ義春のマンガのような、読みたくないのに読みたくなる、不思議さ……。

    さあ、読んだから現世に戻ろうかなぁ。
    (巻末に訳者による「残雪一夜の語り手」という文章がある。まるで文学部の研究論文のようではあるが、なんとなくいま自分が読んでいたものが何であったのか、朧げにわかる……かもしれない、自信はない)

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    2024年02月08日