ビジネス・実用 - 講談社学術文庫作品一覧

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  • ローマ建国伝説 ロムルスとレムスの物語
    3.0
    ローマ建国をめぐる英雄 ロムルスとレムスの生と死 大叔父の謀略により、生後すぐ捨子とされた王家の正系、双子のロムルスとレムス。2人は狼と牧人に養われ、長じて大叔父を討つが、ロムルスとレムスが覇を競い、ロムルスが勝者となってローマを興す――ローマ建国伝説である。この物語を、古代の史書等に拠りつつ、ロムルスの生涯を柱に再話。併せて物語を構成する諸要素を分析し、その意味を探る。
  • レヴィ=ストロース 構造
    3.0
    本書は、現代最高峰の人類学者クロード・レヴィ=ストロース(1908-2009年)の全貌を描いた決定版の誉れ高い1冊です。 ベルギーに生まれたレヴィ=ストロースは、フロイトやマルクスに触れた青年期を経て、南仏で高校教師になりました。その中で育まれた情熱を抑えられなくなった1935年にブラジルへ旅立ち、カデュヴェオ族やボロロ族、そしてナンビクワラ族の調査に乗り出します。その後、第二次世界大戦の勃発を受けて従軍しますが、1941年にはユダヤ人への迫害を回避するべくアメリカに亡命したレヴィ=ストロースに、ニューヨークで決定的な出来事が訪れました。それが言語学者ロマーン・ヤコブソン(1896-1982年)との出会いです。 のちに『音と意味についての六章』として公刊されるヤコブソンの講義の内容は、レヴィ=ストロースの中で若い頃からあたためられていた「構造」の概念と交錯しました。そうしてヤコブソンの勧めを受けて書き始めたのが、構造主義の誕生を告げる『親族の基本構造』であり、4年をかけて完成されたこの大著は1949年に刊行されることになります。 ここから旺盛な執筆活動を開始し、『人種と歴史』(1952年)、『悲しき熱帯』(1955年)、『構造人類学』(1958年)を生み出したあと、1959年にはコレージュ・ド・フランス教授に就任したレヴィ=ストロースは、一世を風靡した『野生の思考』(1962年)を発表すると、ついに全4巻に及ぶライフワーク『神話論理』(1964-71年)に着手しました。 その後も100歳で逝去するまで活躍し続けた偉大な人類学者が残した数々の仕事を、その生涯や時代との関係を描きつつ明快に解説してみせた本書は、1996年の刊行以来、概説書のスタンダードとして四半世紀にわたって読み継がれてきました。このたび、最新の書誌情報を追加するとともに、生前の著者と深い交流のあった小泉義之氏の書き下ろし原稿を併載した文庫版としてお送りいたします。 [本書の内容] 序 章 構造主義のエシックス 第一章 歴史の影のなかで 第二章 声とインセスト 第三章 旅の終わり 第四章 神話と詩のあいだに 第五章 幻想から思考へ 第六章 新石器のビルドゥングスロマン 1――南半球の森から 第七章 新石器のビルドゥングスロマン 2――北半球への旅 終 章 「構造」の軌跡 主要著作ダイジェスト キーワード解説 読書案内 レヴィ=ストロース略年譜 解 説 小泉義之
  • ウィーン物語
    3.0
    ハプスブルク家の支配のもと、血と力で600年の長きにわたり政治・経済・文化の要として欧州に君臨した、神聖ローマ帝国の都ウィーン。その都市と文化の調和はパリを羨望させた。芸術や学問にモーツァルト、クリムト、フロイト等々、数多の巨星を生んだウィーン文化の真髄を、聖堂、美術館、環状道路、カフェ、家具など都市空間に潜む感性に探る。
  • パリ物語
    3.0
    芸術の都、ファッションの都、食の都等と形容されるように、独自の多彩な文化を花開かせたパリ。人を魅了してやまないこの町の魅力の淵源とは何か。その名が紀元前のパリジ族に由来することをはじめとして、歴史を追いつつ、広場、門、駅、キャフェ等、都市空間を構成する諸要素にも注目し、パリの魅力がいかに醸成されたかをさぐる異色の文化史。
  • ベートーヴェン 巨匠への道
    3.0
    1792年、ウィーンの地に立った一人の青年音楽家は、その後いかなる道のりをたどって、「楽聖」となったのか。 師ハイドンはじめ同時代の音楽家たちとの出会い、《エロイカ》《第十交響曲》創作の謎、家族関係の苦悩と波乱の生活、各界の理解者や奇人らとの友情、そして恋人…… 音楽のあり方を根本から変え、傑作を生み出し続けたその生涯に、音楽評論の名手が全角度から光を当てる、珠玉の二十話。 【本書の主な内容】 青春のボン/ベートーヴェンの愛―婚約説をめぐって/第十交響曲のゆくえ/《シンフォニアエロイカ》の謎/ 「メルツェルさん、さようなら」―メトロノーム考/ 《ウェリントンの勝利》の顛末/べートーヴェンと宗教―フリーメーソンだったのか?/イギリスへの夢―ニートとの交際をめぐって/オペラのライヴァル―同時代人ウェーバー/「第三の故郷」ボヘミア/ヴァイオリン・コンプレックス/コントラバスとマンドリン/ダンス音楽への愛着/「歓喜」の背景―日本人とベートーヴェン など ※1987年刊『ザ・ベートーヴェン』(春秋社刊)の文庫化
  • 日本料理文化史 懐石を中心に
    3.0
    茶道の美と精進の思想―和の食、かくして極まれり。 「懐石」と「会席」は何が違うのか。 利休の「一汁二菜」「一汁三菜」はなぜ正統となったのか。 「乾杯」の日本的起源とは。 茶道から生まれた様式がいかにして日本料理の伝統を形づくったのかを、資料から丹念に考察する。 和の食、その精髄たる懐石料理の誕生から完成、そして後世への継承という歴史の中に、 日本文化のエッセンスを見いだす類稀なる論考。 【本書より】 何故、懐石という新しい料理の様式が生まれたのか。その歴史的前提を明らかにしなければならない。料理に限らず、文化は一つの様式に固定してしまうと、それを内部から突き破る革新が起こって、また新しい創造的な歩みがはじまる。いわば本膳料理の行き詰まりを打破する革新であったと、さきに懐石を位置づけたのだが、では、本膳料理とは何か― 【本書の内容】 唐菓子と柏餅―序にかえて 第一部 懐石誕生  懐石の誕生  近世公家の懐石  千家茶会記にみる懐石  茶書にみる懐石の心得 第二部 懐石以前  大饗料理  本膳料理  精進料理 第三部 料理文化の背景  中世の食文化点描―大工・荘園・都市  日本の食事文化における外来の食
  • ペルシア人の手紙
    3.0
    本書は、「三権分立」を説いた『法の精神』(1748年)で知られるフランスの思想家シャルル=ルイ・ド・モンテスキュー(1689-1755年)の名を一躍知らしめた記念碑的作品(1721年)の新訳である。 ボルドー近郊のラ・ブレードの城に生まれたモンテスキューは、ボルドー大学で法律を修め、弁護士になった。1709年にはパリに出て、さまざまな学者や文人と交流しつつ多彩な領域について知見を深めた。本書『ペルシア人の手紙』に見られる東洋についての記述は、この時の成果である。5年後の1714年には急逝した父のあとを継いでボルドー高等法院評定官となったモンテスキューは、その傍らで執筆活動を続け、7年後の1721年に匿名で本書を発表するに至る。 宮廷での政争に疲れたペルシアの貴族ユズベクが友人のリカとともにヨーロッパに出かけてパリに長期滞在する間、故国をはじめとする各地の知人・友人と交わした書簡の集成──このような体裁をとる本書は、たちまちベストセラーになり、発売後1年のうちに10版を重ねるほどの売れ行きを見せた。その魅力は、何よりもまず18世紀前半のヨーロッパ、とりわけフランスの社会を東洋人の目で活写し、風刺したところにある。人々の生活や風俗が具体的に描かれるとともに、時には政治について、時には宗教について語られていく。多岐に及ぶ話題を扱う架空の書簡は、当時の貴重な記録として読むこともできるだろう。 もちろん、フィクションとしての魅力も大きい。ユズベクがあとに残してきたペルシアの宮廷では腐敗・堕落が進み、やがて崩壊の危機に瀕する。ところが、遠く離れたヨーロッパに身を置くユズベクに与えられた手段は手紙しかない。当然のことながら、往信と返信のあいだで生じた出来事についての詳細は語られず、読む者はさまざまな想像をめぐらせながら、宮廷の行く末を見守ることになる。その読書体験は実に刺激的であり、本書がのちの書簡体小説の先駆として高く評価され、読み継がれてきたのも当然のことと言える。 本書は、実力者として知られる研究者が最新の研究を踏まえて取り組んだ、画期的な新訳である。平明な訳文、簡にして要を得た注と解説によって、読む者はたちまち18世紀を生きることができるだろう。今後のスタンダードとなるべく満を持して送り出される渾身の訳業。 [本書の内容] 登場人物 暦について 地名について 関連地図 序 文(1721年) 『ペルシア人の手紙』に関するいくつかの考察(1758年) ペルシア人の手紙 訳者解説 手紙一覧
  • 市川團十郎代々
    3.0
    2002年5月の十三代目市川團十郎襲名を控えて、江戸時代前期にさかのぼる市川團十郎家の歴史を、豊富な絵画資料と歌舞伎研究の第一人者の解説で読む。 歌舞伎を観ることは、役者を観ることである。そして、江戸歌舞伎の中で常に特別な位置を占め、最も大きく重い名前とランク付けされてきたのが、「市川團十郎」の名跡だった。並み居る役者の中から、まず卓越した天性と技量を持って抜け出した初代。親譲りの荒事を様式的に練り上げた二代目。「歌舞伎十八番」を公表して團十郎の名と権威を改めて確立した七代目。近代化の苦悩の中で歌舞伎界のリーダーとして縦横の活躍を見せた九代目。生来の美貌で戦後の歌舞伎を立て直した「海老さま」十一代目・・・。それぞれの時代を生きた個性豊かな十二人の團十郎を豊富な役者絵や舞台写真をまじえて活写する。「歌舞伎十八番」演目解説、團十郎デザインのいろいろ、市川團十郎家系図、関係年表も完備。巻末解説を、元国立劇場理事で十二代目と長く親交のあった織田紘二氏が執筆。〔原本:『市川團十郎代々』講談社刊、2002年〕
  • 最澄と天台教団
    3.0
    令和3年6月、天台宗の開祖である伝教大師・最澄の1200年大遠忌を迎える。平安時代に真言宗を開いた空海とならび、日本の仏教史で大きく語られる最澄の評伝と、その後の弟子たちの活動、さらに江戸時代に至るまで日本史の中で天台宗が果たした役割をコンパクトに学ぶ良質な概説書。 最澄が生きた時代、仏教は単に「信仰」の対象だっただけではなく、学問そのものであり、社会制度を支える思想であり、律令国家を成り立たせ、安定させる機能をも期待されていた。僧侶は思想・教養を備え、宗教的に訓練されたいわば国家公務員として位置づけられているなかで、最澄ほど、律令制度の中で十分に機能する僧侶のあり方を追究してやまなかった僧はいない、とすらいえるのである。そして比叡山からは、円仁・円珍をはじめ、良源、源信、徳川家の信任を得た天海らの高僧を輩出して、天台宗は国教にひとしい地位を占めた。また、最澄以来培われた一乗仏教の思想からは、いわゆる鎌倉新仏教が派生していったことから、比叡山・天台宗は「日本仏教の母胎」とも呼ばれる。最澄と天台教団を軸に、日本仏教の1200年の歴史を読み直す。巻末解説を、著者の子息で大正大学特任准教授の木内堯大氏が執筆。〔原本:教育社刊、1978年〕
  • 古代ローマの饗宴
    3.0
    キャベツ礼賛者カトー、最高の饗宴を催した解放奴隷トリマルキオ、「真似のできない暮し」をしたクレオパトラ、葡萄酒を愛した詩人ホラティウス、消化不良のキケロ……。養殖の海魚、肥えたヤマネ、乳育のカタツムリなど贅を極めた晩餐から、農夫の質実剛健な食卓まで、二千年前、大繁栄を謳歌した帝国の食文化とは。当時の食材やレシピも多数併録。 永遠なる美食の大帝国で、人々は何をどう食べ、飲んでいたのか? 監察官カトー、武将アントニウス、詩人ホラティウス、『料理書』のアピキウス、解放奴隷、農夫……。当時のレシピも併録 キャベツ礼賛者カトー、最高の饗宴を催した解放奴隷トリマルキオ、「真似のできない暮し」をしたクレオパトラ、葡萄酒を愛した詩人ホラティウス、消化不良のキケロ……。養殖の海魚、肥えたヤマネ、乳育のカタツムリなど贅を極めた晩餐から、農夫の質実剛健な食卓まで、二千年前、大繁栄を謳歌した帝国の食文化とは。当時の食材やレシピも多数併録。 私はなにを語るのでしょう? むろんそれは古代ローマの社会生活や習慣であり、ローマ人の時間の過ごし方や、楽しみ方といったものです。友達と会うこと、愛する人と睦まじく食事をすること、好物の料理を味わうこと。結局のところ、今日私たちがやっていることとそんなに違いはありません。宴会でなにがどのようにふるまわれたかも調査ずみです。また巻末では、いくつか古代ローマのレシピを紹介します。皆様方のお国には、おいしい魚と肉、ハチミツ、それに、ローマ人が好んで用いた品々がたくさんある。だから再現はきっと可能なはずです。――<「学術文庫版によせて」より抜粋> ※本書は1991年、平凡社より刊行された『古代ローマの饗宴』を元に改変をほどこしました。
  • 地中海世界 ギリシア・ローマの歴史
    3.0
    古代ローマ史の泰斗による、古代地中海世界の歴史。講談社現代新書で好評を博したシリーズ「新書西洋史」全8冊のうちの第2巻として刊行されたが、単なる概説書にとどまらず、古代史への新しく、大きな視座を提供した、定評ある意欲作。 本書は、ほぼ2000年にわたるギリシア・ローマの歴史を扱うが、「ギリシア」と「ローマ」という二つの歴史を扱っているのではない。「ギリシア・ローマ」という一つの世界の一貫した歴史として追及する。 現在の西半球の主要な歴史の担い手とその文化は、地中海世界を母胎として生み出されたものであった。ラテン的・ゲルマン的世界、ギリシア的・スラブ的世界、オリエント的・アラブ的世界は、地中海世界の崩壊の中から生み出された第二次的世界であり、キリスト教的東西ヨーロッパ文明、イスラム的アジア文明は、地中海世界の転生の中から生まれたものだった。地中海世界は、それらすべてのものの出発点であり、母胎であり、故郷なのである。巻末解説を、東大名誉教授・本村凌二氏が執筆。〔原本:『新書西洋史2 地中海世界――ギリシアとローマ』講談社現代新書、1973年〕
  • 自分史の書き方
    3.0
    これからの人生(セカンドステージ)をデザインするためになにより必要なのは、これまでの人生(ファーストステージ)を見つめ直すことである。そして、そのための最良の方法は自分史を書くことである。 2008年、シニア向けコースとして開講された「立教大学セカンドステージ大学」。著者が受け持った「現代史の中の自分」には数十人のシニア世代の受講生が集まった。 自分史を書かないと自分という人間がよくわからないはずだという信念に基づく本書は、自分の年表を作ること、なにを書くべきか、長い文章を書き続けるコツなど、自分史にまとめるための実践理論を軸に、それに応えた受講生たちの自分史を引用しながら、世の中の広い読者に向けた1冊。
  • 英雄伝説の日本史
    3.0
    歴史を彩る「英雄」は、どのように語り継がれ、創作され、人々の記憶と歴史認識のなかに定着してきたのだろうか。特に、政争や戦乱の敗者が伝説を介し、復活し、再生する過程を、中世から近世、近代への長いスパンでたどっていく。その「蘇り方」は決して直線的ではなく、多くの屈折と虚像を伴うが、その道筋を追うことが、新しい歴史学の楽しみとなる。 たとえば、安倍晴明のライバル蘆屋道満や、酒呑童子退治の坂田金時ら、実在の疑わしい英雄は、歴史のなかでどのようにリアリティーを吹き込まれていったのだろうか。 そして、平将門や菅原道真らの怨念への畏怖が語らせる「敗者の復活」。坂上田村麻呂や藤原利仁、源頼光に託された、「武威の来歴」の物語。鎮西八郎為朝や源義経が、西国や東北、さらに大陸へと伝説を拡大させた「異域の射程」。本書はこれらを三つの柱とし、伝説のなかに中世史の再発見を試みる。江戸の浄瑠璃や歌舞伎、往来物から、近代の国定教科書まで、伝説の変貌の過程から「歴史の語られ方」を豊かに汲み上げる。〔原本:『蘇る中世の英雄たち――「武威の来歴」を問う』中公新書、1998年〕
  • イミタチオ・クリスティ キリストにならいて
    3.0
    著者のトマス・ア・ケンピスは14世紀終盤ドイツで生まれ15世紀後半まで生きた修道士。神秘思想家として数々の著作を残している。その著作は文章のわかりやすさ、章節の短さなどから普通の庶民にとって読みやすいこと、また救いに繋がる安らぎと瞑想を誘う深みを与えてくれることから、中世以降現代まで『聖書』に次ぐ多くの読者を獲得したと言われている。 内容構成は全四巻、章としては114章を数えるが、それぞれの章は数ページからなるものが多く、どの章も深い味わいを持っている。「キリストにならい、世の空しいものを軽んずべきこと」「自身について謙遜であるべきこと」「過度の親しみを避けるべきこと」「艱難の効用について」「心配ごとはすべて神にゆだねるべきこと」「自愛が、最高善からとりわけ人を引き離すこと」「誰がいっているのかということよりも、何がいわれているかに心を用いよ」など、生き方の知恵としてキリスト教徒でない日本人の心にもひびき、参照すべき項目が多い。
  • クラシック名曲の条件
    3.0
    ≪モーツァルトだからといって、ことごとくが「名曲」というわけではない≫日頃、何となくわかっているつもりでも、よく考えてみると曖昧な点が多い、クラシック界「名曲」の条件。傑作と呼び名の高いあの曲、シンフォニーは、果たして本当に「名曲」なのか。「一度聴いたら忘れられない」曲には、どんな仕掛けがあったのか。時も国も超えて、未来へと愛され続ける、楽曲の力はどこに秘められているのか。ベートーベン研究家として名高い、文豪ロマン・ロラン(1866~1944)、フランスの大批評家クロード・ロスタン(1912~70)、ブルックナー研究の大家ロベルト・ハース(1886~1960)や、作曲家クロード・ドビュッシー(1862~1918)、指揮者フルトヴェングラー(1886~1954)などの楽曲的考察を採取。「第九」「雨だれ」「ニーベルングの指環」など誰もが知る12曲を、創作エピソードや譜面から読み解きます。名著『クラシックの条件』(1982年 中公新書)の復刊。内容紹介ショパンは、情緒に流されて構築の計算を忘れるようなタイプのロマンチストではない。それどころか、計算がまったく表に出ないほどに巧妙な、洗練の極みをいく絶妙のバランス感覚の持ち主なのである。≪雨だれ≫の中間部に認められた「膨張」。この膨張の計算の的確さに気づく時、ショパンの情緒のふくらみが、驚くべき感性の制御のもとにあることが見えてくるのである。――――「≪雨だれ≫の構造」より
  • 中世ヨーロッパの結婚と家族
    3.0
    学術文庫ですでに、『中世ヨーロッパの城の生活』、『中世ヨーロッパの都市の生活』、『中世ヨーロッパの農村の生活』、『大聖堂・製鉄・水車』、『中世ヨーロッパの家族』、『中世ヨーロッパの騎士』が好評を博している、ギースの「中世ヨーロッパシリーズ」の7冊目。本作では、人間の社会を構成する最も基本的な単位、「家族」と、その核心をなす「結婚」から、中世の社会史を掘り下げる。初訳。古今のあらゆる社会において、「家族」は、人が食べ、学び、経済生活を送る普遍的な場であったが、同時に、常に変化し続けるものでもあった。今日の家族は、ヨーロッパ中世が生み出した歴史の産物なのである。古代には、貴族の一夫多妻は当然であり、ローマ時代の「ファミリア」は、血族だけでなく奴隷や召使いをも含んでいた。中世の1000年間に、「解消不能な一夫一婦制」という原則はどのように定着し、「夫婦と子どもたちが一つの家に住む」という家族観はなぜ生まれたのか。14世紀の大災厄、黒死病以降に、家族のあり方や、子どもへの接し方はどう変わったのか。貴族や中流階級、農民や職人など、様々な人々の「結婚」と「家族」の進化の道筋を丹念に描く。[原著:Frances and Joseph Gies, Marriage and the Family in the Middle Ages,1987 ]目次/第一部 起源 第一章 歴史家、家族を発見 第二章 原点――ローマ人、ゲルマン人、キリスト教/第二部 中世前期 第三章 ヨーロッパの家族――五〇〇―七〇〇年 第四章 カロリング朝時代 第五章 アングロ・サクソン時代のイングランド/第三部 中世盛期 第六章 十一世紀の家族革命 第七章 十二世紀――新しいモデル 第八章 黒死病以前の農民たち――一二〇〇―一三四七年 第九章 貴族の系譜――長子相続がもたらす危機 第一〇章 中世の子どもたち/第四部 中世後期 第一一章 黒死病の影響 第一二章 中世後期の農民の家族――一三五〇―一五〇〇年 第一三章 イングランドの土地持ち紳士階級の家族 第一四章 十五世紀のフィレンツェ――商人の家族/第五部 中世末期 中世の終わり 第一五章 遺産/訳者あとがき
  • 日本語と西欧語 主語の由来を探る
    3.0
    「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」(川端康成)は英語で「The train came out of the long tunnel into the snow countory」(サイデンステッカー)。世界を表現する際の「視点」 の違い。英語は「神の視点」を得ることによって主語の誕生を準備したが、「虫の視点」を持つ日本語にはそれは必要なかった。英語の歴史を踏まえ両言語と文化の違いを考察。
  • 元号通覧
    3.0
    「明治」は10回も元号候補になっていた――。「大化」にはじまり「大正」に至るまでおよそ1300年、240を超える元号をすべて網羅しています。『書経』や『文選』などの出典や改元の理由はもとより、候補に挙がった元号も出典とともに示した本書は、まさに日本の元号が一望できる、元号の辞典といえるものです。 世にも稀なこの一冊を執筆した人物こそ、文豪森鴎外(1862-1922年)でした。森鴎外、本名森林太郎は、陸軍軍医の最高位にあたる陸軍軍医総監、陸軍省医務局長を辞したのち、1917年に帝室博物館総長兼宮内省図書頭として再び官職につきました。歴代天皇の諡号(おくりな)の出典を考証した『帝謚考』(1921年)を刊行したあと、文字通り最後の命を燃やしながら取り組んだ仕事が本書(原題『元号考』、文庫化にあたって改題)です。実に病没する数日前まで手を入れ続けたものの未完に終わりますが、晩年に歴史小説さらに史伝に転じた鴎外の考証学的執念もうかがえます。 本書をひもとけば「明治」同様、「大正」も採用までに3回、候補になっていることがわかります。また15世紀に初めて候補になった「明治」に対し、江戸時代の元号「天明」や「天保」は古代から繰り返し提案されていることもうかがえます。人気の元号候補はなにか、それはどの典籍からの引用なのか。あるいは時代によって典拠の流行りすたりがあるのか。即位以外に大災害や飢饉、疫病などでも改元されますが、いつどんな理由で改元されたのか……。『天皇の影法師』(1983年)で本書に光を当てた猪瀬直樹氏による解説とあわせて、元号をめぐる知的好奇心を存分に満たしてくれる一冊です!
  • 江戸東京の庶民信仰
    3.0
    民間信仰や呪術が息づくのは、山深い農村ばかりではない。むしろ大都市は、人々の願望が渦巻き、多彩な信仰を生み出している。小石川にまつられた貧乏神、浅草と新宿の「カンカン地蔵」、豪徳寺の招き猫伝説、「いもあらい」の地名と一口坂の関係、都内に11を数える「飛行機の神・仏」など、古文書などの記述資料はもちろん、古老などへの聞き取りを丹念に行った、1970年代から80年代の東京の口碑記録としても貴重な一書。
  • 観音さま
    3.0
    その相(すがた)は、仏から菩薩まで三十三変化。苦しみの中で名を唱えれば、即時に現れ、深い智慧で病やすべての辛苦から救ってくれる……。古来、インド、中国、東南アジア、日本で救世主として愛され続けてきた<観音さま>。そもそも観音はいつ、どこで生まれたのか。中国文化や日本文化に果たした役割は? 歴史的背景や、様々な観音像を検証し、法華教の経典をひもときながら、「観音信仰」の真髄を探る。
  • 興亡の世界史 イタリア海洋都市の精神
    3.0
    ヴェネツィア、アマルフィ、ピサ、ジェノヴァの四大海洋都市のほか、南イタリアのガッリーポリ、モノーポリなど、海に開いた都市の繁栄の歴史を探る。中世の地中海世界では、民族相互の争いと交流のなかで、ローマ、ビザンツはもちろん、イスラーム世界からもさまざまな先進文化がヨーロッパへ流れ込んだ。実際に都市を歩き、建物、街路、広場、港の風景を観察しながら、海洋都市の生活空間の歴史と現在を読み解いていく。
  • 新版 法然と親鸞の信仰
    3.0
    「信仰というものは、生きるために必要な、日々に欠くことの出来ない、実際に役立つものでなくてはならぬ。心の平和のためにも、また身体をいわゆる肉弾となして、実生活にぶっ突かって行く時にもなくてはならない最後の『拠りどころ』でなくてはならぬ」と考える著者が、法然と親鸞の信仰について、情熱をかたむけて説いた名著。法然「一枚起請文」の奥義、歎異抄の全てを語りきった!
  • 歴史のかげに美食あり 日本饗宴外交史
    3.0
    古来、「歴史のかげに女あり」と言われる。妖艶な美女が歴史を動かしてきた例は少なくない。だが、大事件、外交の舞台裏でより重要だったのは、いかに饗宴を準備するか。相手を懐柔するために、明治の主役たちが「おもてなし」のため頭を悩ませた美食とは。史料から明治の世界を生き生きと描き、52歳の若さで惜しまれつつ逝ったノンフィクション・ライター黒岩比佐子が、12品のフルコースで、歴史ファンをご接待!
  • 日本の土偶
    3.0
    土偶はどこから来て、どのように変化したのか。本書では多様な土偶を年代・地域別に体系化し、形態・特徴・出土状況などを300点以上の図版で立体的に解説。さらに髪型から埋葬まで、縄文時代の文化と信仰を探り、海でつながれた周辺地域の調査から土偶の起源を追究する。土偶研究の黎明期を導いた研究者による伝説的名著、待望の文庫化!(序文 サイモン・ケイナー)
  • 二人であることの病い パラノイアと言語
    3.0
    フロイト精神分析を構造主義的に発展させ、20世紀の思想潮流にあって、確固たる地位を占めたラカン。本書は、ラカン最初期の1930年代に発表された五篇の論考を収録。「症例エメ」「≪吹き込まれた≫手記」「パラノイア性犯罪の動機」の三篇は、症例報告の記録性があり、明澄ですらある。現代思想の巨人の哲学の出発点を探るための必読書である。
  • アルキビアデス クレイトポン
    3.0
    ソクラテス哲学の根本を伝える重要な対話篇、初の文庫版で新訳が登場! 『アルキビアデス大』または『第一アルキビアデス』と称されてきた『アルキビアデス』は、一個人としての「この私」と捉えられる「自己」を認識すること、さらには「人間一般」を認識することを目指し、魂と徳の探究に乗り出す。短篇『クレイトポン』では、その魂と徳の探究への疑問が提示され、ソクラテス哲学の極限に向かって対話が進行していく。
  • 再発見 日本の哲学 北一輝――国家と進化
    3.0
    独自の社会主義論と国家論を展開し、二・二六事件の蹶起将校たちの思想的指導者だった北一輝。国体論を批判し、当時の名だたる憲法学者たちとことごとく対決した彼の思想とは、いかなるものか。伊藤博文、有賀長雄、美濃部達吉、井上毅、穂積八束などなど、近代日本の礎となった思想との対抗のなかに北を位置づける快著!
  • 日本人と地獄
    3.0
    古代インドに発祥する「地獄」は、この風土でどのような変容をとげたのか? 仏教典籍、『霊異記』、冥界めぐり譚、絵草紙、和歌・川柳や能・狂言などを広く渉猟して、地獄の構造とイメージを読み解く。また、火山・温泉や飢饉・災害など、現世にある地獄を史料に探る。天上の極楽浄土の対極には、地下の恐怖世界が広がっている。読む「地獄事典」です。
  • 武士の誕生
    3.0
    草深い辺境から「都の堕落した貴族」を倒すために現れたのか、それとも武芸を生業とした貴族社会の一員だったのか――。近年活況を呈する武士論の二つの見方を統合し、「武士誕生」の道筋を描く。古代の蝦夷との戦争が坂東の地に蒔いた「武の遺伝子」は、平将門、藤原秀郷らによって育まれ、武家の棟梁たる源義家、頼朝らによって大きく開花した。
  • 西田幾多郎の生命哲学
    3.0
    純粋経験、自覚、場所、絶対無、行為的直観、絶対矛盾的自己同一……。一見、難解なことばにみずからの思索を託しながら、西田が終生追い求めたひとつの問題とは何だったのか。ほぼ同時代を生きたベルクソンとの交錯に着目し、ひいてはドゥルーズら現代思想につながる「生命の哲学」として西田哲学を再評価し、注目され続ける、俊秀の記念碑的力作。
  • カント「視霊者の夢」
    3.0
    理性によって認識できないものは、形而上学の対象になりうるか――。哲学者カントが、同時代の神秘思想家スヴェーデンボリの「視霊現象」を徹底的に検証。当時高い世評を得ていた霊能者へのシニカルかつ鋭利な批判を通して、人間の「霊魂」に対する哲学者としての見解を示す。『純粋理性批判』に至るステップとなった、重要著作。
  • ベルギー大使の見た戦前日本 バッソンピエール回想録
    3.0
    ことしは日本とベルギーが国交を結んでから150年。その間、バッソンピエールが在任した18年間は、日本の運命を決する致命的な諸契機が、歴史のページに次々に刻みこまれていった時代でした。大正天皇の病気、関東大震災、ワシントン、ロンドン両条約における軍縮問題、満洲事変と国際連盟脱退、相次ぐ要人の暗殺、五・一五事件と二・二六事件……。それらを外交官としてつぶさに観察した希有な記録、それが本書です。
  • 中央アジア・蒙古旅行記
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    13世紀の中頃、ヨーロッパ人が相次いでモンゴリアの奥深く入っていった。教皇インノケンチウス4世の命を受け、あるいはルイ9世の書簡を携えて、「地獄(タルタルス)の住人」の地へと中央アジアの乾燥帯を苦難と危険を道連れに歩みゆく修道士たち。勢力を西へ拡大中のモンゴル帝国で、また本営カラコルムで、彼らは何を見、誰に会い、どんな宗教や風俗に触れたのか。2人の修道士それぞれの見聞記。
  • 興亡の世界史 大日本・満州帝国の遺産
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    東京帝大の学生時代は北一輝に心酔し、官界に進んでからは革新官僚として満州の経営に辣腕を振るった岸信介。敗戦後はA級戦犯容疑から総理の座に昇り詰め、高度成長を発進させて昭和の妖怪とも呼ばれる。かたや教師から立身のため満州国軍人となった青年は、戦後、韓国軍の中で頭角を現し、クーデタで政権を掌握。独裁者となって漢江の奇跡と呼ばれる高度成長を達成する。朴正煕と岸信介、二人の揺籃の地、満州国の遺産を問う。
  • 交易する人間(ホモ・コムニカンス) 贈与と交換の人間学
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    本書の主題は、具体的事例に則して言えば、贈与と交換の社会哲学である。より正確に言えば、本書は、贈与と交換を峻別する。そうすることで、近代に出現した市場経済、そして特殊近代的な資本主義経済の歴史的位置づけ、ひいてはそれらがかかえる歴史的限定性を明らかにできるからである。…… 要するに、本書は、人類が歴史的に経験してきた種々の相互行為を観察することを通して、社会存在としての人間の根源に迫る試みである。
  • 天才数学者はこう解いた、こう生きた 方程式四千年の歴史
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    ピタゴラス、アナクサゴラス、ユークリッド、アルキメデス、アル=フワリズミ、タルターリャ、フェラーリ、カルダノ、ヴィエト、デカルト、ジラール、ハリオット、ウォリス、ニュートン、ラグランジュ、ガロア、アーベル……。小数、負の数、虚数、超越数……。方程式との格闘は、数のフロンティア拡大の歴史でもありました。方程式の視点から4000年の数学史を読み解く絶好の入門書です。
  • 刺青・性・死 逆光の日本美
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    刺青、それは閉ざされた美である。暗黒のゆえに極彩の美である。秘めよ、秘められよ、開かれてはならない。いつの日にも俗物への、体制への、衝撃であらねばならない――。生命に彫り込まれた虚構、解脱を拒否した無頼の詩語。それはいかにして芸術に高まったのか。異端美の系譜を追究し続けた著者による、日本刺青の精神史。
  • 日本の神々
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    イザナギ、イザナミ、アマテラス、そしてスサノヲ。一地方の霊格として独自の性格や尊崇を有していた神々は、どのようにして日本神話を代表する神格を獲得していったのか。歴史学と民族学・比較神話学という二つの潮流をふまえ、素朴な「原像」が宮廷神話へと発展していった過程を追い、信仰や祭祀の形成との関係を通して古代国家成立の実像に迫った日本神話学、不朽の一冊。
  • 史的唯幻論で読む世界史
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    古代ギリシア文明は黒人の文明であり、古代インド文明を築いたとされるアーリア人は存在しなかった――。ヨーロッパが語る白人中心主義の歴史観が彼らの誇りを支え、今なお世界を覆っている欺瞞と危うさを鮮やかに剔抉、その思想がいかにして成立・発展したかを大胆に描き出す。史的唯幻論が、白人によって作りあげられた「幻想の世界史」を鋭く告発する。
  • 美学
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    「美学(aesthetica)」という概念を創始し、後世に決定的な影響を与えた西洋の古典、待望の全訳。ライプニッツとクリスティアン・ヴォルフの影響のもと、フランクフルト大学で行われた講義を基にしてラテン語で書かれた本書は、人間の認識を「悟性的認識」と「感性的認識」に分け、後者を扱うのが「美について考察する学」、すなわち「美学」だと明言した。あらゆる美学(エステティック)は、ここから生まれた。
  • 明治日本美術紀行 ドイツ人女性美術史家の日記
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    訪日5度、滞日延べ10年余――ケルン東洋美術館の生みの親フリーダ・フィッシャー。彼女は、竹内栖鳳、黒田清輝、井上馨、田中光顕、住友吉左衛門、根津嘉一郎、原三渓ら美術家・蒐集家と交流して日本美術への認識を深め、それらを育んだ日本人の気息に触れんと努めた。本書は彼女の日本日記であり、近代日本美術界の消息を伝える貴重な資料でもある。待望の書、初の全訳成る。
  • 日本語と事務革命
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    「問題は、日本語をどのようにして機械にのせるかであった。今日、OAすなわちオフィス・オートメーションがすすみ、各種の事務機械が大量に導入されている。日本語の機械化についても、ワープロの出現によって事態はおおきくかわった。しかし、じっさいは問題のかなりの部分は先おくりされているだけで、本質的にはなんにも解決されていないのだ。」(本文より) (講談社学術文庫)
  • 火山列島の思想
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    「日本」になる遥か前から、この列島には火山があった。いにしえよりこの土地に培われ息づいてきた想像力のあり方から、私たちの精神は何を受け取り、何を忘却しているのか。忘れてなお、何に縛られ、何から自由になりたいのか。ことばによって残された心の断片に渾身の学問的想像力で肉薄する、日本古代文学研究史上の記念碑的作品にして、無二の名著。
  • 茶道名言集
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    わび・さび、数寄、一期一会――。〈茶の精神〉は現代に生きる我々の日常生活にも息づいている。本書は、茶道書の古典から名人の言葉や逸話を豊富に集めて解説を施した。千利休をはじめ、村田珠光、武野紹鴎、そして岡倉天心まで、茶に生きた人々は茶に何を見出し、何を求めたのか。そこに現れる、茶道の心とは何か。平易な言葉でつづる茶道入門。(講談社学術文庫)
  • 夢中問答集
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    天龍寺を開山し、造園の妙を各地に施した、悟達明眼の夢窓国師は、北条家、足利家、後醍醐天皇からも深く帰依され、世に7朝の帝師と仰がれた。在俗の政治家、足利尊氏の弟直義(ただよし)の、信心の基本、大乗の慈悲、坐禅と学問などの問いに答えて、欲心を捨てることの大切さと仏道の要諦を指し示す。無礙自在の禅者の声が、時空を超えて響きわたる。(講談社学術文庫)
  • ドゥルーズの哲学 生命・自然・未来のために
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    「差異」を生きる、とはどういうことなのか。ドゥルーズの単著を深く読み込んだ上で、「微分的なるもの」にその哲学の本質を見いだした、記念碑的名著。『差異と反復』は、たんに有名な現代思想の一つにすぎないのではない。分子生物学などの知見を取り込みつつ、「生きることそのもの」を哲学した傑出した著作なのだ。ドゥルーズの思考によりそい、新しい哲学と倫理のあり方を示した快著の文庫化なる! (講談社学術文庫)
  • ある神経病者の回想録
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    「神」の言葉を聞き、崩壊した世界を再生させるために女性となって「神」の子を身ごもる……そんな妄想に襲われた一人の男は、みずからの闘いを生々しく書き綴った。それは、1903年に公刊されて以来、フロイト、ラカン、カネッティ、ドゥルーズ&ガタリなど、幾多の者たちに衝撃を与え、20世紀の思想に決定的な影響を及ぼした稀代の書物である。世界を震撼させた男が残した壮絶な記録を明快な日本語で伝える決定版。(講談社学術文庫)
  • スッタニパータ [釈尊のことば] 全現代語訳
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    かくしてひとり離れて修行し歩くがよい、あたかも一角の犀そっくりになって――。『法句経(ダンマパダ)』とともに原始仏典の中でも最古層とされる『スッタニパータ』。最初期の仏教思想と展開を今に伝えるこの経典は、釈尊に直結する教説がまとめられ、師の教えに導かれた弟子たちが簡素な生活のなかで修行に励み、解脱への道を歩む姿が描き出される珠玉の詞華集である。2400年前の金口直説を平易な現代語で読む。(講談社学術文庫)
  • ケガレ
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    民間信仰において、ケガレを祓う儀礼は頻繁に多様な形で行われていた。人間の不幸は、ケガレ=不浄に原因があると考えられ、生活の隅々にまでその指標が浸透していたのである。死=黒不浄、出産・月経=赤不浄、罪や病、境界・峠という空間等、様々な民俗事例にあらわれたケガレ観念の諸相を丹念に追い、信仰行為の背後にあるものを明らかにする。(講談社学術文庫)
  • 日本仏教 思想のあゆみ
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    聖徳太子、南都六宗、最澄・空海、鎌倉新仏教……。歴史的に仏教の展開の最終段階に位置し、高度な思想を展開した日本仏教。唯識や華厳の世界観、最澄や空海の即身成仏の思想、法然、親鸞、一遍らの念仏、道元の坐禅観、日蓮の唱題──。各宗派祖師の思想の概略をわかりやすく明らかにしながら、日本人のものの見方及び考え方の特質を描き出す一冊。(講談社学術文庫)
  • 戦国の作法 村の紛争解決
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    中世の村はひたすら明るかったのか。あるいは村の隅々にまで戦国大名の支配が浸透していたのか――実態は「自力」のさまざまな発動が織りなされる熟した社会であった。村同士の争い事の際の言葉戦いという挑戦の作法、暴力の回帰や反復を避けるための人質・わびごとの作法、また犯罪解決のための自検断の作法などを検証し、中世の村の実相に迫る。(講談社学術文庫)
  • 童謡・唱歌の世界
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    覚えやすく歌いやすいが、堅苦しさのある「唱歌」。当代一流の詩人と作曲家が子どもたちのために競作した、世界に誇るべき文化財「童謡」。対立しつつも共存していた唱歌と童謡の魅力とは。大正から昭和初期のラジオ番組「子どもの時間」では、どんな歌が流れていたかを分析し、その頃に子ども時代を過ごした人々の愛唱歌をアンケート調査するなど、その歴史と人間模様をまじえて、日本の音楽文化と言語文化を再発見する。(講談社学術文庫)
  • 花祭
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    修験者たちによって天龍川水系に伝えられ、中世に始まるとされる民俗芸能「花祭」。湯を沸かし神々に献じ、すべてを祓い清める冬の神事に、人々は夜を徹して舞い続け、神と人と鬼とが一体となる。信仰・芸能・生活・自然に根ざした祈りを今に伝える奥三河地方の神事を昭和初頭、精緻に調査し、柳田や折口にも影響を与えた、日本民俗学の古典的名著。(講談社学術文庫)
  • 十八史略
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    神話伝説の時代から南宋滅亡までの中国の歴史を1冊に集約した『十八史略』。「臥薪嘗胆」「鶏鳴狗盗」「三顧の礼」など、そこには人生を生きる知恵が煌めいている。太公望、韓信、孫ピン、諸葛孔明、関羽をはじめ躍動する多彩な人物、飛び交う権謀術数、織りなされるさまざまな悲喜劇――。簡潔な記述で面白さ抜群、中国の歴史・文化理解のための必読書。(講談社学術文庫)
  • 政治学への道案内
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    「政治学は何の役に立つ?」 幾度もの改訂を重ねながら読み継がれてきた伝説の「教科書」に著者最後の増補原稿を加え、完全版として待望の復刊。 政治学におけるあらゆる分野の基礎知識を平易に解説する本書は、統治の学から自治の学へととらえなおす視点で貫かれ、入門書でありながら我々にとっての政治学の実用価値を知らしめる。復権、市民教養! (講談社学術文庫)
  • ハイデガー 存在の歴史
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    存在が荒々しく立ち現れると同時に隠蔽され忘却されていった古代ギリシャ以来、存在把握は劇的に変動し、現在、忘却の彼方に明滅するものとしてのみ存在は現前する──。存在論の歴史を解体・破壊し、根源的な存在の経験を取り戻すべく構想された『存在と時間』の成立過程を追い、「在る」ことを捉えようとした、ハイデガーの思想の精髄に迫る。(講談社学術文庫)
  • 訳注『淮南子』 増補改訂版【電子書籍】
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    淮南王劉安(前一七九~前一二二)が招致した数千の賓客と方術の士に編纂させた思想書『淮南子』。老荘思想を中心に、儒家・兵家・法家・墨家思想も取り入れた紀元前の中国における、知の百科全書である。前漢の武帝に愛秘されたが、実際はその思想性よりも芸文性の高さが評価されていた。魅力溢れる『淮南子』の全貌を、コンパクトな形で紹介する。(講談社学術文庫)
  • 世界史への扉
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    疫病が世界を一体化した。鎖国は一七世紀の世界的流行だった。歴史上には各地にいくつもの<ルネサンス>があった――。モノとヒトの組み合わせから世界史の同時性を探り、歴史学の内外で唱えられる新視角を紹介・検証する小論集。西欧の歴史を普遍のモデルとせず、多様性と日常性に着目しながら、現代の激動を解読する「歴史への感受性」を磨く。(講談社学術文庫)
  • 武士道
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    “彼は「侍(さむらい)」である”という表現が今日でもしばしば使われる。では、侍とはいかなる精神構造・姿勢を指すのか――この問いから本書は書き起こされる。主従とは、死とは、名と恥とは……。『葉隠』『甲陽軍鑑』『武道初心集』『山鹿語類』など、武士道にかかわるテキストを広く渉猟し、読み解き、日本人の死生観を明らかにした、日本思想史研究の名作。(講談社学術文庫)
  • 狂気と王権
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    元女官長の不敬事件、虎ノ門事件、田中正造直訴事件、あるいは明治憲法制定史、昭和天皇「独白録」の弁明など、近代天皇制をめぐる事件に「精神鑑定のポリティクス」という補助線を引くと、いったい何が見えてくるか。「反・皇室分子=狂人」というレッテル貼り。そして、「狂気の捏造」が君主に向けられる恐れはなかったのか? 独自の視点で読み解くスリリングな近代日本史。(講談社学術文庫)
  • ドイツ貴族の明治宮廷記
    3.0
    明治中期、宮中近代化のために招聘され、新宮殿での憲法発布式典を見届けて帰国したお雇い外国人、モールの日本滞在記。威厳ある若き天皇への謁見、知性と品位を備えた皇后への賞讃、「宮中衣裳問題」での伊藤博文との衝突など、欧化を急ぐ立憲国家成立期の宮廷社会を知る必読文献。さらに関西、箱根、日光、磐梯山への旅など、各地の風物も豊かに描く。(講談社学術文庫)
  • 満州事変
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    1931年9月18日、奉天郊外の柳条湖で南満州鉄道の線路が爆破された。この事件を契機に、大陸での勢力拡大を目論む関東軍は満州(現・中国東北部)全土を占領する。膨大な史料の精緻な読みをとおして、第一次山東出兵、張作霖爆殺事件から、関東軍の暴走、満州国建国、国際連盟脱退まで、当時の状況を詳細に再現、近現代史の問題点を抉剔する。(講談社学術文庫)
  • 中国人の機智 『世説新語』の世界
    3.0
    諧謔性に富んだ反射神経、自負心の誇示、侮蔑への鮮やかな反撃……。一筋縄ではいかぬ誇り高き人々の不退転の反俗・反逆の精神を切れ味鋭い機智に乗せて演じきった舞台、それが『世説新語』の世界である。内乱、戦争、めまぐるしい王朝交替。暗く険悪な乱世を生き抜く魂は、悲哀、憂鬱を乗り越え、豪放洒脱な生き様は究極の言語表現を生み出した。(講談社学術文庫)
  • 最後のロシア皇帝ニコライ二世の日記
    3.0
    帝政ロシア最後の皇帝となったニコライ二世。その生涯は歴史の流れの大転換を一身に体現するものであった。訪日の際の大津事件、日露戦争、第一次世界大戦への突入、革命の進行に伴う退位と抑留等、歴史的事件の渦中で彼は何を見、どう動いたのか。処刑の直前まで書き続けられた日記から、日常の政務、革命への態度、人間関係、日本観などを読み解く。(講談社学術文庫)
  • 時とはなにか 暦の起源から相対論的“時”まで
    3.0
    人々の生活の基本にあり、日常を区切り律する「時」。その成り立ちや仕組みはあまり知られていない。幾多の不備があっても習慣として使い続けられる暦がある一方、高い精度が求められ原子単位となっていく「時」もある。一体「時」はどのように決められているのか。先人たちが苦労を重ね定めてきた歴史とともに、現代的な観点も含めて、「時」の専門家が壮大なテーマを易しく解説する。(講談社学術文庫)
  • 文明の十字路=中央アジアの歴史
    3.0
    ヨーロッパ、インド、中国、中東の文明圏の彼方で、生き抜いてきた遊牧民たちの領域が中央アジアである。絹と黄金を運んだ悠久の交易路シルクロード。多くの民族と文化の邂逅と衝突。アレクサンドロス大王とチンギス・ハーンの侵攻……。仏教・ゾロアスター教・マニ教・ネストリウス派そしてイスラムもこの地を経由した。中央アジアの雄大な歴史をコンパクトにまとめた入門書。(講談社学術文庫)
  • 聖書の読み方
    3.0
    世界でもっとも多く読まれている書物であるにもかかわらず、ともすれば日本人には敬遠されがちな聖書。しかし、そこには意味深いメッセージが随所に秘められている。律法と福音、処女降誕、キリストの復活……。これらの真の意味は何か。「北森神学」で知られる著者が、聖書そのものに即して伝授する読み解くためのコツの数々。聖書初学者必読の書。(講談社学術文庫)
  • 諸子百家
    3.0
    春秋・戦国の乱世に自らの理想を実現すべく諸国を巡った諸子百家。快楽至上主義の楊朱と兼愛の戦士・墨子の思想がなぜ天下を二分するほど支持されたのか。五徳終始説と大地理説で新王朝の出現を促進した鄒衍(すうえん)の雄大な構想、「白馬は馬に非ず」とした公孫龍(こうそんりゅう)の緻密な論理とは。新出土資料で判明した老子、孫子、孔子などの実像も、興味深く説き明かす。(講談社学術文庫)
  • 東京語の歴史
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    東訛りから江戸弁、そして東京語へ。その言葉は後に、人為的な「標準語」と、生活に根差した東京「方言」との間を揺れつづけなければならなかった。古代の東国方言のあり方、近世江戸弁が政治の中心地ゆえに日本各地ことばと融合し江戸語を形成するさま、そして標準語を整備される過程で生きた言葉の多くを犠牲にする東京語。その歴史を源内、西鶴はじめ豊富な資料で描き出す。(講談社学術文庫)
  • 新装版 日本国憲法
    3.0
    ※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 戦後日本を理念的に照らしつづけた〈憲法〉。それは「人類普遍の原理」「崇高な理想と目的」を掲げながら、一貫して最大の争点でもありつづけた。日本国憲法に、大日本帝国憲法、教育基本法、児童憲章、英訳日本国憲法、日米安全保障条約の全文を収録した新装版。読んでから考えたい、語るために読みたい、〈憲法〉。(講談社学術文庫)
  • 日本の食と酒
    3.0
    日本人は何を食べていたのか。本書は京都・山科家の日記や奈良・興福寺の文書をひもとくことで、中世の公家と僧侶の食生活を再現し、その背景をなす製法の歴史へと接近する。中世から近世にかけて日本酒としてのかたちを整えていく酒。醤(醤油)、味噌、納豆といった大豆発酵食品……。日本の食文化を最も特徴付ける発酵技術と発酵文化の歴史を追い、その原点に迫る。これが日本食の原型だ! (講談社学術文庫)
  • 伊勢神宮と日本美
    3.0
    節ひとつない檜材で20年ごとに建て替えられてきた伊勢神宮。その清浄で質素で力強い姿は、日本人の魂の原風景である。伊勢神宮こそが、「日本古来」の建築の原型であるとの主張がなされてきた。明治以降、国家神道となったことにより、その言説はますます強くなった。現代でさえ、古代住居の復元時に伊勢神宮にその形を求めることもある。江戸から現代に書かれた資料を徹底的に読みとき、神宮の本当の姿を解明する。(講談社学術文庫)
  • 坂本龍馬
    3.0
    倒幕、大政奉還、新体制というシナリオまで描出しながら、歴史的転換点に立ち会うことなく、わずか33歳で刺客の手に倒れた坂本龍馬。その像はさまざまに伝えられる。民権派やデモクラシーの象徴として、海軍の先駆者として……。しかしはたしてそれらは実像であろうか。御国と皇国、徳川家と天朝など、新旧の価値が交錯する時代の精神を丹念に読み解き、龍馬像の真実に迫る。(講談社学術文庫)
  • 近代日本思想の肖像
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    日本の近代史においては、文学者や文芸批評家が、思想の中心的な担い手となってきた。もちろん、広く影響力をもった哲学者もいるが、近代日本思想の影響力の中心につねに文学があったのは、なぜなのか。吉本隆明、柄谷行人、三島由紀夫、丸山眞男、埴谷雄高など、文学と哲学が交錯する地点でその思想の特質を再検証する、注目の社会学者の力作論考。
  • 日本仏教再入門
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    昨今、仏教研究は進展を見せ、従来の常識は大きく書き換えられつつある。 「日本仏教」とは何かから説き起こし、古代から中世の仏教の思想と歴史の流れを、聖徳太子・空海・法然・親鸞・道元・日蓮などをキーに解き明かしていきます。 そして、明治維新以降、西洋の文明に触れて大きな変貌を遂げた日本仏教が、日本の近代社会の中で果たしてきた役割を改めて問い直します。廃仏毀釈に始まり、日清・日露戦争を経て、大正デモクラシー、日中戦争から第二次世界対戦を経験する中で、仏教は重要な位置を占めています。戦後復興、そして大震災などに対して、実践としての仏教があらためて登場しつつある現状の意味を問うていきます。 また、日本仏教の深層にある思想的、歴史的な背景を読み解いていきます。葬式仏教にどのような意味があり、どのような思想を背景にしているのか。日本仏教のおおきな特色となっている「大乗仏教」の起源を探ります。また神と仏の関係を、中世の神仏習合に遡って、読み解き、仏教が日本の思想や哲学に与えた影響を検証していきます。 本書を読めば、日本仏教の思想と歴史の概観と肝要なポイントがすべてわかる、格好の入門書です。 *本書は、『日本仏教を捉え直す』(放送大学教育振興会)を底本に、大幅な加筆(第二章 1最澄の生涯と思想)と改稿をし、改題しました。 【目次】 はじめに 「日本仏教」という問題 第一章 仏教の展開と日本 序説 第二章 仏教伝来と聖徳太子 日本仏教の思想1 第三章 空海と最澄 日本仏教の思想2(頼住光子) 第四章 法然・親鸞と浄土信仰 日本仏教の思想3 第五章 道元と禅思想 日本仏教の思想4 第六章 日蓮と法華思想 日本仏教の思想5 第七章 廃仏毀釈からの出発 近代の仏教1 第八章 近代仏教の形成 近代の仏教2 第九章 グローバル化する仏教 近代の仏教3 第十章 社会活動する仏教 近代の仏教4 第十一章 日本仏教と戒律 日本仏教の深層1 第十二章 葬式仏教 日本仏教の深層2 第十三章 神仏の関係 日本仏教の深層3 第十四章 見えざる世界 日本仏教の深層4 第十五章 日本仏教の可能性 まとめ 学術文庫版あとがき
  • 古代エジプト動物誌
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    「あの世の闇」すら光り照らす猫の目を敬い、蛇の脱皮する姿に「復活」を想起し、糞玉を押す黄金虫に太陽を運ぶ神を想う……。ナイルの恵みで農業国として繁栄したエジプト中王国ー新王国時代。時に神と崇め、時に恐れ敵対した動物たちとエジプト人との関係や、動物ミイラの作り方、当時の社会や宗教観まで活写した、異色歴史書! 内容一部紹介 ◎古代エジプト人と猫の暮らし◎ *夢に大きな猫が出たら吉兆。大豊作になる。 *猫女神バステトは出産の神。新婚夫婦は欲しい子供の数だけ、護符に猫の絵を描く。 *火事になったら火を消すよりも猫を助けよ。 *飼い猫が死んだら家族全員、眉を剃って喪に服す…等 序 文  第一章 猫 世界最古の家猫図/オシリス神話/女神バステト/猫の聖地ベニ・ハッサン/パケト信仰/猫のミイラと棺/闇を退治する目/ネフルよ、ネフルよ/ブバスチスの「猫王」/バステトの祭り/猫の墓/エジプト人の愛猫心 第二章 犬 アヌビス信仰/西方の者/絵画と彫像/『二人の兄弟の物語』/エジプト犬のミイラ 第三章 蛇 二つのエジプト/『難破船水夫の物語』/悪蛇アポピス/翼ある蛇 第四章 ライオン 大スフィンクス/王たちとライオン/ライオン狩り 第五章 黄金虫 スカラベと太陽神/『死者の書』の図像/記念スカラベと印章スカラベ/護符スカラベ 第六章 鰐 ナイルの暴れん坊/ソベク神殿/オシリスを救う神 第七章 ハゲワシ 白い女神ネクベト/王冠飾りと棺の飾り/ハヤブサとトキ 第八章 牛 雄牛の神/雌牛の神 第九章 驢馬、馬、駱駝 砂漠と不毛の神/夷狄のもたらしたもの/洗浄の主役/奉仕のみの動物 学術文庫版解説・・・・・・・ 河合 望(金沢大学古代文明・文化資源学研究所所長 金沢大学新学術創成研究機構教) 古代エジプト略年表  本書は『古代エジプト動物記』(文藝春 1984年刊)を改題したものです。 現在では差別的とされる表現が含まれていますが、本書が執筆された時代環境を考え、また著者が故人であることから、そのままにしてあります。差別の助長を意図するものではありません。
  • 宇宙の哲学
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    宇宙の歴史は有限か無限か? 「この宇宙」はどのように生まれたのか? 時間以前には何があったのか? …… 宇宙の謎をめぐる人類の探究の歴史を、ケプラーのSF的宇宙探索物語、パスカルの無限空間への恐怖、ニュートンの普遍力学、カントのコペルニクス的転回、ラプラスの魔、パースの進化論的宇宙論といった魅力的なトピックとともに、コンパクトかつ深く辿る! ビッグバン宇宙論や多宇宙論など、物理学の最新成果を踏まえた、哲学の泰斗による「新しい自然哲学」構築の試み。 解説は、『なぜ宇宙は存在するのか』の野村泰紀氏(理論物理学/カリフォルニア大学バークレー校教授)。 [目次] ■講義 自然哲学の行方 第一講 コスモロジーの自立 (われわれの生きる宇宙/…新しい自然哲学の時代のとばぐち/…) 第二講 ケプラーの夢 (伝統的思考法からの独立/…世界初のサイエンス・フィクション/…) 第三講 無限宇宙の永遠の沈黙 (…沈黙する宇宙と人間の孤独/…パスカルの根源性と先駆性) 第四講 時空をめぐる論争 (ニュートン力学が切りひらいた問い/カントによる時空論の総合/…) 第五講 レヴォリューションーー回転か革命か (世界観の転換/…時空やカテゴリーは固定的か) 第六講 決定論の崩壊 (ラプラスの魔/…非決定論の方へ) 第七講 ビッグバンの方へ (「人類の偉大な一歩」/…哲学に役割は残されているか/…) ■補講 宇宙の時間、有限か無限か 補講一 有限説と無限説 (カントの「誤り」を超えて/…宇宙の歴史は無限か/…) 補講二 カントのアンチノミー (アンチノミーが暴くもの/…ゼノンのパラドクスから一九世紀の数学・論理学へ) 補講三 パースの宇宙論 (進化論的宇宙論ーーカオスからコスモスへ/…現実の「外」へと目を向ける方法) ■解説 新しい自然哲学は未解決問題に挑めるか 野村泰紀 ■人名索引
  • ヨーロッパの出現
    NEW
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    森と石、都市と農村が展いた後発のヨーロッパ文明は、どのようにして世界史の領導者になったのか。戦争・飢餓・疫病、ルネサンス・宗教改革・大航海を経てきたその歴史に建設と改新、破壊と停滞のリズムを読み取り、文明を一つのシステムとして通観する。西洋史の泰斗による格好のヨーロッパ入門!
  • 帝国大学の誕生
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    東京大学が「帝国大学」だった頃、すべては始まった―― 「東大」出生の秘密を暴き、その虚像と実像を抉り出す!  * 明治19年の帝国大学の誕生は、のちの東京大学をも貫く基本性格を確立した歴史的特異点であった。エリート官僚養成、アカデミズムの独占的権威、立身出世・受験競争の頂点――伊藤博文、森有礼、井上毅ら設計者たちの政策的意図を辿りつつ、今日まで続く東大の本質とイメージの淵源を明らかに! [目次] 第一章 帝国大学の出自――リヴァイアサンの生い立ち 第二章 帝国大学のモデル――ドイツの大学から学ばなかったこと 第三章 官庁エリートの供給源――工科系から法科系へ 第四章 出身と出世――上昇気流にのって 第五章 明治アカデミズムの体質――講座制と研究 第六章 もしも帝大がなかったら――批判的展望 あとがき 解説 科学史/大学史を超えた「学問の歴史」 石井洋二郎
  • 存在と思惟 中世哲学論集
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    本書の著者クラウス・リーゼンフーバー神父(1938-2022年)は、フランクフルトに生まれ、1958年にカトリックの修道会であるイエズス会に入会したのち、1967年に来日して長年にわたり上智大学で教鞭を執りました。ドイツ哲学に深い造詣をもつばかりか、西田幾多郎をはじめとする日本の哲学思想に通じていた著者は、西洋中世の哲学・神学について研究し、あるいは教育するとともに、一般向けの講座を精力的に行って多くの日本人に親われました。 しかし、専門論文が多いこともあってか、一般向けの著作はほとんどなかったと言わざるをえません。古代から現代に至る西洋哲学全体に対する該博な知識と透徹した理解に基づいた知恵の結晶を多くのかたに触れていただく機会になることを願って、ここに学術文庫オリジナルの精選論文集をお届けします。 以下の目次にあるように、本書で中心的に選ばれたのは、著者にとって重要な研究対象であるトマス・アクィナス(1225頃-74年)をめぐる論考です。「言語」、「存在」、「神」という哲学にとっても神学にとっても最重要の概念を正面から取り上げ、トマスの論を精緻にたどるだけでなく、独自の読みを加えることで、そこに潜む可能性を最大限に引き出す――「思惟」というものの醍醐味がふんだんにつまった論考群は、読むたびに発見に満ちた宝と言えるでしょう。 惜しまれながら2022年に逝去したリーゼンフーバー神父の偉大な遺産を本書を通して知っていただけることを心から願っています。 [本書の内容] 中世思想における至福の概念 トマス・アクィナスにおける言葉 トマス・アクィナスにおける存在理解の展開 存在と思惟――存在理解の展開の可能性を探って トマス・アクィナスにおける神認識の構造 神の全能と人間の自由――オッカム理解の試み 解 説(山本芳久)
  • 新版 蜻蛉日記 全訳注
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    藤原道綱母が告白する、貴族たちの愛憎劇。 美貌と歌才をもち、権門藤原氏に求婚された才媛が、人生の苦悩を赤裸々に告白する、平安王朝の代表的日記文学。漁色癖のある夫への愛憎をはじめ、家族との別れ、子供の誕生と成長、旅行、参籠といった結婚生活のなか、自らのはかない身の上を書き連ねた日本初の私小説でもある。 作者の道綱母は、藤原道長の父・兼家のもう一人の妻である。一夫多妻制の時代に生きた彼女の日記は、竹のカーテンに閉ざされた上流夫人のありのままの生活であり、これが書かれなければ、『枕草子』や『源氏物語』などもあるいは生まれなかったともいわれる。近代以降も、数々の小説家が惚れ込み現代語に訳してきた、女流文学の先頭に立つ作品である。本書は原文、現代語訳、語釈、充実した解説に加え、地図や年表を備えた決定版である。 【目次(抄)】 まえがき 凡 例 上 巻 天暦八年 天暦九年 天暦十年 天徳元年 天徳二年 応和二年 応和三年 康和元年 康保二年 康保三年 康保四年 安和元年 中 巻 安和二年 天禄元年 天禄二年 下 巻 天禄三年 元延元年 天延二年 巻末歌集 補 注 系 譜 地 図 年 表 解 説 *本書は、1980年に講談社学術文庫から刊行された『蜻蛉日記』上中下巻を一冊にまとめ、新版としたものです。
  • 航西日記 パリ万国博見聞録 現代語訳
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    1867(慶応3)年、パリ万国博覧会が開催された。日本が初めて参加した国際博覧会であり、幕府は徳川慶喜の弟である昭武を公使として派遣した。使節団には幕臣となっていた渋沢栄一が随行。帰国後、渋沢は、外国奉行支配調役として同行した杉村譲(愛蔵)とともに、全6巻の詳細な渡欧記録をまとめ、1871年(明治4)に刊行した。 この記録には、フランスの繁栄を誇ったパリ万国博での見聞のほか、ナポレオン3世やイタリアのヴィットリオ・エマヌエレ2世、オランダ国王ウィレム3世ら欧州要人たちと徳川昭武の謁見、産業革命のただなかにあったイギリスの工業化や、政治・経済のシステムへの驚きなどが、生々しく描写されている。 従来、この日記は、渋沢の単著として扱われてきたが、近年の研究により、旅の前半を幕臣として同行し、後に明治政府の官僚となった杉村譲の日記と渋沢の日記から編纂・執筆されたものであることがわかってきた。こうした旧幕臣の体験と知識が、その後の近代化に大きく生かされたのである。 文庫化にあたっては、『世界ノンフィクション全集14』(筑摩書房、1962年)所収の大江志乃夫現代語訳を原本とし、「付録」として、一行の帰国の事情と帰国後の動向を記した、渋沢栄一談/小貫修一郎編著『渋沢栄一自叙伝』(渋沢翁頌徳会、1937年刊)の13章1節から4節までを収録した。
  • 近代日本の陽明学
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    ◇暴走する独善的正義 その思想的起源を暴く!◇ 善意に基づく使命感。時としてテロリズムへと人を導いてしまう心性は、陽明学と水戸学が交錯しながらこの国の精神に組み込まれたものであった。 大塩平八郎にはじまり、井上哲次郎、三宅雪嶺、新渡戸稲造、そして山川菊栄と三島由紀夫へと至る系譜をたどりながら、日本の近代特有の屈折を読み解かんとする、新鮮にして驚くべき視点による思想史探究。 スマッシュヒットとなった選書メチエ版に、近代日本における朱子学・陽明学というより俯瞰的な視野による「増補」を加え待望の再刊なる! 【本書の内容】 学術文庫版序文 プロローグ―靖国「参観」の記 エピソードI 大塩中斎―やむにやまれぬ反乱者  1 「乱」と呼ばれて  2 陽明学ゆえの蜂起?  3 知己頼山陽 エピソードII 国体論の誕生―水戸から長州へ  1 藤田三代の功罪  2 『大日本史』の編集方針  3 自己陶酔する吉田松陰 エピソードIII 御一新のあと―敗者たちの陽明学  1 陽明学を宮中に入れた男  2 陽明学を普遍化させた男  3 陽明学をキリスト教にした男 エピソードIV 帝国を支えるもの―カント・武士道・陽明学  1 明治のカント漬け  2 武士道の顕彰  3 陽明学の復権  4 白い陽明学、赤い陽明学 エピソードV 日本精神―観念の暴走  1 ある国家社会主義者のこと  2 西洋思想で説く東洋の革命  3 碩学か幇間か エピソードVI 闘う女、散る男―水戸の残照  1 水戸の血と死への美学  2 「青山菊栄」の戦後  3 「その日」まで   4 その日   5 アポロンが演じたディオニュソス   6 それから  エピローグ  増補  I 近代における朱子学・陽明学  II 亘理章三郎と西田幾多郎の陽明学発掘作業  III 中江兆民の自由論  IV 渋沢栄一の自由論 主要参考文献  あとがき  主要登場人物略伝  本書関連年表  索引 *本書の原本は、2006年に講談社選書メチエより刊行されました。
  • 風俗画入門
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    古代から近代まで、人々の暮らしや心情を映し出す風俗画は、壁画、絵巻、屏風、浮世絵、漫画、落書など、様々な形で残されてきた。中国の影響から独立、展開し、近世に花開くその歴史は、高松塚古墳壁画から鳥獣戯画、洛中洛外図屏風、見返り美人図、北斎漫画までをも包み込む。古代の落書の精神は平安時代の絵巻に昇華し、仏教的な厭世観(憂世)は刹那主義的な現世肯定の精神(浮世)に受け継がれている。 日本美術史の第一人者が語り尽くす、類いまれな戯画全史。カラー図版多数掲載! 【目次】 第一章 風俗画の東西 第二章 唐美人の移入 第三章 やまと絵の風俗画 第四章 鎌倉、室町時代 第五章 戦国から桃山へ 第六章 桃山風俗画の満開 第七章 初期風俗画の爛熟 第八章 風俗画としての浮世絵 あとがき 学術文庫版あとがき 参考文献
  • 読む哲学事典
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    ◇◆◇「愛とは何か」を解るために、「暴力とは何か」を考える。◇◆◇ ◇◆◇さまざまな概念を対にして展開する、縦横無尽な思考の一大パノラマ!◇◆◇ 本質と時間/愛と暴力/ここと私/正義と詩人…… ある概念と別の概念を対にしてみると、思いもよらない連関が生まれ、ありふれた言葉から豊かな哲学の問題が立ち上がってくる! 現代哲学の重要論点のみならず、文学、芸術、宗教、科学、政治を自由闊達に横断。一人ですべての項目を書き切った事典にして、どこから読んでも愉しめる上質の哲学エッセイ。 【本書より】 哲学事典を引く人が、「存在」とか「記憶」とかの意味をまったく知らない、などということは考えにくい。求められているのは日常では一見自明な言葉に哲学者が見出す亀裂であり、それを通して見えてくる思いがけない意味連関ではなかろうか? 概念間の連関が重要なのだ。ゆえに、哲学事典は一貫した視点で、一人が全項目を書くべきなのだ。 これは、すべてを網羅するという事ではない。多くの知識を蓄える事が問題ではない。問題は、越境的な精神の自由を確保する事なのである。本書では、諸概念の連関を強調するため、事項を単独で説明するのではなく、一対の概念に対して説明をした。読者は、関連する事項説明をたどることによって、梁と梁が大きなドームをなすイスラム建築のように、あるいはたがいに連関して図形を構成する夜の星空のように広がる、概念の天蓋が見渡せよう。 【本書の内容】 愛と暴力 アキレスと亀 一者の実在性/真理と悲劇 イロニーとユーモア 運と偶然 可能性と反実在論 共同感覚と感覚質 言語と意味/ Sinn(意)とBedeutung(指示)/実在論と反実在論 検証主義とプラグマティズム ここと私/意識と想像的なもの/想像的な私と象徴的な私 自然とユートピア/美と判断力 自由と問題 正義と詩人 全体論と解釈/現象学と志向性/心的な用語(mental term)と命題的態度 疎外論と物象化論 存在と存在論/数と算術/性質と類似性/実体と普遍論争 知識と信念 超範疇と超越論的 美のイデアと芸術 文化相対主義と普遍的正義論 弁証法と(再)定義/観念論とヘーゲルの弁証法―意図と欲望 保守主義と左翼 法と革命 本質と時間/時間様相―過去現在未来/期待と希望 メタ言語と主体性 ヨブの苦しみと罪の名 歴史と伝統/ヘーゲルの歴史観/反時代的 索引 *本書の原本は、2006年に講談社現代新書より刊行されました。(増補あり)
  • 古代文字の解読
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    発音も不明な謎に満ちた文様――エジプト聖刻文字、楔形文字、ヒッタイト文書、ウガリット文書、ミュケーナイ文書。主要古代文字が解読されるまで推理、仮説、検証を重ねた、気の遠くなるような忍耐と興奮の軌跡を、言語学と旧約聖書研究の泰斗が、平易かつ正確に描写。数千年を超えた過去との交流を先人とともに体感できる、心躍る書!(解説・永井正勝) まえがき 第一章 言語と文字 高津春繁 第二章 エジプト聖刻文字の解読 関根正雄 第三章 楔形文字の解読 関根正雄 第四章 ヒッタイト文書の解読 高津春繁 第五章 ウガリット文書の解読 関根正雄 第六章 ミュケーナイ文書の解読 高津春繁 学術文庫版解説 永井正勝(人間文化研究機構人間文化研究創発センター特任教授) 索引 地図 内容紹介 両者の解く古代文字解読の世界は、解読当時の学者達や社会の常識を踏まえつつ、解読者の心境を代弁するかのような語り口でなされている。そこに時折加えられる古代社会の記述も相まって、読者は解読当時の様子をこの目で見ているかの如く本書を読み進めていくことができる。(略)本書の魅力は、文化に対する深い理解と愛を持った卓越した研究者の手になる部分が大きい。         ――――――「解説」より *本書の底本は『古代文字の解読』(岩波書店 1964年10月刊)です。文庫化にあたり読みやすさに配慮して、旧字を随時、常用漢字に置き換え、送り仮名も新字対応とし、ルビの追加を行い、明らかな誤植は訂しています。 経年などにより説明が必要と思われた箇所は、編集部註として[ ]で補足いたしました。「最近」「現在」などの表記につきましては、原本が出版された一九六四年時点の時制といたします。 本書には現在では差別的とされる表現も含まれていますが、著者が故人であることと差別を助長する意図はないことを考慮し、原本刊行字の文章のままとしております。
  • 往生要集入門 悲しき者の救い
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    辛い現世を終えて、来世こそは阿弥陀仏のすまう極楽浄土に生まれたい――貴賤を問わず日本で幅広く、長きにわたって信仰されてきた浄土思想。すべては平安時代、一人の僧によって著されたこの書物から始まった。源信なくしては、法然も親鸞もない。 『往生要集』の訳・校注で知られる著者が、歴史的背景に始まりゆるやかに『往生要集』の構成に沿いつつ、親しみやすい現代語訳を随所に示しながら、源信の教えの真髄を平易に解き明かす。 「予が如き頑魯(がんろ)の者(わたしのような愚かなもの)」と自らを顧みた源信(942-1017年)。智慧や才にめぐまれた一握りの人ではなく、自身を含む多くの罪深い「悲しき者」が救われる道を模索した『往生要集』が、日本の思想・信仰に与えた影響ははかりしれない。  往生を目指すべき理由として描かれる等活地獄、黒縄地獄、衆合地獄、阿鼻地獄など数々の地獄も、経典と源信自身の言葉を交えながら、恐ろしい責め苦が生々しく描き出され、それに対応する極楽の姿、そして現代人の想像をはるかに超える仏の姿もあざやかに示される。地獄、極楽、さらに仏の姿は、信仰のみならず、のちの思想、文学、芸術にも大きな影響を及ぼした。『源氏物語』や『栄華物語』、『梁塵秘抄』など、のちの文学作品にみられる『往生要集』の影響も示唆される。  『往生要集』は「集」というその名が示す通り、『無量寿経』、『観無量寿経』、『阿弥陀経』の浄土三部経をはじめ数多の経典や経典の注釈書の引用によって、往生の要諦を説いたものである。膨大多岐にわたる出典についての解説は、仏教学の泰斗たる著者ならではのものであり、源信が数々の経典のなかから何を重要としていたのかが、次第に浮かび上がってくる。  仏の姿を念じる「観相の念仏」を自らの思想の核とした源信が、「南無阿弥陀仏」と仏の名を口で称えるいわゆる「念仏」、「称名の念仏」に託したものとは何だったのか――。浄土思想の原点に触れる一冊。(原本:『悲しき者の救い――源信『往生要集』』筑摩書房(仏教選書)、1987年) 【本書の内容】 はしがき 第一章 『往生要集』の成立 第二章 迷いの世界 第三章 浄土へのねがい 第四章 正しい念仏 第五章 悲しき者の救い 源信略年譜 あとがき 付 参考文献について 選書版あとがき 解 説(岩田文昭)
  • 所有とは何か
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    本書は、激動する19世紀フランスに生きた社会思想家ピエール=ジョゼフ・プルードン(1809-65年)の初期の主著である。 スイスとの国境に近いフランス東部のブザンソンに生まれたプルードンは労働者階級出身であり、向学心旺盛でありながら学業を断念せざるをえなかった。そうして働き始めた印刷所での日々は、のちの社会思想家を生み出す養分を提供することになる。すなわち、校正作業を通じてヘブライ語を習得したほか、聖書や言語学をはじめとする学的関心を養うとともに、同郷の社会思想家シャルル・フーリエの著書を校正することで、現実とは異なる社会を構想する動機を与えた。さらに、印刷工として働く傍らでフランス各地を巡行して印刷所の現場監督を務める中で労働者の境遇を身をもって知り、これが「社会の構成単位は仕事場である」という発想を導くことになった。これらの成果が結実したのが本書にほかならない。その冒頭には「最も数が多く最も貧しい階級の物質的、道徳的、知的境遇を改善する手段」を見出すというプルードンの動機が明確に宣言されている。 本書は第一章で提示される「所有とは盗みである」という警句によって物議をかもした。これは「奴隷制とは殺人である」という命題を「変形させただけ」だと言われるとおり、「所有」とは合法化された「盗みの権利」にほかならない。ならば、それが奴隷制につながらないための線引きを担保する必要がある。その方策を実現するものこそ、プルードンが構想した理想の社会だった。 紛れもない社会哲学の古典である本書の邦訳は1971年になされたあと半世紀以上、新しいものは登場していない。本書は、気鋭の研究者が清新な日本語で作り上げた新訳であり、格差が激化する今こそ熟読したい1冊である。 [本書の内容] ブザンソン・アカデミー会員諸氏へ 第一章 本書が従う方法論――革命という観念 第二章 自然権とみなされる所有について――所有権の始動因としての先占と民法について 第三章 所有権の始動因としての労働について 第四章 所有は不可能であること 第五章 公正・不公正の観念の心理学的説明および、統治と法の原理の確定 訳者解説
  • アテネ 最期の輝き
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    紀元前338年、ギリシャ敗戦! その後「民主政」はどうなった? 教科書に載らない歴史の真実を明かす、第一人者によるアテネ「亡国」のドラマ。  * 紀元前338年、アネテやテーベを中心とするギリシア連合軍は、フィリポス2世とアレクサンドロス率いるマケドニア軍に歴史的な大敗を喫した。アテネが誇る民主政はしかし、それを契機にかつてない平和と繁栄を謳歌する――。デモステネスら政治家たちの闘いの跡を追いつつ、アレクサンドロス躍進の陰で「黄昏」と呼ばれたアテネの実像を明らかにする、第一人者による画期の書!  * [目次] はじめに 序章 「黄昏のアテネ」に迫る  1 「黄昏のアテネ」とデモステネス  2 「政治家」と「政治グループ」 第1章 決戦へ  1 デモステネスの生きた時代  2 デモステネスの前半生  3 反マケドニアの政治家として  4 「宿敵」アイスキネスとの対立 第2章 敗戦――マケドニアの覇権  1 戦後処理  2 デモステネスの活躍  3 アレクサンドロスの時代の幕開け  4 マケドニアの傘の下で 第3章 対決――「冠の裁判」  1 裁判が始まるまで  2 「弁論家の戦い」 第4章 平穏――嵐の前の静けさ  1 デモステネスの隣人たち  2 アテネ民主政の姿  3 動乱の前ぶれ 第5章 擾乱――ハルパロス事件  1 ハルパロス事件とは  2 事件当時のアテネの情勢  3 ハルパロス裁判  4 裁判の背後の人間模様 第6章 終幕――デモステネスとアテネ民主政の最期  1 民主政アテネの最後の闘い  2 愛国者たちのそれぞれの最期 終章  1 デモステネスの遺したもの  2 「黄昏」の民主政 史料について 主要参考文献 関連年表 あとがき 学術文庫版へのあとがき
  • 知性改善論
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    本書は、主著『エチカ』で知られるバールーフ・デ・スピノザ(1632-77年)がその執筆活動の初期に残した代表作の一つです。 従来『神、人間および人間の幸福にかんする短論文』が最も早い著作と考えられてきました。しかし、近年の研究では本書『知性改善論』こそ、1656年後半から61年前半に書かれた最初期の論考である、という説が有力になりつつあります。アムステルダムにユダヤ人として生まれ、ユダヤの教育を受けたものの、1656年には破門されるに至ったスピノザが、デカルトやベーコンの哲学を会得した上で、「神」について、無限なる属性としての思考と延長について独自の見解を紡ぎ、語り始めた、画期となる著作です。 精神と全自然との合一の認識、永遠無限なるものへの愛、揺るぎない幸福の追求など、本書には『エチカ』のモチーフをはっきり見て取ることができます。おそらくは時間のなさゆえに本書は未完のまま放置されましたが、しかしその哲学は『エチカ』に引き継がれ、さらなる発展と深化を遂げていくことになります。その意味で、本書はスピノザが「哲学者」になる過程を記録した生々しいドキュメントであるとともに、著者自身による最良の『エチカ』入門でもあると言えるでしょう。 『知性改善論』については、長らく畠中尚志訳(1931年、改訳1968年)が読み継がれてきました。本書は、気鋭の研究者が最新の研究成果を取り込みつつ、充実した訳注とともに「今日の日本語」でスピノザを読めるようにと全力で完成させた待望の新訳です。 [本書の内容] 読者に告ぐ 〔導 入〕 〔方法の規定〕 〔方法の第一部〕 〔方法の第二部〕 訳 注 文献一覧 訳者解説
  • 新論
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    【幕末に「志士」たちを生み出した最重要思想書、その全貌を読む!】 ―臣ここを以て慷慨悲憤し、自から已む能はず、敢えて国家のよろしく恃むべきところのものを陳ぶ― 「序論」「国体」「形勢」「虜情」「守禦」「長計」からなる全篇の本文読み下し。平易な現代語訳・懇切な語釈を掲載。 さらに参考資料として、正志斎がのちに開国政策を提言した『時務策』を併載! 文政八年(1825)、幕府は異国船打払令を出し、日本近海に接近する外国船全てに対して砲撃を加え、排除することを決定した。会沢正志斎が『新論』を完成させたのは、まさにその直後のことである。 一読するとわかるように、その内容は西洋諸国と直面をせまられ始めた日本全体の、今後の政策を提言するものである。だが、水戸藩主を通じて幕府を動かそうという正志斎の期待は実現されることもなく、また異国船打払令も徹底されずに、沿岸には外国船が自由に航行することが常態化した。 しかし本書は、正志斎の関係者から友人へ、その友人から別の友人へと筆写が重ねられ、日本全国へと広まっていくこととなる。それは匿名の著作ではあったけれども、人々を引きつける何かがあったのは確かであろう。天下太平と呼ばれた時代にあって、その裏にあった言いしれぬ不安というべきものを明らかにした、という理由もあろう。結果的にこの書は、全国の志ある多くの人々を目覚めさせることとなった…… *本書は訳し下ろしです。
  • 音楽教程
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    古典的学識に通じ『哲学の慰め』『算術教程』などを著した「最後のローマ人」ボエティウス。その著作群は大きく4つに分けられる。数学的諸学科に関する教育的作品、アリストテレス、キケロ、ポルフュリオスなどの著作の翻訳と注釈、キリスト教神学の哲学的考察、そして最後に『哲学の慰め』。『音楽教程』は第一期に属するもので、ピュタゴラス以降の音楽理論を総覧し詳述しており、後世とくに中世~18世紀までの西洋音楽理論に絶大な影響力を維持していた。「協和・不協和」「音程と旋律」「オクターヴ」「5度」「4度」「全音」「半音」など、音の性質を体系立てたことの意義は大きい。オクターヴの完璧さは何に由来するのか、5度、4度の協和が「完全」である理由は何なのか、また、半音は本当に全音の「半分」なのか、あるいは、旋法の構造はどのようなものなのか。 聴覚に甘美に響くことが音楽の起源ではあるにせよ、そこに判断のすべてを任せる姿勢を批判し、強調されるのは最終的な完全性と認識は理性に存するという一点である。そのうえで探求されるのは、音程あるいは協和音に関する数学的解明であり、モノコルドの弦長を二分割、三分割、四分割……と計算を尽くす方法で「数比」の重要性を明確にし、音程の根拠を示すこと。1500年ほども前に形作られたこの理論の骨子は、音響科学などの知見をもって近代の音楽理論が挑んだ刷新の試みにも完全に克服されたとは言えず、いまだに西洋音楽の基盤をなすものである。 本書は、19世紀のラテン語版刊行物を底本とし、英・仏・独・露語版を参照して翻訳した初めての日本語版である。
  • 日本精神史(上)
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    長くヨーロッパの文化と思想を研究対象としてきた著者は、ここ20年ほど、日本の文化と思想の研究にとりくみ、その流れを歴史的に追跡してきました。その成果がついに一書にまとまったのが、本書です。題して、『日本精神史』。 「精神」とはなにか。 ヘーゲル研究者としてスタートした著者は言う。「あえて定義づければ、人間が自然とともに生き、社会のなかに生きていく、その生きる力と生きるすがたが精神だ」。 テキストとして残された思想はもとより、土器や銅鐸、仏像、建築、絵巻、庭園など、あらゆる文化を渉猟し、縄文時代から江戸時代の終わりまでを、一望のもとに描く、まさに畢生の大作です。 ただし、著者は、難解であることを潔しとしません。ヘーゲルのわかりやすい翻訳で脚光をあびたように、あくまでも流麗な文体で、明解に描いていきます。 思想も絵画も仏像も、ひとしく日本の精神の歴史としてとらえ、あらためて、日本とはなにかを問いかける清新な傑作と言えます。 待望の文庫化! 【目次より】 第一章 三内丸山の巨大建造物 第二章 火炎土器と土偶 第三章 銅鐸 第四章 古墳 第五章 仏教の受容 第六章 『古事記』 第七章 写経 第八章 『万葉集』 第九章 阿修羅像と鑑真和上像 第十章 最澄と空海と『日本霊異記』 第十一章 『古今和歌集』と『伊勢物語』 第十二章 浄土思想の形成 第十三章 『枕草子』と『源氏物語』 第十四章 『今昔物語』と絵巻物 第十五章 東大寺の焼失と再建 第十六章 運慶の新しい造形意識 第十七章 法然と親鸞 第十八章 『正法眼蔵』
  • 精選訳注 文選
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    中国古典文学の集大成であり、中国文学の誕生とその進化を体現する、中国最古にして最大の詞華集「文選」(もんぜん)。南朝梁の昭明太子蕭統(しょうとう)が編集した、唐以前の詩文の精華となる美文集であり、模範文例集です。中国では科挙の模範とされ、日本では万葉集や日本書紀に影響を与えました。日本では平安貴族の必読書となり、明治期までは文章の手本とされてきました(清少納言、吉田兼好、大田南畝、永井荷風ほか多数)。 本書では、全三十巻から王粲、曹植、劉邦、李陵、陸機、曹丕、諸葛亮孔明などの秀作を厳選し、中国の古典文学研究の第一人者による充実した解説とともに全容を一望します。 【本書「総説」より】 現在の日本語の中で用いられている「文章」の語は、詩歌に対する散文を意識させることが多いが、中国語のもとの意味は、韻文・散文をひっくるめたありとあらゆる種類の書きものということである。そしてこの「章」という字の原義も、やはり「あや」とか「かざり」とかにほかならない。だから「文」ないしは「文章」の語には、「美しい」という概念が生まれついてのもちまえとして備わっているといっても、決して言い過ぎではないのである。 【目次(抄)】 序 総説 文選の序 賦 登楼の賦 洛神の賦 蕪城の賦 恨みの賦 詩 大風歌 秋風の辞 蘇武に与う 三首(うち一首) 怨歌行 飲馬長城窟行 古詩十九首(うち五首) 短歌行 七哀詩 二首 従弟に贈る 三首(うち一首) 雑詩 二首(うち一首) 公讌 応氏を送る 二首(うち一首) 美女篇 雑詩 六首(うち一首) 詠懐詩 十七首(うち二首) 悼亡詩 三首 詠史 八首(うち三首) 洛に赴く道中の作 二首(うち一首) 雑詩 十首(うち一首) 五君詠(うち一首) 池上の楼に登る 石壁の精舎より湖中に還りて作る 江中の孤嶼に登る 詠史 東武吟 宣城に之かんとして新林浦を出で版橋に向かう 雑体詩 三十首(うち二首) 范安成に別るる詩 文章 出師の表 呉質に与うる書 典論論文 山巨源に与えて交わりを絶つ書 情事を陳ぶる表 北山移文
  • レオナルド・ダ・ヴィンチ 伝説と実像と
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    「天才」と呼んだ瞬間に見えなくなる、本当のすごさがわかる! 絵画・彫刻・建築・土木・軍事……多岐にわたるその仕事は、しかしほとんどが未完に終わった。 彼が生きた同時代において、その名声はかならずしも高いものではなかった。 後世にも驚異をもたらすその着想は、実は彼一人の独創ではなく、先達の知見を踏まえてのものだった。 では「天才」というのはまったくの虚像だったのか? いや、そうではない。 現代の美術史研究による精緻な分析によって、まったくあらたな、一人の類い希なる表現者の姿が立ち上がる! 「フレスコ画を描かない画家」だったということにはじまり、ルネサンス期のイタリア各地を転々とする、苦闘と挫折に満ちた創作の人生を追いながら、神格化されたレオナルド像の向こうにある、真価を見いだそうとする試み。 夢想家〈ファンタジスタ〉レオナルド・ダ・ヴィンチの実像をたずねる、スリリングで発見に満ちた探究の美術史! *本書の原本は、2003年に角川書店より『レオナルド・ダ・ヴィンチという神話』として刊行されました。 【本書の内容】 序 章 神格化されたレオナルド 第一章 フレスコ画を描かない画家  一 システィーナ礼拝堂の壁画に参加しなかったレオナルド  二 ヴェロッキオ工房で修業したこと、しなかったこと  三 超えられない先輩ボッティチェッリ  四 ≪東方三博士の礼拝≫―先達への挑戦 第二章 新天地ミラノでの活動  一 ミラノ着任の経緯  二 素描リストの意味  三 技師・発明家・建築家としての真価 第三章 宮廷芸術家の立場と活動  一 舞台美術家としてのレオナルド  二 音楽家・楽器製作者としてのレオナルド  三 スフォルツァ騎馬像制作 第四章 最後の晩餐  一 ついに勝ち得た最大の好機  二 ドラマの表現を完成させたレオナルド  三 成功と悲運 第五章 夢ファンタジスタ想家レオナルド  一 フィレンツェ帰還  二 ≪ジョコンダ(モナ・リザ)≫と晩年のレオナルド  三 絵画による世界の完全な視覚化を目指して 参考文献・図版出典一覧 図版目録 あとがき
  • 明代二大茶書 張源『茶録』・許次ショ『茶疏』 全訳注
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    唐代に、陸羽によって著された世界最古の茶書『茶経』に次いで、明代に書かれた最重要茶書二書の全訳注版です。 日本の煎茶道や最近盛んになりつつある中国茶の源流ともいえるのが、明代に行われていた「喫茶」です。 明代には、茶の文化が隆盛をしており、数多の茶書が著されましたが、それ以前の茶書の剽窃や焼き直しがほとんどでした。 そういった中にあって、本書で取り上げる『茶疏』と『茶録』は、独自の探究によって書貴重な貴重な茶書です。 製茶法、貯蔵法、茶器の選択、飲み方、客人の迎え方、などなどを具体的に描きます。 茶を、おいしく、楽しく、清らかに飲むやり方を追究します。 中国のみならず、日本にも伝わり、江戸時代には上田秋成『清風瑣言』をはじめ、多くの書物にも引用され、おおきな影響を与えています。 全訳注として、 【訓読】【現代語訳】【原文】【注釈】 を加えました。 喫茶愛好家必携の一冊です。 理解を助ける図版も収録しています。 本書は、訳し下ろしです。 【目次】 まえがき 1 張源『茶録』 張源『茶録』について 凡例 茶録引 顧大典 採茶 造茶 弁茶 蔵茶 火候 湯弁 湯有老嫩 泡法 投茶 飲茶 香 色 味 点染失真 茶変不可用 品泉 井水不宜茶 貯水 茶具 茶盞 拭盞布 分茶盒 跋茶録 沈周 2 許次しょ『茶疏』 許自しょ『茶疏』について 許自しょ伝 凡例 題許然明茶疏序 桃紹憲 茶疏小引 許世奇 凡例 産茶 今古製法 採摘 炒茶 収蔵 置頓 取用 包せき 日曜頓置 択水 貯水 煮水器 火候 烹点 秤量 湯候 甌注 とう滌 論客 茶所 洗茶 童子 飲時 宜輟 不宜用 不宜近 良友 出遊 権宜 虎林水 宜節 辯訛 攷本
  • 弥勒
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    世界が終わるとき、やってくる。 蘇我馬子も藤原道長も惚れ込んだ弥勒(みろく)信仰。五十六億七千万年後に降臨し人々を救う、未来仏とは何か? 広隆寺の国宝として有名な、弥勒菩薩半跏思惟像。弥勒とは、五十六億七千万年後に現れて衆生を救うという、阿弥陀や釈迦と並ぶ仏のことである。古代日本に伝わると、災害や飢饉と結びつき、末法思想(メシアニズム)として全国の民衆に広がった。戦後民俗学の泰斗が、中国・朝鮮との比較を通して、日本独自の弥勒信仰の歴史と民俗を復元し、日本文化の原型を描き出す。宗教民俗学を土台にした日本文化論! 【目次】 はじめに 第一章 民間伝承としての弥勒 第二章 宗教運動と弥勒 第三章 比較宗教論における弥勒 第四章 日本仏教における弥勒 第五章 鹿島信仰と弥勒 第六章 朝鮮半島と沖縄の弥勒 第七章 世直しと弥勒 第八章 大本教の中の弥勒 まとめ
  • 天球回転論 付 レティクス『第一解説』
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    地球は動いている――。プトレマイオスからおよそ1400年続く天文学を覆したコペルニクス(1473-1543年)。ケプラー、ガリレオ、そしてニュートンへと続く「科学革命」は、この発見に始まる。それは「革命」という言葉の華々しさとは裏腹に静かに、本人さえその帰趨を自覚しないままに始まった。 コペルニクスはいかにして地動説に至ったのか。『天球回転論』全6巻のうち、地球の運動について記された第1巻と、『天球回転論』の公刊に先立ってコペルニクスの地動説を初めて世に知らしめた弟子ゲオルク・ヨアキム・レティクス(1514-74年)の『第一解説』の本邦初訳をあわせて収録。 コペルニクスが生涯をかけた書物『天球回転論』が、ニュルンベルクの出版社から届けられた1543年5月24日、それを待っていたかのように同日コペルニクスは他界する。「プトレマイオスを模倣しようとした」、「天文学の再興者」と言われるほどに、その構成や研究に対する姿勢は、プトレマイオスの『アルマゲスト』に倣ったものだった。ただ一点、「地球が動いている」ということを除いては――。 1400年の長きにわたって支配的であったプトレマイオスの天文学およびアリストテレスの自然学体系に、『天球回転論』がうがった小さな穴は、やがて大きなひび割れとなって従来の伝統的宇宙観を根本から打ち破り、人間の世界に対する認識を大きく変容させることになった。 神学者や世間の反応をおそれて長らく原稿の公開をためらっていたコペルニクスに、出版を強く勧め最終的に承諾させたのが唯一の弟子レティクスである。かたくなに出版を渋るコペルニクスは、レティクスがまず『天球回転論』を簡潔にまとめたものを世に出すことで妥協した。この『第一解説』の好評に力を得て、コペルニクスはついに公開を決意する。『第一解説』は、その後もコペルニクス説の入門的概説として版を重ねることになった。 コペルニクスはいかにして地動説を導き出し、前代未聞の「地球の運動」をどのように語ったのか。文字通り「世界を動かした」書物の最重要部分と本邦初訳となる『第一解説』を収録!  (『完訳 天球回転論』みすず書房、2017年より第一巻を収録、レティクス『第一解説』は新訳) 【本書の内容】 『天球回転論』第1巻目次より 宇宙は球形であること/大地もまた球形であること/地球の大きさに対する天の広大性について/地球が、いわば中心として、宇宙の真中に静止しているとなぜ古代の人たちは考えたのか/地球に複数の運動が付与されうるか、および宇宙の中心について/地球の三重運動についての論証……など。 レティクス『第一解説』目次より 恒星の運動について/古代の天文学者たちの仮説が廃棄されねばならない主な理由/天文学全体の新仮説……など。
  • 妖怪学とは何か 井上円了精選
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    妖怪博士の妖怪退治!! 「コックリ」「天狗」「狐憑き」から、「妖怪屋敷」「西瓜(スイカ)の幽霊」「経を誦(よ)む古木」まで、全国の妖怪事象を蒐集しつつ、御一新の世になお蔓延る迷信を一網打尽にせんとした奇特な哲学者を突き動かしたものとは一体何だったのか? 「妖怪学講義録」「おばけの正体」など、妖怪学の創始者・井上円了の精華をオリジナルに厳選した、決定版アンソロジー。 [目次] 編者序文 妖怪談 妖怪学講義録 『妖怪学雑誌』論説 (真怪論/妖怪学と諸学との関係/忘憂術/論怪) おばけの正体 補遺 (妖怪学講義細目/妖怪学講義参考書目/井上円了調査地一覧) 注
  • 新版 紫式部日記 全訳注
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    □絢爛たる宮廷生活、吐露される人生の憂愁□ 『源氏物語』という世界史的作品を生んだ紫式部は、平安王朝の実像を後世に伝える貴重な日記も遺していた。 敦成[あつひら]親王の誕生を中心に御堂関白家の繁栄を描く本書は、最盛期の平安朝宮廷の生活絵巻であり、作者の複雑な心境が吐露される貴重な文献でもある。 道長との歌の贈答、中宮彰子への新楽府御進講、和泉式部や清少納言などに対する辛口の批評、一条天皇の行幸…… 宮廷社会を舞台に繰り広げられる儀礼や賀宴の日々を見つめながら、紫式部は自己を冷厳に凝視し、憂いに満ちた内面を語ってもいる。 一人の平安びとの精神的軌跡が作品として昇華された日記文学を、全訳注で味読する! *本書は、2002年に講談社学術文庫のために訳し下ろしされた『紫式部日記』上下巻を一冊にまとめ、新版としたものです。

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