小説・文芸の高評価レビュー
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Posted by ブクログ
私の会社のボスが雑談で話題に上げた「白い巨塔」は思ったより、いや想像以上に人間社会の醜聞を見事に描き表している。
一巻では財前五郎助教授が国立大学病院の教授ポストを巡り政争に挑む。。。ドロドロ。。主人公を含め各者が自己の利益の為だけに頭と身体と金と人脈を使う。
東教授の退任に伴う、後継教授の選任なのだけれども、若手花形外科医として注目される財前助教授に退任後の自分の地位を脅かされかねないと、東教授は直属の部下であるはずの財前の変わりに他大学からの移入教授を画策する。
その心の内側が生々しい。
一 人事なんてものは、所詮、こんなつまらぬ些細なことで決まるものなんだ、何もこの場合だけじゃない、 -
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土砂降りの雨が降る夜道、泥酔して眠る夫を乗せて車を運転していたかおり。友人からの電話に気を取られ、老婆を撥ねてしまう。怖くなってそのまま走り去るが、轢き逃げの罪で服役。服役中に息子を出産する。息子は離婚した夫に引き取られ、「母親に死なれた子供」として育てる旨を告げられる。かおりは出所後、息子に会いたい気持ちを抑えられず、息子の通う幼稚園を訪れるが…
結婚して、子供を産み、家族を作り、子供を成長させ、夫とともに年をとり、次の世代の家族へバトンを渡す。そんな世間一般の人たちの歩く道から踏み外してしまったかおり。過ちと向き合い、ひたすら息子を想ってひたむきに生きる。裏切られたり前科を知られて後ろ指 -
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読み、読みたい!と思いました。
大好きな辻村深月さんの作品です。
たのしみマックスで本を開きました。
白く凍った海の中に沈んでいく
くじらを見たことがあるだろうか。
苦しげに息をするくじらが、一頭、
また一頭と沈むのは、痛々しかった。
汚れ一つない真っ白な氷の間から覗く海の青は、
底なしに暗い。
それは、芹澤理帆子の好きな色だ。
物語は理帆子さんの尊敬する
藤子・F・不二雄先生の遺した言葉
「すこし・ふしぎ」
理帆子さんが自分につけた
「少し・不在」
この色彩の中で優しく限りなく優しく
優しさの中で 激しく心を揺さぶられながら
読み -
Posted by ブクログ
海外に行ったことがないがために海外への憧れがあり、少しでも海外のことが知れればと思って読んだ1冊。インドについて知れたことに加えて、自分の生き方について考えさせられるすごく良い本だった。
濃いのはやはりストリートチルドレンの話。
発展がものすごい勢いで進んでる、というイメージしかないインドの中で起きている真実を全く想像していなかった。
また登場人物の背景の描写でよりリアルに感じて、それぞれの人生を考えさせてくれるのが良かった。
本当にJKか?と思うほど知性が散りばめられた文章に驚きつつ、若い人のパワーやピュアなところに心が洗われた。自分が同じ時期に行ったら何を考えて、何をしただろうか。何も -
Posted by ブクログ
出版社の宣伝文句が「究極のクマ本 緊迫の実録ノンフィクション! 羆(ヤツ)は、必ず戻ってくる。」というゴシップ誌みたいな煽り文になっているが手に取ってみると「驚愕の手記」というよりは560日間、対策チームが地道にOSO18という羆(ヒグマ)を追うことになった経緯、事の顛末が連ねてある至極真面目なノンフィクションだった。
著者の藤本靖氏は対策チームのリーダーなのだが、書いてある内容如何だけではなく、文体から、「この人は様々な事に気を配っている人で、いつも皆から頼られる人なのだろうなぁ」と人物像が自然と想像できた。
例えば、対策チームは藤本靖氏が普段一緒に狩りをしているハンターたちで構成される