小説・文芸の高評価レビュー
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令和になって共感者がなお増えるのでは
主人公・小野益次が自分の過去の記憶を辿る真面目な姿勢に好感を持つ。なぜだろう。
漱石の『こころ』の主人公・先生は、明治の精神に殉死した。その死は衝撃的で、読者への問いかけはあまりにも大きく、先生は「先生」という神になり読者に越えられない存在となった。
その点、読後の小野は身近だった。戦前は耽美主義的な絵を習い、戦時中にかけ軍国主義を煽る絵を描いて名声を得、戦後は画家を引退したが、時代の大きな変わり目を迎え、先生と呼ばれなくなっても、殉死せず生き続けている。過去を振り返る姿勢は、ある時は自分に厳しいが、ある時は自分の行動を肯定し美化する。信念に従って生 -
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不登校の子に対しては、もっとひりひりする書き方があっていいはずだ
本書の語り手は主人公の中学生。その設定で物語を書くのは、かなり難しいはずだ。
その場面にいる主人公であるときは言葉足らずの未熟な女の子で、地の文を語る部分では分析力のある大人のようになっている。表現の下手な人間は心の中でも表現できていないはずなのに、心の中では次々言葉を紡ぎ出している。人物設定にちぐはぐさを感じる。
その結果、中学生の同世代の会話に迫力が出ていない。表現できないもどかしさのぶつかり合いが生じていない。それは語り手が地の文ですぐに説明してしまうからだろう。
子ども向けの本としては、いいのかもしれないけれど、 -
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輪廻から脱線したおっさん
一言で言えば、暗い作品。まず何より主人公が暗い。この作品は家族4人の独白談を集めた構成になっており、最初と最後の章を語る男、つまりお父さんが主人公だと読めるのだが、お父さんの性格があまりに暗いために、作品全体がどうしようもなく暗い。
お父さんは、子供が間引きされていた東北の田舎の家で生き残り、東京の家に養子に出されて成人した。若い頃には、恋仲になって妊娠させた看護婦を自殺に追いやってしまい、妻との間に最初にできた子は生後間も死んでしまい、五十半ばの現在になって、堕胎したばかりの女を行きがかりで世話するようになってしまう。いつも意識を過去と交差させているから、自分で -
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ネタバレタイトルに惹かれて手に取りました。
自由研究という無邪気な枠に、過去の殺人事件をぶち込む発想がまず面白い。
主人公ピップがとっても魅力的!
正義感が強く、緊張すると雑学が出てしまうような可愛らしさもあり、一気に好きになった。
ただその正義感ゆえに、真実に近づくほど少しずつ削られていく姿には、心配になる場面も多く、目が離せなかった。
自由研究という形式で物語が進むことで、ピップと一緒に調査しているような感覚になり、没入感がとても高かった。
真犯人は最後までわからなかったなあ。
続編やドラマ化されていると知り、大歓喜!!!
久しぶりのミステリー小説でしたが、読後には「ミステリー最高…!!! -
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急遽の帰還ミッション中に事故に遭って火星に取り残された男の話
映画「オデッセイ」の原作
だけど私は映画を未視聴
火星の有人探査ミッションで到着後3日で砂嵐に見舞われ、帰還を余儀なくされたクルー達
帰還船への乗船の際に、折れた通信アンテナがEVAスーツを貫通して原に刺さり、風で飛ばされしまったマーク・ワトニー
他クルーはスーツの気圧や生体反応のモニタリングの結果、ワトニーを残して地球への帰還船に乗る
しかし、ワトニーは生きていた
次に火星にやってくる有人探査は4年後
通信手段もなく、食料も持って1年分
かろうじて生き残ったワトニーは、植物学者とメカニカルエンジニアとしての知識を駆使し、今の -
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外交販売員として働くグレーゴルは、朝起きたら巨大な虫になっていた……という設定が面白い。虫になった割には冷静かもしれない。絶対にそれどころではないのに、上司を説得しようとしているし。稼ぎ頭であるという責任感がきっとそうさせている。
・ずっと仕事がストレス
・両親の借金を返さなくてはならない
・5年間無遅刻無欠勤からの寝坊
……まるで適応障害になったときの私みたい。
・さまざまな種類のご飯を用意してくれる妹
・りんごを投げつける父
・家具をどうするかについての母娘のやり取り
「グレーゴルとどうやって向き合う?」という家族の悩みや苦しみが感情豊かに描かれている。家族の1人が突然変わってしま -
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作者の目線を通して語られるイギリス社会の有り様はとてもポップに面白く書かれていて読んでて飽きない。それはたくさんのエピソードが合わさった構成だから、というのもあるが、日本とは異なる世界を通じて、時に作者の息子をきっかけにしてたくさんの学びを得られるからかもしれない。
特に印象に残ったのは、「分断とはそのどれか一つを他者にまとわせ、自分の方が上にいるのだと思えるアイデンティティを選んで身にまとうとき起きるものなのかもしれない」の一節だ。
自分の優位な立場に立って、相手を下に見ることが、自分の価値観を相手に押し付けることを意味し、それが分断につながるということだ。
非常に納得である。
相手へのリ -
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ひめゆり学徒として戦争を体験した山内祐子さんの話は、とても重く、心に深く残る。
特に「どう死ぬかを選ぶ」という言葉には強い衝撃を受けました。本来、子どもが考えるべきことではない選択を迫られる状況があったことに、言葉では言い表せないほどの理不尽さと悲しさを感じました。「子どもに選択させるなんて、とんでもない」という思いが自然と湧き上がりました。
また、勉強するために学校へ通っていたはずの生徒たちが、戦争によって看護要員として動員され、命の危険にさらされたという事実にも胸が痛みました。未来のために学ぶ場所であった学校が、戦争によって全く違う意味を持ってしまったことに、戦争の恐ろしさを改めて感じま -
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ネタバレ百戦錬磨の警視正キャットと、AI捜査官ロックがバディを組んで未解決事件に挑む作品。
刑事の勘と、データや確率を重視するAIのやり方がぶつかりながらも、少しずつ真相に近づいていく展開は、ミステリとしても純粋に楽しめた。
印象的だったのは、ロックが「お悔やみ申し上げます」と人間に話しかけるシーン。
それをキャットは、自分には理解できない感情に対して、ただ学習した返答をしただけだと不快感をあらわにする。
けれどふと、友人たちが皆やっていることではないかとも思う。
「あなたのことを思っています」というメッセージ。心から思っていなくても、言葉を選ぶことは普通にある。機械の言葉と本当に違うのだろうか、
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