小説・文芸の高評価レビュー
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歴史の転換期に立ったイングランドを舞台に、多数の実在の人物を壮大なフィクションの世界に引きずり込んで繰り広げられる謀略の物語。上巻で積み上げられた謎を下巻で解き明かしていく構成で、正直、上巻はかなり忍耐力が必要でした。
書物と宗教的背景が絡んでくるためウンベルト・エーコ『薔薇の名前』が引き合いに出されていますし、「犯人探し」の体裁を取ってもいますのでクリスティも言及されています。が、おそらく読書子各位はそれが作品を皮相的に捉えただけの惹句であろうことを、早々に見抜いた上で読み進められたことと思います。
そういう意味では、クリスティもエーコも「レッド・ヘリング」だったと言えるかも知れませんね -
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2025!な本だった。各登場人物の視点で描かれる性被害の内容は、どれも納得感があって、そりゃそうだよなと思ってしまった。本当に悪気があってやったこと以外に、本当に100%自分が悪いことなんてないのかもと。自分の言い分が介入することなんて当たり前で、その言い分も、相手がこうしたからこうと少しの言い訳をひっくるめて行動してるんだもの。どの言い分と真っ当に感じて、自分が気持ち悪くなったりも。立場を変えるだけで納得できてしまって、所詮自分も相手も人なんだなと、社会の様相や価値観が少しずつ変わってもそれについていける人といけない人、そしてその価値観が入り混じった状態がずっと続くのだもの、と。なんだか言葉
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Posted by ブクログ
ネタバレ木爾チレン氏の小説は初めてでした。
ふたりの対照的な女性作家が主人公になりますが、病弱で入退院を繰り返していた天音は冴理の小説で勇気づけられ、元気になり、憧れの冴理に近づきたいと、同じ高校、大学に進みます。
しかし、近づけば近づくほど緊張で、思ってもみないことを言ってしまったり、余計なことをしてしまったり。。
私もその気持ちが分かります。
そうしたことで、冴理は目の前に現れた後輩であり、天才的な小説家を自分以上の才能を持つ女性に畏怖、妬み、嫉妬心を持つようになります。
友だちであれば近づいて交流することも可能だったでしょうが、同じ小説家として、徐々に自信をなくして嫉妬から殺意に変わるほど、苦し -
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絶対に終電を逃さない女さん(以下、終電さん)の『虚弱に生きる』を読んだ。
「虚弱エッセイ」という、今までにないジャンルのエッセイである。
いや、まったくなかったわけではないのかもしれない。私はいろんな人のエッセイをちょこちょこ読むが、中年以上の文筆家の人などは、一冊のなかに何度かは体調不良に関するエピソードが出てくる。
ただそれはあくまで、デフォルトで平均的な健康さを有している人が、時たま自分の身に起こる体調不良を綴っている、という文脈だ。
終電さんのように、デフォルトで「虚弱」が搭載されてしまっている人が、日々のあれこれをどう乗りこなしているのか、というのとは確実に文脈が異なって -
購入済み
おもしろかった~~~、ゆるい、脂ジューシーなお肉嫌いな人から見た肉ってこんな感じなのね食べづらそう、、、っていう学びを得た。
そんな私はこれ読んで焼肉に行きたくなってしまったし生ハム片手にお酒飲みたくなった。肉の描写がやたらと上手。 -
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どなたかの本棚で面白そうだったので、ずっと気になっていた脳神経学者オリヴァー・サックスの一冊目はこちらに。
利き腕を怪我した場合、反対の手や足でできることが増えることがある。脳の内部でプログラムや回路が変化して、異なる行動様式を習得したのだ。
このように欠陥や障害により潜在的な力を発揮して躰が再構築されることがある。
このように、人間の脳や身体の病から別の機能が発達する症例に接して、脳の機能だとかそこから構築される人間の個性とかを感じるドキュメンタリー。
『色盲の画家』
65歳のジョナサンは交通事故の頭部損傷で目の認識が変わった。視力は鋭くなり遠くの物が認識できる。しかし色が全くわからなく