小説・文芸の高評価レビュー
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ネタバレ「光のとこにいてね」。
自分は光の当たる場所にいることは出来ないけれど、せめて貴方には明るく温かい場所にいて欲しいという思いがこもった舌足らずなこのフレーズが心の中で何度も反芻している。そんな余韻を味わうことのできる小説だった。
結珠と果遠、2人の関係性を果たして「恋愛」というありふれた言葉で表して良いのか。もっと固く重厚で、でも温かく優しい言葉が2人にはぴったりだと思う。自分の持つ語彙ではその言葉は見つけられないけれど。
果遠が縋る結珠を強引に引き離してまで置いておきたかった「光のとこ」は、彼女自身の側であったこと。そのことに果遠がやっと気づくことができて良かった、とちょっと泣きそうになってしまった。 -
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読書好きな人が口を揃えて面白いと絶賛していた恋愛小説で前々から気になっていたのをやっと読むことができた。
物語の主人公、元書店員の一香は、並外れた嗅覚を生かしてオーダーメイドで「香り」を作る調香師の朔の元で古い洋館の家政婦として働くことになる。
そこで働くためにはたくさんの変わった条件があった。身につけるボディソープや化粧水などの日用品は、全て朔が調合した品ではなくては駄目であり、仕事中にはシンプルな無地のワンピースを着ることも義務付けられている。そして、彼の元で働くためには「嘘」をついてはいけない。
一香は自分の兄が孤独の悲しみから自ら命を絶ってしまったという暗い過去を持っており、彼女はそんな兄の姿を、天才ゆえに誰にも理解されない辛さを抱える朔に重ね、徐々に惹かれていく。
本作では2人の関係性の変化や、館の人たちとの関わりを通して成長する一香自身の姿などを、鼻腔を刺激する丁寧な香りの描写を交えながら楽しむことができる。
まず始めに、魅力的な舞台設定で読者を物語の世界観に引き込むのがとても上手いなと思った。町外れに佇む「ヘンゼルとグレーテル」のお菓子の家みたいな洋館、不思議な雰囲気を纏う天才調香師とその幼馴染の探偵のコンビ、秘密を抱え、香りを求める客人たち。今から一体何が始まるんだ…!というお菓子の箱を開けるようなワクワク感を物語の序盤で味わうことができる。その後ももちろんページを捲る手は止まらない。1日だけで一冊の小説を読み切ったのは久しぶりだった。
自分自身の記憶の中に刻まれた変わらない香りを求めて館を訪れる客人たちと同じように、朔もまた「永遠に変わらないもの」を求めており、「変化」を強く恐れている。彼が浮世離れした館で密かに店を開き、新城や源さんなど、必要最低限の人との関わりしか持たなかったのもそれが理由なのだろうかと思った。
そして物語のラストで朔は、一香がいつか自分から離れていってしまう「変化」に怯え、記憶の引き出しを無理やり開けることで彼女を暗い過去から解放し、突き放してしまう。このまま2人は疎遠となってしまうのだろうかとハラハラとした思いで読み進めると、一香は家政婦としてではなく友人として洋館を訪れてもいいかと朔に尋ね、関係が「変化」してもそばにいると彼に優しく告げる。一香の言葉を受け止めた朔は「また新しい薔薇が咲いたよ」と自分のずっと変わらない生活の中でも存在していた小さな「変化」である庭の花々の開花を彼女に伝え、物語は幕を閉じる。なんて綺麗で心がすっと軽くなるラストシーンなのだろうと思った。この物語は重い過去に囚われ、「永遠に変わらないもの」を強く求めた朔が、「変化」は恐ろしいものではなく、時に温かい希望も運んで来てくれるものだと気づく、心の成長を描いたものでもあるのだと感じた。 -
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町田先生の作品は、いつも切なくなったり苦しくなったりするんだけど最後は絶対に心があったかくなる。
読み終わると自分も何かを得た気持ちになる。
そんな町田先生の作品がわたしは大好きです。
宙ごはんも、どんな作品なのかなって読み進めると、やっぱり苦しくなる部分もあった。
なんでこんなひどいんだろう....しんどいって気持ちになったりね。
「人は物事をフィルター越しにしか見ることができない」って作中にもあったけど、ほんとにその通りだと思う。
読み進めると、そんな人間の奥底を知ると、ああそんなことがあったのね...って
フィルター越しで決めつけるのは駄目だなって思った。
個人的に花野さんにたくさん感情移入しました。
女性として、母として、未熟な部分がたくさんあるけど、苦労もしたけど、色々な人と出会って色々な経験をして歳を重ねて、いくつになっても成長している姿に、自分も重ねて、頑張ろうと思いました。
正しさだけが正義じゃない。時に間違えることもあるけど、また進めばいい成長すればいい
そんなふうに思わせてくれました。
わたしの中でまた大切な1冊が増えました。
ありがとうございます。 -
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ネタバレ大前提として、私はこの剣崎シリーズ、及び明智恭介の事が好きという前提で感想を書かせていただく。
明智恭介、葉山譲が『日常の謎』に取り組んでいくこの本では、主に死人は出ずにほのぼのとした雰囲気で進行していく。
相変わらずクリームソーダを飲んでいる葉山、泥酔した明智、また明智1回生など、見ることはできなかった様々な一面を見ることができ、自分としては満足だ。
トリックとしては、相変わらずの今村ワールドというところで解説や内容が理路騒然と理屈に乗ったったものであった。
ボロビル購入の謎は流石に分からなかったが、
コスプレ同好会の事件や、泥酔事件、テスト流出事件等はしっかりとわかるところにヒントが散りばめられており、推理の世界へ引き込んでくれた。
剣崎と明智、2人のホームズの比較になるが、
剣崎は驚異的な頭脳で謎を解いていくのに対し、明智は自分の足と仮説多さで泥臭く真実をもぎ取っていくタイプだ。(どちらかと言うと、明智の方がホームズ寄りではある。)
明智の今後を考えると、飲みに行った同期や隣の住民、探偵事務所の面々を思うと、少し哀しくなる。 -
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ネタバレ
「あなたを、助けたい」
居場所をなくした7人。
集められたのは、なぜ彼らだったのか。
ネタバレが苦手な方はまわれ右!
私が、大学生の頃に話題になった一冊。
友達が徹夜で読みきった理由が、よくわかる。
真相が近づくにつれて、物語の世界に没頭してしまう。
一気読み間違いなし。
と言いつつ、私は読むのが遅いので、1週間くらいかかってしまった。
独身時代なら、私も徹夜で読んだと思う。
序盤では、イライラした。
私も母親だからだろう。
自分の子どもが、こころちゃんみたいな目にあったら、いたたまれない。
相手の子に対して、腹を立てていた。
読みながら、こころちゃん頑張れ!
って応援したくなる。
こころちゃんのお母さんも、何も事情がわからないと、怠けてるだけなんじゃないかと思っていたのだろう。
でも、いざ我が子がされたことを知った時は、とても悔しくて、辛かったと思う。
後悔で胸が痛かったのではないだろうか。
7人それぞれの事情が描かれた場面でも、全員を応援したくなった。
みんな理由はバラバラだったけど、自分や子どもがされたらって思うと、悲しくなるし助けたいと願う。
読み進めていくうちに、なんとなくこの7人が、どこから集められたのかわかった。
物語の終盤で、謎解き要素もあって、少し楽しく感じた。
今は会えなくても、いずれ会える。
姿が違うけど、助けに行く。
実はもう出会っている、そう思うと、現実でも起きたら素敵だなと思った。 -
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私たちが「自分」と呼んでいるものは何でしょうか?
それは、過去に出会った人の面影だったり、ふとした瞬間に眺めた風景の記憶だったり、あるいは選ばなかった選択肢への小さな傷跡のような、かたちのないものが寄り集まってできるものなのかもしれません。
そして、様々な人と関わり、傷つき、あるいは救われるなかで、少しずつ削り出されるようにして「自分」になっていくようにも思えます。どこか掴めないけど、深く広い。まるで、どこまでも続く青のように。
谷川俊太郎の「青は遠い色」がこの本のことをよく表してるようにも思えたので、載せておきます。
どんなに深く憧れ、どんなに強く求めても、青を手にすることはできない。
すくえば海は淡く濁った塩水に変わり、近づけば空はどこまでも透き通る。
人魂もまた青く燃え上がるのではなかったか。青は遠い色。
自分とは、消えない手触りを誰かの中に残していくことなのかもしれませんね。
ジョアンヌとエミルがこの詩を知っていたら、きっとあのノートに認めていたんじゃないかな、と思います。 -
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都会で仕事や時間に追われるように生きるのも、別に悪いことではないと思う。ただ、選べるとしたら。どちらの生活も体験した上で、より自分がしあわせに豊かに過ごせるのはどちらかを選べるとしたらどうだろうか。少なくとも、まいがおばあちゃんと過ごした経験は今後のまいのどう生きたいか、という軸に影響を与えていると思う。
パリッとした布団で寝たり、手をかけて身の回りの洗濯をしたり、食べるものは時間をかけてつくったり。本来ある豊かな時間を排除した先に、きっと失って見えなくなるものがたくさんあるはずで、それに気付かせてくれた魔女に感謝したい。ガラスに残された文字、誰もが感じたことのある死への恐怖を抱えていた孫と交わした約束を形にして残したおばあちゃんの大きな愛が、あたたかくて胸がじんわりしました。
子どもの頃に読んだらまた違う感想になると思うけど、大人になった今出会えてよかった物語でした。真っ赤であまい香りのするいちごと、たっぷりの砂糖を使っていちごのジャム手作りしてみたいです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ2巻へ突入。元々はノベルス版の上下巻だったことを考えると、1、2巻の間で区切られているわけではないのだなと思いつつ読み進める。合間に差し込まれる「間奏曲」のモノローグは、誰の視点なのか。後半で中也が問題点を整理してくれる展開は、読者として非常に助かる。同時に、列挙した謎をこれから論理的にきれいに解決してみせますよという、綾辻さんの決意も感じた。また、犯行現場の図面も理解の大きな助けになる。不謹慎な言い方にはなるが、1巻で犠牲になった蛭山は使用人であり、いわば部外者だった。しかし二人目の犠牲者が出たことで、ついに浦登家の血族にまで手が及び、物語が一気に盛り上がってきた。
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