小説・文芸の高評価レビュー
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読んでいる間中、自分の故郷、両親、祖父母のことなどが次々思い浮かんできた。最後の「場所」「父のビスコ」では涙があふれてきた。
今年の春、母が逝き、父が施設で暮らすという状況の中で読んだものだから、このように振り返ってくれる娘がいて、なんとお幸せなご両親だろうと思った。平松さんと自分を比べても仕方がないのだが、東京にお住まいなのに岡山のご両親のお世話を十分にされて、自分のことを「ダメな娘」と反省する。お元気そうだったお母様もお亡くなりになったと最後に知り、私と父の時間もそんなにはないと、当たり前なことに改めて気付いた。
文庫の最後の木内昇さんの解説以上のことは何も書けそうにない(当たり前か)。 -
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人の善意が連鎖して行き場のない人を支えていく物語。
あたたかいこの物語の伴走者がヨウムのネネであるところが、ちょっとユニークだ。
母親の再婚相手に短大の入学金を使い込まれた山下理佐。
小学校二年の妹、律はその再婚相手から家を閉め出されたり、理不尽に叱られたりして、家に居場所をなくしている。
それを知った姉の理佐が、県外に見つけた蕎麦屋の求人に応募することを思い立つ。
「鳥の世話、じゃっかん」という謎の業務つきの。
こうして物語が動き始め、不安ながらもこの二人を受け入れた蕎麦屋店主の守・浪子(鳥アレルギー持ち)夫妻、近くに住む画家の川村杉子さん、律の小学校の担任になった藤沢先生らが姉妹を見守 -
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ネタバレ(2025.11再読)
昭和50年頃の話。ちょうど今から50年前。終戦から30年ばかり。
40代以上は、戦争経験者であったり、戦争の記憶があったり、というところだろうか。
ちびまる子ちゃんと同じくらいの年代。もちろんスマホなどない時代だが、ちびまる子ちゃんを観ている時と同じで、それほど古さは感じない。古いというより懐かしいという感じ。
むしろ、シングルマザーや、マンションを持っている独身キャリアウーマンがさらっと登場し、意外に現代的で驚いてしまった。
作中で、印象に残った石田先生のお母さんのセリフ。
「戦争に敗けて、何もかも根こそぎ変ってしまった」「世の中は、私の生きている間だけでも千変万化 -
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東京ディズニーランド誘致物語である。堀貞一郎、小谷正一らを描いているのだが、調査・研究が精緻で面白い。当時は、豪快な人たちがたくさんおり、その人間関係でプロジェクトが成り立っていることがよくわかる。勉強になった。
「(バスの中の昼食で、コンパニオン2人が食前酒の注文を取り、一行に提供した)ディズニーの幹部が昼食やパーティの席で日頃どんな食前酒を飲んでいるかについて、事前に詳細なリポートを送っていたのだ。堀たちはそのリポートを分析し、各人の注文のパターンが多くても3通りくらいしかないことを掴んでおり、そのおかげで小さな冷蔵庫に全てを詰め込むことができた」p25
「(車中のステーキランチ)堀は事 -
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ネタバレ思えばミステリーをあまり読まない私は、
犯行を暴く側の話は読んだことがあるものの、犯行を企てて追われる側の話って読んだこと少ないかも。
奥田英朗さんという一点で読み始めた時はデパート外商部のお話かと思ってたけど、まもなくジェットコースターに乗せられて一気に終着点まで来てしまった感じ。この感覚、いい。
直美は自分の家族のこと、やり直したかったんだろうな、でもそれが子ども故に出来なかったから加奈子と共犯になることで自分の過去もやり直そうとしたんじゃないかな。
加奈子が夫のクリアランスに乗り気になっていったのには正直驚いたけど、おいしい水が飲みたい、って理由が、さすが奥田英朗さんという感じ。
李