小説・文芸の高評価レビュー
-
Posted by ブクログ
なんという作品だ。
鉄道×グルメ×百合という、聞いたことも読んだこともないジャンルの顔をしつつ、統治者と被統治者の溝に真正面から切り込んで来る。私たち日本人が「台湾は新日だから〜」と言っているのも、植民地化の時代を生き抜いて、財産も土地も文化も奪われた方々からすると、まさに作中の千鶴子や美島が感じた思いを抱いているに違いない。
また、向こうではこの作品の売り方についてかなり批判があったようだが、著者の楊さんは「文学と歴史、どちらがより真実に近いのか問うてみたかった」という趣旨のことを語っていたようで(訳者あとがきより)、この一言には重みがある。実際私も最後はかなりドキドキしながら読んだし、あま -
Posted by ブクログ
ネタバレくどうれいんさん、染野太朗さんが交互に詠み繋ぐ、恋の歌集。
“すべて”って言いきっちゃってるタイトルがもうすごい。
ただうっとりするだけではない、様々な恋の形が、この一冊に。
北岡誠吾さんによるブックデザインも素敵。
【くどうれいん】
「焼きほっけしぶとく食べきるんですねわたしを攫うなら攫いきれ」
先日読み終えた大滝さんの歌集にも、魚の食べ方の歌があった。
魚の食べ方って、性格が出るもんなぁ。
私を狙ってるならチマチマつついてないで、ガバッと攫ってみろと。
くどうさんらしいな。
「この恋は海に行きたくない恋だ もういい、深いのもとおいのも」
重く深い恋や、願ったり想ったりする遠い恋。
-
Posted by ブクログ
児童虐待や性的虐待、不妊治療、貧困問題など、胸が苦しくなるテーマが次々と描かれ、読み進めるのが辛くなる場面も多かった。それでも最後まで読んで本当に良かったと思える一冊。
虐待やネグレクトを受ける5歳の壮大くんを助けたいと奔走する「こども家族支援センター」の志穂。不妊治療を続ける専業主婦の郁美。兄から性的虐待を受け、家を飛び出した17歳の那希沙。三人の女性を中心に物語は進んでいく。
単に「虐待はいけない」「貧困はつらい」と訴えるだけではなく、「血のつながりだけが家族なのか」「子どもは誰が育てるべきなのか」「人は過去を抱えながらも前を向いて生きていけるのか」と、さまざまなことを考えさせられた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ
◯カエル男事件は、カエル男だけが悪者?
凶悪な連続殺人鬼カエル男に翻弄される社会や警察と、それを追う刑事の話。殺人の描写がリアルすぎて、気持ち悪いくらい。言葉だけでここまで死体を想像させられるのかと思う。
しかし、その凶悪さやグロさだけがこの本の面白さではない。その事件から見えてくる社会の闇や矛盾、そしてもどかしさ。特に刑法第39条の絡んだ事件では、被害者が感じる理不尽さやそれに対する社会からの批判。この問題は難しい。日本の法律では、思想ではなく行為を罰する責任主義が採用されている。しかし、精神疾患があると認められる者は、責任を取り得ないため処罰できない。この考え方は精神障害者の人権を