【感想・ネタバレ】雨音のレビュー

あらすじ

「その不謹慎な美しさを、ぼくは愛していた」

世界に降り注ぐ、雨音のような銃声と、銃声のような雨音。
残された銃弾に導かれて、僕は彼女に出会った。

「この映画は、だれかを救うことになるのだろうか?」

スミヒコは映画同好会〈幻燈〉の仲間たちとともに、いつか自分の映画を撮ることを夢見ていた。しかし、彼らの大学を突然の銃乱射事件が襲う。穏やかなキャンパスを戦場に変えた理不尽な殺戮は〈痩せ烏〉と呼ばれる正体不明の銃撃犯の死亡をもって幕を閉じた。後輩たちの命を奪い、親友に二度と立ちあがれない重傷を負わせた事件のドキュメンタリー映画をつくることを決意したスミヒコの前に、ベニと名乗る謎の女性が現れる。「死はいつも、すぐそばにある。――戦争は、すでにはじまっている」そう告げる彼女に危うさを感じながらも、スミヒコは心惹かれていく。

装画/今井喬裕
装幀/二見亜矢子

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

 ネタバラシにはならないよう気を付けますが、私の文章を読んでいる暇があるなら、ぜひ作品を読みましょう。傑作です。

 人口三万人程度の閑静な住宅街にある奥石大学で発生した銃乱射事件。教員、学生合わせて31名の命を奪った無差別大量射殺事件によって、映画同好会〈幻燈〉の部員だったスミヒコの人生も一変する。映画同好会の仲間たちを事件で失い、その場にいて生き延びた友人も重傷を負ったこの事件を記録に残しておきたい、と迷いはありつつもスミヒコはドキュメンタリー映画の制作を考えるようになる。そんな折、大学で行われた追悼式で、深紅の女優帽を被った女性の姿がスミヒコの目に留まる。不適切な美しさを持った彼女がその場に置いていったのは、ライフル用の銃弾だった。

 というのが本書の導入。銃を捨てよ、呪いを解け、愛を信じろ。こんな悲痛な恋愛小説を人生で読める機会は中々無いんじゃないか、と一読忘れがたい余韻が残る作品です。罪の意識を抱えてしまったふたりは、ゆるやかに、あるいは急速に距離を縮めていく。このやり取りがほほ笑ましいからこそ、後半の凄絶な展開が苦しく胸に響きます。訪れてほしくないことは、容赦なく、唐突に、自分の意志など無関係に訪れる。静謐な文章も魅力的で、とても苦しいけれど、どこまでも美しい小説でした。

0
2026年01月28日

Posted by ブクログ

装画が今井喬裕氏で内容も面白そうだったので、手に取ってみることに。

東京都の(架空の町)奥石町にある奥石大学。閑静な町にあるキャンパスで突如、ペストマスクを被った男(後に、<痩せ烏>と呼ばれる。)が銃を乱射。教員2名、学生29名が死亡し、犯人も警察官との銃撃戦の末に死亡する。
同大学の映画同好会のメンバーであったスミヒコは、事件直前まで現場に居たが、本を取りに離席したことにより難を逃れる。しかし、同好会の仲間たち4人の内3人は犯人によって射殺され、命を取り留めた親友であるフジオも下半身不随となってしまう。
日本において前代未聞となるこの銃乱射事件について、事件直後の「今しか撮れない」ドキュメンタリー作品を撮りたいと思ったスミヒコは、撮影に乗り出す。そんな中、スミヒコはベニと名乗る、<瘦せ烏>を擁護する謎めいた少女と知り合う。スミヒコは、どこか儚く危うい雰囲気を醸し出すベニに惹かれていく―――。

事件のドキュメンタリー映画を撮影する中で、遺された者の苦悩に触れていくスミヒコたち。それでも犯人である<瘦せ烏>を擁護するベニ。彼女が頑なに<痩せ烏>を擁護する理由・・・それはあまりにも哀しい物語。作品全体を覆う寂寥感、そして読後にやって来る無力感の余韻がなんとも言えない一冊。

0
2026年03月14日

「小説」ランキング