雨音

雨音

小説・文芸
1,980円 (税込)

9pt

3.7

「その不謹慎な美しさを、ぼくは愛していた」

世界に降り注ぐ、雨音のような銃声と、銃声のような雨音。
残された銃弾に導かれて、僕は彼女に出会った。

「この映画は、だれかを救うことになるのだろうか?」

スミヒコは映画同好会〈幻燈〉の仲間たちとともに、いつか自分の映画を撮ることを夢見ていた。しかし、彼らの大学を突然の銃乱射事件が襲う。穏やかなキャンパスを戦場に変えた理不尽な殺戮は〈痩せ烏〉と呼ばれる正体不明の銃撃犯の死亡をもって幕を閉じた。後輩たちの命を奪い、親友に二度と立ちあがれない重傷を負わせた事件のドキュメンタリー映画をつくることを決意したスミヒコの前に、ベニと名乗る謎の女性が現れる。「死はいつも、すぐそばにある。――戦争は、すでにはじまっている」そう告げる彼女に危うさを感じながらも、スミヒコは心惹かれていく。

装画/今井喬裕
装幀/二見亜矢子

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雨音 のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

     ネタバラシにはならないよう気を付けますが、私の文章を読んでいる暇があるなら、ぜひ作品を読みましょう。傑作です。

     人口三万人程度の閑静な住宅街にある奥石大学で発生した銃乱射事件。教員、学生合わせて31名の命を奪った無差別大量射殺事件によって、映画同好会〈幻燈〉の部員だったスミヒコの人生も一変する。映画同好会の仲間たちを事件で失い、その場にいて生き延びた友人も重傷を負ったこの事件を記録に残しておきたい、と迷いはありつつもスミヒコはドキュメンタリー映画の制作を考えるようになる。そんな折、大学で行われた追悼式で、深紅の女優帽を被った女性の姿がスミヒコの目に留まる。不適切な美しさを持った彼女がその場に置いていったのは、ライフル用の銃弾だった。

     というのが本書の導入。銃を捨てよ、呪いを解け、愛を信じろ。こんな悲痛な恋愛小説を人生で読める機会は中々無いんじゃないか、と一読忘れがたい余韻が残る作品です。罪の意識を抱えてしまったふたりは、ゆるやかに、あるいは急速に距離を縮めていく。このやり取りがほほ笑ましいからこそ、後半の凄絶な展開が苦しく胸に響きます。訪れてほしくないことは、容赦なく、唐突に、自分の意志など無関係に訪れる。静謐な文章も魅力的で、とても苦しいけれど、どこまでも美しい小説でした。

    0
    2026年01月28日

    Posted by ブクログ

    読み終えて表紙を見返してはため息。
    ベニちゃん…

    1Qさんの本棚からどーしても読みたくてリクエストで取り寄せた一冊です。
    言わせられてる感がしますが、紛うことなき真実です。

    久永さんは1Qさんに教えて頂いて『わたしちの怪獣』がツボにハマった作家さんで、新作を楽しみに待っておりました(その割に出てるの知らなかったけど)

    なんかね、今回は優しさが滲み出てる文体なんですよ。
    作中にも例として出てますが、マイケル・ムーア監督の『ボーリングフォーコロンバイン』のようなドキュメンタリー映画を作ろうとする話です。この映画をご存知の方は、どんな事件のドキュメンタリーかは察しがつくと思いますが、これがオープニングからして悲しい…
    待ってるのは絶対に悲哀しかない…筈なのに、でもどこか優しい。

    悲しいのに静かな海に包み込まれて穏やかになるような気持ち…
    一抹の希望を持っていよいよ読み始めます。

    前作でも思ったのですが、癖のない読みやすい文章ではあるのですが、語り口が独特なのと映画の例えがバンバン出てくるので合わない方にはとことん合わない作家さんだと思います。
    逆にここが刺さる方は、私と1Qさんのように「あぁあー!!!ええわぁー!!!」となる訳です(1Qさんの実際の温度感は知りませんが、まあこんな感じでしょ?)

    暴力に対して愛の力で抵抗する物語を描いた久永さん。
    猫と奥様を愛していらっしゃる久永さん。

    そんな久永さんだからこそ『レディーインザウォーター』をあんな風に評価出来るんですね。
    私にとってシャマラン監督作品は、予告編が本編やん!!と失礼な事を言いながらも毎回何故か観てしまうという、スルメイカ的な存在なのですが(特に好きではないのに癖になって気づくとクッチャクッチャしてしまう)久永さんは恐らく私とは違う深い目線で監督の作品を観ている筈です。

    だからこその本作。
    上手く伝えられなくてもどかしいのですが、もう少し映画のネタを分かりやすく、抑え気味にして、もう何作か連続で書かれていけば凄い作家さんになられるのではと、クッチャクッチャしながらレディーインザウォーターを見返した私は強く思ったのです!!(ちょっと8さんのまねっこ)

    結論。

    あぁあー!!ええわぁー!!!
    (レビュー放棄ではありません、満員電車の中で愛を叫んでいるだけです)

    0
    2026年05月13日

    Posted by ブクログ

    大学のカフェテラスで、スミヒコは映画同好会の仲間たちとともに短編映画のコンクールに応募する作品について話あっていた。

    スミヒコがみんなに見せたい絵本を取りに行っている間、穏やかなキャンパスが銃乱射によって戦場となった。

    理不尽な殺戮は、正体不明の銃撃犯の死亡をもって幕を閉じる。

    映画同好会の後輩たちの命を奪い、親友・フジオに二度と立ち上がれない重傷を負わせた事件のドキュメンタリー映画を作ることにしたスミヒコの前に謎の女性・ベニが現れる。

    スミヒコは、先輩のキミドリと一緒に映画を撮ることでインタビュー相手に会うことになるが、そこに再び見つけたベニを連れて行くことに…。


    映画を撮ることそのものより、ベニと関わったことで見えてくるものが…
    彼女と親しくならなければ知らなかったことが…明らかになると、またしても戦場と化す。
    危うさを感じながらも手を差し伸べてしまう、彼女の元へと導かれてしまうスミヒコの心は壊れてしまわないのかと…。
    なんとも重たい気分に陥った。









    0
    2026年05月14日

    Posted by ブクログ

    プロローグに、晴れた日でもずっと雨音が聞こえる男が出てきます。最後まで読むとその理由が分かります。なんて悲しい理由なんだろう…。

    物語は東京のとある大学で銃乱射事件が起こったことから始まります。銃が規制されている日本で起こった、死者32名という犯罪史に残る大事件。主人公は難を逃れたものの、所属していた映画同好会の仲間たちが犠牲になります。
    映画を撮ることに憧れていた主人公は、事件のノンフィクション映画を撮ろうと考えます。そんな中、追悼式の日に座席に銃弾を置く少女と出会います。

    いつもの久永実さんらしくない話でちょっとびっくりでした。てっきり今回もSFなのかと思ったんですが、全然違う…。
    面白かったんですが、やっぱりいつもみたいな思いもかけない設定とクスッと笑えるユーモア溢れるSFが読みたいな…。

    0
    2026年03月16日

    Posted by ブクログ

    装画が今井喬裕氏で内容も面白そうだったので、手に取ってみることに。

    東京都の(架空の町)奥石町にある奥石大学。閑静な町にあるキャンパスで突如、ペストマスクを被った男(後に、<痩せ烏>と呼ばれる。)が銃を乱射。教員2名、学生29名が死亡し、犯人も警察官との銃撃戦の末に死亡する。
    同大学の映画同好会のメンバーであったスミヒコは、事件直前まで現場に居たが、本を取りに離席したことにより難を逃れる。しかし、同好会の仲間たち4人の内3人は犯人によって射殺され、命を取り留めた親友であるフジオも下半身不随となってしまう。
    日本において前代未聞となるこの銃乱射事件について、事件直後の「今しか撮れない」ドキュメンタリー作品を撮りたいと思ったスミヒコは、撮影に乗り出す。そんな中、スミヒコはベニと名乗る、<瘦せ烏>を擁護する謎めいた少女と知り合う。スミヒコは、どこか儚く危うい雰囲気を醸し出すベニに惹かれていく―――。

    事件のドキュメンタリー映画を撮影する中で、遺された者の苦悩に触れていくスミヒコたち。それでも犯人である<瘦せ烏>を擁護するベニ。彼女が頑なに<痩せ烏>を擁護する理由・・・それはあまりにも哀しい物語。作品全体を覆う寂寥感、そして読後にやって来る無力感の余韻がなんとも言えない一冊。

    0
    2026年03月14日

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    前作『わたしたちの怪獣』がとても素晴らしかったので、新刊をすぐに読んだ一冊。
    とても重く、考えさせられる内容なのに、どこか愛おしさを感じるストーリーだった。
    親の不条理によって心を壊し、銃乱射事件を起こしてしまった兄・アオと、その妹・ベニの物語。ベニは事件の遺族や様々な人々と関わりながら、少しずつ人間らしさを取り戻していく。
    先の読めない展開に引き込まれ、特にベニがだんだんと年相応の女の子らしくなっていく過程に強い愛おしさを感じた。
    架空の設定でありながら、作者が伝えたい想いがしっかりと心に届くのが久永さんの強みだと思う。
    重いテーマを丁寧に、しかし優しく描く力量に改めて感動した。
    今後もこの作者さんの新作は絶対に読みたい。

    0
    2026年05月24日

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    ものすごく切なく余韻が残る作品
    終始、重い雰囲気が漂うのに読みやすい
    ただ、銃乱射事件の詳細が思ってる以上に生々しくって、ちょっと目を逸らしたくなった
    途中、ほのぼのするシーンもあったけれどそれが結末の悲しさを際立たせていていてなんだか引きずりそう

    色々と悲しいところはあるけど、一番辛かったのは親友のフジオが自死してしまったところ
    あれは誰も悪くない気もするし、やっぱりスミヒコとキミドリの配慮が足りなかったからなのか
    原因は分からないけれど、フジオはベニを見ておそらく銃撃犯と何かしら関係あるのかもと気づいてしまったのか?

    それに気づけない親友(スミヒコ)がやってほしくもない気遣いをしてくるものだから、もう何もかもに絶望したのかもしれないし、それと同時に自分の不自由な身体に対して先を見出す希望を失ってしまったのかもしれない

    スミヒコは親友と好きな女性、大切なサークル仲間を一気に失ってしまって、この先立ち直ることなんてできるのだろうかと思ってしまう

    あらすじ読んでなんとなく読んでみた作品だったけど、とても面白かった

    0
    2026年04月19日

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