あらすじ
第32回松本清張賞受賞作 異形の歴史小説
玉照院の師弟は“やんごとなき秘密”を抱えていた――
天明飢饉の傷痕いまだ癒えぬ比叡山延暦寺に、失敗すれば死といわれる〈千日回峰行〉を成し遂げようとする二人の仏僧がいた。
歴史に名を残すための闘いは、やがて業火となり叡山を飲み込んでいく。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
すごい話を読んでしまったっていう感じ。
普段歴史小説を読まない自分からしたら
時代が遠い、思想が難解、漢字が読みにくいなどなど読者を振り落とす設定のはずなのにそれをほとんど感じさせなかった。
嫉妬・憎しみ・執着・承認欲求みたいなすごく刺さる人間の感情のぶつかり合い。極限の人間小説だった。
Posted by ブクログ
今回の直木賞候補作。
これがデビュー作とは、思えない。
とてもリズムのよい文章だった。
運命的に出会った二人の僧は、互いの内側に自分の業を見極める。師弟でありながら対立し続ける二人。
大阿闍梨になるため修行、その描き方もドラマを見ているかのように伝わってきた。次回作がホントに愉しみ。
Posted by ブクログ
正直、比叡山の修行の体系を全然理解しておらず、わかってたらもっと感動したかもしれないけど、この勤行にかける熱量と、やんごとない立場に置かれた2人の僧侶の間の確執とか想念の凄さでただごとでない緊張感で全編が満たされ、小説の分量として決して多くないけど、内容の緻密な重みとその感情に強く打たれた。しかし、第1作でこんな作品が書けるとは驚いた。松本清張?直木賞?なんか賞のイメージとしてはピンとこないけど、濃密・緊密な人間関係を描いた力強い作品。直木賞レースでないと決して読まなかったであろう作品。読んでよかった。
Posted by ブクログ
これはちょっととんでもない作品を読んだかもしれない、と読後、感嘆の息が漏れてしまいました。
物語は十八世紀末頃からはじまります。平安朝前期に明王堂を開基した相應和尚以降、千年の歴史を持つ天台宗の荒行、北嶺千日回峰行にひとりの僧が挑むものの、行の途中で倒れてしまう。僧の名は恃照。大行満大阿闍梨にその名を刻むための行において、最後までやり遂げられなかった者は、自らの命を絶つ、という決まりがあったが、恃照には周囲には言えないある出自の秘密があり、特例として『汚名』とも呼べるような『名誉』を授かるとともに、死ぬことが許されなくなってしまう。やがてそんな彼は、ひとりの弟子を持つことに――。
荒行に挑んだ師弟の壮絶なドラマです。傑作です。私のこんな駄文を読んでいる暇があったら、すぐに本屋さんに買いに行ってください。誰にも言えない出自の秘密を抱えた師弟は互いに憎しみ、毛嫌いしながらも、その果てに、『絆』という言葉が安易に思えるほど、強く共鳴し合っていく。ラスト30ページくらいは涙なくしては読めないほどに感動的で、一読忘れがたい余韻があります。結末に直接触れるわけにはいかないので、すこし曖昧な言い方になりますが、足跡のなかった場所に初めて足跡を付けていく結末は、物語の決着としてこれ以上、美しいものはなかなかないんじゃないか、と思えるほど、鮮やかでした。
Posted by ブクログ
叡山延暦寺の密教修行、北嶺大先達大行満大阿闍梨の話で、大阿闍梨と言えば千日回峰行という特に”堂入り”の9日間、断食と断水、不眠、不臥を達成させること、また不達すると自死せねばならぬという厳しい修行を達せねばならない。そんな修行に挑むのが普通の修行僧ならいざ知らず、帝の血を受け継ぎながらも世に知らしめることのできない曰くつきの僧で、自死させること即ち帝の子を見殺しにすることになり修行決行を認めるわけにいかない。それを押して修行を始めたもんだからさて大問題。こんな流れで話が始まりその修行結果は...
坊さんの修行話とか興味がないどころかそんなもの物語になるのかと疑ったがどっこいこれほど苦しくも目の離せない物語がほかにあるのかと思うほどにぐいぐい引き込まれてしまった。タイトルがまた素晴らしく、白(死)装束で修行で山を駆け巡る姿を白鷺に見立てており、何百年と昔から叡山で行われている密教修行僧を想う。
ただ、それにしても宗教というのは空しいに尽きる。
Posted by ブクログ
後桜町天皇の御落胤、恃照は百日回峰行にあと一間歩けば届くところを倒れてしまい失敗した。もともと百日回峰行に失敗したものは自刃せねばならない取決めだったが、しかし帝の血筋の者を殺すわけにはいかない。そのため当行満阿闍梨とはせず、半当行満阿闍梨として扱い、生かすことになった。その恃照のもとに、同じく帝の御落胤である戒閻が弟子入りし、百日回峰行をしたいと望む。
Posted by ブクログ
江戸時代の比叡山延暦寺。北嶺千日回峰行という仏道修行に挑む僧侶。その厳しさは命を落とすこともある壮絶なものである。難しい言葉は出てくるけど、物語はすごくシンプル、真面目さが一周回って笑えてしまうようなところもあり。ただただ面白く没頭した。好き。
Posted by ブクログ
いやー、面白かった
テーマが千日回峰行だったのも新鮮だったし
ラスト30ページは圧巻でした
こういう本に出会えるから、読者は辞められません
今年のトップ3に入ります
Posted by ブクログ
比叡山は今年も行きました。令和4年に初めて無動寺明王堂に、翌年は御祈祷もしていただきました。
千日回峰行の本や漫画は読んだことはありましたが、白鷺立つは素晴らしかったです。グイグイ物語の中に引き込まれました。
阿闍梨餅の紙袋は 阿闍梨様の絵だったのですね…
Posted by ブクログ
すごい小説を読んだ。
千日回峰行という修行があることはTV報道で見て知っていたが、このような手続きで行われる比叡山全山あげての大行事であることまでは知らずにいた。
考えてみれば当たり前のことかもしれない。
実生活とはかけ離れた仏教界のはなしだ。まして、昨今葬儀も以前のように身近なものではなくなりつつある中では、ますます縁遠いものとなっている。
そんな中で新刊帯に異形の本格歴史小説と書かれた本書をみた。
普段なら購入するまでしばらく躊躇うのだが、すこしも迷うことはなかった。
松本清張賞受賞がどのくらい売り上げに貢献するのかわからないが、本作は傑作だ。
千日回峰行のクライマックスであと数歩歩けなかったために本願成就できなかった
師匠と、おなじ出生の秘密をもち千日回峰行をめざす弟子との相克をこれでもかというしつこさで描写していく。最後の最後まで感情移入できなかった弟子の心のうちを知ったときのおどろきは非常に大きなものだった。そして伏線をさがすように急いで読み直すことになった。
Posted by ブクログ
第174回直木賞候補作
普段時代小説は読まないのだが、直木賞候補作とのことで手に取った
比叡山の僧の修行の話(仏教に詳しくないので言葉が間違っているかも。)ということで見慣れない単語も多く読むのに苦労したが、それでもなお面白かった
帝の血筋を引くがその出自を公にはできないという境遇を持つふたりの行者。不退の行を完遂できなかったにも関わらず、その血筋ゆえ生きることを許された(許されてしまった、死ねなかった)師と、類まれな才覚を有しその行を誰もなさなかった最も過酷な方法で成し遂げようとする弟子。お互い憎み合いながらも、同じ境遇の師に弟子に自身を重ねずにはいられない様子が何とも興味深かった
たまたま最近読んだ、宗教と通過儀礼に関する本には、千日回峰行に関する記述もあり、なんにせよ通過儀礼というものは、それをなすことでその前とは違う自分になることを自覚し、周囲もそれと認めるようになる効果があり、それ故、入信や成人などの折になされるという
行不退の回峰行を完遂できず、半行満なる唾棄すべき尊称を冠された師、恃照は、前に進むこともできず、行の前に戻ることもできず、さぞ苦しかったのだろう
弟子、戒閻は過酷な行の末、満行することなく命を落とすが、戒閻の生前のはからいで恃照は人生二度目の千日回峰行に挑み、見事満行する
戒閻がなぜ恃照のための行動をしたか、すぐにはわからなかったのだが、思うに、似たような境遇の師に自分を重ね、その師が半行満などと蔑まれていることが許せなかったのだろう
そう考えると、戒閻が千日回峰行を全て恃照のためにやると言ったのが何ともいじらしくやるせない
教訓を引き出すとかえって安っぽいかもしれないが、たとえ打ちのめされても再び前に進んでいけないということはないのかな、と感じた
Posted by ブクログ
他人を思いやる行動は美しい、それを強く感じた小説だった。終盤、千日回峰行がはじまってからの物語に惹きつける力は抜群で、食い入る様に読んだ。
大阿闍梨も千日回峰行も恥ずかしながら初めて知った。私は無神論者だが、このような過酷なことに挑んだ僧たちには敬意を払いたい。
Posted by ブクログ
白鷺とは命懸けの「千日回峰行」に挑む修行僧を指す比喩表現だそうです
白装束で、白い鳥のように清らかで力強くあるからだそう
「はくろ」と読ませていますが、もちろん「しらさぎ」とも読む
んでこの「千日回峰行」ってのがほんと命がけなのよ
7年間かけて延べ千日間山中を1日約30〜40km歩いた上に最後は「堂入り」って言って9日間、断食・断水・不眠・不臥(横になること)で不動真言を唱え続ける、人間を超えた難行をやるんだって
ってどこか白鷺やねん!( ゚д゚ )クワッ!!
あんなもん朝からギャーギャーうるさいだけやないか!( ゚д゚ )クワッ!!
めっちゃ糞まきちらすし
わが町の市役所にもけっこう苦情が寄せられてるみたいなんよザギ被害
でも白鷺って法律で保護されてるんで、勝手に捕まえたり、ましてや殺したりしたらあかんのやで
1年以下の懲役または100万円以下の罰金ですって
気を付けよう!
Posted by ブクログ
比叡山延暦寺を舞台に失敗すれば死といわれる千日回峰行に挑む二人の仏僧の軋轢やそれを取り巻く仏僧の世界を描いた作品。二人はどちらもこの世にいない存在とされる業を背負い、何者かになってその存在を記したいと渇望しこの苦行に挑んでいた。二人の軋轢は現代にもよく見られるものであり、時代が移り変わっても同じことで人は悩むんだなと思った。そして二人の渇望は抑制のきいた中でひしひしと伝わってきて、そりゃ受け入れがたいことだよなと少し同情した。
Posted by ブクログ
幕を開けたら、知らない世界がいきなり現れて夢中になった。
ただ、主人公2人があまり性格に難ありで…
でも、これ死ぬよ!と言う驚きの修行。
何のために?少なくとも人のためと言うよりは、やはり自分自身の何かを超えたいんだな。と解釈。
Posted by ブクログ
評判が良かったので。
三体のあとに本作を読んだので、壮大な世界から、自分自身の内面と向き合うような狭くて深い世界に一気に変わって、それはそれですごく引き込まれた。
通勤電車で駆け足で読んでしまい、もう一度ゆっくり再読せねば。
結局他人にどう見られるかって、修行してる人でもめちゃめちゃ気にするのね。
Posted by ブクログ
出自を明らかにできず、生きたという証さえ残せぬ運命を背負った僧の師弟の物語です。
自分は何のために生を受けたのか、何を生きた証とできるのか――誰もが一度はぶつかる問いを描いています。
主人公は苦行に身を投じ、歴史に名を残すことで自分の存在を示そうとしますが、その願いは叶いません。
同じく高貴な血を受け継ぐ弟子と激しくぶつかり合い、互いを否定しながらも、最後には心を打つ結末を迎えます。
一人の人間として何を大切に生きるべきかを問いかけられたような、深く胸に残る作品でした。
Posted by ブクログ
公に出来ない帝の子供という共通点を持つが故に反発し憎しみ合う恃照と戒閻の師弟関係がスリリングで面白かった。自分の意思とは関係なく、生まれ落ちた瞬間から自分として生きる(生きた)ことを奪われた彼らの哀しみや苦しみは、何者であるかを当たり前のように語れる読み手の前に抱えきれないほどの大きさで迫ってくる。恃照が過酷極まる千日回峰行へ引き寄せられる始まりが俗で人間的なところにあるからこそ最後の場面に信仰の微かなひかりを感じもする。
Posted by ブクログ
仏門に入っても憎しみ、妬みの感情は沸き起こるがそれをおさえる事、動揺しない事が仏に仕える人なのだと思う一方で怒りに任せて殴ったりする座主もいる。
知らない世界の仏の修行に最初はよく理解できなかったが章ごとにふりがながあり、説明もあるので読み切ることができ辛い修行やこの世に存在しない人として生きる辛さもどっと感情が流れ込むような文章だった。
Posted by ブクログ
普段なかなか読むことがないジャンルだったので、恐る恐る読み始めましたが、あっという間に物語の圧倒的な雰囲気に飲み込まれていきました。
恃照と戒閻は師弟である。戒閻は強い反骨心を抱いており、決して仲の良い師弟ではない。
にも関わらず、同じことを目標としそれを為そうとする。戒閻亡き後の恃照の変化に、心を打たれました。しかし戒閻も皮肉やというか天邪鬼というか…。草葉の陰からほら見ろ!とでも言ってそうだなと思ってしまいました。
また成し遂げたことは戒閻の方が凄いのかもしれないが、思いやりがあり、人を素直に認めることができる良照も素晴らしく出来た人物だなと思いました。個人的にはすごく好きな登場人物でした。
スゴすぎる新人
比叡山を舞台にした僧侶の世界がこれ程すごいと初めて知りました。過酷な修行とその後見えてくる世界。朝日新聞の書評は嘘ではなかった。
Posted by ブクログ
降る雪や衣擦れの音まで聞こえてきそうな静謐で荘厳な比叡山。
そこで繰り広げられる仏僧の師弟の、燃え盛る炎のような確執…。
おのれの生きた証を遺したい…という叫びにも似た願い。
圧巻のラストには言葉を失う。
Posted by ブクログ
第174回直木賞の候補作。
住田さんのデビュー作ということで、とてもエネルギーに満ちあふれていた。
大行満大阿闍梨になるための壮絶な修行、北峰千日回峰行。
このような凄まじい修行があることを知って、驚いた。
同じ出自でありながらも反発しあう師弟。
正に“同族嫌悪”という言葉がピッタリ。
Posted by ブクログ
2/3まではメリハリがなく、目の前にいる人物に対する心の声で死者に語りかけるような感傷的な文体を使ったり、内省が浅かったり、時間が行きつ戻りつしたりして、つまらなかったんだけど、200ページを超えたあたりから急に面白くなった。100ページまでにつかみがほしいところ。
私はクソ坊主が好物なので、まあまあ楽しめた。
「異形の歴史小説」とかいうキャッチコピーの意味は分からず。ふつうの時代小説だと思う。クソ坊主パラダイスなのに、優等生的な文章で書いているアンバランスさを異形と称しているのかな?
この題材というか、キャラクター造形が、、、澤田瞳子の文章で読みたいと、読んでいる途中で何度も思ってしまった。。
朝井まかての文章を好きな人と相性が良さそう。