【感想・ネタバレ】白鷺立つのレビュー

あらすじ

第32回松本清張賞受賞作 異形の歴史小説

玉照院の師弟は“やんごとなき秘密”を抱えていた――

天明飢饉の傷痕いまだ癒えぬ比叡山延暦寺に、失敗すれば死といわれる〈千日回峰行〉を成し遂げようとする二人の仏僧がいた。
歴史に名を残すための闘いは、やがて業火となり叡山を飲み込んでいく。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 かつてバラエティ番組で北嶺千日回峰行を目にし、自らの命をかけてまで人を修行へ駆り立てるものは何なのかと気になり、本書を手にした。
 命がけで、失敗すれば自害を求められる北嶺千日回峰行の過酷さは想像以上だったが、いちばん心に残ったのは、それを経験した人の心のあり方だった。とりわけ印象深かったのは恃照である。戒閻を疎ましく思い、この修行さえ失敗すればよいと願っていた恃照が、戒閻にかつての自分を重ね、いつしか達成を願うようになる。その変化が深く心に残った。
 極限の修行は人をただ強くするのではなく、見たくなかった弱さや醜さも含め、自分のすべてに向き合わせるのだと思う。エピローグで恃照が再び北嶺千日回峰行に挑み成し遂げた姿からは、戒閻との出会いによって、恃照自身もまた救われたのだと感じた。

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2026年05月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

実家から毎日眺めていた比叡山を舞台にしたお話。
めちゃくちゃ面白い。

仏の道に入り、ともに千日回峰行を為さんとする恃照と戒閻の2人の人物を中枢に、彼らの同族嫌悪に近い厭悪や確執が、叡山という因循姑息な組織の上でどんな顛末を辿るのかを描いた小説。

規則という柵の中で死ぬことが許されず、恥を晒して生きてゆくしかない恃照にとって、出生を近くしながらもずんずんと自らの道を突き進む戒閻がどれだけ嫉ましく厭わしかったか、そしてどれだけ憧れ、堂入りを満することを願ったか。
長きに渡って、確執という殻の中で育まれてきた戦友同士の同情と信頼が一気に弾け出るラストシーンには、胸を打つものが大きかった。

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2026年05月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ストーリーテリングは実に巧み。
特に後半において顕著になってくるが、常に先の展開が気になるように引っ張り続けるテクニックとパワーはかなりのものである。

題材となっている千日回峰行には以前より興味を持っており、まさしく極限に至った者だけが辿り着く甚だ業深き境地が描かれているのだろう…と期待しつつ読み進めた。
確かにそのような面も見受けられはしたが、主要な登場人物たちが、厳しい修行を積んだ僧でありながら、あまりに人格的に未熟、ともすれば現代の日本社会で我々の周りに数多存在する俗人並みに煩悩の塊ではないか…。
もちろん修行僧といえど人間であるから、深奥での苦悩や逡巡等は存分に描かれるべきであろうと思うが、そのような次元に遥か及ばぬ些事の数々にいちいち心を乱し激するのはいささか不自然であり、人品を著しく損なう暴言を吐く姿には強い違和感を抱く。
終生いがみ合ってきた師と弟子の相剋に帰結する流れについては異存ないが、仏道を究めんと精進を重ね、激烈な行を通じて変容するであろう、宗教者の精神面を深く掘り下げる試みが絶対的に足りないように感じた。

繰り返すが、小説としてはとても面白かった。

それにしても、クライマックスである"堂入り"を越えれば、残る回峰はなんということはない、という旨の描写があったが、30kmならともかく、60kmに道程が延びたコースを100日間、さらに84kmにもなるという"京都大回り"を100日間続けて歩くことができるのだろうか…ワールドクラスのトレイルランナーでも至難では…そもそも"堂入り"で足掛け9日に渡って"断食・断水・不眠・不臥"を完遂することも…?

「ここで一口でも飲み下せば、人に戻ってしまう―。」
「ここで食せば、人に戻ってしまう―。」

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2026年08月22日

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