あらすじ
なんとかウミガメの卵を孵化させ、自力で育てようとする徳島の中学生の女の子。老いた父親のために隕石を拾った場所を偽る北海道の身重の女性。山口の島で、萩焼に絶妙な色味を出すという伝説の土を探す元カメラマンの男――。人間の生をはるかに超える時の流れを見据えた、科学だけが気づかせてくれる大切な未来。きらめく全五篇。
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短編集なのにものすごく読み応えがあって、とてもおもしろかった。一つひとつの物語が心に響くだけでなく、専門的な知識もわかりやすく織り込まれていて、読んだ後の満足感が凄い。私の中の今年のBest5に入ること間違いなし。
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直木賞受賞、短編五編
萩焼、狼犬、原爆遺物、隕石、アカウミガメ
それぞれ失われゆくはかないモノにまつわる人を描いている。
地球衛星科学専攻という著者の背景を見てテーマについては納得。そこに人に対する温かな眼差しと信頼が加わり、心地よい。
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短編集だが、どの章も緻密な取材をされて、じっくりと作品に向き合われたのだろうと確信できるほど、濃密な物語が綴られていた。
長崎の話では浦上天主堂が当時の人たちにとってどんな存在であったのか、知ることができた。
また、北海道にある遠軽を舞台にした物語も、へき地の郵便局や親子の絆が描かれていて、胸が熱くなった。
そしてタイトル作の藍を継ぐ海は、なんて感動的な話だったことか。
亀も人間も、好きな所で、気に入った場所で生きればいい、という言葉は、とても重く胸に響いた。
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どの話も興味深く、読んで気付かされたことや知らなかったことがたくさんあった。特に狼犬ダイアリーはオオカミについて何も無知だったなと、もっと知りたいと興味を惹かれた。
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史実と物語とミステリーと科学と、あらゆる要素が掛け合わされているからだろうか。読み進める度、新しい世界がどんどん開かれていく。そのことを全身で感じて心が震える感覚を久しぶりに感じた。この人の作品全てを読みたいと思ったのはいつぶりだろうか。また一人、素晴らしい作家に出会えた。
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日本各地を舞台に人から人へ何かを継いでいく物語。
陶芸、狼等各短編のテーマが面白いく、人の描写も優しく見応えがありどの短編も面白く染みた。
伊与原さんの長編も読んでみよう。
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山口や北海道など、地域にまつわる歴史が
多く語られていて、
この一冊で色んなことが学べてお得だな~
と贅沢な気分で読ませてもらえました笑
特に印象的だったのが
原爆投下後の長崎で
瓦礫の調査に携わっていた男性のお話です
人にお願いされたわけでもなく、
自分の足で"コツコツと"調査を進め
後世に当時の長崎の記録を残したことに
渋いカッコよさを感じました。
このお話のモデルとなった方が、
広島にある平和記念資料館の運営に関わっていたとのことだったので、実際に資料館の方にも足を運びたいと思います。
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オーディブルで聴きました。しっとりしみじみ良かった。宙わたる教室もすごく良かったけれど、どういう実験をしているのか、ドラマで見るまでイメージできなかったけれど、今回はついていけました。
どのお話も、なんとなく取っ掛かりにくい状況で、そんなに魅力的でもなさそうな人物から始まるのだけれど、途中からぐっと引き込まれました。表現がきれいで、取材(研究?)の裏付けがしっかりしている感じがして全部いいお話で読後感もさわやか。
狼犬のお話は、河崎秋子氏のともぐいに出てくるわんこもお利口だったなと思い出した。カメのお話も砂月がけなげで良かった。やはり動物が絡むとほっこりする。(ハッピーエンドがマストだけれど)
彼の他の作品も読んでみたい。
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それぞれ違う分野の話で、とても深くて面白かった。
特に「改題」に関して考えさせられた。
一番好きだったのは『狼犬ダイアリー』
臨場感が伝わってきて、いい作品だった。
古い伝承にテーマを置きながら、今を生きる主人公の成長に繋がっている。
ふぁぁぁ、なんて綺麗なお話なんだろう。いつも読んでる本よりは専門性がちょっと深くて、素人にはいまいちピンとこない部分もあったりしたけど、専門家やその道のプロやそれを愛する人たちの真っすぐな気持ち、熱意がよく伝わってきて胸が震える。たとえ利益などにならなくても、ずっと心の中にあって夢中になれて、時に自分を支えてくれたり突き動かしてくれる原動力になったり、そんなものがあるってすごく幸せだなあ。
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5つの短編集。どれも、実際の土着の忘れさられた言い伝えから、真実を探そうとする若者の物語。瀬戸内、東北、北海道、山に海に舞台は異なり、登場人物たちの言葉や生活から、その土地の空気感も感じられるような...そこに若者のひたむきな思いがのせられて爽やかな余韻が残る。
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史実を元にしたフィクションとのことだが、短編のそれぞれが本当のことと思わせるようなリアリティがあった。特に「祈りの破片」は良かった。
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優しい話の短編集。穏やかな気持ちになった。表題の作品はウミガメ保護の海岸を舞台にしたお話で心を揺さぶられた。都会から離れた海辺の町でたくさんの優しい人たちが周囲にいる、でも置いていかれそうで不安にもなる・・少し切ないけどそれぞれが生きている道が見えるような作品だった。
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初めましての作家さん。
読み始め、肌感合わないかも?短編集で良かったな、、と思ったのが良い意味でハズレ、作家さんの熱量や新しい知識に触れるたびに引き込まれ、短編集だけど、総合的に一冊の作品となっていて素晴らしかった。
巻末の参考文献からもわかるように、とても綿密に描かれたもので、その探究心や努力に圧倒された。
作者の熱量で、実際にいろんな方の協力を得られ、より良い小説となったかと思うし、それがキャラクターにもよく現れてた。
本来は、感情を揺さぶられる小説が好きだけど、新しい知識として得られる小説も、やっぱり読んで良かったと思える一冊でした。
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萩焼、狼犬、空き家、ウミガメ、隕石……
離島や郵便局が閉局を迎える町など、北海道から九州までを幅広く舞台にした短編小説。
決して一章一章は繋がってないけど、どこか懐かしく、ちょっと窮屈で、ゆったりと時間が流れるまちの様相はみんな共通。
焼物の歴史や原爆の話など踏み込んだ部分もあるけど、とっつきにくさはなく、読みやすかった。
小さな謎や強い思いが、周りを巻き込んだり、時を越えながら紡がれる物語。
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まず、いつも思いますが、伊与原さんは日本語が上手い。そして、伊与原さんの作品は、押し付けがましくないけど、ホッコリ希望が出てくる、というそのバランスの薄味的なところが何とも言えず好きですが、本作品は、少し味付け薄めすぎかなぁ。自分の心境のせいかもしれませんが。。。でも、今回もサイエンス知識の勉強にもなったし満足です。
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とても読みやすく文体が私に合ってる作家さんだと感じました。化学や天文、生物など理系の内容は苦手な事が多いのですが、理系的な事をテーマにしながらも人間の繋がりや歴史、芸術への視線もあり、心に響く作品でした。人に勧めたい作品です。直木賞納得です。
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ある島の土と陶芸一族、ニホンオオカミと田舎移住者、原爆の記録と記憶、隕石と親子、ウミガメの生涯とそれぞれの人生模様が重なる短編集。陶芸家といい感じになる展開をはじめとして人間の心情の動きにそうはならんやろみたいなのはあるがひとつひとつのテーマがかなりよく調べられてよくできてるので納得の直木賞ではある
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どのお話も、限りなくノンフィクションに近いフィクションなんだと思う。
人の想いは紡がれてると信じたい。
星隕つ駅逓と祈りの破片で特にそう感じた。
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テレビドラマで「宙わたる教室」を見て、原作者を知ったいつもと逆のパターン。科学者としての知識を持つ人が書いた五つの短編。個人的には「夢化けの島」と「祈りの破片」に心惹かれました。生き物が好きなのか、鉱物に惹かれたのかそうれだけの違いかどうかわからないけど、それぞれに味わい深く、静かな物語であるところがよいと思いました。
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とても頭の悪い感想だけど、これは頭の良い人が書いた本だ…というのが第一の感想で、読後に著者について検索してみたら、東大卒・博士号取得・専攻は地球惑星物理学…と出てきたので、やはり、と思った。
5篇の短篇集なのだけど、総じて「研究者視点」で書かれている印象。理系の小説という感じ(またしても頭の悪い感想。笑)
余談だけど去年だったかNHKで放送していた「宙わたる教室」がこの方の原作だと知って、おぉ!と思った。このドラマ観ていたから。そしてまたしても納得。地学×ドラマで面白かったから。
小説に話を戻すと、表題作はウミガメの産卵に1人の少女の孤独を絡めた切なくて爽やかでウミガメの生態も知れるという、これまでにあまり読んだことがないタイプの物語だった。
他の4篇も、人間ドラマ×理科という感じ。
陶芸家だった祖父と父を持つ1人の青年がとある土を求めて巡るお話や、田舎に移住したフリーのWEBデザイナーがその地で起きたニホンオオカミ騒動と触れるお話、地方の郵便局員である青年とその妻が地元に落ちてきた隕石によってとある行動をして…というお話など。
物語として面白いのはもちろんだけど、それプラス地質学や生物学について勉強にもなる。素人的には、へぇ〜って思いながら読みました。笑
2024年下半期の直木賞受賞作で、かつ高校生直木賞受賞作でもある。自分がもし人の親だったら、子どもにはこういう本を読んで欲しいと思ったかもしれない。物語で学んだことが将来に影響を与えることも多々あると思うから。
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夢化けの島
萩焼の土を求めて
狼犬ダイアリー
日本オオカミ!?
祈りの破片
謎の家
星隕つ駅逓
隕石と郵便局
藍を継ぐ海
ウミガメ、お守り
5話のオムニバス
どれも良かった
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直木賞受賞作、の帯を見て読んでみました。
私にはあまり刺さらなかったです。でも美しい作品。
5編の短編集で、いずれも地方の海・山・田舎が舞台で、悩みを抱えた若者が主人公。
「夢化けの島」は焼き物、「狼犬ダイアリー」はニホンオオカミ、「祈りの破片」は長崎の原爆、「星隕つ駅逓」は隕石とアイヌ、「藍を継ぐ海」はウミガメの産卵がテーマ。日本の古くからの自然や歴史についての描写が細かく、各分野にちょっとだけ見識が深まったような気持ちになったりもします笑。「星隕つ駅逓」が年齢的に一番感情移入したかな。
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萩焼、隕石、ウミガメ…5編の短編小説。
入念に下調べして書かれたお話。それぞれの分野の調査がしっかりされた上でお話が成り立っていた。少し難しく読むのに時間がかかる気がするが、面白かった。
感情移入を強くするわけでもなく、人物の表現は軽やかで登場人物たちの感情の押し付けがましく無い。
Posted by ブクログ
思った以上に読み終わるまで時間かかってしまった。
これは伊予原さんの得意分野での執筆なのかなぁ…なんて思いつつ。
ただ私にはなかなか難しい部分も笑
またちがう作品も控えているので楽しみ。
Posted by ブクログ
日本のさまざまな地域で眠っている科学的事象を物語に展開する力は素晴らしかった。
小説を通して科学に出会うには、著者の作品が最も適しているのではないか。
ただ劇的なストーリーを期待する人には向かわない小説でもあると思う。