小説・文芸の高評価レビュー
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Posted by ブクログ
ネタバレ前巻までの伏線が一気につながり、さらに加速しました。
悪鬼と思われていた存在が真の悪鬼ではなく、真理亜と守の子どもであり、バケネズミを同族として育てられたため、人間を殺しても愧死機構が働かない。
この発想には完全にやられた。
そして最大の衝撃は、バケネズミがそもそも呪力を持たない旧人類が改造された存在だったこと。
人間側が作った「自分たちなら殺せる別種」という抜け道を、スクィーラが逆に利用していた構造が見事だった。
このスクィーラは最後まで狡猾で恐ろしかったが、最終的には「我々は人間だ!」という誇りを失わなかった人物として強く印象に残った。
自分のためではなく、同胞の尊厳と解放のために全てを賭けた革命家として見ると、彼を主人公にした物語すら成立すると思う。いや、むしろ見たい。
そして何より奇狼丸。
賢く勇猛で、自分の強さもその価値も分かっている。
それでも大義のためなら自分自身を例外扱いせず、必要なら当然のように、犠牲として差し出す。美しい!
その潔さと忠義、最後の自己犠牲が圧倒的に好みだった。
スクィーラが軍師・革命家なら、奇狼丸は将軍・武人。
個人的には奇狼丸が、この作品で最も好きな人物だった。
全体を通して、学園、SF、ミステリー、ホラー、歴史、戦争、恋愛、政治、倫理、生物学まで、あらゆるジャンルが入っていること自体が驚きなのに、不思議と最後には一つの世界として収束する。
読後には「なんだか世界そのものを一冊読んだ」ような満足感が残った。最高でした。
最後に、「遠き山に日は落ちて」あの曲が物語の中で何度も流れることで、ノスタルジックな雰囲気と、
「夕暮れ」
「帰る場所」
「失われた故郷」
「もう戻れない世界」
みたいな感覚が重なって、タイトルの『新世界より』ともかなり強く響き合っていました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ本当に面白くて、最高の本だった。
マリアビートルを読んだのがかなり前でうろ覚えだったのが悔やまれるのでまた読み直したい。
七尾の不運さに初めはイライラしてしまったけど、だんだんそれが癖になってきて、不運さに適応しようとする七尾が大好きになってた。
世の中を見下してる人間たちが、自分より下だと思っていた人たちに負けるっていうのが本当に良かった。勧善懲悪味がある。
乾の復讐が成し遂げられた時が特に最高。
七尾と真莉亜、マクラとモウフ、高良と奏田、そして乾と紙野、推せる二人組が多すぎる。みんなずっと仲良くしててほしい。
紙野ちゃんは本当に報われてほしい。
『リンゴはリンゴになればいい』は本当に名言で、自分もそれを肝に銘じて生きていきたい。そうしたら人生が今より少し幸せになりそう。
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Posted by ブクログ
伊坂幸太郎さんの殺し屋シリーズは正直そこまでハマっていなかったのですが、この『AX』だけは別格で一気に惹き込まれました。中弛みすることもなく、最初から最後までずっと面白かったです。
その理由は間違いなく、主人公・兜の「妻に対する気持ち」にめちゃくちゃ共感できたから(笑)。
家で常に妻の顔色を窺い、機嫌を損ねないように必死になる兜の姿が他人事とは思えなくて、読んでいて笑いつつも胸に刺さりました。かといって妻のことが嫌いなわけではなく、不器用だけどちゃんと愛しているんですよね。
兜の妻のあしらい方は本当上手で、「なるほど、そう対応すればいいのか」と感心させられるのですが、分かっていても実際にはなかなか真似できないのが現実。その絶妙なリアルさがたまりませんでした。
最強の殺し屋でありながら、家庭では恐妻家というギャップ。兜というキャラクターに感情移入できたからこそ、物語の展開や彼の決断にもより深く心揺さぶられました。 -
一郎くんの写真 日章旗の持ち主をさがして
- カート
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試し読み
Posted by ブクログ
「ある旗の持ち主を探してくれませんか」
アメリカで昔の戦争のことを調べているグループから連絡がありました
新聞記者の、日章旗の持ち主を探す旅が始まります
『一郎くんへ』と書かれた日章旗には59人の寄せ書きがある
手がかりは、この59人の名前だけ
これだけで持ち主に辿り着いたのは奇跡的!
その一郎くんを探す旅で取材を重ねていくと、様々な思いが伝わってくる
後悔、願い、愛情、悲しみ…
一郎くんのお母さんが大切に持っていた写真の裏に書かれた言葉 。:゚(;´∩`;)゚:。
その写真は一郎くんが戦地から家族に送ったものだろうが、どんな思いを込めたのか
終戦から81年
戦争体験者から直接話を聞く機会は、もうすぐなくなるだろう
でも私たちには沢山の資料が残されている
先人たちが私たちに残した言葉や思いを、しっかり受け止めなければならない
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Posted by ブクログ
西東三鬼が好きなので読んだが、いやあ、とんでもない傑作だった。小説でなければできない企みに溢れ、正岡子規以降の俳句史(それも三鬼だったらこう見たであろう)も俯瞰でき、第二次世界大戦前夜の日本、アジアの空気がひしひしと伝わってくる。声高ではないがひたすら反戦を詠み続けた三橋敏雄が信頼できる若手として描かれているのも嬉しい。エピローグによると作者が師事していたということか? 高浜虚子にもてっきり批判的かと思ったが、そんな凡庸な描き方はしていない。
作者自身が俳人であり、膨大な知識に裏打ちされたからこそ書けた作品だろう。そして、なんと見事な文章。三鬼が何人かに出した手紙の書き分けも実にスリリングだった。
情報局が内閣直属になったこの時代がまさに今とそっくりであることに慄然とする。今この本を書いた意味はそこにあるのではないか。
小林恭二、なんで今日までこの人のことを知らずにきてしまったのだろう。
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