あらすじ
現役医師として命と向き合い続けた著者が到達した、「人の幸せ」とは。
380万部のベストセラー『神様のカルテ』を凌駕する、新たな傑作の誕生!
その医師は、最期に希望の灯りをともす。
【あらすじ】雄町哲郎は京都の町中の地域病院で働く内科医である。三十代の後半に差し掛かった時、最愛の妹が若くしてこの世を去り、 一人残された甥の龍之介と暮らすためにその職を得たが、かつては大学病院で数々の難手術を成功させ、将来を嘱望された凄腕医師だった。 哲郎の医師としての力量に惚れ込んでいた大学准教授の花垣は、愛弟子の南茉莉を研修と称して哲郎のもとに送り込むが……。
●著者より 読者の皆さまへメッセージ
医師になって二十年が過ぎました。
その間ずっと見つめてきた人の命の在り方を、私なりに改めて丁寧に描いたのが本作です。
医療が題材ですが「奇跡」は起きません。
腹黒い教授たちの権力闘争もないし、医者が「帰ってこい!」と絶叫しながら心臓マッサージをすることもない。
しかし、奇跡や陰謀や絶叫よりもはるかに大切なことを、書ける限り書き記しました。
今は、先の見えない苦しい時代です。
けれど苦しいからといって、怒声を上げ、拳を振り回せば道が開けるというものでもないでしょう。
少なくとも私の心に残る患者たちは、そして現場を支える心ある医師たちは、困難に対してそういう戦い方を選びませんでした。
彼らの選んだ方法はもっとシンプルなものです。
すなわち、勇気と誇りと優しさを持つこと、そして、どんな時にも希望を忘れないこと。
本書を通じて、そんな人々の姿が少しでも伝われば、これに勝る喜びはありません。
(夏川草介)
●著者プロフィール
夏川草介(なつかわ・そうすけ)
一九七八年大阪府生まれ。信州大学医学部卒業。⻑野県にて地域医療に従事。二〇〇九年『神様のカルテ』で第十回小学館文庫小説賞を受賞しデビュー。同書は二〇一〇年本屋大賞第二位となり、映画化された。他の著書に、世界数十カ国で翻訳された『本を守ろうとする猫の話』、『始まりの木』、コロナ禍の最前線に立つ現役医師である著者が自らの経験をもとに綴り大きな話題となったドキュメント小説『臨床の砦』など。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
スピノザの哲学にある以下の文章は印象的。
全てが決まっているのなら、努力なんて意味がないはずなのに、彼はいうんだ。だからこそ努力が必要だと
ストーリーも構成も心地よい。映画化も楽しみだと思う。
Posted by ブクログ
この本、好き。
何だろうなあ、あったかい?安心?心が穏やかでいられる。
秋鹿先生にとってのトランキライザーのマチ先生。読後の感覚は、それに似たものなのか?
心の在り方、認知や思考、幸せとは…
自分の追い続けているテーマがそこにあったので、ぴたっとハマった感じがある。
哲郎に解説してもらいながら、登場する菓子を食したい欲求が生まれた。
京都の街並みをこの本を手掛かりに楽しんでみたい。そんな人生の楽しみも生まれた。
スピノザのエチカも読んでみたい。
人間の力ではどうこうできない宇宙に生きるちっぽけな私が、そんな望みを持つことが「幸せ」の一つなのかも。
「少しだけ景色は変わる」
誰かにとってそんな存在であれたらと思う。
Posted by ブクログ
医療とは、命とは。筆者の実体験から得たであろう言葉が胸を打つ。
医療処置の描写、登場人物の造形、舞台となる土地の描写のいすれも秀逸。現役医師による命の大切さを伝える傑作。
医師による小説は多々あれどその中でも屈指の作品だろう。ワケありで大学病院を辞めごくごく普通の医院にて往診て診療をする実は凄腕の医師。最先端の医療も大切だが、医師と患者の顔の見える関係そして終末、在宅の看取りが描かれる。
ほぼほぼ悪人の出てこない展開。筆者の人間を見つめる視点の温かさを感じる。
Posted by ブクログ
著者から読者へのメッセージにある通り、医療系にありがちな派手さがない。感動を誘うような奇跡は起きない。ただ直向きに病気と向き合う患者と医師の姿があるのみ。言葉を選ばずに書くと、胡散臭さがないので受け入れやすい。小説の中だけではなく、現実世界のどこかで存在しているような気さえする。
治らないと言われている病気を患う患者の家族だが、この小説はそんな人の心にも寄り添ってくれるとてもあたたかい内容だった。
心に留めておきたい言葉をいくつか抜粋
P150〜
医者にできることは、患者の病気を治すことに決まっているだろうってね。病気が治れば患者は幸せになるんだから、そこに力を尽くせば良い。でもね、病気が治ることが幸福だという考え方では、どうしても行き詰まることがある。つまり病気が治らない人はみんな不幸なままなのかとね。治らない病気の人や、余命が限られている人が、幸せに日々を過ごすことはできないのかと。若い人の中にも不治の病をわずらう人がいて、ときには若くして亡くなる人もいる。たとえ病が治らなくても、仮に残された時間が短くても、人は幸せに過ごすことができる。できるはずだ、と。
P193
毎日をただ懸命に生きている人が、生きることが地獄だと感じている人の世界を理解する必要はないし、もとより無理な話でしょう。健康な若者に、癌患者の苦しみや恐怖を理解できないことと同じです。狂気も死も、普通の人々にとっては縁のない世界だ。けれども、医者はそうではない。
P276〜
医療の力なんて、本当にわずかなものだと思っている。人間はどうしようもなく儚い生き物で、世界はどこまでも無慈悲で冷酷だ。だからといって、無力感にとらわれてもいけない。人は無力な存在だから、互いに手を取り合わないと、たちまち無慈悲な世界に飲み込まれてしまう。手を取り合っても、世界を変えられるわけではないけれど、少しだけ景色は変わる。真っ暗な闇の中につかの間、小さな明かりがともるんだ。その明かりは、きっと同じように暗闇で震えている誰かを勇気づけてくれる。そんな風にして生み出されたささやかな勇気と安心のことを、人は『幸せ』と呼ぶんじゃないだろうか
マチ先生ありがとう。患者とその家族の心に寄り添ってくれてありがとう。
Posted by ブクログ
おおきに、先生。
一番心に残ったことば。
いいな、こういうの。
マチ先生は、哲学者のような達観したところがあり、人格者で周りから信頼されている、理想的な人物。
京都の美しい風景や病を抱えながらも精一杯生きる人たちを、美しい文章で綴っていて実に心地よい。
そして、たびたび出てくる美味しそうな甘味。読み終わってすぐ次の日、京都伊勢丹で矢来餅と阿闍梨餅を買ってきたよね(笑)
矢来餅美味し〜。長五郎餅は売り切れ(泣)
小丸松露も絶対食べる!
終末期、マチ先生みたいに死に真摯に向き合う医師に寄り添ってもらえたら、生を全うできそうだ。
Posted by ブクログ
季節感や情景の描写の語彙がとても鮮明で素敵だったので、そういった描写も流し読みせずに一文一文丁寧に読んでも、物語に没入してすいすい読めた。
作者ご本人がお医者さんということを知って読み始めたのもあって、医療現場はこんな感じなのかな?と想像したり、医療者の葛藤もリアルに感じられるような気がして面白かった。
日々病院で起こる出来事が淡々と進んでいく展開なのに、飽きずにむしろ京都の街の情景や登場人物の想像がどんどん膨らんでいって、とてもお気に入りの本になった。
マチ先生に会ってみたいなと思った。
続編のエピクロスの処方箋も、立て続けで読むことにした。
Posted by ブクログ
マチ先生が素敵すぎて、それを取り巻く人間模様もとても温かく、心がほっこり温かくなるお話でした。
お医者さま達のハードなお仕事の一端を垣間見て、頭の下がる思いもしました。
京都の銘菓が出てきて、その描写の美味しそうなこと。
矢来餅、阿闍梨餅、長五郎餅。
Posted by ブクログ
【きっかけ】
だいぶ前に、読みたい登録したが、死と向き合う内容であろうことから、読み始めるのが、躊躇われた。
お盆に入って朝晩少し涼しくなり、読むなら今と判断。
【読後】
魅力的な医師たち。
主人公の医師は、一際、魅力的である。
達観している感じもするが、決して冷たくなく、諦めているわけでもなければ、過度にがむしゃらというわけでもない。とても落ち着いている。
どうすれば、このように落ち着いた人間になれるのか。
命を救っても、その命が、永続するはずもない。
ドラマのように、奇跡のように、命が救われることばかり、続くこともない。
人は、死に向かう生き物なのだ。
龍之介と向き合う哲郎の、選ぶ言葉が、温かい。
スピノザって哲学者なんだ。
掴みどころのない人らしい。
スピノザのエチカ(哲学?)
様々な患者が、その人生の最期を病院で過ごす。
末期の患者の痛み、苦しみ、そして看護、介護する家族も、削られていく。
死に向かう患者に、焦ることはないと云う。
哲郎も、焦らない。慌てない。
違和感の正体を探る。正体は、キミだな?
犯人を見つけたよ。
脳梗塞じゃない。薬の副作用だ。
カッコ良い…。医龍のような熱い感じは、全くないが、落ち着いたカッコ良さ。
人の幸せは、どこから来るのか
病気が治るのが幸せだとすると、
治らない人は、幸せになれないのか?
考えさせられる。
たとえ病が治らなくても、
仮に、残された時間が短くても、
人は、幸せに過ごすことが出来る
出来るはずだと、主人公はひとりごつ。
哲郎の哲学は、沁み入るなぁ。
最期の時まで、夫も他界し、難病を患いながらも、
絶望の淵にいながらも、笑顔を絶やさなかった妹
なるほど、ココがきっかけか。
いくら思案のレンガを重ねても、
レンガの方が荒削りだから、
隙間だらけで、じきに倒壊してしまう。
良い表現。
【凄く沁みた言葉】
人間はどうしようもなく、儚い生き物で
世界は、どこまでも…無慈悲で冷酷だ。
けれども、だからといって、無力感に囚われてもいけない。
世界には、どうにもならない事が、山のように溢れているけれど、それでも、出来ることはある。
人は無力な存在だから、互いに手を取り合わないと、
たちまち、無慈悲な世界に飲み込まれてしまう。
手を取り合っても、世界を変えられるわけではないけれど、少しだけ景色は変わる。
真っ暗な闇の中に、束の間、小さな灯がともるんだ。
その灯は、きっと同じように、暗闇で震えている誰かを、勇気づけてくれる。
そんなふうにして生み出された、ささやかな勇気と、安心のことを、人は、幸せと呼ぶのではないだろうか?
医療技術には、人の悲しみを克服する力はない。
勇気や安心を、薬局で処方できることにはならない。
そんなものを夢見ている間に、手元にあったはずの幸せは、あっという間に、世界に飲まれて、消えていってしまう。
私達に出来ることは、もっと別のことなんだ。
暗闇で凍える隣人に、外套をかけてやることなんだよ。
妹の死への向き合い方に、哲学が広がる。
ワタシも、先生から学びたいと思った。
続編も読みたい‼️
花垣も秋鹿も、良いキャラ。良いなぁ。
Posted by ブクログ
シンガポールの地で、夏川草介氏の『スピノザの診察室』を読み終えた。
物語の舞台となる「京都の街の小さな病院」で繰り広げられる日常は、とても静かで、そしてどこか温かい。哲学者スピノザになぞらえられた主人公の医師・雄町(おまち)の姿を通して、この本は「生きること」、そして「命を看取ること」の意味を優しく手解きしてくれた。
かつて大学病院で将来を嘱望される優秀な内視鏡医だった雄町は、妹の死をきっかけに幼い甥を引き取り、大学を辞めて地域医療の現場へと身を投じる。なぜ彼は、第一線のキャリアを捨ててまでこの場所へ来たのか。それは、単に病気という「器官の異常」を治すこと以上に、「患者という一人の人間の人生」そのものに寄り添おうとしていたからではないだろうか。静かな佇まいの中に秘められたその覚悟は、どこか勇ましくさえ映る。
劇的な奇跡を起こすことだけが医療のすべてではない。治らない病気や避けられない死を前にしたとき、医師として、そして同じ人間として何ができるのか。雄町が患者の言葉に静かに耳を傾け、最期までその人らしい生を支えようとする姿勢は、効率や成果、スピードばかりが求められる現代社会に対する強いアンチテーゼであり、深いメッセージだと感じた。
ただ「長く生きること」だけが正解なのではない。残された時間をどう生きるか、大切な人とどう心を交わすか――。
作品を通して投げかけられる問いに、私は「自分ならどうするだろうか」と深く問い直さざるを得なかった。万能な答えなどない現実を前にしたとき、人はどうしても動揺し、効率的な解に逃げたくなる。しかし雄町のように、逃げずに静かに事態を受け入れ、誇りを持って目の前の人に向き合える強さを持ちたいと心から思う。
「本当の豊かさとは何か」。南国の風に吹かれながら、そんな問いが胸の奥に残った。過剰なスピード感に流されそうになる日々の中でも、この本で得た気づきを大切に抱き締め、目の前の生活や人間関係を丁寧につむいでいきたい。
Posted by ブクログ
今更俺が言うまでもないことだが、これはもう本当に凄く良い小説。まぁまぁの数の人が死んでいく本にこういう表現は似合わないと分かっているが、幸せな生き方についてすごく考えさせられる内容だった。
出世の道を断たれても、親が死んでも、不治の病であっても、認知症で自分の思考を制御できなくなっても、貧困で酒に溺れて生活保護に頼る段階に来ても…それでも人はその環境で幸せを求めていいんだという、なんという優しい思考。
人の努力ではなんともできないことなんて世の中にはなんぼでもあって、努力は無駄でしかないと絶望を感じることなんてなんぼでも経験することやけど、それでも努力…というか、一生懸命に丁寧に生きる姿勢は尊い。哲学者スピノザはそういっているらしい。
人の幸せそうな姿を見る、困っている人に手を差し出す、飢えないようにきちんと過ごす…幸せの原点は意外と身近に分かりやすくあって、それだけに見過ごすことが多いんやろうな。
Posted by ブクログ
理想と現実とは違うだろうが、全ての医師に読んで欲しいと思った。
「人は無力な存在だから、互いに手を取り合わないと、たちまち無慈悲な世界に飲み込まれてしまう。手を取り合っても、世界を変えられるわけではないけれど、少しだけ景色は変わる。真っ暗な闇の中につかの間、小さな明かりがともるんだ。その明かりは、きっと同じように暗闇で震えている誰かを勇気づけてくれる。そんな風にして生み出されたささやかな勇気と安心のことを、人は『幸せ』と呼ぶんじゃないだろうか」
いつもながらの名文であるが、少し難しくて何度も読み返した。こんなことをサラリと言ってのける医師がソコに存在したら、専門でなくてもかかりたくなるだろう。
Posted by ブクログ
とにかく考える、考える、考える。な物語で生きるとは死ぬとはなにか。幸せとは不幸とは何か。それとどう向き合って過ごしていくのか。
いずれは直面する壁を前にした時にどう受け止めるか、周りはどうやって関わりを持つのか。様々な捉え方ができて素晴らしく勉強になりました!専門用語もたくさん出てきますが、決して難解すぎるという事はなかったのでぜひ続編のシリーズも読みたいと思います。とても面白かったです!
Posted by ブクログ
凛とした空気と静かな緊張感。京都特有の雰囲気の中の軽妙なやりとり。癖は強いが確かな技術を持つ原田病院の面々に、マチ先生に粋な計らいをする大学病院のドクター。花垣先生との強い信頼関係や南先生の成長がとても微笑ましい。人間は無力。医療も完全ではない。関わった様々な患者さんを通して感じさせられる。その中でも努力することが大事だとマチ先生は言う。スピノザの哲学と人間模様が絡み合い、京都の街のように深く深く心に染み込んでくる感覚になった。難症例でのスーパードクターぶりや、辻さんの「先生おおきに」では号泣してしまった。静かなタイトルや風景描写とは対照的に心が激しく揺さぶられる素晴らしい本でした。大好き度❤️❤️❤️❤️❤️
Posted by ブクログ
医療ドラマってかなり避けていたのですが(重すぎて耐えられないので)、これはそういう重苦しさを包含しつつ、ずっと爽やかな風が吹くような感じがして、一気読みしてしまいました。上からみたいになって恐縮ですが、本当にすばらしい本。
お医者さんになるくらい勉強をして、研究をして、たくさんの人間の人生に向き合ってもなお、世界って分からないことだらけだし、そういう態度こそ自然なのだと思わされた。読んだ直後に健康診断があったので、いつもより背筋を伸ばして診察を受けてしまった。ちょっと体重が引っ掛かりますね。軽い運動とかやってみましょうか。まだまだ若いので頑張れますよ。はい。すみません。わかってはいるのです……。
おいしそうな和菓子がいっぱい出てきてよかったー。あとなんか突然萌える三角関係(?)が出てきて熱かった。西島先生ってかなり萌えキャラの予感がするのですが、そこのところ、続編に期待してよろしいのでしょうか。
Posted by ブクログ
医療の描写が詳しいから「医療現場や関係者に随分取材したんだな」と想像していたが著者が医学部出身で医療に従事経験ありという経歴に納得。
この本のテーマのひとつである死生観について深い洞察が感じられるのも著者が医療の世界にいた時の経験から来るものと考えると説得力がある。
哲学と医学に精通している主人公を通じて綴られる死生観にはこちらも深く考えさせられる。登場人物やストーリーが面白く引き込まれるのも没入感の一因ではなかろうか。
やたら実在のお菓子が登場するので食べてみたくて検索してしまった。
医療、死生観哲学、京都散歩、お菓子グルメ、などなど、多面的に楽しめるエンタメ小説。
Posted by ブクログ
終末期医療の現場やそこに関わる人々の心理を淡々と、色鮮やかに描いた作品。
静かで流麗な文章が読んでいて心地よく、気づけば夢中で読み進めていた。
そして、続編があるとのこと。これは是非読んでみたい。
哲郎と秋鹿がシャルロッカを交わしながら語らうシーンが印象的で、必然的に死が絡む終末期医療において、医師が悩みながらも模索を続けている様、それでも日常の景色のように当たり前に患者が旅立っていく様は、哲郎が考える哲学の一端を垣間見た気分だった。
終末期医療の現場で、治せない患者とどう向き合うのか。正解は無いだろうが進むしかない。
答えを出すために模索しなくてはならない。
その哲学が導き出す「幸せ」は、とても温かで安心感に満ちたものだった。
優しい物語に胸が熱くなる。
ストーリーの随所で、まるで日常に栞を挟むかのように甘味が登場する。
死が張り付くような処置のシーンとは対照的で、ほっと一息つける弛緩した空気感が、それぞれのシーンをより鮮やかに浮き上がらせるようだ。
矢来餅と阿闍梨餅と長五郎餅は、死ぬまでに絶対食べておかないといけないらしい。
画像検索したが実にうまそうだった。これは是非食べてみたい。
Posted by ブクログ
現役医師が描く医療現場と命の尊厳に深く胸を打たれました。過酷な現実の中でも一人ひとりの患者に寄り添うマチ先生の静かな信念が温かいです。心に染み渡る小説でした。おもしろかったです!
Posted by ブクログ
初めて医療の小説を読みました。一生懸命生き抜き、旅立った家族を思うと心が重く、怖くて勇気が無かったです。しかし、真摯な、丁寧な、心が休まる文章に吸い込まれました。
入院するのであれば原田病院へ、そして安心して全てを任せられる雄町哲郎先生に見てもらいます!舞台京都の情景が鮮明に広がります。次はどこの町?、どこの甘味処?そこそこ良い所!そこ美味しかった!つい突っ込みながら愛読してました。
大学病院で最先端医療をバリバリ勉強して難しい症例をこなすことだけが医師の仕事ではない。雄町先生のように少数の患者と向き合っていく医療っていいなあと感じた。 あと京都のお餅が美味しそう。
Posted by ブクログ
「神様のカルテ」のファンでしたので、久しぶりに夏川草介さんのこちらの本を読みました。
舞台は京都ですが、「カルテ」同様にゆったりと描写される街並みと季節が心地良かったです。ご本人もおしゃられているように悪人はでておらず、個性溢れる人々が生きることと死を迎える事をテーマに物語は進んでいきます。
後半の盛り上がりもワクワクしましたが、やはり全般に綴られる文章と表現力、さらには重いテーマを言葉にしてくれる事が私にとって、とっても心地よいと感じます。
映画化も決まっているようです。キャストも楽しみです。また、続編も読みたいと思いました。
大好きな一冊になりました。、
Posted by ブクログ
高齢者の死に向き合って何が一番いいのかを考えさせられる物語でした。周りの人はとにかく頑張って生きてほしいと願うけれど本人はどうしたいのか、が一番大切なわけで。
これから歳を経ていくなかでそういう場面に立ち会う事が増えて来るがどう振る舞ったらいいのかを考えさせられた。
劇的で派手な場面はないが良い物語だと思います。
Posted by ブクログ
医療技術が発達し、科学が万能に見える現代において、私たちはどこかで医師に「神」のような全能さを求めてしまうことがあるのかもしれない。
しかし本作が静かに伝えてくるのは、「医者もまた、限られた力しか持たない一人の人間である」という、少しほろ苦くも温かな現実だった。
大学病院で高度な技術を駆使し、少年の命を救おうとする姿も、街の診察室でアルコール性肝硬変の患者の意志と向き合い、治療の限界に悩む姿も、主人公・雄町哲郎にとっては、どちらも目の前にいる患者と向き合うという同じ仕事なのだろう。
スピノザが黙々とレンズを磨き、世界をありのままに理解しようとしたように、雄町もまた「救える命には限界がある」という現実を静かに受け入れていく。
自分は命を支配する神ではない。ただ、患者の人生という暗闇の中で、足元をそっと照らす一本の「街灯」でありたい。
そんな医師としての姿勢が、物語全体から感じられた。
どんな環境に置かれても、自分にできる範囲の仕事を誠実に積み重ねる。そこには、医療の限界と、だからこそ生まれる人間らしい優しさがあった。
派手な奇跡を描く作品ではない。しかし読み終えた後、静かに心に残り、「人は限られた力の中で、どのように誰かを支えることができるのか」を考えさせてくれる一冊だった。
Posted by ブクログ
マチ先生の哲学感のある医師像が、読んでいて温かく感じる物語でした。特に、花垣先生との対比があるから余計にそう感じるのかもしれませんが。
原田病院の患者達も個性的で大好きでした。
高齢だからこその、死への向かい方。みたいな。
また、気になるところはあるけれど、敢えて全てを伏線回収しない辺りも、医療の未熟さにフォーカスが当たっていて良かった。
(妹さんの死がどんなものだったのか、龍之介との関係は最低限に、南との関係も進みすぎない点など)
Posted by ブクログ
本屋大賞ノミネート作品を読み、その前日譚にあたるこちらを読みました。
医者というより哲学者。マチ先生の話、たくさん読みたいです!
以下は気になった文の引用です。
「「野心はなくても矜持はある。そうだろ?」含蓄のある言葉であった。」
「度が過ぎると、心の器にヒビが入ることがあります。ヒビだけなら涙がこぼれるのみですが、割れてしまえば簡単には元に戻りません。それを、精神科の世界では発病と定義づけるのです」
「がんばらなくて良いのです。(略)がんばらなくても良いのです。ただ、あまり急いでもいけません」
「俺はもう酒をやめることはできまへん。こないな寂しい世の中を素面ではおれんのや。」
「すべてが決まっているのなら、努力なんて意味がないはずなのに、彼は言うんだ。“だからこそ”努力が必要だと」
「願ってもどうにもならないことが、世界には溢れている。意志や祈りや願いでは、世界は変えられない。そのことは、絶望なのではなく、希望なのである。」
『過酷な肝移植だって乗り切ってきた少年なんだ。こんなところで斃れて良いわけがない』
『頼んだぞ、相棒』
「おおきに、先生」
「そんな風にして生み出されたささやかな勇気と安心のことを、人は『幸せ』と呼ぶんじゃないだろうか」
Posted by ブクログ
とても優しく温かい医療小説でした
神様のカルテを読んだことがないので著者の作品は初めてです
強制的に泣かせてくる作風かと思って忌避していましたが全然そんなことはありませんでした
自然な形で人間ドラマが描かれており、そこに様々な感情を刺激させられました
連作短編集のような構成なので大変読みやすかったです
変に小難しい表現もなく、医療の知識がない人でも理解しやすい説明が成されていました
とても読みやすくスラスラと進めます
それなのに軽い読み心地ではなく、胸になにかズッシリとしたものを残していく作品でした
読後感はとても良かったです
個人的に恋愛パートは不要かな…と感じましたが逆にそういうのがある方が人間らしくて良いのかもしれません笑
Posted by ブクログ
「久しぶりに人が死なない本を読んだ」という感想をよく見かけるくらい、小説というものは大体誰かが死ぬ。誰かの死でストーリーに起伏が生まれるからなのか、死によって起こる周りの感情の揺れを表現したいからなのか。この本もたくさんの人が死ぬ、死ななかったりもする。それは特別ではなくて日常の一部だ。抗う時もあれば受け入れる時もある。人の数ほど生も死もある。昔、職場で「受け持ちの人が亡くなるのは隣のおじいちゃんが亡くなる感じと似ている」と誰かが言っていた。ドア一枚向こうで見守りながら一緒に生きている。そんな本だった。
Posted by ブクログ
最先端の医療現場と市中の一般病院の現場の対比や緊急内視鏡処置のリアル(食道静脈瘤破裂止血や胆道狭窄ステント留置など)がよく描かれているだけでなく、、
京都の先斗町、珍皇寺の六道まいり、糺の森、、たくさん京都の地名や風物詩が出てきて、こちらもじっくり味わって…
主人公マチ先生の(人間はね、一人で幸福になれる生き物ではないんだよ)と妹の遺児に語る哲学が胸にきます…
精神科から内科に転科された秋鹿先生の「共感というのは心にとってはなかなかの重労働でしてね…度が過ぎると心の器にヒビが入ることがあります…」このくだりも忘れられない
先生が難しい患者を持っている時に毎晩来るゲームバーで、マチ先生がいただくシャルロッカととらや(京都創業)の羊羹「夜の梅」
たくさんの甘味もこの作品に優しい風味を加えてくれている
Posted by ブクログ
これは、一般の人は、どのくらいわかるんですか……ってなりながら読んでいた 結構専門的な話をあんまり説明なく入れ込んでもいいのかという気持ちになりました この病院の採算がいちばん気になる
Posted by ブクログ
病院が信州から京都にかわっただけで、神様のカルテとの違いがあまりわからなかった。でも甘いもの好きの主人公が好むお菓子が秀逸で、検索してみたが東京では買えないものばかり。
特に緑寿庵の焼き栗の金平糖!京都に行きたくなった。