あらすじ
現役医師として命と向き合い続けた著者が到達した、「人の幸せ」とは。
380万部のベストセラー『神様のカルテ』を凌駕する、新たな傑作の誕生!
その医師は、最期に希望の灯りをともす。
【あらすじ】雄町哲郎は京都の町中の地域病院で働く内科医である。三十代の後半に差し掛かった時、最愛の妹が若くしてこの世を去り、 一人残された甥の龍之介と暮らすためにその職を得たが、かつては大学病院で数々の難手術を成功させ、将来を嘱望された凄腕医師だった。 哲郎の医師としての力量に惚れ込んでいた大学准教授の花垣は、愛弟子の南茉莉を研修と称して哲郎のもとに送り込むが……。
●著者より 読者の皆さまへメッセージ
医師になって二十年が過ぎました。
その間ずっと見つめてきた人の命の在り方を、私なりに改めて丁寧に描いたのが本作です。
医療が題材ですが「奇跡」は起きません。
腹黒い教授たちの権力闘争もないし、医者が「帰ってこい!」と絶叫しながら心臓マッサージをすることもない。
しかし、奇跡や陰謀や絶叫よりもはるかに大切なことを、書ける限り書き記しました。
今は、先の見えない苦しい時代です。
けれど苦しいからといって、怒声を上げ、拳を振り回せば道が開けるというものでもないでしょう。
少なくとも私の心に残る患者たちは、そして現場を支える心ある医師たちは、困難に対してそういう戦い方を選びませんでした。
彼らの選んだ方法はもっとシンプルなものです。
すなわち、勇気と誇りと優しさを持つこと、そして、どんな時にも希望を忘れないこと。
本書を通じて、そんな人々の姿が少しでも伝われば、これに勝る喜びはありません。
(夏川草介)
●著者プロフィール
夏川草介(なつかわ・そうすけ)
一九七八年大阪府生まれ。信州大学医学部卒業。⻑野県にて地域医療に従事。二〇〇九年『神様のカルテ』で第十回小学館文庫小説賞を受賞しデビュー。同書は二〇一〇年本屋大賞第二位となり、映画化された。他の著書に、世界数十カ国で翻訳された『本を守ろうとする猫の話』、『始まりの木』、コロナ禍の最前線に立つ現役医師である著者が自らの経験をもとに綴り大きな話題となったドキュメント小説『臨床の砦』など。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
読み易く、知識も専門的でキャラクターもそれぞれイメージしやすい。その割に文章の強度が高いので鼻の奥がツンとすること数回。これほどまでに描ける作者の人間としての深みがそのまま反映された傑作。
Posted by ブクログ
医師と哲学の話
人の生死は人によって捉え方が様々なので難しい題材だが美しく表現されていた
研究分野、現場問わず
最前線で働く方々は素晴らしいね
Posted by ブクログ
独身なのに亡くなった妹の子どもを引き取り、将来を嘱望されていた大学病院をやめて小さな地域病院へと転職。
車も持たず自転車で京都の街を往診する。
治らない病気の人もどうしたら幸せに過ごすことができるのかと考えている主人公の人間性に魅力を感じながら読んだ。
医療従事者の人、これから目指している人にぜひ読んでもらいたいとおもう本だった。
Posted by ブクログ
京都が舞台。
家庭の事情で医局長の座を退き地域の終末期医療を主に行う病院に勤めるマチ先生。
妹を病で亡くした経験から、医者は神ではないし、医療に限界があるが、それでも努力をすることが大切だと学ぶ。確かな医療技術と、冷静な判断力持ち、患者一人一人に向き合って心ある会話をかわす。
彼を取り巻く温かい人間関係が読んでいてとても心地がいい。(大の甘党という人間臭さも良い。)
まさにトランキライザー。優しい医療系小説。
最近続巻がでたらしい。早く読みたい。
Posted by ブクログ
まち先生は哲学者のよう。
私達にできることは、暗闇で凍える隣人に
外套を掛けてあげること
以下、気になった言葉
患者の顔が見えるという事は共感するということ。心にとっては重荷。特に悲しみや苦しみに共感することは注意が必要。度が過ぎると心に器にヒビが。ヒビだけなら涙がこぼれるが、われるとかんたわにもどらない。精神科では発病という
彼女自身、辛くないはずなかったけど、残された時間をしくしでも楽しい思い出にしたかったのかもしれない。記憶を手繰ると思い出は笑顔ばかりなんだ。
絶望の淵に立ちながら幸せの時間を作り出していた
できるなら、私もそんな人間でありたい
Posted by ブクログ
雄町先生と花垣准教授の信頼関係に感動。幸せとは何かを考えるきっかけになるエピソードが心に染みる。京都の有名な甘味がさりげなく紹介されるのがアクセントになり、一気に読めた。続編(エピクロスの処方箋)をはやく読みたくなった。
Posted by ブクログ
医療現場がリアルすぎて面白すぎた。その先、早く読みたいです。2人がいい感じすぎてニヤニヤでした。
京都のお店も場所もそのままあり、今度京都行って聖地巡礼しますww
Posted by ブクログ
本作の続編『エピクロスの処方箋』を読みたくて、まずこの作品を読むことに。
京都の地域病院で働く医師が主人公の物語。
温かい気持ちになれる作品です。
亡くなる患者や残された家族が皆とても幸せそうだった。
人間が(自分自身が)できることには限界があること(それを受け入れること)、そのような世界でも努力したり希望を持つことの大切さ。
幸せな人生について、こういった考え方もあるんだなと感じた。
スピノザの本も読んでみたい。
Posted by ブクログ
内視鏡の上手い急性期の先生が、姉の子供を育てるために地域医療の病院へ転職し、そこでの活躍を描く内容。
急性期も在宅医療も大好きなわたしには心に響くものが多い一冊でした。
安心を与えられる医療。すてき!
Posted by ブクログ
表紙の手触りがいい本です。装画も爽やかな色合いで、自転車に乗る一人の男性が描かれています。裏表紙には美味しそうな和菓子も。京都の文化的な面の裏側に、普通の暮らしがある当たり前のことを感じさせてくれます。
矢来餅、阿闍梨餅、長五郎餅をこの世で味わうべき3つの食べ物という原田病院の医師、雄町哲郎。通称マチ先生。甥の龍一郎くんと暮らし、毎日大忙しのなかでも穏やかな空気をまとっている人でした。そしてとても魅力的な人でした。医師としての技術の高さと周囲の医師や看護師、そして患者を安心させる術の両方を兼ね備えていました。
小説では、患者も病気もそれぞれで、その一つ一つに対応している医師達の大変さも伝わってきました。
大学病院で病気に立ち向かう医師、町中で人と向き合う医師。両タイプの医師が必要なのは当たり前のことですが、マチ先生みたいな人が自分の町にいたら、心強いですね。
命を扱う仕事の大変さと、最期まで生きることに希望を与える大切さを伝えてくれる小説でした。
第一章 半夏生
第二話 五山
第三章 境界線
第四章 秋
大学病院で最先端医療をバリバリ勉強して難しい症例をこなすことだけが医師の仕事ではない。雄町先生のように少数の患者と向き合っていく医療っていいなあと感じた。 あと京都のお餅が美味しそう。
Posted by ブクログ
「2025年読みたい本3冊」として、年始にこの本を選んでおいて、読めないまま12月になってしまった。危うく丸々1年過ごしそうだったなんて…時が過ぎるのが早くて困る_(┐「ε:)_
「神様のカルテ」も「本を守ろうとする猫の話」も、だいぶ前に読んだ記憶があり、そこから久々の夏川草介先生の作品でした。
『「世の中には死ぬまでに絶対食べておくべきうまいものが三つあるんだ。知ってるかい…矢来餅と阿闍梨餅と長五郎餅だ」「全部餅じゃないですか」甥の抗議の声に、哲郎の方はむしろ満足げだ。「辛い時や頑張っている時には甘いものを食べるに限るんだよ」-第二話 五山-』
最先端の医療・並々ならぬ技術で難症例を鮮やかに解決するのも好きなんですが、終末緩和ケア・哲学の側面から切り込んでいくマチ先生もとても良かった。甘いものに目がないところが何よりお茶目。
続編が出たと聞いたので、こちらもいずれ読んでみたい。
2025.12
Posted by ブクログ
大きな世界の流れは最初から決まっていて、人間の意志では何も変えられない。全てが決まっているなら努力なんて意味がないはずなのに、だからこそ努力が必要。
この言葉を読んで心の中の絡まっている糸が少し解けた気がしました。
スピノザの考え方の一部しか理解していないし、この本を読んだだけではわからないけれど、私は私の置かれた世界で、この範囲の中で、最大限に幸せになる方法を見つければいい。そう言われた気がしたんです。
今の社会は、科学の力と自分の努力で、なんでも叶えられると教えられることも多いです。努力すればなんでも叶うなんて、昔はわたしも思っていたことがありました。
でも、自分の体力や精神力、その他スペックもろもろは全て与えられたもので、自分の努力で得たものはとても少ないように思います。
だからこそ、今持っているものに感謝し、このスペックで、このカードで戦える最大火力を出すにはどうするのかを考えられる人間になりたいと思いました。
Posted by ブクログ
雄町哲郎は京都の町中の地域病院で働く内科医である。三十代の後半に差し掛かった時、最愛の妹が若くしてこの世を去り、 一人残された甥の龍之介と暮らすためにその職を得たが、かつては大学病院で数々の難手術を成功させ、将来を嘱望された凄腕医師だった。 哲郎の医師としての力量に惚れ込んでいた大学准教授の花垣は、愛弟子の南茉莉を研修と称して哲郎のもとに送り込むが……。(あらすじより)
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医療小説ではなく、哲学書のような読後感。
哲学にストーリーをつけたような、
難しさではなく、感情に染みこんでくるような、大好きなテイスト。
もともと神様のカルテシリーズも大好きだったけど、
同じような空気感。
それ以上に、死とは何か?医療とは何か?に迫っている部分が
神様のカルテよりも哲学感が強い。
最先端の大学病院での研究や治療ではなく
治療ができない人の看取りが多い老人病院で見える景色が描かれている。
そんななか、凄腕なのに飄々と、でも深い部分で患者をとらえようとする
マチ先生のキャラクターがとても好ましく、
剛胆な花垣先生、原田病院で働く個性的な医師のそれぞれも、
ドラマを感じさせてくれる。
小説らしく、大学病院へ忍び込んで難しい手術を成功させるような
ヒーロー的な見せ場もあって、
読んでいて痺れるような爽快感も得られる。
最高レベルの小説。
Posted by ブクログ
医者は患者の命を救うことが仕事ですが、患者からいろいろと学ぶことも多いような気がしました。辻という患者が遺した「おおきに先生」はこの小説を読んで、深いなぁと思います。
舞台も京都で場所の設定も良かったと思います。伝統行事を大事にして、「人は死ぬまでに食べなければならないものが3つある」っていう格言は初めて聞きました。自分もこの小説を読んでいろいろと学ぶことが多かった気がします。面白い小説でした。
Posted by ブクログ
終末医療のお話
どんどん逝きます
でも心は温かくなる
不思議な本
私も父を自宅で看取ったので、
本当に色んな事を思い出した
在宅看護に来てくれてた先生や看護師さん
優しかった。
人生の最後は哲学だと思う。
自分は死に向かうんだけど、
他の人はまだまだ生きる、
辛いだけでなく、思い出が残る
自分が辛い時、どこまで笑えるのだろうか…
おおきに先生
って言って死にたいね
私もマチ先生にお願いしたい
Posted by ブクログ
マチ先生はもちろん、
出てくる人物がとても魅力的。
読んでいて前向きになれる、
今の環境で頑張ってる自分を
肯定してくれるような本だった。
これからも、日々自分に出きることを
頑張ろうと前向きになれた。
Posted by ブクログ
現役医師である夏川草介氏による医療小説。
将来を嘱望された元大学病院の内科医雄町哲郎は妹の甥の引き受けを機に地域病院に転じる。先端医療に身を置く総合病院の元同僚らや地域医療に身を委ねる患者らとの交流を描く。
題名に借用されているオランダ近代哲学者スピノザは「神即自然」の汎神論を唱え、すべての出来事は必然であり故に努力が必要であることを説いた。治すことが叶わない場合、死が宿命である場合、医者は患者とどう向き合うのか。医者が治すものとは何か。それらの深淵なるテーマを主人公の自然体な人柄と京都の優美な雰囲気を交えて穏やかな世界観のなかで読者に問う良作。
生前中スピノザは正当な評価を得られずレンズ磨きを生業としていたが、主人公を色眼鏡ではなくクリアなレンズを通して人々と接する凄腕の内視鏡医師とし、「スピノザの診察室」というタイトルをつけるとはなんとも洒落たセンスではないか。
Posted by ブクログ
現役医師が書いた作品らしく、リアルで現実的。とても共感できた。
大学病院で将来を嘱望されていた、凄腕の内視鏡技術を持つ雄町医師。しかし妹を亡くしその遺児を引き取って育てるために大学を辞め、市中病院で外来と訪問診療に取り組む日々。
訪問診療で担当する癌末期患者や看取り患者とのやり取り、その家族の有り様などがとてもリアル。医療に携わる人たちの多くが、こんなふうに熱い思いで取り組んでいると信じたい。
雄町医師の静かで落ち着いた人柄が魅力的。ぜひシリーズにして欲しい。
Posted by ブクログ
面白かった
京都にある小さな診療所
そこで勤めているドクターの話
すごく大きな事件があるわけではないが
話の筋がしっかりできていて
すーっと世界観にのめり込んで
気づいたら読み終わっていた
続編も読んでみようと思う
Posted by ブクログ
病を治す側、治す技術を突き詰める側から、治らない病に侵されている人と向き合う側になったマチ先生の物語。
一見、最先端医療から離れた脱落者ともみえるステージに移ったマチ先生だけど、花垣と出会ったころから変わらない信念を持っていて、立場は違えど信頼しあっている2人の関係も素敵だと感じた。
Posted by ブクログ
静かな小説です。嫌なヤツは出てくるけど、悪人が出てこないので、心穏やかに読み進められます。ちょっときれいごとな気もするけど。
病気のひとは幸せにはなれないのか。介護してるしてるひとは幸せじゃないのか。年齢を重ねてくると、病気や認知症が他人事じゃないので、いろいろ考えさせられました。
あと、京都の甘い美味しそうなものがたくさん出てきたので、是非食べてみたいと思いました。
Posted by ブクログ
マチ先生には独特な言い回しの独特な優しさがある。
京都の和菓子が食べたくなった。
阿闍梨餅、長五郎餅、矢来餅、ふたばの豆餅
京都の描写が魅力のある、奥豊かさのある感じでその場に居てたいなって思える場所だった。
医療というものに、たいした期待をしていないというマチ先生。世界は無慈悲で冷酷な現実で溢れてて、それをどうすることもできないことが多い。無力感はあるけれど、とらわれてはいけない。できないことはあっても、できることだってある、と。
自分もいまの仕事の現状に、可能性は感じてるけども、無力感を感じる部分が大きかった。だから、この職から逃げようとしてた。でも、無力の中の小さい有力を見つけて、いまの医療職をまっとうする。それもありだなって思った。
Posted by ブクログ
まあるい、穏やかな気持ちになった。
持病から大きい病院に関わる事が多いけど、「技術だけでなく、人間に目を向けよう」とする先生に出会った事はまだない。
金儲け、薬頼り、冷たい診察…。嫌な情報が世の中沢山溢れているけどその中で、マチ先生の様な志を持ったお医者さんが増えて欲しいなと心から思える、魅力的なお医者さんだった。
登場する甘味が美味しそうで…。全部メモに書きました。いつか食べたいな。
Posted by ブクログ
大学時代に医学部の友達が、自分のバイブルだと言って貸してくれたのが夏川草介さんの「神様のカルテ」だった。
変わったところかあるけど優秀で、何より医者としての精神が素晴らしい主人公のお医者様が出てくる、という点が神様のカルテと共通する。
心が熱くなって、何度か泣きそうになった。
この方の小説を読んで、医者を志すような若者が沢山出てくるといいよなと思った。
世の中の医者は科学者と哲学者という2つの人格を抱えている、という花垣先生の言葉が特に印象に残った。
Posted by ブクログ
哲学者スピノザの教えと医療のコラボ
大学病院での最先端医療と
小規模病院での医療との対比
マチ先生が大学病院に潜り込む
ハイライト場面が読みどころ
Posted by ブクログ
京都の街中にある病院で働くマチ先生は地域医療で、お金に余裕がない高齢者やアル中で癌末期になった患者など、弱い立場の人間にも寄り添いながら、その人の人生が幸せに過ぎる様にささやかな勇気と安心を与える。
著者が現役の医師で、言葉の重みも十分伝わった。医療とは何か、人生とは何か、幸せとは何か、主人公のマチ先生の言葉が染みた。
物語ではあるんだけど、哲学書でもあり、暑い京都の街中の雰囲気や御菓子屋のマメ知識も味わえて、独特な世界観を感じた。
Posted by ブクログ
主人公 生けとし生けるもの全てが主人公。皆、自分が主人公の人生を歩んでいる。人はもちろん、犬も猫も虫も石も。。。そんなことを思わせてくれる小説でした。本屋大賞にノミネートされる作品だけあって読みやすく読み応えのある本でした。ありがとうございました。
Posted by ブクログ
マチ先生みたいに働きたいなあ。
ゆったりとでもしっかりと、冷静にでも温かく。
患者に触れて、考えて。
人と関わる仕事、人に感謝される仕事っていいなあ。まあ本に書かれるのはその感謝される部分が大きくて、それ以外のところはあまり見えてないのだろうけど。