あらすじ
アートに青春と情熱をかけた男たちの物語
「日本に美術館を創りたい」。その夢を追いかけ、絵を一心に買い集めた男がいた。国立西洋美術館の礎“松方コレクション”誕生秘話。
※この電子書籍は2019年5月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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Posted by ブクログ
松方コレクションの壮絶な物語が、心に染みた。私までタブローの魔力に駆られたくなったし、命を懸けて守り抜いた人々の想いを背負った松方コレクションを、この目で見てみたくなった。
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難しい言葉や読めない字もあって、なおかつボリュームもある作品だったので、じっくり時間をかけて読み進めた。
作中に出てくる絵画が気になって、実際に調べながら読んだことで、より深く作品世界に浸ることができ素敵な読書時間でした!
特に心に残ったのは、松方のこの言葉。
「ナポレオンでなくとも、誰であれ、おのれの行く末のことはわからんものだ。
行く末どころか、明日のこともわからんものだよ。
だからこそ、いまこの瞬間をどう生きるべきか、考えている。
一瞬を面白く生きずして、面白い人生にはできぬ。」
読んだ瞬間、胸がじーんと温かくなった。
“未来がどうなるかなんて誰にも分からない。だからこそ、今をどう楽しむかが大切なんだ”というメッセージが、とてもまっすぐに響いた。
もう一つ心に残ったのは、
言葉にできない情感を、画家は絵筆と絵の具でカンヴァスに表すことができる。
という言葉。
美術に興味がある人だけでなく、何かを「好き」だと思うすべての人に通じる言葉だと思った。
アートは説明できない“感情そのもの”なんだと気づかされる一節だった。
全体として、アートの世界を題材にしながら、人の情熱や生き方を描いた深い作品で、今はとにかく国立西洋美術館へ行きたい。行く前に絶対読むべき作品!!
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わたしに美術の楽しさを教えてくれた人。
西洋美術館で開催中の印象派特別展に先駆けて。
おかげさまで、松方コレクションの睡蓮に特大感情を抱く初体験ができました。
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国立西洋美術館が、松方コレクションが、もっと特別なものになる一冊だった。
松方幸次郎は、「日本の将来が明るいものになるように」、「日本の若者たちが本物に触れられるように」という想いで莫大な私財を投じ、怒涛の勢いでタブローを集めた。だがそのコレクションは戦禍に巻き込まれ、フランスに取り押さえられてしまう。
そのタブローをどのようにして取り返すかが描かれた、史実に基づく物語。
多少史実と照らし合わせると誇張されている部分もあるだろうし、批判もあると思う。だけど、やはり、原田さんは心を揺さぶる天才だと思った。
熱い志をもつ実在した人物を、もっと魅力的に描き出し、章が終わるたびに鳥肌がたった。
(常設展内、川崎重工作成の紹介ムービーでボロ泣きしてしまうくらいには松方さんのファンになってしまった。)
「一瞬一瞬一生に一度しかない瞬間なのだ。この一瞬をおもしろく生きずして、面白い人生にはできぬ。」
私も多少損をしたとしても、身と心を呈して、お仕事を、生きることをしようと思った。
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原田マハ作品だーいすき!
ついでに、原田マハに出てくる人物のことも、好きになっちゃう。
今回は松方コレクションを作った松方幸次郎と、そのタブローにまつわる人々のお話。
日本に本物の西洋美術を見ることのできる美術館を創るために、まっすぐ、静かに炎のような闘志を燃やしているひとたちがとてもかっこいい。史実をベースにしているけれど細かいところに原田マハエッセンスが加わって、本当にそんな会話が当時なされたと思ってしまう。いま私たちは美術館に行けばすぐに本物にアクセスできるけれど、それはこの時代にコレクションを作り、守り、届けてくれた人々がいたからなんだ。みんな人情に溢れていて、とっても素敵。彼らのおかげで、私はいまたくさんの西洋美術を享受できていると思うと、感謝しかない。
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国立西洋美術館、松方コレクションの秘話。
いかにしてコレクションされて、戦争を逃れて日本にやってきたのかを知れて感動!はやく国立西洋美術館にもう一回行きたい
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松方さん、田代さん(矢代さん)、日置さんたちの芸術に対する熱い思いと、国民のための情熱に感動。
戦闘機じゃなくて、タブローを。戦争じゃなくて、平和を。美しいわ。...すばらしいわ。
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史実に基づくフィクション?美術に纏わるストーリーを書かせたらマハ先生の右に出る方はいらっしゃらないですね。読んだ後に、必ず美術館に行きたくなります笑「熱き情熱」は後世まで伝わるのである。
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絵画を生で見てみたい、と思わせてくれる素晴らしい一冊。少し難しい。
松方コレクションが日本で展覧に至るまでの明るさと苦しさが描かれており、松方幸次郎がモネに会っていたこと、ゴッホのアルルの部屋までも買い取っていたことには驚いた。後半、ドイツ兵からコレクションを守り抜くことに努めた日置の人生は苦しく、でもこの人達がいたからこそ松方の購入した絵画が日本にある事実に感嘆する。
戦闘機じゃなくてタブローを。
原田マハは愚か者たちへ最大級の賛辞をこめて、美しき という形容詞をあたえている。
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日本に西洋美術館を造る為に奔走、努力した人達のお話。
松方コレクションの生い立ちが良く分かり、第二次世界大戦敗戦国の日本がフランスに接収されていたタブロー(絵画)を一部を除いて取り戻した事を知りました。
吉田茂がカッコ良く描かれすぎな気もしますが、今の石破茂に言いたい‼️「お前もちゃんとやれ。」
敗戦後、アメリカとの交渉で何も出来なかった担当者に吉田茂が「悔しいか、それが敗戦と言う事だ。」
フランスとの交渉で吉田茂本人が「フランスには数多くのタブローがある。日本人は、本物のタブローを見た事が無い。本物を見れば、フランスの素晴らしい事が分かる。」
敗戦国の交渉として、素晴らしい。
上野の近代美術館に又行きます。
Posted by ブクログ
戦前戦後の政治と歴史的事実の話が長くて、なんだこれは、歴史の授業?と思う部分を乗り越えて、一気にエンジンがかかる。
今まで考えたこともなかったけれど、誰かがお金を出して手に入れていなければ、海外の画家の描いた絵が日本にあるわけがない。美術館がなければ一般人がそれを鑑賞する機会なんてなかったんだ。
私財を投げ打って絵画や彫刻を買い求め、美術館を建てようとした人がいる。文化がなければ世界と対等には付き合えない。戦争に勝っていればいいってもんじゃぁない。
一つ一つが目から鱗の落ちる思い。
読み終わって、解説を読み、小説に出てきたほとんどの人が実在していたことを知る。参考資料の量がすごいのも納得。
これもう一度改めて読み返そう。
歴史、政治、退屈とか思わないで、ちゃんと受け止めよう。
なんか、びっくりした!
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タブローに命をかけた人たち。大富豪、美術史家、使用人。極論、絵の具の集合体である絵がこれほど人の心を打ち、大きな動きをさせるか。つまり絵画には、当時の画家の想い、時代の空気、これまでの歴史などが複雑に混ざりこみ、力を持つからに違いない。呪力のような異質さと大きな躍動感を味わえるとても面白い一冊だった。次に西洋美術館に行くのがとても楽しみだ。
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原田マハさんの本はいつも本を通して絵を観ているような気にさせてもらえる。機会がある時に、なぜ国立西洋美術館に足を運んでおかなかったのだろう。もっと早くこの本と出会っていればよかったのに。話の中に出てくる画家や絵をインターネットで観れるという便利な時代になったけれど、やはり美術館を訪れて実物を見てみたいと思う。
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やはり原田マハ先生の長編は素晴らしい。登場人物の息遣いが直に伝わってきて471ページに及ぶ大作だが息つく暇もなかった。疾走感が素晴らしい。
緻密なストーリーには百田尚樹先生の海賊と呼ばれた男を彷彿とさせる。終盤読んでて日置、松方の漢意気に泣きそうになってしまった。
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登場人物たちはみな、大なり小なりタブローに人生を狂わされた”愚かもの”。しかしこの”愚かもの”たちの熱意と信念は尋常ではない。個人的にこういう熱いドラマは非常に好みで、ページをめくる手が止まらなかった。
”豪華客船”のような圧倒的存在感を放ち、世界大戦の真っ只中で、豪胆な行動力をもって偉業を成し遂げんとする松方幸次郎。
彼の人間的魅力もさることながら、その船の”艀”として美術知識を総動員してコレクション形成に協力する者たち、巨大な光である松方幸次郎を”影”として献身的に支える者たち、周囲の人々がどんな想いで彼と共にあったか、彼らの心情の動きが緻密に描かれており、感情移入は必至。
松方幸次郎を含め、各登場人物それぞれがハッとして、タブローの持つ可能性や、物語の主軸である大事業に向けて真に心を動かされる瞬間、読んでいた自分もハッとさせられる。
ロシアのきな臭いニュースが続くが、彼らの”愚か”な生涯が無駄にならないように。彼らを”美しい”と語り継ぐことができる世界を維持していかなければならない。
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後半盛り上がった。
日置釭三郎という人を私は知らなかった。
歴史にも疎く、戦争とタブローにこんな関係があったのかと。
国立西洋美術館はコルビジェ目的で行ったけれど、改めてまた行きたいと思った。
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美術館が好きでたまに行っているけれど、
こんなふうに守ってきた人がいて、大切にしてくれている人がいるから今も私たちは気軽に美術に触れることができる。
ありがたいなぁって思えた。
こういう名もなき偉人をたくさん、知りたいし、知って感謝だけ感じで生きていきたい。
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描写の書き込みが丁寧すぎる、と思いながらも、小説という文字だけのツールを通して美術の素晴らしさを伝える原田マハの作品は好きだと思った。
芸術というのは、争いのない…心の余裕がある時に初めて心惹かれるものだとよく言われるが、戦争、そして敗戦に立ち向かい、タブローを守る情熱的な男たち…それを支える女たち。
戦争の中生きた人たちでも、タブローによって豊かな人生だったのだろう。
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戦争の中でタブローを追いかけ、守り抜いた愚か者たちの熱い物語。
当たり前に鑑賞していた絵画たちの歴史を知ったことでまた違った楽しみ方ができそうで、今度改めて国立西洋美術館に行こうと思った。
印象的だったのは松方の魅力溢れる姿。あんなにチャーミングで情熱的で冷静な人、いるの?安定した今の日本では出てこないだろうし、周りにいても自分はたぶんついていけない笑 周囲の人はそんな松方に精一杯尽くそうと努力した、素晴らしい人たちだったのだろうと感じた。
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戦闘機ではなくタブローを。戦争ではなく平和を。
戦争の時代でもタブローを守るために尽力した人たちの話。まずは生活、生きることが優先と思ってしまうが、それよりも日本に美術館を、青少年教育を願ったタブローに魅せられた、そしてその思いを引き継いだ 美しく愚かなものたちの熱い物語だった。
Posted by ブクログ
原田マハさんの作品はたくさん読んでいるが、自分的にはベスト3に入る気がする。
松方コレクションはなんとなく聞いたことがあったが、その熱い経緯を(フィクションが混ざってはいるが)知ることかできて面白かった。
それぞれの情熱がなければ、国立西洋美術館はできていなかっただろうし、意思を継ぐことでなんとか最後までたどり着いたことを知り、今度行く時はよりしっかり見てみようと思った。
また、どの登場人物も誰かのために動いていた。松方のような周りを巻き込みながら夢を叶えていくような人になりたいなー。
日置が悪役なのかとミスリードさせられたが、むしろその逆であったし、日置の戦時中の描写はずっとハラハラで一気読みだった。
Posted by ブクログ
原田マハさんのアート小説
画家そのものというよりは、どのような経緯で絵画が美術館に飾られ、私たちが鑑賞できるのか本当によくわかった作品である。
戦渦の中、造船業を指揮していた松方であるが、1枚の絵をきっかけに絵画にのめりこむ。「一枚の絵は軍艦一隻に相当する力を秘めているかもしれない」と思った松方は国内に美術館を造ろうとタブローを集める。戦中の混乱の中、松方の意向に共感する人たちによって命がけで守り続けられてきたタブロー。そうして現在西洋美術館で鑑賞させていただけるかと思うと頭が下がる思いだ。
「それがなくても生きていける。それがあれば人生は豊かになる。」本当にそうだと思う。日々疲れた時にソファーに座って絵を見ていると疲れが取れる。絵画の力ってすごい。
Posted by ブクログ
ほぼ実話らしい。胸が熱くなるよい長編。
ボーっと見てたアルルの部屋やモネの睡蓮、次見る時はまた見方が変わるんだろうな。
やはり大切なのは志。画を見られるというのは決して普通のことではないのだ。
Posted by ブクログ
国立西洋美術館がこのような過程があり創立られたのかと思うと、ここでの鑑賞が特別となる。
松方コレクションの絵画を守り抜いた人々の思いを感じながら鑑賞したい。