小説・文芸の高評価レビュー
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Posted by ブクログ
ネタバレ今のところ、シリーズの中で1番好き。
歴史における物語の役割とは何か。
それが描かれた3巻。
最初から、リーアンのこともアーロウのことも愛しくて仕方なかった。
23歳なのに、2人とも15やそこらの少年みたいに生きるのが下手くそで、なんともじれったい。
リーアンは言動も幼い。でも常に色んなことを考えてて、そう、頭では誰よりもたくさんのことを考えてて、家族のことを心から思ってるのに、それを伝えられない不器用な性格。
アーロウは一見して、そして同じ顔のリーアンと比べて、とても大人びている。一種の諦観のような。でも、根っこのところでは世界を諦めてない少年の心を持っている。それを必死に取り繕って、大人として振舞いながらも、大事なことには気づけない鈍感な青年。
お互いを憎たらしく、そして疎ましく思っているように見える2人だけど、本当は誰よりも愛している。
世界でたった1人の兄弟。魂を分けたような2人。
2人の魂は、最期まで共にあっただろう。
構成が、素晴らしいと感じた。
多崎礼作品のファンなら、馴染みのある構成なんじゃないだろうか。
私のバイブルとも言える「八百万の神に問う」の3巻と、同じ香りがした。
とても似ている。章の間に小話が挟まれるという構造もそうだし、ジッパーの両側が噛み合っていくような物語展開も、そして、「成り代わる」ところも。
中盤から、嫌な予感、死の香りは感じていた。
それでも、縋る思いで、どうにかこの双子を救ってくれと、ページを必死でめくった。
この結末を、私は救いがないとは言わない。
歴史における、物語の役割。
多崎礼の作家としての矜恃が感じられる一作だった。
八百万シリーズもそうなんだよね。
人の心を動かすのは、世界を変えるのは“ことば”だ、っていう、言葉を扱う人間の矜恃。
11年前、11歳の私が八百万シリーズを読んだあの日の、魂を揺さぶられた、あの思いをを思い出すような本だった。
ことばのちから、文筆のちから、物語のちから。
私の胸にある。
【追記】
八百万の神に問うの3巻、読み返してたんだけど、全く同じフレーズ出てきた…!!!!
これは、もう絶対、多崎先生わざとだよね!?
震えた…。
めちゃくちゃ好きだ… -
Posted by ブクログ
ネタバレ詩人・社会学者である水無田気流さんの解説がよかった。藍も美代子も「ヤングケアラー」だという。2026年の今はよく聞くワードだけど、刊行当時の2019年はそこまで浸透していなかったのでは。原田ひ香さんの鋭い視点に圧倒される。貧困や知識の不足、礼節の欠如などは親子で連鎖し、特に子どもが女児である場合、その連鎖から抜け出るのは難しい……と。女性はやはりケアを押しつけられやすいし、自らケアを引き受けようとしてしまう(藍もなんだかんだ言いながら結局母と祖母のケアをしている)。お金や教育、職歴、家柄や一般常識がないとゼロからはい上がるのは困難で、その困難さは男性以上なのでは……と思わされる。
ヤングケアラーは自由や教育だけでなく、愛情も奪われてしまう。潤沢な愛情を受けられなかった結果、藍と美代子のようにからからに乾いてしまうんだな、と見ていて辛かった。藍も我が子たちへの愛情が薄いことに後から気づくが、それは愛し方を親から教わっていなかったからじゃないだろうか。
美代子の家庭がどうだったかは詳しく描かれていないけれど、もっとひどかったのかもしれない。じゃないと死体を平然とミイラ処理できる感覚は育たないだろう。
「誰でもこうなる可能性がある」と書く人もいるけど、そうはならないと思う。これは境界線を越えられる人たちの話だ。実の母を包丁で刺そうとする人、家がゴミだらけでも構わない人、死体をミイラ処理しようと思いつける人、祖母が一人暮らす部屋で不倫相手と行為に及べる人。原田さんは越えられない側の人だとは思うので、どうやってこの側の人たちの生活を取材したのかとても気になる。参考資料にはミイラ作りと生活保護受給の方法に関する本しかなかったけれど。 -
Posted by ブクログ
すごく奥深い話だった。
女性特有の悩みや葛藤が生々しく描かれている。わたしもアラサーだからなのもあり主人公と似たような悩みを持っていることもあり、共感するところが多かった。こどもをもつこと、もたないこと、結婚すること、しないこと、色んな選択肢があるけど、産まれてきて良かったとすべての人が思える世の中になってほしい。
生きていてほしい。
緑子の思春期特有の悩みや母に対する苛立ちや母を想うきもちにも感ずるものがあったし、彼女の成長にはホッコリさせられた。
情景描写が長くて平和なシーンもあるが、全体的に重いのとショッキングなシーンもあるので読むのを途中でやめてしまおうと思ったときもあったが、学びの多い話でした。
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Posted by ブクログ
ほんと何十回目の再読か不明ながら、2010年ごろも同じような感想を上げていました。
しかし下巻の登録なかったようです…
今回新刊出たので、せっかくなので家にある分は再読しようと思い立ち。
わたくしこれ初読時は多分陽子とほぼ同じ年齢でした。地方の女子校に通ってたわー。
本当に名作。特にこの上巻は救いが無さすぎて、しんどくてしんどくて、今読んでもしんどいわこれ。
学校の閉塞。家の閉塞感。そしていざ異世界に渡ってみれば、人は信用できないし妖魔は執拗に追ってくるし、意味わからん。
本当に陽子頑張っておりますが、上巻のままだとしんど過ぎる。
ということで、いざ下巻をば読まんとす。 -
Posted by ブクログ
元妻の行方を探しに行った先で起きた事件。
元刑事というか、根っからの刑事然とした麻生の立ち振舞い、自己分析による自身の立場があって、紐解いていく様はRIKOシリーズ、麻生龍太郎シリーズ、嬉しくもありました。
花咲シリーズも読んでいますが、ちょろっと出てましたがこの後の話かな、と想像しました。
今年中に2部が出るとの噂です。
麻生の本心が語られる中、山内練はどんな重い想いがあるのか。
境界線のない2人の関係はどんな結末なんだろうか。
-わたしの落ち度で希望を奪ってしまった青年が、裏社会の泥水の中を這い回って、それでも生きていてくれた。
生きていてくれたんです。
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