小説・文芸の高評価レビュー
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独り身の男、淳悟とその養子である花の、禁断の恋を描いた恋愛小説、というとありがちなドロドロ話に聞こえてしまうが、その美麗な感情描写と比喩表現によって恐ろしく深くまで引き込まれる話。
物語の最初は花が結婚する場面から始まる。この時点では「結婚」というものの、父と娘の別れという側面が強調して描かれており、花自身もそれを望んでいる描写が多く記されている。
これが物語終盤になると、「最低で最高」な得体の知れない父親が実は脆い存在だったと分かる。
結局、最後まで淳悟がどういう人間で、なぜ花を引き取ったのか、そういうところまでは断片としてしかわからないのだけれど、淳悟が物語終盤で語った「自分と同じ血が流れ -
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個人的には『汝、星の如く』と並ぶくらい今年読んだ作品の中で良かった。
1枚の絵画の下絵から始まり、終わってまた始まる男女の物語。
『エスキース』は下絵の意であるが、その時点では無限の可能性を想像できる余地がある1番豊かな状態。これをメルボルンに行く前のレイの心情、レイとブーの無限で不安定な未来と重ねているのが素敵だった。
全然余談だけれど、ドラマストアの『至上の空論』という曲もこういった意図の込められた話だった記憶がある。
他にも、夢を見に来て、満足したら帰っていく留学生が多いことからメルボルンという地を「竜宮城」と例えるブーの比喩表現が美しすぎた。これはブーが日本で生まれ、メルボルンで育ち -
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誰かが不幸と感じて死にたくなったり、誰かがこの世からいなくなったり、そうした事が起こりながらそれでも世界は進んでいる、ようなお話が6つ入っている短編集。
例えば、「あなたがいたことが私の人生だった~あなたが生きているだけで誇らしくて、~今思うとあなたを愛したことが私の人生の全部だった。~素晴らしい人に育ってくれてありがとう。」
という美しい母の最期の言葉を描写したかと思ったら
「歴史の重みに耐える石造りの連なる街では、人間だけが生身のものとして消えていく。日本では建物も人と共に風化して入れ替わっていくからわかりにくいのだが、歴史の重さの真っ只中に存在していると、人は儚いのは当たり前だとい -
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調律師の青年が「美しさ」というかたちのないものを求めて、森の中を彷徨うように進んでいく物語。
調律について題材にしているけれど、美しいとは何か、それは自分にとってか、絶対か、そういう悩みを綺麗な言葉で形にしているという意味では、芸術と呼ばれるものに関わる人全てに刺さる物語だと思う。
「美しいと言葉に置き換えることで、いつでも取り出すことができるようになる」
「依頼主の想定できる範囲内での仕事しかできなかったら、きっとつらいだろう。依頼主の頭の中のイメージを具現化する、その先に調律師の真髄があるんじゃないか」
「調律の技術を言葉に換える作業は、流れて行ってしまう音楽をつなぎ止めておくことだ -
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祖母に預けられ瀬戸内の島で暮らすことになった小学生の女の子、葉と、その島で血を理由に差別されてしまっていた女の子、真以の話。
物語は小学生の頃の2人と、大人になった2人という2つの時系列で語られる。
初めの時系列では、大人に翻弄されながらも子供らしく純粋に生きる時間や人間関係が綺麗な言葉で描写される。
「約束するのは信じていないみたいだから」
「海を見慣れるように、一人でいることにも慣れるんだ」
「戻るという言葉がしっくりくることに気がついた。でも、喜ぶことも悲しむこともできない」
「凪いだ海のような起伏のない時間は、胸を騒がせることもなくゆるゆると過ぎていって、それはそれで楽でもあった」 -
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一人っ子のミステリアスな女性、島本さんと12歳の頃からその子に恋心を抱く、既婚者である主人公の物語。
久々に素晴らしい小説を読んだ。『国境の南』というのは、自分が信じた偶像の先に存在する理想郷のようなものを示していると同時に、実際にはそこが空虚でありそこを追い求めて破滅すると言うことを示唆している題名のようにも思える。
「でも僕は島本さんのそうした外見の奥に潜んでいる温かく、傷つきやすい何かを感じとることができた」
これはまさしく国境の南、を示していると思う。
『太陽の西』の説明におけるヒステリア・シベリアナは今までの自分のある部分を殺して彷徨い続けるシベリアの農民を指すが、この物語で -
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小説家を目指す知性ある女性すみれと、すみれを好きになってしまった主人公、そしてすみれが恋心を抱いてしまったアセクシャルな女性、ミュウという三つ巴の関係性。互いが互いに思うことが混濁し、やがて夢との境界がわからなくなる。そんな小説。
意外と読むのに時間がかかってしまって、感想を書くために本を見返すことになりました。
題名の「スプートニク」は、ソ連が打ち上げた人工衛星の事を示している。スプートニクの恋人とは、結婚式でビートニクと誤用したエピソードから名付けられたミュウのあだ名である。物語序盤では上記の意味合いしか説明されない為ただの語感の話かと思っていたけれど、そもそもスプートニクの和訳は「旅 -
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ネタバレ伊藤計劃を追悼する8篇。どれも短編としては濃密な設定で、長編小説としても読んでみたいと思わせるものばかりだった。以下は特に面白かったものを示す。
藤井大洋「公正的戦闘規範」
伊藤計劃、「虐殺器官」を彷彿とさせるような重厚な戦闘シーンが魅力。偵判打というゲームが、実際の戦闘ドローンの操縦になっていた、という設定に恐怖した。
吉上亮「未明の晩餐」
孤高のシェフと孤児二人、死刑囚の最後の晩餐専門シェフというなんともいいキャラ設定。感動。
伴名練「フランケンシュタイン三原則、あるいは屍者の簒奪」
切り裂きジャックの独白。ナイチンゲールがフランケンシュタイン博士に改造された屍者で、なんやらこうやら -
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怪しげな館!不可解な殺人!変人探偵と振り回される助手!論理とトリック!そして意外性のある犯人!!
まったく王道、そしてわたしの大好きな本格ミステリだった!!
時は1910年。ハレー彗星がその姿を表し、地球ではそれに脅えたとある子爵が、屋敷中の使用人を総動員して来るべき彗星の脅威にそなえていた。
ちょうど、衝突するとされる日の前日、一人の青年が屋敷を訪れ、新たな使用人として仲間に加わる。
子爵の指示で、屋敷の全員が各々の部屋にこもり、ドアを封じたはずのその夜、なんと子爵は何者かに殺されてしまう…………。
このシチュエーションもとてもそそられるのだが、特筆すべきはやはり探偵と助手のコンビのキ
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