あらすじ
恋愛なき時代のベストセラー恋愛小説、ついに文庫化!
精神科医・藤代に大学時代の恋人から手紙が――失った恋に翻弄される十二か月。『世界から猫が消えたなら』『億男』著者の恋愛小説。
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日常の中で、価値観や気持ちの温度差が少しずつずれていく。
最初に感じたときめきが、ただ放っておくだけでは続かないことに気づかされる。
初々しい思い出と、うまく言葉にできなかったすれ違いが交差していて切なかった。
近くにいるのに気持ちを理解できないもどかしさと、
それでも愛情を終わらせない方法を探し続ける強さが胸に残った。
恋の初々しさと、気づかないうちに広がる心の距離。
その繊細な揺らぎを丁寧に描いた物語だった。
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大学時代ぶりの再読。
自分の置かれている状況や環境が変化すると、1冊の本に対する感じ方もまた変わる。今の自分にドンピシャ刺さる本だった。自分は、愛するということを本当にしているのか?愛されることで満足していないか?本当の意味で人を愛すということを、これから自分はしていかなきゃいかない。いや、したい。
私たちは愛することをさぼった。面倒くさがった。
些細な気持ちを積み重ね、重ね合わせていくことを怠った。このま、ま、私たちが一緒にいることはできない。私は失ったものを、取り戻したいと思っています。たとえそれが、カケラだとしても。
わたしは愛したときに、はじめて愛された。
それはまるで、日食のようでした。わたしの愛とあなたの愛が等しく重なっていたときは、ほんの一瞬。避けがたく今日の愛から、明日の愛へと変わっていく。けれども、その一瞬を共有できたふたりだけが、愛が変わっていく事に寄り添っていけるのだと思う。
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恋愛の現実を突きつけられた気がした
本の中の色んな言葉で。
"この世に必要のないてなんてないよ。
道ばたの石も夜空に輝く星も同じだ"
なんていい言葉なんだ…っ
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私たちは愛することをさぼった。面倒くさがった。
些細な気持ちを積み重ね、重ね合わせていくとこを怠った。
というフレーズが印象的でした。
愛とは努力なんだろうか。
長年一緒にいると出てくる「面倒くさい」という行動。
この言葉を読んでハッとさせられました。
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久々に言い表し難い焦燥感を与えてくれる良本に当たった。
かつての恋人、ハルからの手紙を読み大学時代の満たされた生活を回想しながら、1年後の結婚を見据えた弥生との生活を同時並走すると言った感じのあらすじ。
ハルの「目に映らないもの」を撮影したいという淡い雰囲気のスタンスだとか、描写の文章の美しさも素敵だが何より、「恋とは」「愛とは」という問いかけを物語全体で読者に語りかけてくる感じがすごく刺さる。
一瞬交わっていた恋愛感情が「永遠に続く」と錯覚していたこと、実際には永遠ではなかったこと、なんか全てが己の考え方に響く作品だった。
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コロナが世界中に蔓延する直前に、
メキシコに旅行した。
その時に成田空港の本屋さんで購入したような。
ウユニ塩湖に、
いつかは行ってみたいと思っていて
表紙がそれだったので手に取り、
メキシコ行きの飛行機の中で読んだ。
彼女が亡くなっていることを
読み進めていく中で、薄々感じつつ
本当に、もう二度と会えないんだと読み進めた。
永遠に続く愛は、ないのかなぁと
ちょうど自分の人生でも、
毎晩のように考えていたことだったので
自分ごととして捉えられてよかった。
目の前にいる人を大切にしようと、
この私の旅行中も、
もう二度と会うことはない人ばかりだけど
何か新しい発見があるかな?と
切ない物語ではあったが、
あの時の私は、ほんの少し前向きになれた。
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映画化したから、また読んだ。もう100回くらい読んだ。
愛を日食に例えるところとか、恋を風邪に例えるところとか、独特なのに ああそれだ ってなるような表現が好きだし、フジたちが見ている世界のうつくしさが好きだし、ハルの丁寧で繊細な言葉たちが好き。
ハルが長い時間をかけて 彼女の人生の最期に世界中を旅するように、この作品を読んでいる間にわたしは様々な風景を見ている。その場所の澄んだ空気を感じている。いつだってこの本は新しい世界を見せてくれる。
7年前、この本を読んでからわたしの人生が始まったって思っているくらい好き。ずっと好き。
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少しずつ読んで、やっと読み切る。
現代の恋愛観を描く川村元気。
作品内で、駆け落ちしていくカップルの話があった。
フジと弥生もここからが坂道でないことを祈るばかりである。
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カメラ好きには、身近に感じる言葉の多いお話でした。知人に勧められて手に取りましたが、青春期から現在に至るまで、年齢と共に変化していく主人公たちをじっくりと見守ることができて面白かったです。
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情景が浮かべやすく(映像を本職にしてるからこそ?)、全体的にサクサク読めたし、内容も興味をそそるものだった。
なんとも言えない後味を序盤からずっと持つような内容。性描写がそこそこあるものの、ヒロインとのそれは一切描かないところに作者の性に対するポリシーが垣間見えるような気がした。
ただ個人的に心を鷲掴みにするようなものまでは見えず星4で記録。
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浜辺で燃え盛る火や、大地を燦々と照らす太陽。
次第に熱を喪って、ある時には焦げた匂いのする木の枝、またある時には夜の帳となって、冷えた温度を感じさせる。
春は出会いと別れの季節、そう耳にすることが多い。私の人生でその言葉をあまり実感したことがなくて、「四月になったら彼女はどうなってしまうんだろう?」と、そんな興味に押されて購入した本でした。
それぞれの登場人物に、とても深い共感などを抱くことはなかったけれど、節々から覗く感情に対する考え方は何となく自分の持っているそれと似ているような気がして、すんなりと読み進めることが出来ました。
肉体関係、不貞行為、息を呑むような絶景、感嘆を漏らすほどの世界。現実と幻想の境界線に少し酔いかけましたが、新たな人間らしさの像を知れて嬉しい気持ちの方が大きいです。
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文章がスっと入ってくる。藤代と純のシーンは男女の性丸出しで正直気持ち悪かったけど、そのほかのシーンの感情描写は丁寧であり、思わず覚えておきたくなるようなぴったりとハマる表現が多い。
「愛を終わらせない方法は手に入れないこと」ともあったけど、終わらせないもうひとつの方法が愛することをサボらないことなんだと思う。愛は無条件に生まれるものかもしれないけど、けして無条件には続かないし、続いたととしてもその形は必ず移ろっていく。形を変えながらも続けていくためには、愛することをサボらない=お互いを共有し、分かち合い、向き合うことから逃げてはいけないんだろう。
【好きな言葉】
私は雨の匂いとか、街の熱気とか、悲しい音楽とか、嬉しそうな声とか、誰かを好きな気持ちとか、そういうものを撮りたい。
あの頃、ハルは言った。わたしはいつまでもフジと一緒にいる。
けれども藤代とハルだけが、例外であるはずがなかった。
人間ってのは本当に怖いですよ。憎んでいる人より、そばにいる愛してくれる人を容赦なく傷つけるんだから。
とても大切で、一緒にいるべき人なんだ。けれどもときどき、俺たちの夫婦関係をつないでいるものが、ただのこだわりでしかない気がして、すごく怖くなるんだ。
産んだ女性は子供とともに生きる人生を最大限肯定するし、そうではない女性は産むことによって失われるあれこれを主張せざるを得ない。
AIが人間を超えるってどういうことなのかな。
でもあの人は幸せを感じれば感じるほど、危うくなっていくんです。壊れてしまう前の自分にはもう戻れないことを、私の前で吐き出して泣くんです。
けれども隣にいる彼女がなにを思っているのかを考え続けるのは、藤代にとって映画以上に心が動く時間だった。
一緒にいてくれる人のことを信じるのは、とても難しい。
誰かの気を引こうとするときには、人はどこまでも優しく魅力的になれるんです。でもそれは一時的なものでしかない。手に入れたあとは、表面的で無責任な優しさに変わってしまう。
ほとんどの人の目的は愛されることであって、自分から愛することではないんですよ。
相手の気持ちにちょっとでも欠けているところがあると、愛情が足りない証拠だと思い込む。
人間は体と心が乖離すると混乱する生き物なの。
わたしは愛したときに、初めて愛された。
避けがたく今日の愛から、明日の愛へと変わっていく。けれども、その一瞬を共有できたふたりだけが、愛が変わっていく事に寄り添って行けるのだと思う。
【各章の感想】
●六月の妹
藤代が感じた大島さんとハルの距離の近さみたいものは、藤代がハルのことを好きだったから感じた嫉妬みたいなものなのかな。
→終章まで読んで、、
藤代とハルだけに通じ合うなにかは確実にあったみたい。
藤代とハルの付き合いたての頃がまさに大学生の青春って感じ。切なさと没入感があって素敵。それぞれが撮った写真を送り合うところがお互いの好きなものの共有そのもの。
藤代はハルと別れてからどことなく浮世離れした欲のない人間になったのかなって思ってたから、純と体の関係になりそうな時、藤代にも性欲とかあるんだーって少し不思議な感じがした。でも藤代は周囲からはきっと普通の人間に見えてるんだろうから、私の周りにいる普通の人たちにも藤代みたいな過去があるのかもなーと、、
●七月のプラハ
桑原みたいな精神科患者が病院から追い出されるのかー。
●九月の幽霊
大島さんが出てくるシーンはすべて物悲しい雰囲気だった。大島さんが自殺を図る前、ハルと大島さんは何をしていたんだろうか。
●十一月の猿
藤代がハルに恋し始めた時と同じ心の動きを、弥生に対しても感じていたって描写が、「誰かを愛している」という感情が一生は続かないことの現れみたいで、そんなことは当たり前なんだけど少し悲しくなった。
ハルと好きなものを共有し、弥生と嫌いなものを共有することで自分の居場所を見つけていく。結婚する人とは好きなものより嫌いなものを共感できた方がいいっていうよく聞く言葉を思い出した。
人を好きになっていくことを神経衰弱に例えるの面白い。そして女から見た男のカードの少なさにがっかりするのもわかる。自分好みの新しいカードを期待するけど結局期待通りのカードは出てこないどころか、期待外れのカードしか出てこないんだよね。
藤代が弥生から「結婚する」という話を聞いた時、心に痛みを感じながらも安心したのは、ハルと別れた時のような辛い思いをいつかすることを避けられると思ったからか、誰かと向き合うという大変さを感じずに済むからか、、、どちらかというと後者かな。
●十二月の子供
藤代がハルから逃げたように、弥生も藤代から逃げたのかと思ったけどそれとは違うかな?愛することをお互いがサボっていて、でも弥生はサボりたくない、嫉妬心とか負の感情も含めて全力で愛したいと思っていて。そんな折、藤代に昔の恋人であるハルから手紙が届くことを知って、それを気にしていないふりをしていたけど耐えられなかった…のかな。
→終章を読んで
ハルの手紙を読んで、弥生自身と藤代の間にもう愛がなくなってしまったことを実感し、藤代と人生を共にすることができなくなってしまったんだろうな。
→ほかの人の感想を読んで
愛を終わらせない方法は手に入れないこと。それを実現したってことも考えられる。
●一月のカケラ
一人でいるときの孤独は耐えられるけど、二人でいる時の孤独の方が耐えられないというのはわかるな、、、
●二月の海
藤代が大学サークルの部室に入って、自分がここに立つことは二度とないと思うと無性に叫び出したくなった感情、めちゃくちゃわかるな…。あの青春に自分はもう戻れないんだって実感すると、郷愁だけじゃない悔しさと歯がゆさみたいなものを感じる。
自分のことが一番好きなのに誰かとずっと一緒にいることなんて無理。ほんとそうなんだよ…。でも誰かと愛し愛される関係で幸せになりたいっていう、社会生活の中で植え付けられた理想を持っちゃうから、一人で居続けることがまるで何かが欠落している状態のように感じちゃうんだよ。
Posted by ブクログ
初めての恋人ハルからの手紙からどんな展開になるのか?
藤代とハルの恋愛、心のすれ違いが見え、そこに現在の恋人弥生の人生や気持ちが加わり、3人の恋の終着を想像したのですが…ハルの最期の苦しみと悲しさに涙が出ました。死ぬ前にインドで見られなかった朝日(の写真)を藤に見せてあげられなかったハルの無念「藤が愛する人がフジのことを愛してくれることを祈って…」フジと弥生の新しい愛が育まれることを、愛することをさぼらないで!
というハルの願いが悲しかった。
文字にするとキレイだけど恋って難しい!?
Posted by ブクログ
愛を終わらせない方法とは。
難しい、難しい問題だなぁ。愛の裁量なんてない。でも、自分の中で変化したことはなんとなく実感する。前の方が好きだったとか今の方が好きだとか。私の愛はどこに向いているのか、終わらせたくない愛はなんなのか、考えさせられた。
Posted by ブクログ
かなり難しくて何度も途中で読むのを辞めてしまいましたがやっと読み切ることができました。
私はまだ恋愛経験がないので理解し難いシーンも沢山ありましたが、本当にこころから愛している人を精一杯愛す事が出来ればいいなと思います。
弥生が可哀想だった。
Posted by ブクログ
愛は美しいだけではないこと
薄い氷のような表面だけ輝いている脆い幸せではなく
深く相手を知って 考え 想う気持ち
愛する、愛される努力を怠らないことの大切さを感じました
そばにいて愛してくれる人を容赦なく、無意識のうちに傷つけてしまわないように、
Posted by ブクログ
恋愛の楽しさだけではない部分を描いた恋愛小説です。若い時だと理解できなかったかもしれません。
個人的には主人公に共感できる部分もあり、ラストには希望を持てて良かったです。
海外の様子も出てくるので映画で見ても楽しめるかもって思いました。
Posted by ブクログ
一万円選書で受け取ったうちの一冊。
いろんな街や写真にまつわる描写がよかった
アイスランドいきたいな
ひと月ごと追っていく構成も、少しずつ読みたい派のわたしにはあってた
タイトルから、恋愛小説て感じ!?とおもって読み終えられるか不安だったけど、
いわゆる恋愛ものではなくするする読めた
Posted by ブクログ
人を好きになるとは、好きな人を愛することとは。
それぞれの登場人物から言語化されている表現に共感できたり、できなかったり。
そんな風に読み進めることが楽しかったです。
Posted by ブクログ
言葉って大事だし、態度も大事
今の幸せ(かどうかは分からないけど)を共有できている相手をないがしろにしないように
愛することをさぼったら…
わたしがあまりちゃんと理解してないのかもしれないけど、終わり方はどうなのか…?
Posted by ブクログ
本当の愛は手に入れられないことにあるのかもしれない 一度手にしてしまったらあとは減る、失うだけなのか
人は愛されるために愛する
男は女の弱い部分に好感を持つ
女は男のカードの量を見ている そしてその少なさや先のなさに失望する 期待している どんなことをするのか何ができるのかどこにいくのか
そしてお互い相手の気持ちはわからない
愛することを怠ってはいけない 理解し合うこと、示すこと、関わること、関係を怠ってはいけない
恋愛小説でハルって名前のヒロイン多くね
Posted by ブクログ
映画を先に見て原作と見比べてみたいなと思い、後から読んでみた。
妹との関係性や弥生と藤代の出会い、ハルと藤代の別れなど、結構違う部分が多かったが、手紙のシーンやハルの最期のような重要な場面は映画でも再現されていたように思う。
精神科の専門医ですら、自分のことになると客観視できないということからも、人は自分のレンズからしか物事を見ていないか分かる。
「愛した時に、初めて愛される」とは、中々深い言葉だ。私はまだ実感として感じたことはないけど、それはやはり死ぬ間際にならないと気づけないんだろうか。
Posted by ブクログ
『川村元気の小説を読むたびに、居心地が悪くなる。』巻末のあさのあつこさんの解説の1行目に共感した。
この本を読んでいてとても居心地が悪かった。けど途中でリタイアするわけでもなく、結局最後まで読んだ。登場人物たちの価値観は私と遠くはなれたものだったけど、理解はできたし、ちゃんとたのしめた。
匿名
大人向け
大人向けの恋愛話で、キラキラハッピーという感じではなく深いテーマです。私には文章が読みづらかったです。時系列がバラバラで日付もないので。刺さる人には刺さると思います。
Posted by ブクログ
最後、恋愛に関して終始受け身だった主人公が行動を起こすところが良かった。
「周りの人が誰も熱烈な恋愛をしていなかった」という作者の言うとおり、年齢を重ねると気持ちを発言や行動で相手に伝えるということを、特に日本人男性ほどやらなくなると思う。主人公のような男性は特に。
今年2024年に映画化するとの事で、普段は読まない男性作家の恋愛小説を読んでみて良かった。
最初は合わない本だと思った。
貞淑だが海外渡航するほど行動力があり 自分との恋愛がいかに価値あるものだったかを手紙で訴えてくれる初めての彼女、私のせいにして良いわよと2年のセックスレスの欲求を埋めてくれる穴役の義妹、自分が愛しているか不明だが 自分に対して不誠実さは無い婚約者…
受け身でいても、過去現在の気持ちと身体を次から次に求められる、『男に都合の良い恋愛(笑)小説だな』と感じたからだ。
だが一番理解できなかったはずの義妹の「自分が重いことを相手に知られるのは恥ではない。相手のことを想う気持ちが、自分の重さを惨めに思う気持ちに、負けちゃってるだけだと思う。」には気付かされるものがあった。
コスパやタイパ、とにかく損をしないことを重視する考え方の人にこそ、読んでほしい恋愛小説だと思う。