【感想・ネタバレ】四月になれば彼女はのレビュー

あらすじ

恋愛なき時代のベストセラー恋愛小説、ついに文庫化!
精神科医・藤代に大学時代の恋人から手紙が――失った恋に翻弄される十二か月。『世界から猫が消えたなら』『億男』著者の恋愛小説。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

日常の中で、価値観や気持ちの温度差が少しずつずれていく。
最初に感じたときめきが、ただ放っておくだけでは続かないことに気づかされる。
初々しい思い出と、うまく言葉にできなかったすれ違いが交差していて切なかった。

近くにいるのに気持ちを理解できないもどかしさと、
それでも愛情を終わらせない方法を探し続ける強さが胸に残った。

恋の初々しさと、気づかないうちに広がる心の距離。
その繊細な揺らぎを丁寧に描いた物語だった。

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2025年11月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

大学時代ぶりの再読。
自分の置かれている状況や環境が変化すると、1冊の本に対する感じ方もまた変わる。今の自分にドンピシャ刺さる本だった。自分は、愛するということを本当にしているのか?愛されることで満足していないか?本当の意味で人を愛すということを、これから自分はしていかなきゃいかない。いや、したい。

私たちは愛することをさぼった。面倒くさがった。
些細な気持ちを積み重ね、重ね合わせていくことを怠った。このま、ま、私たちが一緒にいることはできない。私は失ったものを、取り戻したいと思っています。たとえそれが、カケラだとしても。

わたしは愛したときに、はじめて愛された。
それはまるで、日食のようでした。わたしの愛とあなたの愛が等しく重なっていたときは、ほんの一瞬。避けがたく今日の愛から、明日の愛へと変わっていく。けれども、その一瞬を共有できたふたりだけが、愛が変わっていく事に寄り添っていけるのだと思う。

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2025年08月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

久々に言い表し難い焦燥感を与えてくれる良本に当たった。
かつての恋人、ハルからの手紙を読み大学時代の満たされた生活を回想しながら、1年後の結婚を見据えた弥生との生活を同時並走すると言った感じのあらすじ。

ハルの「目に映らないもの」を撮影したいという淡い雰囲気のスタンスだとか、描写の文章の美しさも素敵だが何より、「恋とは」「愛とは」という問いかけを物語全体で読者に語りかけてくる感じがすごく刺さる。

一瞬交わっていた恋愛感情が「永遠に続く」と錯覚していたこと、実際には永遠ではなかったこと、なんか全てが己の考え方に響く作品だった。

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2025年04月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

コロナが世界中に蔓延する直前に、
メキシコに旅行した。
その時に成田空港の本屋さんで購入したような。

ウユニ塩湖に、
いつかは行ってみたいと思っていて
表紙がそれだったので手に取り、
メキシコ行きの飛行機の中で読んだ。

彼女が亡くなっていることを
読み進めていく中で、薄々感じつつ
本当に、もう二度と会えないんだと読み進めた。
永遠に続く愛は、ないのかなぁと
ちょうど自分の人生でも、
毎晩のように考えていたことだったので
自分ごととして捉えられてよかった。

目の前にいる人を大切にしようと、
この私の旅行中も、
もう二度と会うことはない人ばかりだけど
何か新しい発見があるかな?と
切ない物語ではあったが、
あの時の私は、ほんの少し前向きになれた。

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2025年02月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

浜辺で燃え盛る火や、大地を燦々と照らす太陽。
次第に熱を喪って、ある時には焦げた匂いのする木の枝、またある時には夜の帳となって、冷えた温度を感じさせる。

春は出会いと別れの季節、そう耳にすることが多い。私の人生でその言葉をあまり実感したことがなくて、「四月になったら彼女はどうなってしまうんだろう?」と、そんな興味に押されて購入した本でした。
それぞれの登場人物に、とても深い共感などを抱くことはなかったけれど、節々から覗く感情に対する考え方は何となく自分の持っているそれと似ているような気がして、すんなりと読み進めることが出来ました。

肉体関係、不貞行為、息を呑むような絶景、感嘆を漏らすほどの世界。現実と幻想の境界線に少し酔いかけましたが、新たな人間らしさの像を知れて嬉しい気持ちの方が大きいです。

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2025年01月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

文章がスっと入ってくる。藤代と純のシーンは男女の性丸出しで正直気持ち悪かったけど、そのほかのシーンの感情描写は丁寧であり、思わず覚えておきたくなるようなぴったりとハマる表現が多い。

「愛を終わらせない方法は手に入れないこと」ともあったけど、終わらせないもうひとつの方法が愛することをサボらないことなんだと思う。愛は無条件に生まれるものかもしれないけど、けして無条件には続かないし、続いたととしてもその形は必ず移ろっていく。形を変えながらも続けていくためには、愛することをサボらない=お互いを共有し、分かち合い、向き合うことから逃げてはいけないんだろう。

【好きな言葉】
私は雨の匂いとか、街の熱気とか、悲しい音楽とか、嬉しそうな声とか、誰かを好きな気持ちとか、そういうものを撮りたい。

あの頃、ハルは言った。わたしはいつまでもフジと一緒にいる。
けれども藤代とハルだけが、例外であるはずがなかった。

人間ってのは本当に怖いですよ。憎んでいる人より、そばにいる愛してくれる人を容赦なく傷つけるんだから。

とても大切で、一緒にいるべき人なんだ。けれどもときどき、俺たちの夫婦関係をつないでいるものが、ただのこだわりでしかない気がして、すごく怖くなるんだ。

産んだ女性は子供とともに生きる人生を最大限肯定するし、そうではない女性は産むことによって失われるあれこれを主張せざるを得ない。

AIが人間を超えるってどういうことなのかな。

でもあの人は幸せを感じれば感じるほど、危うくなっていくんです。壊れてしまう前の自分にはもう戻れないことを、私の前で吐き出して泣くんです。

けれども隣にいる彼女がなにを思っているのかを考え続けるのは、藤代にとって映画以上に心が動く時間だった。

一緒にいてくれる人のことを信じるのは、とても難しい。

誰かの気を引こうとするときには、人はどこまでも優しく魅力的になれるんです。でもそれは一時的なものでしかない。手に入れたあとは、表面的で無責任な優しさに変わってしまう。

ほとんどの人の目的は愛されることであって、自分から愛することではないんですよ。

相手の気持ちにちょっとでも欠けているところがあると、愛情が足りない証拠だと思い込む。

人間は体と心が乖離すると混乱する生き物なの。

わたしは愛したときに、初めて愛された。
避けがたく今日の愛から、明日の愛へと変わっていく。けれども、その一瞬を共有できたふたりだけが、愛が変わっていく事に寄り添って行けるのだと思う。

【各章の感想】
●六月の妹
藤代が感じた大島さんとハルの距離の近さみたいものは、藤代がハルのことを好きだったから感じた嫉妬みたいなものなのかな。
→終章まで読んで、、
藤代とハルだけに通じ合うなにかは確実にあったみたい。

藤代とハルの付き合いたての頃がまさに大学生の青春って感じ。切なさと没入感があって素敵。それぞれが撮った写真を送り合うところがお互いの好きなものの共有そのもの。

藤代はハルと別れてからどことなく浮世離れした欲のない人間になったのかなって思ってたから、純と体の関係になりそうな時、藤代にも性欲とかあるんだーって少し不思議な感じがした。でも藤代は周囲からはきっと普通の人間に見えてるんだろうから、私の周りにいる普通の人たちにも藤代みたいな過去があるのかもなーと、、

●七月のプラハ
桑原みたいな精神科患者が病院から追い出されるのかー。

●九月の幽霊
大島さんが出てくるシーンはすべて物悲しい雰囲気だった。大島さんが自殺を図る前、ハルと大島さんは何をしていたんだろうか。

●十一月の猿
藤代がハルに恋し始めた時と同じ心の動きを、弥生に対しても感じていたって描写が、「誰かを愛している」という感情が一生は続かないことの現れみたいで、そんなことは当たり前なんだけど少し悲しくなった。

ハルと好きなものを共有し、弥生と嫌いなものを共有することで自分の居場所を見つけていく。結婚する人とは好きなものより嫌いなものを共感できた方がいいっていうよく聞く言葉を思い出した。

人を好きになっていくことを神経衰弱に例えるの面白い。そして女から見た男のカードの少なさにがっかりするのもわかる。自分好みの新しいカードを期待するけど結局期待通りのカードは出てこないどころか、期待外れのカードしか出てこないんだよね。

藤代が弥生から「結婚する」という話を聞いた時、心に痛みを感じながらも安心したのは、ハルと別れた時のような辛い思いをいつかすることを避けられると思ったからか、誰かと向き合うという大変さを感じずに済むからか、、、どちらかというと後者かな。

●十二月の子供
藤代がハルから逃げたように、弥生も藤代から逃げたのかと思ったけどそれとは違うかな?愛することをお互いがサボっていて、でも弥生はサボりたくない、嫉妬心とか負の感情も含めて全力で愛したいと思っていて。そんな折、藤代に昔の恋人であるハルから手紙が届くことを知って、それを気にしていないふりをしていたけど耐えられなかった…のかな。
→終章を読んで
ハルの手紙を読んで、弥生自身と藤代の間にもう愛がなくなってしまったことを実感し、藤代と人生を共にすることができなくなってしまったんだろうな。
→ほかの人の感想を読んで
愛を終わらせない方法は手に入れないこと。それを実現したってことも考えられる。

●一月のカケラ
一人でいるときの孤独は耐えられるけど、二人でいる時の孤独の方が耐えられないというのはわかるな、、、

●二月の海
藤代が大学サークルの部室に入って、自分がここに立つことは二度とないと思うと無性に叫び出したくなった感情、めちゃくちゃわかるな…。あの青春に自分はもう戻れないんだって実感すると、郷愁だけじゃない悔しさと歯がゆさみたいなものを感じる。

自分のことが一番好きなのに誰かとずっと一緒にいることなんて無理。ほんとそうなんだよ…。でも誰かと愛し愛される関係で幸せになりたいっていう、社会生活の中で植え付けられた理想を持っちゃうから、一人で居続けることがまるで何かが欠落している状態のように感じちゃうんだよ。




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2025年01月06日

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