小説・文芸の高評価レビュー
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自分が(あるいは多くの人も?)一番意外に思ったのは、彼女の演技は素なのでも憑依型なのでもなく、大元がハリウッドメソッドにある非常にロジカルな役作りで成立しているということだ。その具体的な方法についても書かれていてとても面白い。なるほど「どんな役でも素でやっている」ように見えるのにはこういう仕掛けがあったのだ。現在社長としても活動しているのんさんは、経営に関してはとても収益にシビアな人なのだそうだ。まるで小学生のように自由奔放にいろいろな分野で創作活動を行っているのに、「お金のことは気にしない」とは真逆なんだそうである。俳優、美術制作、映画監督、ミュージシャンと、ただでさえ捉えどころがないのに、更に自身のクリエイティブ活動の下支えにもう一人の冷静な自分がいるような感じだ。
小学生の頃の様子からモデルの仕事のために上京するころまでは、ほぼ時系列で語られるのが、演技にのめりこんでいく話のあたりから、彼女が大きく成長することになった代表的な作品ごとに、彼女が誰と出会いどのように変わっていったかが書かれる。かと思えば音楽活動においては独立に章立てされ、時系列で書かれているなど、構成がわかりにくくとっちらかっているような印象なのだが、終章で、先述したビジネスパートナーから語られるのんさんの別の一面を読んで納得。全方位的に活躍しそれらを同時に行いつつ、自分の好きに忠実であり、かつ経営者としても立派に仕事をしているような彼女の姿をそんなわかりやすくまとめることなど無理なのだ。
「のん」という存在の、その無限のような創作意欲とバイタリティとアイデアと実行力に、周囲の一流の才能ある人たちが彼女へ協力したくなっていく、そんな図式が見えてくる一冊だ。
余談だが一刷は誤植(タイプミス)がとても多い。出版までの時間がなかったのかな? -
Posted by ブクログ
本作品は大江健三郎が東大生だった頃、北区西ヶ原の(私も同じ町内だった)下宿先の家主の加藤シノさんの遺族の下に長年保管された原稿2作品を含めて書籍化したもの。大江健三郎のデビュー作は短篇小説「奇妙な仕事」(1957/5/22)なので、それよりも前に執筆されたものとなる。習作的位置付けとなるが、学生時代に試行錯誤しながら小説を書くといった側面も感じられ、当時の学生活動も垣間見れる内容となっている。
時々出てくる「ユマニスト」という言葉は、政治団体・党の名前として用いられている。これはフランス語の発音であり、英語の「ヒューマニスト」と同義である。似た名前の「ヒューマニズム(人道主義・博愛主義)」とは意味合いが少々異なるとのこと。神や宗教に依存せず、あくまでも人の心が優先される、人が内面的にどの様に考えるかが論理の中心となる。日本現代のユマニスト渡辺一夫に憧れて東大に入り、もちろん渡辺教授の研究室に入り、自身がユマニストとなりフランス文学にどっぷりと浸かり、次々に名作を執筆し続けることになる。
4作品の主人公の心の動きは基本的に共通するものがある。特に人間の尊厳に対する拘りに固執する考え方が文章の端々に散りばめられているのが特筆すべき点である。それを表現するためには、少々非常識な発言をしても構わない節が見られる。
私が大好きな安倍公房、小澤征爾、武満徹とも親交があり、少しではあるが関連する書籍も出版されている。現在のババア政権とは全く反対で、反戦・広島に関して共感する面がかなりあるので、機会を見てマイペースで未読作品とこれからも向き合っていきたい。 -
Posted by ブクログ
インターネットから受ける影響や社会的な価値観の変化、カス化するSNS、AIスロップ、AIが起こす「脳の腐食」、AIサイコーシス、SNSが息苦しい…。
気になりすぎる内容ばかりで読まずにいられなかった。
特に読みたかったのがオフラインについての章。
最近のSNSを見ていて感じるアナログへの回帰。
紙の本を読んだり、編み物をしたり、フィルムカメラやチェキを使って写真をプリントしたり、有線イヤホンや昔の音楽プレーヤーが流行っていたり、それらの行為は一体なぜなのだろうと気になっていた。
この動きは、単なるアナログ回帰ではなく、「自分の時間と記憶をどこに預けるか」という本質的な問いが込められている。
現代はインターネット空間に常に繋がっている。
ログインすることよりもログオフすることの方が、強い意志を必要になる。
どこまでをオンラインに委ね、どこからオンラインから切り離すのかという線引きを、自分の手に取り戻そうとする「抵抗」の試み、という表現がすごく腑に落ちた。
「アナログな時間を求める欲望は現実逃避ではなく、むしろ現実と向き合い続けるための緩衝地帯を確保しようとする試みとして捉え直す」
という著者の考えに、SNSで流れてくる彼らの空気感が、解像度を上げて、言語化されたような気持ちになった。
ネットが人間に与える影響について、細かい取材や観察にもとづいた記録であり、特定の結論はない。
誰もが同じインターネットを見ているわけではない時代で、インターネットと社会と人間を理解するためのスタート地点としての気付きを与えてくれる本だった。 -
Posted by ブクログ
毎日新聞の「人生相談」コーナーが本にまとめられています。
2015年12月5日から2025年8月23日までの分から抜粋されているとのことで、本書が3冊目だそうです。
見開き1ページに相談と回答が掲載されていて読みやすく、時に熱く、時に軽妙洒脱に答えておられる高橋源一郎さんの回答には、唸らされたり笑わされたりします。
相談内容も世情の変化に伴って様々に広がっていて、今どきの人の悩みごとを知ることで世の中が分かる気もします。
108本もの人生相談が収められていますが、飽きませんw
わたしが他愛ない相談だと感じるものでも、相談者にとっては新聞に投稿してくるほどの(秘密の)悩み事だと思うと、人の置かれた環境や考え方は様々だなぁという気づきもあります。
ご自身も相談員になったつもりで、どう答えるか考えながら読むことをオススメします。
高橋源一郎さんの回答にツッコミも入れながら読むと、倍の倍、楽しいです♡w
〔作品紹介・あらすじ〕
「ネット上で彼の評判が悪いです」「婚活が実りません」「既婚を隠して恋愛中」「宗教への入信をしつこくせまる母」など、毎日新聞「人生相談」に寄せられたままならぬ悩みに人気回答者が全力回答!珠玉の回答108本を収録した、人気シリーズ第3弾! -
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正直に言います。
最初の方の文章、苦手かもって思った。
でも読み進めていくうちに全然気にならなくなって、
最後は泣いてしまった。
思うに最初はどんな人かよくわからなくて
一歩引いた目線で見てた気がする。
これでもかと内面開示があって
文中で人見知りを克服しちゃいました、みたいな。
この方のエッセイを読んだのが初めてで、
生い立ちなどもツイッター(おっと今はXか…)で
何となく見たことがあるかも?という程度だったんだけど、
すごいガッツ溢れる人なんだなと思った。
不幸自慢しようと思えばいくらでもできちゃう、
沈んでいようと思えばいくらでもできるような状況で
決してそこに至らず、どうしたら幸せになれるかを常に考え、
走って、努力して今の地位を築いてる。
あまり悲壮感がないのは、お金の苦労話が少ないからかな?
という気がしたけれど、何よりも家族を愛しているんだろうな。
文中に拡大家族と直径家族について書かれている箇所があるけれど、
それでいうと、岸田さんにとって母と弟は直径家族で、
自分で選んだわけではないのに、あそこまで頑張れるという時点で
それまでの生活も愛に溢れた関係だったんだろうなと思う。
がむしゃらに、欲しいものを手に入れに行く人、
やっぱり好きだ。
その反面眩しくもある。
岸田さんは自分の人生を生きているし、主人公になれる。
もしかしたら強すぎるパワーにあてられちゃう可能性もあるけれど、
他の作品も読んでみたいな。元気になりそう。 -
Posted by ブクログ
なんだか上質な昔話を読んだ気分。
素直な少年が色々ありつつ運に味方され(…ていない箇所も大いにあるが)おじいちゃんになる話。
青姫も、青姫の郷も素敵すぎて。
もし本当にあれば行ってみたいし住んでみたいなぁ
自然と対峙することの大変さや素晴らしさも感じられた。
実家が農家で中学生の時まで時々手伝ってたし、今年は田植え祭を実際に見たこともあり、映像で頭に浮かびやすく、読みやすかった。
米作りって本当に大変だよね…
田んぼを1から作るとしたらその苦労は計り知れない…
でも自然と対話して感覚が洗われる体験っていいものだよね。
朝井まかてのお話は個人的に全部だが、植物の描写が相変わらず素敵で、自然に触れたくなる。 -
Posted by ブクログ
すごい連続殺人の話なのに、後日譚によって読後感は良くなっている。面白かった。
第1部
バイトで知り合った友達の高校仲間とともに、7人で島のバーベキューに向かう。そこにコテージを管理してくれている久城が加わって7日間過ごす。電気とガスはなく、水道だけ海底送水である。樋藤はクーラーボックスを二重底にして何かを隠し持っている。一人残らず殺すつもりだ。
島に着くとコテージに入った。樋藤は4号室。オレンジジュースにヒ素を混入させる。
しかし何もしていないうちに1号室の橋本が顔をぐちゃぐちゃに潰されて死んでしまった。凶器は置き時計。
樋藤は泳いで脱出しようとする。しかし怪我をして、溺れてしまった。
翌日の朝、2号室の大石が撲殺されていた。樋藤は彼と知り合うためだけに引越しアルバイトに入って2ヶ月ペアを組むまで粘ったのだ。
次は3号室の竹内が殺される。凶器は石。
加蘭がいなくなった。探すと遺体になって転がっていた。
ここで伊志田は高校の時の話を始めた。みんなで幻覚剤を使ったことがあった。紀田がリンチを受けて、舌を切り取られた。被害者が樋藤の先輩だったことや、樋藤という名前が偽名だったこともバレる。
第2部
無人島での殺人事件から3年経った。真莉愛は大阪東部クリーンセンターで働いている。大阪では通り魔殺人が連続して起こっている。黒いゴミ袋を回収しようとしたら、中にバラバラにされた遺体が入っていた。そして被害者は第一発見者だ。つまり次は真莉愛が危ない。二人の女性警官が護衛についてくれるという。
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