小説・文芸の高評価レビュー
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西さんの中ではかなり純文学よりな一冊だと思う。派手な何かが起きるわけじゃなく(起きるっちゃ起きるのだけど)、静かに温泉旅館での一泊二日が過ぎていく。その間の登場人物それぞれの心の動きと独白をかなり濃密に描写した物語は、ボタンのかけ違いのよう。修復しようにも歩み寄らないと実現できない。修復不可能なまま、凸凹な四人の現在地を炙り出している。
チューニングをミスした楽器が奏でる不協和音を聞いているような不穏な読み心地なんだけど、うわー、人生ってこんなことあるよなーって共感してしまう場面が幾つももあった。
物語は章ごとにナツ、トウヤマ、ハルナ、アキオの一人称独白で展開されるのだけれど、その書き分け -
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高校に行けなくなった17歳の美緒は、家族との折り合いが悪く、一人で新幹線に乗って父方の祖父が住む盛岡へ向かう。
祖父が営む「山崎工藝舎」では羊毛を手仕事で染め、紡いで織るホームスパンを作っていた。
盛岡の美しい景色と、膨大な量の手作業から羊毛が一本の糸になっていくその魅力にどんどん引き込まれ、羊毛の感触までもが手に伝わってくるようです。
これは、三世代の家族の物語です。
家族は時に激しくぶつかり合ったり離れたり、だけど羊毛の糸のように切れてもつながるものなのです。
物語の中で、おじいちゃんが美緒やその両親に語りかける温かく包み込むような言葉がたくさんあります。
中でも、「今は決められない、そ -
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「イン·ザ·プール」、「空中ブランコ」、「町長選挙」に続き、相変わらずの伊良部先生の暴走ぶりに笑わされて、スッキリ。こんな医者に出会ってしまったら、患者さんは災難?でしょうが、なかなか利にかなっていて、医学的な理論にも基づていて、突拍子もない治療法でも、不思議と快復してしまう。
今回は、伊良部先生と看護師のマユミちゃんの絶妙なコンビネーションとそれぞれの底力がますます発揮された感じでした。
このシリーズのファンとしては、前に登場した先端恐怖症の元ヤクザさんが再登場したのも嬉しい。「あの先生、人間に対する先入観が一切ないんだな。見た目で判断しねえんだ。……早い話、赤ん坊と一緒だな。」という言葉が -
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フィクションとして手に取った作品であったが、実在の女性狙撃兵や史実に基づく描写が随所に折り込まれており、物語の背景に広がる現実の重みを強く感じさせる作品であった。
戦中の出来事を善悪や正誤といった単純な枠組みでは扱いきれず、価値観が揺れ動き、時に歪められていく様子が印象に残った。極限状況下で人間が変質していく過程や、そこで生まれる複雑な感情の連なりが丁寧に描かれ、その異常さが胸に迫る。
本作を通じて、これまで十分に光が当てられてこなかった女性兵士の存在や、戦時下における女性の置かれた境遇が改めて可視化されたように思う。単に“女性が戦った”という表層ではなく、その背後にある歴史的背景や社会のま -
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泣くな研修医シリーズの最新作。幼い子を持つ親として読んでいてツラくなる場面もあった。
物語の中では、「自分の選択は正しかったのか」「もっとできることがあったのではないか」といった葛藤が丁寧に描かれる。その揺らぎは医師という特殊な現場に限らず、仕事や日常の判断にも通じる普遍的なものだと感じる。自分にも似た思いが少なからずあり、読みながら自然と考えさせられた。
印象的だったのは、「病気と闘いたいのか、人を救いたいのか」という問いである。医療現場の話ではあるが、自分の仕事に重ねても大切な問いだと思う。大局的なことに目が向きがちで、そうであることが重視されがちであるが、向き合うべきはあくまで“目の前 -
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ネタバレシリーズ7冊目。
今回はホラー。ドラキュラ伯爵、ドリアン・グレイが登場します。
登場はしませんが、クトゥフ神話もちょろっと出てきます。
メンバーはいつもの4人。葵ちゃんが主軸かな。表示のドリアンが怪しくて格好よくて癖になる…。
ドラキュラ伯爵とドリアン・グレイの本のあらすじも紹介されてました。
映画やゲームで吸血鬼の生態的なものは知ってましたが、元祖のドラキュラ伯爵の本は全く知らなかったので新鮮でした。
後、ドリアン・グレイはホラーなんですね。耽美小説だと思ってました。
葵ちゃんが最後に自分の言葉で誰かを追い詰めるのを楽しく感じてしまったと言ってて今問題になってることだなと感じました。
この本