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愛を求めて、人生の意味を求めてインドへと向かう人々。自らの生きてきた時間をふり仰ぎ、母なる河ガンジスのほとりにたたずむとき、大いなる水の流れは人間たちを次の世に運ぶように包みこむ。人と人のふれ合いの声を力強い沈黙で受けとめ河は流れる。純文書下ろし長篇待望の文庫化、毎日芸術賞受賞作。
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Posted by ブクログ
名作。 胸が熱くなり、最後は涙が出そうだった。 死を迎えるためにガンジス河へ向かう、貧しく苦悩に満ちたヒンドゥー教徒たち。 ガンジス河は人生を、罪を、そして死を流していく場所で、生と死がそこで交わる。 全てを優しく包み込む深い河。愛に満ちた河。 本書にはキリスト教、ヒンドゥー教、仏教が登場するが、...続きを読む特に大津の思想が強く印象に残った。 神は多面的であり、どの宗教にも存在すると語る彼は、周囲から異教徒とみなされてしまう。 宗教の違いで争いが起こるこの世の中で、私は無宗教だからかもしれないが、大津のような考え方があってもいいのではないかと思った。 人生で一度は、聖なるガンジス河、そして飢えと病苦と慈悲の女神チャームンダーの世界を、この目で見てみたい。
一気に読んでしまった。 「沈黙」の結論ともいわれる「深い河」の一行はインドに向かう。神はいるのか、いないのか。姿は見えなくとも、さまざまに転生するのだと。美津子の二面性に共感しながら、その両面を糊付けした孤独を馳せた。大津の生きざまを肯定したい。また読み返すだろうし、人生で大事な一冊になりそう。
インド旅行の予習として読破。ほぼキリスト教の話で予習としての意味は殆どゼロだったが、それにしてもいい小説だった。 ホテルの名前を告げてタクシーに乗ったが、結婚式で道が塞がっていて一向に到着しない。焦れて式場の名前を運転手に尋ねると、運転手は悪びれもせずに、目的地のホテルの名前を言った、みたいなエピ...続きを読むソードが妙に印象的。 本筋とはぜんぜん関係のないちょっとした話だが、インドらしさ、少なくとも「日本人の思うインド」をこれ以上なくよく表していると思った。
何度も読み返す。皆、それぞれに背負うものがあり、そのすべてを深い河が包み込んでいく。善と悪が二項対立ではない、生きることを許されると感じる本。
妻の死後、磯辺の回想に揺さぶられて少し泣けた。 全てを受けいれるガンジス河を前にして、 各登場人物が自分と向き合っていく過程に胸打たれる。 『玉ねぎ』について、実直に、純朴に、不器用に向き合い、イエスの真似事をした大津のラストは衝撃だった... 何度も読み直して自分なりの理解を深めたい一冊です。
それぞれに苦しみを抱えてインドを訪れた人々が、ガンジス河を前にして自らの過去と向き合う。 生も死も、善も悪も。祈りと共に全てを流してゆく人間の河。 生きること死ぬこと、輪廻、赦し… 現代にも通じる普遍的な問いを扱った何十年も前の小説から何の違和感もなくメッセージを受け取ることができて、時代を...続きを読む超える名著の力を見せつけられた気持ちです。 「信じられるのは、それぞれの人が、それぞれの辛さを背負って、深い河で祈っているこの光景です」
インドに行きたい!! 相反するものが全て同一の場所にあるような感じ。 一気読みした。強く心が動かされた。
小説ってこういうものだ、と思う。登場人物の抱える人生はそれぞれ重く、尊い。1984年インディラ・ガンディーが暗殺された年のインド。今よりも混沌していたのか、今も変わらず混沌としているのかは分からないが。その混沌としたインドで、キリスト教について考え、愛について考える。ヨーロッパではなく、インドという...続きを読む設定もまた興味深い。 遠藤周作は日本における基督教について考えていた。仏教も日本に入り、日本化され現在の仏教に姿を変え、私たちの生活に馴染んでいる。同じように基督教にも長い年月が必要なのだろう。日本化される基督教になるまでに、仏教において空海や最澄が必要だったように、遠藤周作という作家も必要な存在なのかな、と思う。 大津と美津子の対比は面白い。美津子が病院で、患者に演じるという表現。分からないではない。相手の期待する役柄、人柄を演じる自分。表面上は優しさに溢れる態度や対応も、心の底から湧いてくる優しさなのかと問われれば、即答できない自分もいる。そういう自分を直視する美津子は強い人だ。その強さに大津も惹かれるのだろうか。大津の愚直な基督教との向かい合い方も心打たれる。一つのこと、信じることを心ゆくまで考え抜くことはとても苦しいはず。それをやり抜く大津の素晴らしさよ。これを認めないのがキリスト教であるならば、イエス・キリストとは何なのか、キリスト教の神とは何なのか、と思う。 戦争を知らない世代の方が多い今。木口の経験、沼田の経験は、彼らからしたら生ぬるいと言われても、深く想像するしかない。想像しても現実にはとても行きつかないことを知った上で、想像し苦しまないといけないのかもしれない。そういう意味では、読書という形でその一端を知ることはとても貴重な経験だ。 バーコードを撮るのに裏をしたら、税別780円が目に入る。780円で得られるこの感動。こういうことをコスパがどうこう言うのは好きではないが、なんと贅沢な時間を得られる780円だろう!
宗教というものは 人を救うためにある しかし 現在のイスラエル紛争のように 戦争を引き起こすのもまた宗教 人を救うための宗教によって 多くの罪なき人々が死んでいく これほど理不尽なことはない 日本は世界から 仏教国と認識されているが 自分がそうであるように 熱心な仏教徒はほぼいないだろう そ...続きを読むんな日本人からすると 宗教というものがうさんくさいものに見えてくる 人を救うための宗教が人を殺す どう考えたっておかしいじゃないか なぜそんなものを信じるのか 信じてなんの得があるのか 信じたところで神は 手を差し伸べてくれないじゃないか しかし熱心な信者は それでも宗教を、神を信じぬく いつの日か自分を救ってくれる いつの日かこの残酷な世界から 自分を救ってくれると信じている では僕たち日本人は 何を信じて生きているんだろう 家族?金?地位?名誉?外見? youtubeの登録者数? 経済という魔物に飲み込まれ 宗教を軽視し あまりにも実用的になってしまった日本 信じるものが見当たらない みじめなこの国で 僕たちは何を信じればいいのだろう 信じるものがないしんどさに 僕たちは耐え続けられるだろうか みじめでつらくてしんどくて 信じるものもなにひとつ見当たらなくて どうしようもない無力感に襲われたとき この「深い河」を手にとってみてほしいです
某所読書会課題図書:考えさせられるストーリーだが、キリスト教に対する日本人の様々な思いが詰まっていると感じた.磯部、美津子、沼田、木口、大津の主な登場人物の中で大津の生き方が、宗教としてキリスト教を厳しく捉えたものと思った.プロテスタントのクリスチャンである小生が見ても、大津の真面目さは特筆できるも...続きを読むのだが、あそこまでは行きつけない.インドに行ったことはないが、蒸し暑さの中で多くの人々が暮らしている状況が文の中から読み取れた.重苦しいストーリーの中で三篠夫人の我儘が唯一笑えるものだった.
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