【感想・ネタバレ】深い河 新装版のレビュー

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Posted by ブクログ

高校生の時に課題図書だった「沈黙」は読みにくかったイメージがあり、遠藤周作のキリスト教信仰をテーマとした小説は避けていましたが、「深い河」は好きな本の一つとなりました。

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2024年03月13日

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たぶん、『こころの声を聴く―河合隼雄対話集』の中で取り上げられていて、読みたくなった本だったはず。
河合隼雄の本でよく言われている、欧米に行った時の、日本人としての葛藤を、そのままこの本に出てくる大津が代弁してくれてるんだなと思いながら読んだ。

「ヨーロッパの考え方はあまりに明晰で論理的だと、感服せざるをえませんでしたが、そのあまりに明晰で、あまりに論理的なために、東洋人のぼくには何かが見落とされているように思え、従いていけなかったのです。…ヨーロッパ人たちの信仰は意識的で理性的で、そして理性や意識でわりきれぬものを、この人たちは受けつけません」(P197〜大津から美津子への返事)

大津が好きという、マハートマ・ガンジーの言葉「さまざまな宗教があるが、それらはみな同一の地点に集り通ずる様々な道である。同じ目的地に到達する限り、我々がそれぞれ異なった道をたどろうとかまわないではないか」(P326)は、私もいいなと思えた。

木口の「私が考えたのは……仏教でいう善悪不二でして、人間のやる所業には絶対に正しいと言えることはない。逆にどんな悪行にも救いの種がひそんでいる。何ごとも善と悪とが背中あわせになっていて、それを刀で割ったように分けてはならぬ。分別してはならぬ」(P342)という言葉にすごく共感を覚えた私は、やっぱり日本文化の中で育った人間なんだなと感じさせられた。

そして、全然別の話だが、数年前にガンジス川に行った時、現地の人に、「あれは日本人観光客がみんな写真撮って帰るから、あんたも撮っておいたら?」と勧められて、私も撮ったところがある。この本に出てくる「クミコ・ハウス」ってなんか聞き覚えあるなと思って、当時の写真を見返していると、あった、「久美子の家」って書かれた壁。例のインド人が撮影を勧めてくれた場所だった。
なんと、こんな形で再会するなんて。というか、クミコ・ハウスが実在するなんて…か?
この本を読みながら、インドの風景を細かに思い出して懐かしくなった。
また行きたいな。そしてこの本もまたじっくり読み直したい。

※ 後から『こころの声を聴く』を読み直したら、そこではどうやら『深い河』は紹介されてなかった模様。さて、こんなに好き!と思えた本なのに、読もうとしたきっかけが何だったか思い出せなくてモヤモヤする。

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2024年03月01日

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内容は重いが、読みやすかった。色々な人生がガンジス川に集まる。必ずしも白黒つけなくていいよね。神様もそれぞれの形があっていい。

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2024年02月16日

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ネタバレ

『沈黙』に引き続き遠藤2作品目。(知り合いか)
現代設定なのと、執筆が後期1990年代のためか読みやすい。沈黙では、キリスト教の拡大先で土着の信仰と交わる、あるいは交わらないことの悲劇がついぞ解決されない。この作品では一つの答えに着地している。
それはマハトマ・ガンジーの言葉によって語られていた。

──あらゆる宗教の目的地は一つで、そこに到達するには様々な道がある。異なった思想でもかまわない。実際には人間の数だけ宗教があるのだ(要約)─


これ以上ない名言。ガンジー=不服従から深掘りしなかった自分が恥ずかしい。
どんな身分も宗教でも飲み込んでしまう広いガンジスの流れ。人間の内にあるあらゆる悲しみ、痛みの河を押し流していくもの。そのイメージ通りに話が進み、逆に遠藤の神へのラブレターから人間讃歌に変わっていくのを感じた。(遠藤いうな)


離れて見れば普遍性をもつ真理も、しかし近づくと色鮮やかで残酷だったりする。大自然の営みが、獣の捕食する血と肉であるように、この作品の生死観もまた超ハードモード。俯瞰でないと見ていられない。

以下はラストのネタバレ。

幼い頃から弱虫で挫折しやすく、言葉でも立ち向かうことのできないはぐれキリシタンの男が、ガンジス川のほとりで、名もなき異教徒として死を迎えるラストシーン。これにつけて、あらー大自然だねーなんてとても言えない。
それが作者によって唐突に思考は遮断される。え?ページがまっしろ。アプリが壊れたのかともっかい再生押してみる。

死んだ。
そこで終わった。

やっと救済の境地にたどりつけたのに。
サブキャラが獣のように殺されて物語は幕引きとなる。


知ってる人には有名なのかな〜。この強制終了の意図が、どうか30%くらい汲めて…いてほしい。信仰が引き継がれたことで、彼は肉を供してその使命を果たしたのではないか…?
なんせ深すぎる!!
それでも、なんちゃって仏教徒で神棚を祀りヨガやマインドフルネスに精を出しながらカムイもいいよねーなんて言ってるゆるふわ教徒を、一つの光に紐づけてくれた名著。宙ぶらりんだった足元に地面ができたみたい。
辿り着く先はひとつ。

遠藤、この後年の作品も追ってみたい。()

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2024年01月31日

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すごく良い
人は皆、誰にも言えない秘密を抱えている。それゆえに孤独なのだ。深い河に象徴される救いは、秘密を吐露できる安心感があるがゆえで、だとすれば確かに誰の中にも玉ねぎはいるのかもしれない

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2023年12月31日

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河は今日まであまたの人間の死を包みながら、それを次の世に運んだように、川原に腰かけた男の人生の声も運んでいった。

死生観と宗教

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2023年11月10日

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何かの喪失を抱え、インドの母なる河ガンジスにやってきた日本の旅行客たち。このガンジス河は死者にはじまり、どんな醜い人間もどんな汚れた人間もすべて拒まず受け入れ、そして流れていく。
どの人間にも我々が知らない、知りようもない彼らのドラマがある。
三條のような旅行客もまたリアルだった。

愛・玉ねぎとか色々書き出すと、薄くなりそうだし自分の語彙力表現力ではとてもこの感動を表すことができないのが残念。本当にいい小説だった。

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2023年08月31日

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ネタバレ

「愛」とは。

生きていく上で誰しもが一度は考えるであろうこのテーマについて触れている本作。

それは、一方においては教義であり、一方ではある種のぬくもりであり、救いであり、我々の病や苦しみを共に背負う女神であり、本作においてそれは玉ねぎであった。

それについて正答はないし、答えらしきものは人の数ほど存在しているだろうと思う。たとえ同じ言葉で語っていたとしても、根底に潜む意味、想いは異なっており、同じ響きを持つものはひとつとしてないように聴こえるからである。

木口はそれを善悪不二。地獄世界においても見つけることのできる唯一の救いの存在と説いた。
磯辺は、生活ではない、人生において、本当の意味で触れ合うことのできる、なにものにも変え難い無二なる存在と説いた。

そして大津は。
彼は愚直なまでにそれを追い続け、自分の信じる、信頼するものを守り、生きた。
そんな彼の姿は周りから見れば醜く、威厳なく、アウトカーストと間違えられ、分かりやすく嫌悪の目を向けられるほど。
それでも彼はただただ真っ直ぐだった。悩み、苦しみ、蔑まれながらも、進み続けるうちに、彼の信じるそれは次第に確固たるものへとなっていった。余裕さえ感じるほどに。

母のぬくもりの源。この世の中心。誰の心の内にも存在するもの。

「愛」とは、なんだろうか。
目の前の横断歩道を歩く見知らぬ男性の中にも、たまたま同じ電車に乗り合わせた男女の中にも、私の想像の及ばぬ人生があり、それぞれの心の劇がある。
しかし、それらすべての存在を包み込み、流れる大いなる河は、誰を弾き出すことなく、無視することなく、ただ単調に、当たり前に、この世に生きるすべての命を育み、流れていると思う。
それを「愛」と呼ぶべきか、時の流れとでも呼ぶべきか、はたまた単なる偶像なのかは分からないけれど。

ただ一つ言えるのは、その存在に気づき、自分の言葉で名付ける、そこに真理があるのではないか、ということだ。
名前なんてなんでもいい。真似事でもいい。それでも自分だけの言語で発し、それについて想いを馳せること、それが何よりも大切なことなのではないだろうか。

「愛」は、「玉ねぎ」は、生きとし生けるもの全ての内に存在し、それぞれの言葉を持ち、また、その全てを包み込んで揺蕩う、深い河の姿をしていると思う。






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2023年08月13日

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長年お世話になった本屋の閉店日に購入した本。
インドのガンジス河に行く日本人観光客を中心とした物語。
深い哀しみが存在する人生の終局を目前に、人は何を想い、求めるのか。
古い作品でテーマは必然的に重いものの、読みにくさは無い。
忙しい毎日を送る現代人に、一度立ち止まり、死生を考える機会を与える、印象深い本だと思います。
1920年代生まれの、戦争を経験した著者に執筆だからこその深みがありました。

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2023年08月13日

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ネタバレ

自分は作品から考え方の影響を受けやすいことがコンプレックスだったから、遠藤周作さんのような宗教心が強いような小説は避けてきた。
なんとなく読んでみたら、まず思ったよりも読みやすくて、具体的で身近な神の概念に感心してしまった。具体的なストーリーからこんなにも抽象的な問いかけとして自分の心に入り込んできたことは初めての経験だった。こちらの生活に干渉してこないような配慮があった。
塚田が木口を戦争で助けたという恩を戦後に引きずっていた場面での木口の複雑な心境の表現が巧妙だった。戦争についての遠藤周作さんの他の作品も読んでみたい。

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2023年08月08日

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登場人物や概念、起こる出来事など、対応関係(対比関係)に置けるものがかなり多かった気がする。また、無駄な文がなく表現のひとつひとつにちゃんと意味があった。それによって全体的によくまとまった仕上がりになっているので、かえってインドの混沌とした世界が際立って、良いと思った。
ガンジス河の流れを死者の領域とするならば、これはガンジス河のほとりの話だなと思った。登場人物はほとんど皆、限りなく死に近い場所で生きていたと思う。
それから三條夫婦、この二人は最早コメディの世界に生きている。作品内で重要な役割を担っているのは分かるのだけど、君たちはこの世界にお呼びでない!と終始思っていた。帰国後はぜひキャッキャとヨーロッパ旅行を楽しんでいてほしい。
遠藤周作がこんなに読みやすいことを今回初めて知った。前の世代にも後の世代にも天才と呼ばれる文豪がごろごろといて苦労したようだが、今の私にはこれくらい読者に寄り添ってくれる作品の方がありがたかった。

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2023年07月17日

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30年の時を経て読むことが出来た作品。
十代の私では読み終えられなかった。
この本を紹介してくれた女性に感謝します。
ありがとう✨
祈りと信仰を深いレベルで考えさせられる作品。オススメです❗

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2023年06月10日

購入済み

疎外。自分を信じられるか?

美津子は恋愛遊戯から一転
妻の座に就くが、夫と合わない。
看護婦の自分も本心に思えない。

人には善悪両方があるのか。
ヒンズー教の女神の二面性が
それを肯定する。また、
病に苦しみつつ乳を与える神もいる。

弱虫の神学生大津は、誘惑され、
胸だけを許された後、捨てられる。
り所のキリスト教からも、
多神教的思考を否定される。
だが、異端でも、その後の彼の
行動は、むしろキリスト的だ。

美津子も大津も、疎外されるが、
自分を信じられたらよいか?
精神的危機を乗り越えたトルストイ
は破門されても強かった。
捨てるのが男なのが『復活』か。
恋愛遊戯が、結局治らないのが
『シンセミア』の田宮和歌子だ。

#泣ける #感動する #深い

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2021年09月16日

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1.著者;遠藤氏は小説家。12歳の時に伯母の影響でカトリック協会で受洗。日本の風土とキリスト教の対峙をテーマに、神や人種の問題を書き、高い評価を受けた。「白い人」で芥川賞、「海と毒薬」で新潮文学賞・毎日出版文化賞、「沈黙」で谷崎潤一郎賞・・等を受賞。「狐狸庵山人」の雅号で軽妙洒脱なエッセイも多数執筆。ノーベル賞候補に上がる程で、今でも読み継がれている作家の一人。
2.本書;世代・考え方・環境が異なる5人の男女が人生の意味を求めて、インドのガンジス川ツアーに参加。深い悩みを抱えた5人がツアーで巡り会い、道しるべを探し求める物語。遠藤氏は、その一人一人に自身の人生を重ねている。カトリックの家に生まれ育った大津、結核を患う沼田、この二人は遠藤氏の人生の一部だ。遠藤文学の礎となるキリスト教、汎神か唯一神か。「深い河」は最終章。十三章構成で、毎日芸術賞受賞。氏の遺志で「沈黙」と共に、棺の中に納められた。
3.個別感想(印象的な記述を3点に絞り込み、感想を添えて記述);
(1)『六章;河のほとりの町』より、「(大津)日本人として僕は自然の大きな命を軽視することには耐えられません。いくら明晰で論理的でも、このヨーロッパの基督教の中には生命の中に序列があります」・・・「(大津)神とはあなた達のように人間の外にあって、仰ぎ見るものではないと思います。それは人間の中のあって、しかも人間を包み、樹を包み、草花をも包む、あの大きな命です」「(南仏の修道院の先輩)それは汎神論的な考え方じゃないか」
●感想⇒「ヨーロッパの人達の信仰は理性や意識で割り切れぬものを、受け付けません」とあるように、欧米の考え方は、道理や論理を重んじます。日本はこの合理主義的な思想を学び、戦後に世界に類を見ない経済発展を成し遂げました。しかし、物的豊かさを享受した半面、心の豊かさを満たしたかは疑問です。我が国は経済的に豊かになったと思いますが、競争社会を助長し、貧富の差が拡大したのも確かです。宗教は多くの人々を救うと同時に迫害や対立を生じさせています。今も宗派の違いにより、各地で民族問題や地域紛争が起きています。「人間を包み、樹を包み、草花をも包む、あの大きな命」こそ、遠藤氏の宗教観(どの宗教もお互いに寛容であるべきだ)であり、耳を傾ける時だと思います。
(2)『十章;大津の場合』より、「(磯部)人生というものはまず仕事であり、懸命に働く事であり、そういう夫を女もまた悦ぶと考えてきた。そして、妻の中に自分に対する情愛がどれほど潜んでいるか、一度も考えなかった。・・・だが臨終の時、妻が発した譫言(私必ず生まれ変わるから、この世界の何処かに。探して、私を見つけて、約束よ)を耳にしてから、磯部は人間にとってかけがえのない結びつきが何であったかを知った」
●感想⇒「人生というものはまず仕事であり、懸命に働く事であり、そういう夫を女もまた悦ぶと考えてきた」。世間には、私を含めこうした考えの人が多いと思います。私は本書を読んで、遠藤氏の持論に覚醒しました。生活と人生は違う事を。「生活は優劣の差がつく競争社会、人生は権力差がなく競争の無い社会」です。生活は能力や立場が平等でないが、人生は平等なのです。「人間にとってかけがえのない結びつき」即ち、人と出会いながら、本当に心を通わせられる人と交流し、今を生きることが大切。日本社会では、欧米のモノ重視と個人主義が横行し、孤独になって苦しんでいる人がどんどん増えていると思います。宗教に限定する事無く、誰にも言えない苦しみを分ちあい、寄り添えるモノがあるといいですね。
(3)『十一章;まことに彼は我々の病を負い』より、(ガンジー語録集より)「本能的にすべての宗教が多かれ少なかれ真実であると思う。すべての宗教は同じ神から発している。しかしどの宗教も不完全である。なぜなら、それらは不完全な人間によって我々に伝えられてきたからだ」「様々な宗教があるが、それらはみな同一の地点に集まり通ずる様々な道である。同じ目的地に到達する限り、我々がそれぞれ異なった道をたどろうとかまわないではないか」
●感想⇒NHKの「日本の信仰調査」によれば、“無宗教→49%、宗教を信仰している→39%(仏教→38%、キリスト教系→0.9%)”。他の調査でも、日本は人口の29%が神を信じていない無神論者。日本人の信仰心は薄いと言えます。私は、宗教の目的は二つあると考えます。「普段から心を安定させる」「困った時に心を奮い立たせる」です。但し、これらを充足する方法は「宗教」以外にも方法があると思います。信頼のおける人(親族・友人・知人・・)、先人(の言葉)等です。私は無宗教派です。心の安定と奮起には、❝先人に学ぶ❞事と❝尊敬する先輩諸氏のアドバイス❞を参考にしています。個人の考えは一様ではないので、宗教にだけ捕われる事なく、「熟慮し、自身に見合った方法を見つけ、信じること」でしょう。それが、「同じ目的地に到達する限り、我々がそれぞれ異なった道をたどろうとかまわない」のだと思います。
4.まとめ;遠藤周作研究で著名な、山根道弘氏は、本書を「遠藤の文学と人生の総決算」と言ってます。「諸々の宗教はお互いに敬意を払いながら、❝寛容さ❞を持つべきだ」というのが、遠藤氏の思いなのでしょう。私はキリスト教徒ではありませんが、遠藤周作は好きな作家の一人です。遠藤氏を理解するには棺の中に入れられた「深い河」と「沈黙(レビュー済)」は必読です。蛇足ですが、純文学者・遠藤氏のもう一つの顔である狐狸庵山人として、執筆されたエッセイ「現代の快人物(狐狸庵閑話)」や「勇気ある言葉」等は、肩ひじ張らずに楽しく読めるので私のお気に入りです。(以上)

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2024年02月17日

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自分の心に残る痕跡をそれぞれの形で昇華したくて、運命的にどこかに導かれる経験は共感ができる。

自分にとってその場所はどこだろうか

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2024年01月12日

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リーインカーネーションは実際有り得ることなのか。幼い頃から、ずっと考えてきた。死んだらどうなるのか、無なのか?
それとも魂は7日刻みで他の生命として宿るのか?本当にそうだったら良いなと願う。今作は死生観、転生、宗教とテーマがあまりにデカく、重たい内容かなと思ったが筆者の文才と筆力で読ませます。
一流のエンタメとしても、大人の読み物としても、考えさせられ、楽しめ、良い読書時間を満喫できた。更にエンタメ色を求めれば、月の満ち欠けを読むことをお勧めする。

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2023年12月28日

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最後の終わり方がちょっと気になった。そして最後の急展開にもびっくりした。けど、面白かった。それぞれの登場人物の過去の経験やなんのためにインドに行ったのかなどとても引き込まれる内容だった。

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2023年08月08日

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前から気になっていた一冊。
去年、インドに行ってガンジス川を見たときの光景を思い出しながら読んだ。
数十年前に書かれた本だが、描写されているバラナシの街の様子が去年見たものと何ら変わらないことに驚く。

妻と死別した男、磯部にまつわる箇所にある一文。
「磯部は生活と人生とが根本的に違うことがやっとわかってきた。」
うん、なるほど。腑に落ちる。

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2023年07月08日

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初めて遠藤周作を読みました。

この作品しか読んでないからか、
遠藤周作の意思はまだはっきりとは理解できませんでしたが、多元的な宗教の捉え方や、神の沈黙という表現を通して、ヨブ的な祈りと信仰の深さなど、とても考えさせられました。

あえて言うなら、登場人物それぞれの精神的なドラマをもう少し突き詰めてほしかったかな。

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2023年06月15日

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クリスチャン作家として有名な著者だが、実はその思想は一部の(というか割合多くの)クリスチャンから異端視されてきた。

その一番大きな理由はおそらく宗教多元主義によるものだろう。

しかし個人的には著者に深いシンパシーを感じてきた。それは自分自身が幼い頃から日本の文化や土壌に慣れ親しんできており、家族や親しい人達の葬儀を通して仏教にも触れ、お経なども暗誦した経験があるからだ。今でも浄土真宗の正信偈は空で唱えることができる。

また、遠藤さんと同じように日本人のクリスチャンとしてどうやって生きていったらいいか思い悩んできたせいもある。

このことを深く書きすぎるとクリスチャンとして良からぬ誤解を受けるので割愛するが、ともかく遠藤周作がいなければ、私ははぐれクリスチャンから戻ってこられなかったかもしれない。

私は以前、氏が臨死体験について語った動画を観たことがある。当時、愛する人達を亡くして深い喪失感に苦しんでいる最中にあって、氏のメッセージは深い励ましになった。それもまた宗教多元主義的な内容だった。

この小説に出てくる『はぐれ神父』の大津の思想はまさに遠藤周作のそれだ。戦時中ビルマのジャングルで苦しんだ木口が暗誦する阿弥陀経とその傍らで全てを飲み込むように流れるガンジス河の流れと光景もこの小説の主題を描いている。九官鳥に話しかける沼田の姿も魂の深いところで会話する点は同じだろう。

神学的な面だけで見れば、この小説はクリスチャンにオススメできない。イエス・キリストの例え方も少し貧相すぎるイメージだ。あまりにも『玉ねぎ』を連呼しすぎているし、ついに最後までイエスの名が出てこなかった。また、一部のカルトは宗教多元主義を利用することがあってそのことにも注意が必要だ。

けれどもガンジス河の流れを描きながら、人の魂を救う力をこの物語は間違いなく持っている。本当の意味での祈りとは何なのかをさり気なく問いかけている。

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2023年05月13日

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大学生の時にキリスト教の授業(愛に関するテーマだったと思う)の課題図書として出会った本作を再読した。
この本に出会い、インドに興味を持ち、社会人5年目となって初めて、バラナシの町、ガンジス川を訪れた。ガンジス川を眺めながらの再読となった深い河。様々な過去を抱えた人間が、深い河を見ながら感じたこと。
テーマである「愛とは何か」を私もまだまだ経験不足ではあるが、自分の過去を振り返りながら考える良い機会となった。まだ答えは分かりませぬが。

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2023年05月11日

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河というのが、神聖だったり生死に対して繋がりが深いものというイメージは自分の中で形成されつつあったけど、これを読むと、ガンジス川はそういうイメージをある意味で残酷に表しているなと思った。
最後まで、インドに来た彼ら日本人がそれぞれ抱えているものに光のさすような解決を分かりやすく見出すことはされなかったけれど、そのもどかしさと暗さが生き続けていくということだしこの本の終わり方に通じている気がした。

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2023年01月25日

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2023読書初め
概念的な対比(秩序と混沌など)が各所に散りばめられていて、前者の視点を持つ者は後者へ痛烈な批判をし、後者を受容している者は前者へ違和感をもつという構造が簡潔な文体で表されている。
しかし読んでて個人的に興味深かったのは、この二分法では割り切れるほど現実は単純ではないという点だ。

秩序を重んじる典型として描かれる西洋的基督教は、作品内において混沌たる異教を表面上は受け入れつつ、実際はそれらを異物として排除することで自身のカテゴリーを防衛している。またカオスの典型たるガンジス河においても、その混沌性が作品内にては強調されるものの、それは秩序だった一連の儀式によって演出されている。

つまり、実際は秩序と混沌の二分法に分かれているのではなく、両者は互いに支え合っているのであり、不可分なものとして存在しているように思えるのである。混沌の否定は、混沌を認識しているという点ではその存在の「肯定」であると理解すると(なにかを否定するには、まずそのなにかの存在を肯定する必要がある。)、基督教的秩序はカオスの否定=肯定によって自身の秩序性を強調している。
一方ヒンズー教的混沌性は、対とされる秩序性を内部に取り込む=肯定することで表出されている。このように、対とされる両カテゴリーの境界線は強固なものではなく多孔的であり、実際は相互に滲み出ている。

「滲み出す二分法」を今後も分析していきたい。

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2023年01月08日

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生活と人生は根本的に違う
生活のために交わった他人は多かったが、人生の中で本当にふれあった人間はたった二人

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2023年01月04日

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厳しい予後を告知されたあとの焼き芋の声と、ビルマでの壮絶な飢えと猛烈な雨と対比される小鳥の声。
日常の変哲のなさ、世界は何も変わらず回っていることを痛感するあの感じは、その人が絶望や苦悩の中にあればあるほど対比される形で迫ってくる。孤独や恐れとして何度も迫ってくる。
美津子の愛の真似事の描写は良かった。玉ねぎの真似事をする大津に、愛の真似事をする美津子。「信仰ー祈り」の大津に対して偽善がいやだと言っておきながら、「愛ーケア」の枠においては美津子も同じことをしている。美津子が大津を気にかけてしまうのは、同族嫌悪なのか、自分に似たものを感じ取ったからなのか。美津子はおそらく、大津のように出来損ないのケアを完遂すると思う。
おそらく、理想的で完璧な思想と現実世界の愚かさとの対比があちこちにされている。聖なるものと俗なるものの対比?こういう対比を取るのは、なぜだろうね。小説の意図としても、我々の宗教的実戦としても。
大津→純な信仰-出来損ないの祈り
美津子→心からの愛-ケアもどき
三条夫→写真家としての理念-歪んだ実践
三条妻→ヨーロッパ-インド
磯辺→本物の人間の絆-亭主関白的関係
磯辺→真の転生-生まれ変わり探し
沼田→本物の自然-人が求める理想的な自然の姿
江波→理想的な人生-現実の俺
木口→本物の飢え、本物の苦悩-???
西洋のマリア像-インドのチャームンダー母神像

今の時代に磯辺のような夫がいたら私はぶん殴っていると思う。作中ではどうしようもない日本の男として言及されているからまぁ分かるのだけど。
繊細な描写、宗教観の折り合いの文書が見事だった。ただ、フランスのキリスト教神父達の物分りの悪さが際立ってしまっていると思う。善悪二元論に立ったり、キリスト教isNo.1に立ち返る態度があるように描かれているが、実際そんなことないのでは?と思った。どーなんだろ。無知です。

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2022年12月06日

Posted by ブクログ

ストーリーとしての起承転結があるわけではなく、登場人物がそれぞれの過去に向き合ってる様子や心の内が淡々とつづられているのが、葛藤や苦悩が誇張なくよりリアルに伝わってくる感じがしました。

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2024年05月11日

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宗教を学ぶには、読んだ方が良いとアドバイスを受けて読んでみた。昔の小説なのに読みやすい。登場人物のキャラクターも立っている。

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2024年03月11日

Posted by ブクログ

インドに自分探しに行くと自分を見つける前に病気になる、というのはよく聞く笑い話だ。
この物語に出てくる人たちはみんなそれぞれ違った境遇にいるのだけど、それぞれに何かを探すためにインドへ赴く。
人間臭いんだけど、どこかドライさも感じさせる作品だった。深遠な話をしているときに頻出してくる「玉ねぎ」の名詞がいささか滑稽に思えるが、作者はキリスト教であるので、神を慕えば大津のように矛盾を抱えてしまうし、神と程よく向き合うためにはドライであったり滑稽さであったりが必要なのかもしれない。

終わり方が唐突で驚いた。(純文学は終わり方が唐突なのが多いイメージ)

女性の言葉遣いが古い&戦争経験者が出てくるので70年~80年代代い当りの作品かと思いきや、90年代だった。90年代にこんな喋り方してる女性はいなかったと思う。

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2023年04月05日

Posted by ブクログ

"女の中には自分を破壊しようとする衝動的な力がある"という一文が印象的だった。「玉ねぎ」というキーワードも独特。女性の中の満たされない気持ちについて考えさせられた。

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2023年01月23日

Posted by ブクログ

深いテーマだった
何となく生まれ変わりがテーマの話かなと思いきや、キリスト教の教義や、愛とは何か、人間の醜さといった色んな要素を詰め込んだ傑作だと思った 
それだけに…終わり方が呆気なさ過ぎた
遠藤自身の中で、ここまでで自分の伝えたいことを伝えきったのかもわからないけど…

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2023年01月04日

Posted by ブクログ

初読。遠藤周作は二冊目。とっつきにくそうだなという思い込みで敬遠していた。今、自分の年になって読んだから沁みたのかもしれない。インドを訪れる何組かのそれぞれの事情。それぞれの過去や思いは決して重ならない。人は大なり小なり、胸の内に秘密めいたものを抱え込んでいる。してやれなかった後悔は枷のように身を苦しめる。生き延びた意味や、生かされている意味なんてものが果たしてあるのだろうか。身分制度や未整地の道路だけを見て、豊かさは測れない。宗教への理解が幸せにつながるとも思えない。答えは決してでないが、それでも考えてしまう。幸せとは、生きることとは。を。

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2022年11月19日

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