あらすじ
芥川賞受賞作
29歳、社会人8年目、手取り年収163万円。
こんな生き方、働き方もある。新しい“脱力系”勤労小説
29歳、工場勤務のナガセは、食い扶持のために、「時間を金で売る」虚しさをやり過ごす日々。ある日、自分の年収と世界一周旅行の費用が同じ一六三万円で、一年分の勤務時間を「世界一周という行為にも換金できる」と気付くが――。ユーモラスで抑制された文章が胸に迫り、働くことを肯定したくなる芥川賞受賞作。
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ひとつめのポトスライムの舟、かなり好きだった。
自らが稼いだお金をどのように使うのか
金銭的に余裕があれば、子どもを産んでいれば、あのとき結婚しなかったら。今では友人と思えない旧友、老いていく親、古びた実家。
満ち足りた生活にはほど遠い気がするけれど、自分で選択をして行動を起こすことはできる。
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芥川賞受賞作『ポストライムの舟』とその前日譚とも言えそうな『十二月の窓辺』。
やはり『ポストライムの舟』がかなりよく、『十二月の窓辺』はちょっと迷うところ。だけど『ポストライムの舟』は「こんな書き方あるかぁ!」と感嘆。なので迷いましたが、やっぱり★五つ。
以下、解釈&ネタバレ。
『ポストライムの舟』』の主人公・長瀬由紀子。このフルネームは最初の一文にだけ使われて、あとは「ナガセ」で統一される。ではなぜ、最初だけフルネームか?
「脳内並行世界の確立にナガセが成功した」という個人的な感想を抱いている。本体は長瀬由紀子であり、ナガセは様々な長瀬由紀子のうちの一人。でも実際のナガセは前職、パワハラで辞職しており、なかなか辛い人生を送っている。彼女が薄給の中「そうか163万円で世界一周旅行にいけるのか」とケチケチ&土日も働く生活を始める。ナガセの周囲の、お金に困っていない友人・店の経営者の友人・旦那からモラハラを受けている友人、また会社の先輩の岡田さんの夫はどうも不倫しているらしい。そんななか、ついにナガセは体を壊してしまう。しかし復帰したら、なんと会社からボーナスが出て、163万円たまっていた! でもナガセはすぐには世界一周旅行にはいかない。恵奈という友人の娘に、イチゴの苗を買ってやろう、なんて考える。唐突に「また会おう。 何者にでもなくナガセは呟いた」、そして物語は終える。
ナガセは脳内並行世界ですでに世界一周旅行に出かけた自分を見て、そしてそれは今の世界の自分でも、絶対にいつか行ける、行こうと思えば行けるんだ、ということを無意識に悟ったんじゃないかな? その心強さ。肯定感。
一方の『十二月の窓辺』の主人公ツガワは女上司からパワハラ受けている真っ最中。会社の周りには暴漢が現れるらしい。そしてその暴漢がある人物であることが最後にわかるが、全体として暗い印象が否めない。この唐突な犯人暴きも、たぶんミステリーとして読んでしまうと「は?」となってしまうのではないか。たぶん「脳内並行世界」みたいに読むと、犯人は犯人であって犯人でないのかもしれない……ツガワ自身も「ヨーグルト菌の大量虐殺」を行っているし、表裏がわからなくなっている。
『ポストライムの舟』はまた読みたくなる作品でした。
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仕事は生きるために週のほとんどを費やすから、気持ちを持っていかれがちだが、きちんと働けることだけや仕事での評価がすべてじゃない。
仕事での人間関係に悩んだ経験があるからこそとても刺さるし、自分を大切にできてるか、考えさせられます。
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29歳、工場勤務の主人公。
仕事に対するモチベーションをあげるためにも腕にタトゥーを入れることで頭がいっぱいの時期にふと職場に貼ってある世界一周旅行のポスターが目に入り、その金額が自分の工場勤務の年収と同じ163万円ということに気付く。
今まではよく考えずに何気なく使っていたお金と向き合いはじめた主人公のナガセ。
そして163万円が貯まった時、ナガセが何に使いたいと思ったのか。
お金の価値観について改めて考えたくなる1冊。
本編以外に短編『12月の窓辺』も収録。
主人公の名前は違うが本編主人公の前日譚とされている短編。
上司のパワハラぶりが読んでいて少しつらくなったのでそういう部分はナナメ読みしつつそれでも一気に読めた作品。
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2009年芥川賞受賞。題材はロスジェネですが、作者の文章から立ち上がる人物の気配や物語の空気は、題材を超えて立体的に語りかけてくる何かがある気がします。読んでたら目の前に主人公が周りの空気ごと見えた瞬間があったということです
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工場勤務のナガセは、生活の糧を得るための労働に虚しさを覚えていた。ある日、自分の年収である一六三万円で世界一週が可能なことに気づく。果たして、ナガセは思いを実現することができるのか。ユーモラスな題材と文章でありながらも、周りの人々との交流で変わっていくナガセに心を打たれた。
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「津村記久子さんの作品を集中して(といっても3冊)読んでみよう」の三冊目。
「ポトスライムの舟」と「十二月の窓辺」が収録されています。
「ポトスライムの舟」は前職をつらい思いをして辞めて、工場や友人ヨシカが経営するカフェで働いたり、パソコン教室で講師をしたりしている女性ナガセが主人公。たまたま職場に貼ってあった世界一周クルーズが、工場での年間手取りとほぼ同額であったことから、世界一周を目標にするところから始まります。と、こう書くとそこに焦点が合った小説かと思いきや全然違うのです。
ナガセは奈良で母親と古い自宅で二人暮らしをしていますが、そこに友人りつ子が娘を連れて夫から逃げてきます。と、こう書くとなんだか波乱万丈な日常を思い描きがちですが、全然違うのです。
じゃあ、何なんだ、と言われたら、もう「読んでみて」としか言いようがない。
ナガセは過労で体調を崩すけれど、淡々と日常に戻る力をつけていくし、転がり込んできたりつ子も淡々と夫と別れ、娘と二人で暮らしていく道を見つけていく。その「淡々と」が非常に良いのです。ナガセ、母親、りつ子、りつ子の娘、ヨシカが連れだって奈良の観光地にあらためて出かけていくところなんか、すごく清々しくて良い場面なのに、「淡々」と描かれています。
ナガセは友人の娘にも過度な愛情をかけることはないけれど、ちゃんと人と人のつながりを築いていて、ナガセの家を出て、新たな道を進み始めたりつ子の娘に、ポトスライムを持っていくし、苺の苗を買ってやろうと思うし。出てくるみんなが決して恵まれた環境ではない環境で淡々と日々の暮らしを送っていて、その「淡々」はストーリーではなく津村さんの文章への印象かもしれないけれど、良いお話でした。これも津村さんお得意のお仕事小説といえるかもしれません。
次の「十二月の窓辺」は、お仕事小説そのものですが、真っ向からのパワハラ事案でなかなか読むのも辛いものがありました。主人公ツガワへのV係長(このお話ではどんな形であれ”ハラスメント”をしてくる人は全てアルファベットで示されていたように思います・・・)のパワハラは言葉によるものが主だったものでしたが、まぁびっくり。同時に、私はつくづく恵まれた職場環境で仕事ができているな、と思いました。新卒から働き出してウン十年。パワハラを受けたり、大声をあげられたり、汚い言葉で罵られたりしたことはありません。(ひとりパワハラ課長がいましたが、なぜか私のいる係はその課長に好かれており、被害を受けることはありませんでした。)働きやすいけど、やりがいがないから辞めたいだとか、職務内容に飽きたから異動して新しいことをしたいだとか、なんて贅沢をほざいていたんだろう、と大いに反省しました。この反省はこの話のラストのツガワの気持ちからすると、綿あめくらい軽いものですが、最後の最後で、ツガワは自分だけが「底の底」にいたわけではなかったと知ります。「通り魔事件」と「トガノタワー」がこんなふうに物語の本筋にからんでくるとは・・・。パワハラを受けた側がどんなふうに自己否定に陥ってしまうかというのが、ツガワの気持ちの描写でよくわかりました。傍からだったら、「V係長の方が、他のところではやってけないよ!」「ここを辞めても、どうせ次でもダメだなんてことは絶対ないよ!」「合うところは必ずあるよ!」と大声で叫んであげられるところですが、当事者の耳にはなかなか入りにくいことも想像に難くなかったです。ツガワには希望が見えた気がしますが、ナガトはどうなんでしょう。なんでまだパーカー姿だったのかな・・・
とりあえずの「津村記久子さんの作品を集中して(といっても3冊)読んでみよう」の三冊終わり!
また折を見て津村作品を読んでいきたいと思います。
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ありきたりで変化のない人生を変えるため海外旅行の目標を立てたのだが、カツカツの生活を送る内に、日常のささやかな楽しみで満足するようになり目標がどうでも良くなってゆく。失われた世代の悲哀。
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『ポトスライムの舟』は読みやすかったが『十二月の窓辺』はパワハラがリアルに描かれていて胸糞悪かったですね。
ポトスライムの舟は主人公の独り言にクスッと笑えたり、主人公の友達の娘も癖強くて面白いですね。
十二月の窓辺は、当たりの強いV係長がとにかく胸糞悪かった、責任を丸投げする先輩たちもどうなのかと思いましたね。
解説も読みました。津村記久子さんの過去作である『ミュージック•ブレスユー!!』の話も織り交ぜて有り面白かったです。
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具体的なエピソードとしては、主人公をはじめとした複数の登場人物が抱える職場や家庭での苦労が描かれているが、働く経験や、家庭的な苦労を未だ経験したことのない自身でも、登場人物たちの苦しみに共感することができ、人生の普遍的な苦しさをぴたりと言い当てる筆致に心を打たれた。一方で、とてつもない苦労を抱えながらも、やられっぱなしではなく意外にも(!)強かに日々を過ごす主人公たちに、希望も感じた。こうでないとやってられないよね、と共感できる。また、主人公との心情の距離感も絶妙で、過度な感情移入がないので、読後感が爽やかだった。苦しい時にまた開きたい一冊となった。
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主人公・ナガセの一年を追いながら、仕事やお金、生き方について何度も考えさせられた作品でした。
年収163万円という現実味のある数字と、そこから始まる節約生活や世界一周資金作りは、夢というより「自分にも起こりうる選択」のように感じられて、とてもリアルでした。
作中で、思うように貯金できず、働きすぎて体調を崩し、それでも働き続ける彼女の姿には胸が痛くなった。でも同時に、小さな幸福を拾い集めながら生きていく姿に、静かに励まされました。
ポトスライムが水だけで増えていくように、ナガセも自分の力で生き方を模索していく姿が重なって見えたことが印象的でした。
また、友人関係の描写を通して、誰もが表に見えない苦しみを抱えて生きていることを思い出させられた。自分の世界だけで完結せず、もっと周りにも目を向けたいと思えました。
読後、すぐに何かが変わるわけじゃないけれど、「自分にも小さな一歩が踏み出せるかもしれない」と思わせてくれる本でした。
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文庫本に収録されていた2作品の感想を記します。
○ポトスライムの舟
社会の波に揉まれて傷ついた人たちに向けた作品だと思いました。最後まで優しい雰囲気の文体で物語が進んでいたのでストレスなく作品を楽しむことができました。
作品の雰囲気を維持するためだと思いますが、主人公の過去のことは最後までわかりません。
○十二月の窓辺
パワハラに悩む主人公が退職するまでの心情が生々しく描かれています。つらい気持ちになりましたが一気に読みました。理解力不足のため、通り魔の正体に納得していません。時間をおいて再読しようと思います。
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津村さんの書く物語に出てくる女性は、一見無気力にもみえるのだけど、実際はそれなりに強くて、ちゃんと熱くて、かっこいいなと思う。
しんしんと胸の奥で青く燃える炎。
大きなことがあってもなくても、人生は流れてゆくのだと思う。
そして友達や同僚との距離感がとてもいい。
ナガトさんとランチしたい。
私もタクシー代を貸してくれた会社の先輩にお茶とスコーンをおごって、一時期同居していた友人の娘にイチゴの苗を買ってやったりしたい。
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今読んでいる”ポースケ”がこのポトスライムの舟の登場人物のその後の話で、しばらく読み進めたものの、ナガセの印象とポトスライムのクライマックスで感じた気持ちの感覚以外はあまり覚えておらず、一旦ポースケを置いて再読。
ポースケの中心人物たちの若かりし日々の奮闘に、今かなり歳を重ねてから、必死だった若い時の自分も思い出し、ちょっと涙がでそうに。津村記久子さんの文体はたんたんとした中に硬質な熱みたいなものがあり、クライマックスにツンとこちらの胸を突いてきて、毎回やられてしまう。流行りの職業についてる人など1人も出てこなくて、ほんとに毎日毎日働いて暮らす普通の人たちを、変に美化したり、抽象化したり、何か意味を見いだそうみたいな描き方をせず、そのまま描いて、それがすごくいいもの、価値があるものに感じられる。そこにグッときてしまう。
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現代の若い女の人が主人公の話ってひとりよがりな話も多くて読んでて「はいはい」って思っちゃうことも多いんですが、津村さんのそれはそんな浅いところでは終わりません。
いや最初はちょっとそう思わされる節があるけど最後まで読むともっと大きな視野で世間を捉えてて、それを説教くさくなく知らせてくれてるなぁと最後には思いました。
私ももう歳ですが、まだまだ甘いなって思いました笑
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あらすじが気になって読むことにした本。
労働へのモチベーションが、まるで自分と違っていて面白かった。
あっさりとした読後感で、さらりと読めてよかった。
文章の構成が独特で、最初はつっかえてたけど読み終わる頃には慣れてしまった。
ほかの作品も買ったので、読みたい。
軽薄だけど、私は主人公が世界一周するところを見たかったと思っちゃった。
そこはご自分でってことかな。
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ポトスライムの舟と併録された、十二月の窓辺が今の心情と合致する部分が多く、パワハラとも言える理不尽な圧力に応えられない、でもどうして良いのかどう受け止めれば良いのかわからない。時々聞いてくれる人がいて癒された気になって誤魔化している。そんな状況から踏み出すことは、少しのきっかけであればいいのにな。と爽やかな読後感が残った。
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◼️ 津村記久子「ポトスライムの舟」
芥川賞。小説らしい作品だな、と。読みやすく展開は、把握しやすい。
たまたまではあるけど、最近芥川賞を読むことが多い。中には、博多弁で言うといっちょん分からんやったり、やたら理屈が多かもんもあるとばい。しかしながら、この作品は平易な言葉で、設定も展開もオチも分かりやすい。ただ、そこに含まれている意味を言葉でうまく表現できない。
長瀬由起子29歳は、工場でベルトコンベアの乳液のキャップをチェックする仕事をし、夕方からは友人のヨシカが経営するカフェで働き、夜は入力の内職をしている上、土曜日はパソコン教室でお年寄り相手にメールの送り方などを教えている。ある日、工場に貼ってあるポスターの163万円で世界一周、というふれ込みに、この金額は自分の工場の年収と同じ、と気づき、節約を始める。そんな折、母親と住む4LDKの古い持ち家に大学の同級生・りつ子が幼い娘を連れて、ほぼ無一文で家出してくるー。
「ポトスライムの舟」自体は100ページくらいの作品。主人公ナガセの前日譚「十二月の窓辺」も収録されている。
離婚した母に、離婚協議をしているりつ子、離婚を考え始めた、工場でともに働く岡田さん。回りがいろいろと動く中、目標である貯金に向けて働く、細かくカネの計算をしては心を痛めるナガセ。止まらず働く女に、束の間の休息が訪れる。そして心境の変化が・・?
最近意図せず関西ものに当たる気がしている。ポトスライムの舟」は奈良が舞台で関西弁も多い。そしてそちこちに奈良の細かいあるある、が散りばめられる。さて、この作品はお金の算段を中心にストーリーが進む。周囲に影響されて、働いて、エアポケットが生じて、というわかりやすい展開だと思う。
では、何を掴み、どう変わっのか。成長したり、自信を取り戻したり、というのはわかる気がする。ただそれを、えも言われぬグネグネしたような感情、変化の度合いと瞬間をどう表現していいのが、ホントにむずかしい。分かる気はするけど、この胸の中のもの、これがこの作品を読んだ時残るものでは、という気もした。
タトゥー、百科事典が好きなりつ子の娘・恵奈との触れ合い、自転車で走る、など印象的で計算されてそうな要素が織り込まれていていて非常にテクニカルだなと思えてしまう。
等身大の物語、平易な文章とあまり波のない展開。しかし何かある、という確信、あまり言葉にしたくないような気もすふ。様々な知識。小説らしい作品だな、と思ったりした。
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ポトスライムの舟
なんかわかりそうでわからない。
でも心地よいって感じの話
社会人になってからお金が苦しい時期があったので、友達と会うための電車賃を脳内計算する主人公に共感しかなかった
将来のための投資を頑張ってるけど、それは幸福なのか?みたいなことを改めて考えた
いまいち掴みきれてないので、みんなの感想も見てみたい。
十二月の窓辺
ひたすらパワハラ描写がきつかった。
主人公もかなり限界まできてたし…
「でもまあ仕事ってそういうもんなよなあっていう。ばかみたいな恥をかきながらもそれは続くわけですよ。遠い空の下でアホにされながら、それでも会社員ははたらくんだよなあ」
ってセリフ好きだった。諦めと希望のブレンドが(この段階ではまだ主人公は吹っ切れきれてないけど)。
道中がしんどすぎたので、ちゃんと前向きに終わってくれてよかった。
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2編のお仕事小説。
どちらの話も、悩みながら仕事を頑張っている姿が描かれている。キャリアウーマンではないところが、現実をリアルに切り取っていると感じた。
1話目は薄給の中でも夢や目標を持って働き、2話目は仕事がうまくできないことを自覚しながら、いじめに耐えるようにして働く姿が描かれる。
芥川賞受賞作の1話目「ポトスライムの船」は、生きるために働くのか、その人生にどんな意味があるのかという、多くの人が一度は考えるテーマ。
主人公は働くこと自体は苦ではなさそうで皆勤だが、給料の重みや働く意味について、漠然としたものから次第に形をもって考えるようになる。
2話目「十二月の窓辺」では、パワハラ上司に耐えて働く姿に、偉いなと思う反面、もっとその努力を認めてくれる人が近くにいればいいのにと感じた。
働く環境はとても大切で、QOLは大きく変わってくる。
一方で、社会では理不尽に耐える力も必要だとは思う。
嫌だからとすぐに投げ出すのが良いとも限らない。
ただ、パワハラに無理して耐えることが正義なわけではなく、自分を大切にすることも必要で、現代ではそのバランスがとても難しいと感じた。
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主人公はキラキラ系ではなく、どちらかというとぱっとしない生活を送るアラサー女性。世界一周旅行の貯金と友達の母子との交流の様子が淡々と描かれていく。
ポトスライムはわたしも一時期少しだけ育てたことがあるが、地味だけど丈夫で、葉のみずみずしさが印象的だった。華やかでなくてもいいからしぶとく生きること、そこに少しのうるおいがあれば人生も充分なのかもしれない。そんなふうに思える話でした。
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20代後半って世界旅行できるくらいの金があるべきなのかしらと自分を省みて侘しくなった。何にお金を使ってきたのか、何も考えずに28歳まで来てしまった。ピースボートは気になる。
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「世界一周クルーズという目標」と「自分の年収」を等号で並べた時、人生はそこから逸脱する事なく小さな幸せと小さな不幸の抑揚の中で流されていく。安月給だが浪費もしない。老朽化した家や夫婦関係、それぞれにスッキリしない不安を抱えながら、それでも働くしかなく、課題は先延ばしになりながら生きていく。
水だけで育つポトス。根を張らず、土台(会社・家庭・共同体)を持たず、非正規雇用で最低限の“水(収入)”さえあれば生命を保つ。それぞれがその葉のように川の中を舟となり流されていく。カヌーがシングルの方が気楽で安定するという発想は、誰かと生きる方が不安定になることの暗示だろうか。また、クルーズは未来への希望となるだろうか。
ポトスとともに生きるそんな女性の話。
意思なき航海で巡る定まりのコースが夢。
マイホームを持つ夢の現代版。いや、少し古い。第140回芥川賞、2000年代の価値観。
2004年の製造業派遣解禁後、2007年には、製造業務への派遣期間が最長1年から3年に延長。2006年には男女雇用機会均等法の改正により、性別を理由とした差別的扱いが全面的に禁止。パワハラという言葉がまだ深刻化されずに笑い話にもされながら普及していったアノ時期。
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ポトスライムの舟、十二月の窓辺の2篇からなる本作。2篇は主人公も舞台も異なるが、上司からパワハラを受けている・受けていた主人公という共通項がある。
現在進行系でパワハラを受けている女性が主人公の「十二月の窓辺」は、読むほどに自分が仕事が一番辛かったときの喉に何かが詰まるような思いや、冷や汗をかきながら必死に追いつこうとするも、誰も助けてくれない状況を如実に思い出し、とても辛くなった。
過去にパワハラを受けていた女性が主人公の「ポトスライムの舟」は、工場や友人のカフェ、パソコン教室で働きながら、世界一周旅行のための貯金を始めるところから始まる。未来に希望を持とうとする姿がまぶしく見えたが、そんな主人公も過去の出来事が幾度となく頭をよぎり、完全に過去のこととして処理しきれていないところに共感した。
世の中にはさまざまな理不尽があって、私たちはその原因を自分、そうでないなら他者、どちらか一方にあると思い込んでしまいがちだ。
しかし本当はそのどちらにも原因はあって、自分のせいでもあるし、半分は他者のせいでもある。だから上手くいかないときは転職だとかで、自分が理不尽だと感じない場所を探してみるのがいいのだけれど、本当に辛いときはそうする気力すら湧かないよなぁとこれまた共感。
本当は今の会社じゃなくても、正社員じゃなくても、何かしらのバイトで生きていくことはできるのに、追い詰められるとその選択肢さえ気軽に手に取れなくなってしまう。
メンタルが元気なうちに、色々な選択肢や、自分を助ける知識を身に付けておきたい。
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全然脱力系じゃないよ…仕事に振り回される描写の解像度が高すぎるので元気吸い取られる…
表題よりも十二月の窓辺の方が好き、トガノタワーの設定が良い。
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『ポトスライムの舟』『十二月の窓辺』の二編からなる。
『十二月の窓辺』は『ポトスライムの舟』の前日譚として位置づけられているらしい。
29歳の長瀬由紀子(ナガセ)は工場のラインで働く他 友人が経営するカフェでのパート データ入力の内職 パソコン教室の講師 をかけもちしていた。
ナガセは自分の時間がないことに安心していた。どの仕事も薄給だということが時々彼女を追い詰めたが、それでも働かないよりはましだと思っていた。
ナガセは新卒で入った会社を上司からの凄まじいモラハラが原因で退社し、その後の一年間を働くことに対する恐怖で棒に振った経験をもつ。
テーマは二編ともそこそこ重いが何故か悲愴感はない。ナガセやツガワのキャラによるものなのか関西弁のせいなのか…
ある日ナガセは船で世界一周する費用と自分の工場での年収がほぼ同じ163万円であることを知る。
生きるために薄給を稼いで小銭で生命を維持している。そうでありながら、工場でのすべての時間を世界一周という行為に換金することもできる。
ナガセは自分の生活に一石を投じるものが世界一周であるような気になってきて 一年間で163万を貯めることを決心する。
結果 どうなったのか… 163万貯めることができたのか…? 世界一周したのか…?
ナガセは困っている同級生にお金を貸してあげ、“一言観音様”に「ヨシカとりつ子と恵奈ちゃんとおかんの願いが叶いますように」とお願いし、お金を貯めたことのお祝いに お世話になった岡田さんにお茶とスコーンをおごって、恵奈にイチゴの苗を買ってやろうと思っている…。
最終的に様々な問題が解決することはないし、これからも日常は続いていくだろうけれどナガセとその周りには飾り気のない優しさがあった。
Posted by ブクログ
生き物として生きること、人間として生きることには、違いがあるように言われるが、どうちがうのか。
それは自然とのかかわりに組み込まれて生きること、社会とのかかわりに組み込まれて生きること、そういう違いなのかなとおもった。
だとすれば、それぞれ違っているようでいて、実質は同じなのかもしれない。
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津村記久子さんの「この世にたやすい仕事はない」が好きで他の作品も読んでみたいと思っていたところに「芥川賞受賞作品」と文庫の裏にうたわれていたので、詠んでみました。
中篇2篇でした。
あとがきを読んで「十二月の窓辺」は、主人公の名前こそ違えども「ポトスライムの舟」の前日譚ということには納得。
上司のパワハラに悩む主人公から、優良企業を職場の人間関係から辞めて工場の仕事や内職などで暮らす主人公へ…
みんなそれぞれの悩みを抱えて仕事してるんだな
ガンバレ〜自分!と思わせてくれる本でした。
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オーディブルで聴いた。
短編2篇が入っているのだけれど、オーディブルで聴いていたので、同じ話の続きで、突然視点とが変わったのかと思い、それがまとまることなく終わったので、「え?これで終わり?どうゆうこと?」と思ってしまった。
微妙に繋がってる話だったのかな?ちゃんとよく味わえなかったと思う。