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Posted by ブクログ
自分の1年間の労働の対価と世界一周旅行の値段が同じ、という事を、自分の労働の価値に繋げていくのが美しいと思った。意味ではなく、価値。実際に世界旅行に行くわけではない、という事に意味がある話だな、と。世界にバズってる商品の工場で働いているとか、飛行機の部品の工場で働いているとか、そういうことではなく、仕事に世界と繋がる意味を持たせる事に意味がある、みたいな。自分の仕事の意味を、自力で世界に繋げていく。労働を一年分、すなわち世界を見た、と捉える。そういう意味で、薄給のかわり映えのないライン作業の仕事を肯定する。
世界旅行が遠のく事を意識しながらも、りつ子に電車賃を貸して、母にランチをおごって、雨水タンクを買う。でも結局、ボーナスと、りつ子からの借金返済で、183万の目標金額に届く。世界旅行応募のハガキを取りに行きつつ、そのハガキをすぐに丸めて胸ポケットに押し込み、ナガセはというと、岡田さんにスコーンと紅茶を奢ろう、エナにイチゴの苗を買ってやろうと、旅行とは違うお金の使い道について考えている。ナガセが自分の仕事を肯定したので、世界旅行は必要なくなったのでしょう。ポスターの中の、アウトリガーカヌーに乗った男の子がナガセに手を振って(ナガセの心象で)終わるの素敵だな。
Posted by ブクログ
津村さんの初期作品、意外と初めて読んだ。やっぱり津村作品は良い。
『ポトスライムの舟』
働いて得たお金で世界一周するのを選択肢として持つこと。食べられない観葉植物を、お金をかけずに工夫して育てること。できる範囲で友達を助けること。
結婚にこだわらず、手に届く範囲で楽しみを見出し、遊び心を持ってコツコツ働く。それでいいじゃないか、と少しも押し付けがましくなく言ってくるような一編で、すごく好きだった。
出てくる人みんなが普通の人で、それぞれ悩みもありながら日々を過ごしているのもいい。
『十二月の窓辺』
パワハラの描写がしっかりあり、津村作品にしてはいろいろな事件が起こる、メッセージ性の強い作品。
世界は狭く画一的なわけじゃない。この世には千差万別の痛みがあり、だからこそ今いる場所にこだわる必要はない、という結論は新鮮で、津村さんらしい。
今仕事の人間関係が辛い人は読むのがしんどいかもしれないけれど、読み終わる頃にはきっと心に涼しい風が吹くだろう小説。
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小説・文芸
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