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クラス替えは、新しい人間関係の始まり。 絵の好きな中学3年生のヒロシは、背が高くいつも一人でいる矢澤、ソフトボール部の野末と大土居の女子2人組、決して顔を上げないが抜群に絵のうまい増田らと、少しずつ仲良くなっていく。 母親に反発し、学校と塾を往復する毎日にうんざりしながら、将来の夢もおぼろげなままに迫りくる受験。 そして、ある時ついに事件が…。 大阪を舞台に、人生の入り口に立った少年少女のたゆたい、揺れる心を、繊細な筆致で描いた青春群像小説。
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Posted by ブクログ
こんな小説は初めて。なんだこれ、という感じ。青春小説というにはキラキラしてないし、ヒロシの成長記というほどのものでもない。いわゆる日常系なんだろうけど、しょうもないような細かい所作まで描きながら、つまらなくならないのはさすがと思う。 はじめの方は、津村作品にしては読みにくいかな、なんて思ったけど、...続きを読む気づいたらぐいぐい引き込まれていた。久しぶりに読み終わってしまうのが寂しいと思える作品に出会えた。
素敵なタイトルだなと思って読んでみたら中学生男子が主人公で、彼らなりには不安定だったりヤキモキモヤモヤしていたりするんだろうけど、ごく普通の日々を描いている。だから読み始めは退屈な感じ。でもそういう小説なんだと思った真ん中あたりからページを繰るのも早くなったかな。 津村さんってあまり読んだことないけ...続きを読むど、現代の仕事をしている普通の女子を描いた小説が多いようなイメージで、それでいながら本作は男子中学生が主人公というのはちょっと意外な感じがしたけど、男子中学生の親や友達とか女子とか世間に対する感覚がけっこううまく表現されているような感じがする。 舞台が大阪なのもいい。何となく大阪弁の会話ややりとりにおかしみが生まれてきて、一大事も柔らかくとらえられるような感じ。この点って、中学生の頃は一大事だったことが実は大人になってみればとるに足らないことだったみたいな視点を変えればとらえ方も変わるような感覚と似たような効果があるのかもしれない(蛇足だけど、大人にとってとるに足らないことを中学生の時、真剣に考えることも大事なことはわかってるつもり)。そんな浮遊しているような世代を描いているから「エヴリシング・フロウズ」。 解説(石川忠司)がよくて、冒頭で書いたような何気ない毎日を描くよさ、描けているすごさをうまく紹介してくれているので、以下に引用しておこう。 ――津村がシリアスなシーンを描くとき、それは必ずどこか阿呆らしさへと転落していくかも知れない契機をはらむ。しかし、リアルな現実とは大体そういうものなのではないか。そもそも恋愛や自己実現などのトピックが人生の特権的な中心を成すと考えるのは頭がどうかしている証拠だし、どんなにシリアスな経験だってその周辺は常に笑いや阿呆らしさのたぐいによって取り囲まれているのではないか。経験を多方向へと開かれた「明るいもの」としてあつかうのは津村記久子という書き手の重要な特色だ。(p.394)
その後、ヒロシがどんな子に成長してるかなと思ったので続きが読めて良かった。 中学生がいちばん大変だと思う。毎日学校に行くだけで偉い。
ヒロシと周りの仲間が一年間を通じて確実に成長していっていて嬉しい。こういう 何年間を積み重ねていけたらヒロシはすごくモテると思う。離れ離れになっても。フルノとヒロシの友情?も好き。 公立に通う中学生の良さがある。色々かんがえたりしながらも、違うタイプの仲間たちとの交流があって。受験でゆれつつもそこ...続きを読むまで息苦しくもならずに。 めちゃくちゃヒロインヒーローがいないんだけど、みんな輝いている。
中学生で、誰に対しても見た目だけでなく内面まで見ようとする人が、一体どれほどいるだろう。顔の印象や体格、声・髪など、一瞬で人を判別できる表層的な部分。思春期なんて、大抵そういうもので仲良くなるグループが決まっていたように思う。 主人公のヒロシは背が小さい中学3年生。絵を描くことが好きだが最近は気が...続きを読む進まず、面倒な受験も控えていて、家では一方的によく喋る母親が鬱陶しい。それでもヒロシは、クラスメイトの身に起こる不穏な出来事を解決しようと奔走する… ヒロシのようなクラスメイトがいたら、中学生の頃の私は彼の人間性まで見ようとしていただろうか。小さくて地味な男子、くらいに思って、それだけで心の中で彼を見下していそうだと、自分の嫌な部分を思い出した。 そしてそんな自分も、クラスメイトに見た目で多くを判断される、あの思春期特有の空気感に、居心地の悪さを感じていたことを思い出した。 ヒロシ自身は中学生という年頃を「何もかもが不確かだ」と捉えている。何も考えずにひたすら好きな絵に没頭していた小学生のときと比べ、不確かだと。 これには強く共感した。中学生なんて、後にも先にも一番不確かな時期だった。 周りのクラスメイトとの関係性も、親や先生への信頼も、自分の将来への展望も、自分の気持ちさえも。何もかも不確かで寄る辺なく、いくら考えても分からないことだらけだった。確かな何かが欲しくて、でもどうしたらいいのか分からなくて、もがいていた。 大人になっても不確かなことは多いけれど、そういうことに対してどう接したらいいのかは分かるようになった。それが、今は考えないという選択にしろ、勉強して知識を身に付けて対処するという選択にしろ。こういう時はこう、というのが少しずつ分かってくるようになって、中学生の頃より随分と楽になった。 私にとって中学時代は、そういう自分の頼りなさのせいで辛い時期だったが、それに比べてヒロシはなんとも頼りがいがある…! ただのクラスメイト相手でも、困っていたら頭を巡らせて、どうにか助けようとするし、そもそもそうやって考えたり助けたりすることに迷いがない。面倒だと捉える様子も、「何で自分が…?」と考える隙もなく、行動する。 まだ世間のことを知らないなりに、そうやって行動できるなんてめちゃくちゃかっこいい。大人になったらよく分かる、ヒロシのかっこよさ… ヒロシが高校に進学して、たとえ多くの友だちができなくてもモテなくても、自信を持ってそのまま成長してほしいと勝手ながら願ってしまう。 小説としては時折差し込まれる、ヒロシたちを描いた挿絵の効果もあってか、さまざまなことを思い出したり空想したりしながら読むのが楽しい作品だった。 また関西出身の私にとっては、登場人物たちの関西弁やノリも懐かしく、クスッと笑えるシーンが散りばめられていてよかった。 以下、中学時代を思い出して強く共感した言葉✍ ー中学生の男と女は、いつも同じ教室にいたとしても、いつでも好きに話せるわけではない。特に、ヒロシや増田のような地味な生徒は。 ー「思い通りになることが多かったら、逆にどうにもならんことばっかりが気になるんかも。知らんけど」
淡々とした表現の中に、クスリと笑える部分があって、さすが津村さんと思った。中学3年の1年を通して揺れ動く心が細かく描かれていた。
始めはなかなか読み進められなかったけど、半分くらいから一気に読んでしまいました。津村記久子さんの作品を読むと何故かいつもそんな感じになってしまいます。やっぱり津村さんの作品が好きだなぁと改めて思いました。 解説もわかりやすくてとても良かったです。
新学期、掲示板で何組かを確認するシーンから始まる。とても読みやすい。中3男子の内面がよくわかる。ヒロシから見た母の姿をみていると、思春期男児をもつ母には大変参考になる一冊。家庭の事情、離婚、受験、塾、SNSの時代っ子、いじめ、様々な事情が盛り込まれ、コンビニもよく登場する。現代の物語。運動会や文化...続きを読む祭などイベント事も経て卒業するまでの1年間が語られている。学力こそそこそこだが、ヒロシはとてもしっかりした考えの少年だと思う。『たぶんまた誰かが自分を見つけて、自分も誰かを見つける。すべては漂っている。』と言う言葉がすっと入ってきた。こうやって、人との関係を作り学生時代には大切な友達をもつ、誰もが通ってきた、または通る道が自然に語られている。
うわ~これまたむちゃくちゃ好きなやつ。 特別な人間が出てこない、みんな等身大でその辺にいそうな感じがたまらなく愛おしいんよな、津村さんの小説って。 ヒロシもヤザワもフジワラもフルノも野末も大土居も増田もみんな好き。 野末はこんなん絶対好きになる。なにより、ヒロシと大土居の感じが恋の1000歩手前み...続きを読むたいでたまらない。安易に恋愛路線に持っていかないあたりが津村さんの凄さであり、良さ。
ヒロシが、明確な意志がもてず、迷いながらも、自分にも他人にも誠実に生きようとしている姿が好もしい。決め付けない在り方に希望を感じる。
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