大好きな一穂ミチさんの新刊!
しかも「光のとこにいてね」以来の長編♪‹‹⸜(*ˊᵕˋ* )⸝›‹⸜( *)⸝›‹⸜( *ˊᵕˋ*)⸝››♪
短編一穂さんも、中編一穂さんも勿論好きだけど、長編一穂さんが一番テンション上がる!
実は私、この作品のWEB掲載が始まった時に、無料で読める箇所だけ読んでいたんです!
続きを読みたかったけれど、サイトの有料会員にならないと読めなくて、月額が結構高かったので諦めたのでした…(。•́•̀。)
なので、刊行のお知らせを見た時は、「続きが読めるー!」と、めちゃくちゃ嬉しかった♪
青吾が仕事を終えて家に帰ると、帰宅しているはずの恋人・多実がいない。
翌日以降も多実は帰らず、焦りを募らせる青吾の元に、「多実が見知らぬ男性と海難事故に遭い、行方不明になった」というしらせが届く。
前作も衝撃的なあらすじだったけれど、今作もなかなか衝撃的なあらすじですね( °_° )
一穂さんの心理描写が巧みすぎて、ずーっと胸が詰まりそうだった。
相手との関係性や経緯の相違などはあるのですが、実は私にも似たような経験があり、読みながらその時の心境を思い出した。
私の場合は75%の方でしたが。
当事者なのに書類上の家族ではないことで、事故について重要な部分には関与させてもらえず、疎外感を感じる青吾。
書類上の家族である康二や沙都子との違いが苦しかったし、青吾の心境を思うとやるせなかった。
絶望の中に一筋の光かのように見える出来事があり、そこから様々な謎が解き明かされていく展開に目が離せなかった。
切ない…。とにかく切ない…。
ラストに向かうにつれ涙が溢れたけれど、読後は不思議と心温まる感じがした。
きっと、青吾と沙都子はこれからも力強く生きていくだろうと希望がもてたから。
青吾と多実の間に大きな愛を感じられたから。
そして、余韻がすごい。
あの時の彼女の言葉の意味とか、あの時の彼の行動についてとか、彼らのことをひたすら考え続けてしまった。
みんないつかは経験する大切な人との別れ。
それに直面した時、後悔がない人なんて、きっといない。
大なり小なり後悔を抱えながら、こんな現実は受け入れられない、耐えられないと思いながら、人生を歩いていかなくてはならない。
その時、自分の心を支え、生きていく力をくれるのは思い出なのかもしれない。
✎︎____________
お客さんが小銭探して手間取ってたりしたら、普段は何とも思わないのに、やけにいらいらする日があって、そういう時は、自分のメンタルが落ちてるんだなって自覚するし、逆に、ちょっとした「ありがとう」ですごくやる気が出る日は、あ、ごきげんじゃん、って思う。快不快とか体調って、案外自分ではわかってなかったりするのかもね。(p.6)
「自分」を決めるのって、自分じゃないんだなって思わない?誰かと接した瞬間の境界線がそのまま輪郭になるんだと思う。島みたいじゃない?
(中略)
そう。潮の満ち引きや天気によって海岸線は全然違うでしょ。それで、ほとんどは海の中。外から見えてる姿なんてほんの一部だけ。(p.6)
大丈夫って、この上なく漠然とした言葉だと思った。気遣いっぽく聞こえるだけで、中身は空っぽだ。(p.28)
なぜ自分が何の疑いもなく「あした」など信じているのか、不意にわからなくなった。眠るために目を閉じ、朝が来たら何事もなく目を開ける保証なんて、誰にも与えられていないのに。(p.32)
希望とは不穏なものだと初めて知った。でも、諦めという平穏には至りたくない。(pp.33~34)
頭はちっとも回っていないのに、刻み込まれた日常の習慣が青吾を動かしてくれている。生活とは、何と強固な生命維持装置だろう。(p.43)
しみじみ振り返るほどでもなかったはずのささやかなやり取りは日常が壊れてしまってから光り輝いて見えるし、後悔はいっそう苦い。(p.103)
簡単とちゃうんや、と思い知った。当たり前に傍にいた人間を喪って、生きていくのは。多実がいなくなっても仕事に支障は出ないし、電車のダイヤも乱れないし、コンビニも閉まらない。でもやっぱり青吾の世界は一変して、慣れるというより心を麻痺させる時間を引き延ばしていくしかない。これからずっとそれが続くのかと想像するだけで絶望的な気分だった。死にたい、じゃなく、消えたい、と願った。骨の一片も残さず、この世に存在した事実ごと消滅してしまいたい。(p.107)
『いたこと』って、みんな、どうやって信じてるんでしょうか(p.119)
わたしがあの人を好きだったようには、あの人はわたしを好きじゃなかったのかもしれない。夫がいない日々が増えていくことは徐々に酸素が薄くなっていくみたいに苦しくて、夫と多実さんのことは、皮一枚の下に埋まった抜けないとげみたいに苦しい。しかもどっちも、回復の手段は時間の流れしかなさそうだなんて(pp.137~138)
死んだから会えないのと、生きているのに会えないことはどちらがつらいのだろう(p.160)
傍にいて当たり前の人間を失った後も生活は続くけれど、ふとしたきっかけで悲しみはたやすく日常の堤防を越水してきて、そのたび自分がぎりぎりの状態だということに気づかされる。これをあと何度繰り返せば楽になれるのだろう。(p.240)
過去はいつも後悔を伴う。(p.240)
「泣いててもお腹は空くし、ときめいててもトイレに行きたくなることはあるし⋯⋯身体ってかっこ悪いですね。頭で思い描く、都合のいいきれいさなんか簡単に吹っ飛ばされて」(中略)「それも生きてるからこその醍醐味だって、そのうちに思えるんでしょうか」(p.241)
答えが出ないままたくさんの可能性を考え続けることが苦しい(pp.249~250)
人生は手が届かなくなってからしか答え合わせができない。(p.277)
人間って、情報に飢えるんですよね。こんな狭い島だと、隣近所のきのうの晩のおかずまでエサになる。都会の人が無関心なのって、いちいち首を突っ込まなくても情報のほうから押し寄せてくるせい。(p.282)