【感想・ネタバレ】13月のカレンダーのレビュー

あらすじ

勤めていたバイオ企業を辞職した侑平は、父方の祖父母がかつて住んでいた愛媛県松山市の空き家を訪れていた。両親が離婚し、祖父母が亡くなって以来疎遠だった父から連絡があり実家を売ると言う。身勝手な父に反発を覚えたが、15年ぶりにその家に足を踏み入れた侑平は、祖父の書斎の机に積み上げてあった書類の中から、十三月まである不思議なカレンダーと脳腫瘍で余命いくばくもない祖母の病状を綴った大学ノートを見つける。その中に「寿賀子、『十三月はあったのよ』という」と書かれた一文が。祖母を知る関係者と接するうちに、導かれるように広島の地へと辿り着き、自らのルーツを知ることになり・・・・・・。
太平洋戦争終結から80年。愚かな戦争の記憶を継承する、至高の大河小説。

【著者略歴】
宇佐美まこと(うさみ・まこと)
一九五七年、愛媛県生まれ。二〇〇六年「るんびにの子供」で第一回『幽』怪談文学賞〈短編部門〉大賞を受賞。一七年『愚者の毒』で第七〇回日本推理作家協会賞
〈長編及び連作短編集部門〉を受賞。二〇年『展望塔のラプンツェル』で第三三回山本周五郎賞候補、同年『ボニン浄土』で第二三回、二四年『誰かがジョーカーをひく』で第二七回大藪春彦賞候補に。他の著書に『熟れた月』『骨を弔う』『羊は安らかに草を食み』『夢伝い』『月の光の届く距離』『その時鐘は鳴り響く』『謎は花に埋もれて』など。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

「戦争も原爆もいずれ遠くなっていって、やがて消えてしまうのを、じっと身を縮めて待っているんだ」

宇佐美まことさんは凄惨すぎる原爆投下直後の広島の描写と奇跡のような物語によって、上のような姿勢に強烈に否を表明していると感じました

その想いが、この一冊に濃縮されていました
濃縮果汁100%です松山だけに(今そういうのいらんねん)

目を背けずに語り継ぐこと、それこそが世界に二度と原爆の被害を起こさせないことに繋がっているのではないでしょうか

だって忘れてしまったら、なかったことにしてしまったら、きっとまた人類は平気で同じことを繰り返すと思えるから

本当は忘れてしまいたいこと、思い出したくないことを懸命に語る人たちがいたからこそ、今、世界の指導者たち、あるいは独裁者たちが、ボタンを押すことを躊躇している
そう信じようじゃないですか

そしてそれこそが日本という国に生まれたものの大切な使命なんじゃないかな
語り継ぐひとりになれたことを誇り思おう

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2025年09月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

原爆投下直後の広島の描写があまりにリアルで胸に迫った。わずかな違いが生死を分ける残酷さや、助かったのにデマで差別され続ける被爆者の苦しみには心が痛む。重いテーマなのに文章はすっと読めて、最後は強く心を動かされた。侑平が祖母の「抱えてきた物語」をしっかり受け取れたことも良かった。戦後80年の今年、この本に出会えてよかった。

1
2025年09月07日

Posted by ブクログ

原爆被害の記憶和田しっかり今に位置づけるとともに骨太の再生の物語に仕上げた作品だ。読後感も素晴らしい。しっかりと自分と家族と戦争に向き合った主人公の格闘に○。

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2025年11月29日

Posted by ブクログ

妄想の中でも「人の生き死にに関わることは」
変えられなかったのに…

生きていれば奇跡は起こるのかもしれない!
今、生きている
それは、奇跡の繋がりだった

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2025年11月23日

Posted by ブクログ

修学旅行で広島に行き、リニューアル前の原爆資料館を訪れて、しばらく怖くて寝付けない夜が続いたことを思い出した。
戦争や原爆についてはなんとなく知っていたけど、それが現実に自分の国で起こったことなんだと実感してのは、多分あれが初めてのことだったはず。
語り部の方のお話を今でもしっかりと覚えている。

主人公の侑平は祖父の家じまいを託されたことをきっかけに、祖母が広島出身であることを知る。自分のルーツを遡っていく中で、リアルな戦争体験を知ることに。
これからどんどん難しくなっていくだろうけど、体験談を聞くことは大切なことだとつくづく思う。
日本被団協団体理事の松浦さんの言葉「被爆者の語り部活動に匹敵するほどの小説です」の通り、こうやって小説を通じて知ることも大事だなと。
8月にたくさんのフォロワーさんが戦争関係のものを読まれている中、つい避けていたことを反省。

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2025年11月04日

Posted by ブクログ

宇佐美まことさんは、本当に素晴らしいストーリーテラーだな、とつくづく思います。映画を一本観終わったようなそんな感覚にさせてくれます。
両親の離婚後、会わなくなった祖父母。仕事がうまくいかず退職したばかりの29歳の侑平は、今は亡き祖父母の家を処分する前に見ておこうと松山へ赴く。
その家で見たのは、祖父が祖母を看病していた時の日記と13月まであるカレンダー。自分のルーツを探っていくうちに、広島の原爆投下の日に導かれていく侑平。
8月6日にどんなことがあったのか、目を背けたくなるような描写が続きます。そして、それから何年も経っても被爆者は差別の目で見られていたこと。同じ日本人でありながら。家族であったとしても。
私自身、高校の修学旅行が広島だったのですが、班ごとに現地で調べるテーマに原爆のことを選んだ班は一つもありませんでした。でも語り部の方の話を聞く時間もあり、その話を聞いた後、感想を聞かれたクラスメイトの「なぜ原爆のことを調べようと思わなかったのか‥‥」という後悔の言葉が忘れられませんでした。
現地に行く、当事者から話を聞くということはとても大切なことですね。教科書だけでは分からない温度が感じられます。
そして、自分のルーツに関わる祖父母や両親の話もたくさん聞いておくべきだな、とも思った一冊でした。



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2025年11月03日

Posted by ブクログ

侑平は15年ぶりに訪れた愛媛県松山市の祖父母の家で、祖母の闘病生活を綴ったノートと13月まであるカレンダーを見つけた。祖母が広島出身であったことを知り自分のルーツを辿っていく。

原爆を投下された時の広島とそこにいた人々がものすごくリアルに描かれていて読んでいて辛くなった。原爆の後遺症だけでなく、世代を超えて偏見と差別に苦しめられるていることにも。

祖父の祖母を想う気持ちと寿賀子の兄の優しさが13月のカレンダーという奇跡を生んだ。
「13月はあったのよ」
「きっと奇跡が起こるよ」
侑平の再生の物語でもあったと思う。

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2025年10月30日

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当たり前の日々を突然壊す戦争。不条理な差別と次世代にも渡る偏見と苦悩。閉ざすのではなく、対話をしなければ、前には進めない。

文体なのか流れなのか、この著者の作品は本当に読みやすい。簡単という意味ではなく、抵抗なく風のように頭に入ってくる感じ。心地よい読書時間になった。

ただ、不完全燃焼な箇所があってモヤモヤ。あの口癖はなんだったのか。それも含めてのキセキ?
カレンダー…経緯は分かる。キセキとしてあの日を示すには長い気もする。私の解釈がまだまだ未熟なのだろう。また読みたい。

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2025年10月19日

Posted by ブクログ

/_/ 感想 _/_/_/_/_/_/ 
『13月のカレンダー』を読み終えて、本当に素敵な終わり方だと感じました。
途中までは「このまま悲しいお話で終わってしまうのかな」と思っていたのですが、最後がとても穏やかで、希望のある締めくくりだったので、読後はあたたかい気持ちになりました。

中盤からは被爆の体験が非常にリアルに描かれていて、読んでいて胸が詰まるようでした。

今の時代は、当時の写真や記録をすぐに見ることができるので、それらを確認しながら読み、物語の重さがより深く感じられました。

コロナ禍のときにも、人を避けるような空気があったと思います。「自分さえ良ければ」という風潮を思い出し、被爆者の方々が受けてきた差別や偏見の痛みを、想像することができました。そうした人間の恐れや弱さを描きつつも、それを乗り越えて生きてきた人々の強さに、心から感動しました。

被爆の犠牲は広く深く、その家族は長い年月をかけて向き合い続けなければなりません。けれど、全てを「そのせい」にしていては前へ進めないというメッセージに、強く胸を打たれました。

「曲がった指」という描写を読んだとき、最近亡くなった叔母を思い出し、とても悲しい気持ちになりました。人の死の悲しさと同時に、そこに宿る優しさや命のつながりの尊さを改めて感じました。

とても悲しいお話でありながら、読み終えると不思議と“生きる力”をもらったように思います。

今の自分がどれほど幸せな時代と場所に生きているかを実感し、そして「誰かのために少しでも役に立ちたい」という気持ちが、さらに湧き上がりました。


/_/ あらすじ _/_/_/_/_/
物語は、大きな失敗をして落ち込んでいた侑平が、祖父母の家を訪ねるところから始まります。

そこで出会う人々との関わりや、過去に起きた出来事を通して、被爆の記憶や家族の歴史、そして隠されていた真実が少しずつ明らかになっていきます。

過去と現在が交錯するなかで、「生きるとは何か」「人はどう希望を見出すのか」を静かに問いかける物語です。

悲しみの中にも、確かに光が感じられるような一冊でした。


/_/ 主な登場人物 _/_/_/ 
#過去の回想
服部義夫 広島で被爆

新川喜代 被爆
新川三千代 喜代母

佐伯通孝 義夫友人、寿賀子兄
佐伯寿賀子 喜代友達、通孝妹

#今
上野侑平 29歳、親が離婚、母方の性
窪田和成 侑平祖父
窪田寿賀子 優しい、寅年
窪田一郎 侑平父、一人っ子、離婚

石丸奈穂美 研究室同僚

佐野美登利 隣のおばさん、よくしゃべる
佐野欣也 きんや、隣のおじさん、釣りが趣味

服部臣吾 義夫息子
森元喜代 新川喜代、生きていた
剛 喜代息子
美保 喜代娘

神崎 侑平母の再婚相手
神崎響子 侑平母

#夏井印刷所
富三郎
織江 富三郎妻
琢磨 富三郎息子、一郎同級生

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2025年10月18日

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私は広島在住なので原爆は学校などで学習し、知っているつもりだったが。
現代に生きる侑平と、祖母。祖母の友達の喜代。主にこの3人の過去と現在が交互に語られる。その中には日本人の差別意識も盛り込んでいる。今が本当に平和な世の中と言えるのか、この先10年がどうなるのか、とも考えさせられた。

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2025年10月16日

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心に深い傷を抱えている侑平は、両親の離婚後に疎遠になっていた父親から松山にある父方の空き家になっている実家を譲ると言われる。失業中で身軽だった侑平は、父親の実家へ行き、亡くなった祖父の机から13月があるカレンダーを見つける。なぜ13月があるのか、気になった侑平は亡くなった祖父母の軌跡を辿っていく。

8月6日生まれの私は、幼い頃から同居していた祖父母に誕生日の度に、広島の原爆について、戦争の実体験について聞かされてきた。でも、生まれも育ちも関東圏。原爆についての恐ろしさは戦争体験者の祖父母でさえもあまりよくわかっていないようだった。

なんの罪もない、ただ平穏な暮らしをしていただけの人々が一瞬にして地獄に突き落とされ、生き残った人たちも被爆者だと差別され、その子どもたちも被爆2世だといじめられる。世の中はなんて不公平なんだろうとつくづく思った。

義夫や喜代の被曝体験を聞き、何気ない日常の積み重ねが平和だと感じた侑平。自分の過去の過ちを見つめ直し一歩前に進む姿は頼もしくあった。

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2025年10月10日

Posted by ブクログ

戦争の語り部のような良書。寿賀子と通孝の宇品港での別れ、差別や偏見で苦しみ続けた喜代…まるで戦時中にタイムスリップしたかのような、繊細でリアルな描写に悶え、落涙。戦争に対する怒りも沸き上がってくる。平和の尊さ、重さを感じられる貴重な一冊。

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2025年09月28日

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多くの方に読んでほしい作品です。
いまだに被爆認定されず苦しい思いをされている方もいます。80歳を優に超えてからやっと国が認定した方もいます。体の不調や周りからの差別で、どんなに辛い思いで生きてこられたか。

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2025年09月27日

Posted by ブクログ

大学で研究に励んでいた侑平は一瞬、魔が差したことがきっかけで研究室を去ることになり、その後に勤めたバイオ企業も辞職した。両親の離婚後、父とは疎遠になっていたが広島にある祖父母の家を売ることになったと連絡あり幼い頃に何度か訪れたことのある家に行ってみたことから自分のルーツを知ることになる。時代は第二次世界大戦、原子爆弾が広島に投下された頃。その残酷な描写は肌で感じれるほどだった。ラストに残されていた奇跡に感動!これからの侑平の生き方に期待している。

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2025年09月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

これ、八月に読むべきお話だった。
伝えていかなくてはいけないこと。

戦後80年目に当たる今年、特集番組が組まれ、太平洋戦争や原爆がテーマのドラマやアニメも新旧合わせて放送されたた。
そういう番組は何度も放送してほしいし、小説という、感情移入しやすい形で、誰もがいつでも手に取ることのできるこの本は、みんなに読んでほしいと思う。

上野侑平(うえの ゆうへい)は、疎遠になっていた父から突然の電話を受ける。
松山にある、今は住む人のない自分の実家を侑平にやる、と言うのだ。いらないと突っぱねると、では取り壊すと言う。
中三の時に両親が離婚して、侑平は母と二人で暮らすことになった。
父の実家の松山の家は、小さい頃は毎年夏休みに過ごしたところだった。
会社を辞めて暇のある侑平は、取り壊す前にと祖父母の家を訪ねる。
そこには、侑平が知らない、祖母の闘病を綴った祖父の日記があり、十三月まである、不思議なカレンダーも発見した。
そこに書かれた謎を解き明かすことが、侑平のルーツをたどる旅となった。

原爆の直接の被害の痛ましさもさることながら、被爆者に対する偏見と差別はひどすぎる。
それでも、死ぬ時までは生きていかなければならない、という被爆者たちの人生の頑張りには、尊敬と共に言葉を失う。
「被害者に対する差別」という風潮は現在でも無くなっていない。
主人公、上野侑平の父は、犯罪を犯したわけでもないのに、逃げ続けていた人生だった。
風評被害を信じ、家族の言葉を疑った己の性格も悪いと思うが、なんとも気の毒な人である。
自分で自分のルーツに偏見を持ち、差別してしまったわけである。
服部義夫さんや森元喜代さんの話は、父が自分で聞くべきだったのだと侑平は思ったが、この後、父・一郎の心が変わる日は来るのだろうか。

科学者を目指していた主人公の侑平には、実験のデータをまとめる過程で、間違いを犯してしまうという過去があった。
作品の中ではその関連性を匂わせることさえしていないけれど、原爆もまた、科学が犯した過ちだったのではないかと私は思う。
科学は、人類の幸せのためだけに使われてほしいと切に願います。

辛いことばかりの現実の中にポッとあかりが灯るような、奇跡がありました。
自分の好きなことを純粋に探究したいと言う人たちの、まっすぐな気持ちも温かかった。

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2025年09月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本屋さんでタイトルに惹かれて、今年の夏だからこそ読んでおかないといけないような気がして買った2冊のうちのもう一冊がこの本。終戦80年。恥ずかしながら原爆についてのメディアは小学生の頃に観た「はだしのゲン」くらいです。つまり文字で原爆についての描写を読んだのは初めてでした。同じ原爆投下後のシーンのはずなのに、服部義夫のセクションよりも、喜代のセクションの描写の方がより生々しくよりキツく感じました。実際のところより生々しくキツい描写に手法的にしていたのか、それとも対象が7才の女の子だからよりキツく感じてしまったのかわからないが、おそらく後者だと思う。とにかく読み進めるのが辛くなるくらい生々しく可哀想でした。この小説は、青年侑平の一夏の体験記で終わるのかなぁと思いきや、侑平自体が抱えている切実な悩みや後悔している過ちなども丁寧に描かれており、読み応えがあり感情が忙し過ぎました。忙しい感情の極め付けが最終章!なんとファンタジーなエンディング!いやファンタジーと言うと寿賀子に失礼になりますね?寿賀子にとってはファンタジー(幻想)ではなく現実の出来事だった。しかもその事を琵琶湖湖畔で隣同士でいま座っている侑平と奈穂美が証明していると考えると本当に鳥肌もんでした。このラストシーンを朝の満員通勤電車の中で読んでいた、涙は出てくるし鼻水は出てくるし、、。涙拭いてたの、鼻をやたらすすってたの周りにバレてたやろうなぁ。
この夏にこの本に出会えて良かった。

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2025年09月09日

Posted by ブクログ

祖父が、祖母の寿命を少しでも伸ばしてあげたいという思いから作ってもらった、13月のカレンダー。それを見つけた孫の侑平は、長年不義理をしていた祖父母の過去を知ろうとします。事情を抱えた彼が、祖父母への思いと過去の自分に突き動かされて、行動します。

病床の祖母が会えて嬉しかったという二人の人物も体験した、8月6日。広島の原爆の瞬間とその後の有り様が詳しく書かれていました。その惨状は想像を絶するものでした。7歳と14歳の子どもが経験したことだと思うと、いたたまれませんでした。そして、ちょっとしたことが生死をわけたことに、怖さを感じました。

「ヒバクシャ」と言われ偏見を受けることに、隠れるのではなく怒っていい、声をあげていいと言う言葉に重みを感じました。

侑平がたどった自分のルーツ。知り得たことでこれからの生き方に大きな影響を与え、人としての芯ができたように思いました。

13月のカレンダーは、確かにありました。生きることは毎日の選択の積み重ね。そして、全てが奇跡なのかもしれません。大切に日々を過ごしていきたいと思いました。


〈目次〉
第一章 ヒナギク
第二章 瀬戸内海
第三章 閃光
第四章 折り鶴
第五章 奇跡






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2025年09月05日

Posted by ブクログ

侑平は、研究者として尊敬する教授の下で働いていたが、研究データを捏造するという不正のために辞して違う会社に勤めていた。
だが人との交わりを避けているうちに誰ひとりとして親しくする者もなく、毎日鬱々とした生活に嫌気がさしてその仕事も辞めていた。

ある日、両親の離婚以来、疎遠だった父から父方の亡き祖父母の空き家相続を持ちかけられ、子ども時代の夏休みに遊び行っていたことを思い出し、15年ぶりに四国・松山に向かった。

そこで祖父の書斎にあった書類の中から13月まであるカレンダーと脳腫瘍を患った祖母の病状を記したノートを見つける。

侑平は、祖母が広島出身だったことやその兄が原爆で亡くなっていたことを近所の人から聞き、何も知らなかった、知ろうともしなかったことで、今になりもっと深く知りたいと思い行動する。

父が家族に対して深く関わろうとしなかった理由もわかった。
そして侑平自身のなかでも、いろんな人と話をするうちに変化していったように思う。


広島の原爆投下後の生き残った人も想像を絶する惨禍を経験したということが、頭ではわかっていても実際それが祖母に近しい人からの言葉で聞くとやりきれない気持ちだろう。
そして祖母もまた苦しんできたということを知ると生きている間に話を聞きたかったと思ったかもしれない。
生き残った者の罪悪感という、サバイバーズギルトにというのも初めて知った。

知らなかったことは無かったことではない。
知ってこれからどうするのかが大切だと感じた。




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2025年09月04日

Posted by ブクログ

怪しげなタイトルだが、宇佐美さんにしては珍しくほぼ直球勝負の小説だった。
訳あって大学院を辞め、その後勤務した企業も辞めた侑平は、松山にある今は亡き祖父母の家を訪れる。きっかけは、離婚後疎遠となっていた父からの電話だった。
書斎に残されていた祖父のノートには祖母の病状が記されており、2008年のカレンダーにはあるはずのない「13月」が印刷されていた。
要約してしまえば、ここから侑平が祖母の過去を調べるだけの話なのだが、その内容が衝撃的過ぎて言葉が出ない。過去を知った侑平が生き直そうと決意する姿も好印象だった。
戦後80年となる今年、この本に出会えたことに感謝したい。

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2025年09月02日

Posted by ブクログ

題名からは全く想像がつかない内容だった。広島に原爆が落ちたあの日、街の人たちがどんな目にあったのか、そんな本を沢山読んできた。
ここに出てくる人々は、みんな優しくまともな人過ぎる。そんなわけあるかい!と思いながらも、心地よかった。

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2025年12月06日

Posted by ブクログ

 皆さんが読んでいたこの作品、やっとレビュー投稿できます。一言で言うのであれば、読んでよかった!です。読むべき作品でした。

 主人公は勤めていたバイオ企業を辞職した侑平、父方の祖父母が亡くなりその実家を売却すると父からの連絡を受けて、愛媛県松山市にある空き家を訪れていた。そこで見つけた13月まであるカレンダー、祖父が祖母の病状を綴ったノートには、祖母の寿賀子が「13月はあったのよ」と遺していた…。生前の祖母のことを関係者に訪ね歩く内に、祖母の兄は原爆の犠牲になっていたことを知り…。

 1945年8月6日広島に原子爆弾が投下され、多くの方が犠牲になりました。生き残った方も被爆者であることで偏見の目に晒され、差別されてきました。本当に理不尽でやり場のない気持ちになりましたが、小説として読んだのは初めてだったかもしれません…。

 13月までのカレンダーは祖父の祖母への愛の形、そして周りの人を幸せにするものでした。

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2025年11月11日

Posted by ブクログ

研究者としての道でなにかあって仕事をやめたらしい侑平は両親の離婚で疎遠になったが大好きだった祖父母の家に行くことになった。祖父母は他界しており、自分の仕事での過ちと、祖父母への疎遠になってしまったことへの後悔が混ざるように祖父母のルーツを探していく。そして知る、個人として見た、被曝した経験の悲惨さ。人生への影響。祖父母と関わりのある人たちの話を聞いた侑平は、自らの悔恨を見つめ直す。そして、奇蹟が起こる。
丹念に綴られる戦争の悲惨さが共感を持って感じられ、また、被害者であるのに、悪者のような扱いを受けるという継続的な二次被害の辛さも伝わってきた。タイトルにもなっている13月に起こった奇蹟がいまいち心に沁みなかったのが(個人的な感想です)残念だったけど、とても良い読書でした。
小学生でも大丈夫な内容ではありますが、人間関係の機微がちょっと経験必要かと思いました。高校以上くらいからが向いていると思います。

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2025年10月21日

Posted by ブクログ

戦争を経験した祖母の悲しい記憶を辿る中で、最終的には祖母がタイムリープした結果、別の少年の命を助けていたという奇跡を主人公が知る。
悲しい話の中に救いがある。ファンタジー要素も少し。
戦争当時の状況も知る事ができた。

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2025年10月20日

Posted by ブクログ

両親が離婚後、疎遠になった父から他界した祖父母の実家を譲ることを告げられ、久しぶりに松山市を訪れた元研究職の侑平が、祖父の書き残したメモなどを手掛かりに原爆にあった人、その家族の思いに触れながら自分を取り戻していくお話。原爆投下後の広島の描写はこれまで他の多くの書籍で何度も読んでいるが、やはり辛い。そして辛い目にあったにもかかわらず差別や偏見で隠さざるを得なかった人は物凄くたくさんいらっしゃるだろう。小説の中で語り継いで同じ過ちを繰り返さないようにしたい。

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2025年10月15日

Posted by ブクログ

視点が変わり当事者だけでなく世代や場所を超えて様々な立場の人の角度から原爆を語っていくため、原爆の影響力を改めて感じる話だった。

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2025年10月15日

Posted by ブクログ

原爆投下とその後一生続く苦悩を文字にすると胸が締め付けられ、苦しくなってきます。でも、目をそむけず語り継がなくてはならないですね。
そして、今も続いている多くの人を犠牲にしている戦争。一刻も速く終わらせるべきですね!
いろいろなことを考えさせられました。

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2025年09月19日

Posted by ブクログ

私も長崎に住んでいるので小学生から高校までは毎年8月9日に平和教育を受けてきました
でも、そんな私さえも想像を超える様な体験をしてきた人達がたくさんいるということを今更ながら思い知らされた気がします
この体験はこれからもたくさんの人に語り継がなくてはなりません人類が同じ間違いを二度と起こさないために

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2025年09月14日

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仕事を辞めてしまった僕は、死んだ祖父母が遺した松山の家を見に来た。残されたのは13月まであるカレンダー。過去を調べてみると。

戦争体験を描く真面目な作品。広島にいた人達がどんな目に会ったのか、読ませる。

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2025年09月05日

Posted by ブクログ

 今さらながら差別について考えさせられました。差別とは、絶対あってはならないもの。そんなことは誰もが自分の中の常識にきっとあると思う。でも、最近だったらコロナの時どうでしたか?今ではコロナに罹った人を偏見の目で見ることはないと思いますが、令和2年の頃だったらどうだろう?令和元年だったら?きっと自分が罹ったとしたら人に言えなかったんじゃないでしょうか?
 それが原爆だとしたら。

 この物語は原爆の被爆者がいつまでも抱えている問題を浮き彫りにしています。そもそも差別って、差別される側は何も悪くないことがほとんどだと思います。例えば肌の色であったり、貧困であったり、差別されるべきではないのに差別される要素はたくさんあります。でも、それは自分ではどうにもできないこと。差別される側は『気にしない』『負けずに強く生きる』であったり、なぜ普通に生きることができないのでしょう?

 被爆者は、近寄ったらうつると言われたり、子どもも障害を持って生まれてくるんじゃないかと不安になったり、いつまでも苦しむことになります。

 この物語の主人公の侑平は、父親から実家を処分するから相続を持ち掛けられ、疎遠だった亡き祖父母が暮らす松山まで足を運んだ。祖父母の家で見つけた13月まであるカレンダー。その謎を突き止めるべく祖父母のことを知る人たちに会って色々な話を聞く。
 これまで父親の態度を不審に思っていた侑平だが、色々な人たちからの話を聞くうちに合点がいくことになる。

 読むのが本当に本当にきつかった。でも、ラストにはとびきりのプレゼントがあります。亡くなる前に祖母が言っていた『奇跡』とは。

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2025年12月05日

Posted by ブクログ

「原子爆弾が投下されて、十四万人もの命が失われた」という数字では到底表せない、一人一人の物語に想いを馳せる。
それぞれに名前があり、それぞれが悲惨な最期を迎えた事実に胸が締め付けられる。
私の祖母も被爆2日目に広島市内に姉妹を探しに行った“入市被爆者“だったけど、生きている間に原爆の話を聞くことはついぞなかった。

被爆者への差別や無理解は凄まじく、人間の弱さ、醜さを思い知る術となる。

テーマは重く、原爆の悲惨さを知ることのなかった人が読む分には良作なんだろうけど、13月にまつわるファンタジー要素や最後の奇跡的な部分が私にはちょっとはまらなかったのが残念。

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2025年11月01日

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