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Posted by ブクログ
こんなにも心温まる物語があっただろうか。
一生心に残しておきたい言葉もたくさん書かれてあって、私にとってとても大切な一冊になった。
刑事の妻として心の底から支えていく、覚悟をもった女性がとてつもなくかっこよく、こんな人間になりたいと思う。
人生、自分が得ることばかりを考えてはいけない。
損得を考えず与えられる人間になりたいと思えた。
◾️心に残った文章
あるときを境に人生とは目的を持って手に入れたものを一つずつ手放してゆかねばならない旅路となる。
それは遍路に通ずる苦行である。
自分のものであると信じて疑わなかったものを一つ一つ失いゆく。
望むと望まざるとに関わらず、その荷を背から下ろして旅路は終わりへと近づいていく。
最後には唯一無二の自分の命すら手放して一生を終える。
ずっと晴れとっても人生はようないんよ。
日照りが続いたら干ばつになるし、雨が続いたら洪水になる。
晴れの日と雨の日がおんなじくらいがちょうど良い。、
すべての人間が本人の意思とは関係なくこの世に生み落とされる。
望まれて生まれてくる命とそうでない命。
だが命の重さは変わらない。
どの命もこの世に生まれたことを祝福されるべきだ。
祝福される人間はひとりでも多い方がいい。
その人間が自分とは赤の他人の刑事であっても。
Posted by ブクログ
定年退職した刑事が、ある想いから四国の霊場巡りをすることになったが、妻も一緒に付いて行くことになった。旅先で知った少女誘拐事件から、更に深い苦悩の旅になって行く。後輩の若手に事件の経過を依頼することで、更に苦悩の旅になって行く。16年前の事件に酷似しているのが原因のようだが、明かされるのが後半ということで、ここまでモヤモヤが続いてしまう。
また、もう一つの秘密が徐々に明かされていく。娘と交際する後輩の刑事を認めたく無い主人公。大切な娘の出生にもドラマがあった。
霊場巡りも後半に入り、出会った人々から事件のヒントを貰い、解決への道すじが見えてきた頃から展開が急ピッチに進んでくる。
最近の事件は解決したが、16年前の事件は、、、?
主人公の将来に暗い影を落としながら、最期は優しい慈雨で余韻を持ちつつ終わってしまった。
Posted by ブクログ
「あの事件は、本当に冤罪ではなかったのか」——。退職後もお遍路の旅でさえ消えない神場の苦悩が、新たな事件の発生によって再び加速します。
物語の軸となるのは、巡礼の地から指示を出す神場と、現場を走る若き刑事・緒方の師弟関係です。娘の恋人でもある緒方にとって、神場の言葉は一人の男としての「品格」に満ちており、その背中を追う姿には深い人間ドラマが宿っています。
真実が明らかになれば警察の闇を暴くことになりかねないという極限状態。その中で、神場、緒方、鷲尾の三人が見せる信頼関係、そして彼らを支える家族の描写が、このミステリーをより気高いものに昇華させています。
神場の父としての言葉に激しく感情移入し、気づけば涙が溢れていました。緻密な構成と凄まじい筆力で描かれた、魂を揺さぶる名作です。
Posted by ブクログ
裕月裕子さん著「慈雨」
自分にとって約一年振りに読む著者の作品。積読本だらけの本棚の中から長年眠っていた本作にようやく手を伸ばした。
物語は刑事物のミステリーであるのだが、それ以上にヒューマンドラマの要素が重厚な物語だった。
主人公神場の愚直な刑事らしさと人間臭さとが混在して描かれている。
特に妻の香代子、娘の幸知との神場の家族愛の物語展開がお見事。素晴らしかった。
神場が退職してお遍路巡礼していく最中という背景も素晴らしかった。
16年前に起きた事件に対しての後悔からきている物なのは最初から解っていたが、結願に向けて妻に対しても娘に対しても神場の本心が読み取れていく。
事件と共に本心を妻に吐露した後に最期の結願寺の道中で降りだした「慈雨」。
慰めのようでも、赦しのようでも、励ましのようでもあるその雨は二人を優しく包んで背負ってきた重責を洗い流してくれているように感じてしまった。
まるでこの巡礼の旅が二人の結婚人生を喩えているようであり、更に結願した先に見える二人の未来も読み取れていく。その祝福の「慈雨」。本当に素晴らしかった。
柚木裕子作品、ここ近年の物はあまり読んでいない。今後は「逃亡者は北に向かう」「教誨」「風に立つ」等を読んでいきたい。
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