あらすじ
雪子と対照的に末娘の妙子は自由奔放な性格で、男との恋愛事件が絶えず、それを処理するためにも幸子夫婦は飛びまわらざるをえない。そんな中で一家は大水害にみまわれ、姉の鶴子一家は東京に転任になる。時代はシナでの戦争が日ましに拡大していき、生活はしだいに窮屈になっていくが、そうした世間の喧噪をよそに、姉妹たちは花見、螢狩り、月見などの伝統的行事を楽しんでいる。
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板倉と災害
この巻は、板倉で始まって板倉で終るので、末っ子の妙子の動向に終始してゐた。またある面では災害の巻として、言葉たくみに水害、風害、病気を読まされて圧倒された。
西洋に人気があるのもわかる気がする。ある時期の人間といふのが、切り出して拡大してみれば誠に波瀾に富んでゐるのは、SFやミステリなどの大仕掛けを加へなくても面白い物語になることの証左であり、勇気づけられた。
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上巻は雪子の見合い話が中心であったが、本巻では妙子周りの人間関係であった。カバー裏に、雪子の縁談を早く取りまとめねば、というような言葉があったので、焦燥感に駆られた蒔岡家の奔走が描かれると思いきや、そちらはほとんど進展せず肩透かしをくらった。ただ、妙子と雪子の利害上の対立が浮き彫りになった。当人たちは仲睦まじく接しており感情的な対立は見られないが、板倉の死により一つ悩みの種は消えたものの、利害上の対立は根本的には解決していない。この危うさを下巻でどう着地させるのか楽しみである。
中巻を読み終えて改めて思うのは、この小説は幸子の心の動きにこそ真髄がある。雪子や妙子は物語の中心でありながら、常に我々は幸子の眼を通して細雪の世界を見ている。上巻から変わらず、幸子の苦労は絶えない。自身の流産から完全に立ち直れない中、二人の妹と本家の意向をまとめるのにまさに東奔西走する、その細やかな気遣いに心打たれる。幸子の心理描写は精緻かつ著者の愛情に満ちているようにも感じる。幸子の幸せを切に願う。
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上巻に続き、阪神間とりわけ芦屋の風情ある光景が目に浮かぶ。上巻では雪子がメインに話が展開されていたが、本作では妙子が話の中心となる。
神戸大水害、板倉の病気など鬼気迫る内容も多く、ハラハラしながらあっという間に読み終えた。下巻が楽しみ。
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細雪、全然事件起きないし日常〜って感じだと思ってたんだけど、中巻めっっっちゃ色んな事件起きた。上巻は雪子ちゃんの話だったけど中巻はこいさん中心の話だったな…。水害事件ではこいさんを心配に思って幸子姉ちゃんが泣き出すところでわたしももらい泣き…。そして最後は板倉までも…死ぬとは思わなかった…うそでしょ…。
「予想もしなかった自然的方法で、自分に都合よく解決しそうになったことを思うと、正直のところ、有難い、と云う気持が先に立つのを如何とも制しようがなかった。人の死を希うような心が、自分の胸の奥の何処かに潜んでいると考えることは、不愉快でもあり浅ましくもあるけれども、どうやらそれは事実なのである。」これが真理すぎて刺さった。人間を描いているなぁって感じ。
幸子姉ちゃんの人を一方向からじゃなく多方面から見てる感じがすごく好きだったのと、こいさんと雪子ちゃんの爪切りのシーンが美しかったのと、こいさんの良いように色々してあげてるのに好意を無碍にされてる気がする!って貞之助にぶうたれる幸子姉ちゃんが可愛いかった。その妻の顔を見た貞之助が小さい頃の姉妹喧嘩の時もこんな顔してたんだろうなって想い馳せちゃうの愛すぎるだろ!!この夫婦推せる!!!
こいさん中心だけど幸子姉ちゃんの物語でもあった。いよいよ下巻に進みます。
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上・中・下、三巻本の中巻。
戦争の影の忍び寄る中、四季折々の暮らしを営む姉妹。
大水害に遭うといった苦難もありながら、彼女たちの日々は続いてゆく。
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この本は本当に、登場人物たちが発する上品で小気味良い関西弁の台詞が楽しい
当時の上流階級が贔屓にしていただろう実在の名店が色々登場するのも楽しい
谷崎が描写する食べ物の、なんて美しくて美味しそうなことか、、
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四女の妙子の出番が多い巻でした。
妙子は奥畑という「船場の坊」と駆け落ちしようとしたことがありますが、今度は阪神間に記録的な水害が起こり、川の氾濫で今にも溺れ死にそうなところに駆けつけてくれた、板倉という丁稚上がりの写真家と恋仲になります。
そして妙子は今までやっていた人形作りをやめて、洋裁の道に進み、洋行してあちらで手に職をつけたいと望むようになります。
幸子らは反対して、欧州の動乱により洋行は中止になります。
そして、板倉は耳の病気が元で細菌が体に回り、片脚を切断され、しばらくして亡くなってしまいます。
神戸の鮨屋の「与兵」に幸子、夫の貞之助、雪子、妙子で食事にいく場面の新鮮なお鮨のネタの描写がなんともいえず美味しそうでした。
コロナが収束したら、久しぶりに回る方のお鮨でもいいから食べに行きたいと思いました。
この小説は、こういった上流中流階級の家族のやることの描写を楽しむ小説でもあるのだなと思いました。
今まで読んだ小説の中でも文章の美しさが大変際立っていると思いました。
下巻に続く。
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上巻では旧家の姉妹たちのはんなりとした暮らしぶりが淡々と語られるに終始していたが、中巻になると雪子の縁談の難航や、幸子の身に悲しい出来事が起きたり、妙子が水害に見舞われるなどが語られ、ゆるゆる続くかと思われた物語に起伏が生じる。
これらが蒔岡家の行末の暗さを象徴するように感じられ、上巻から続く季節や姉妹の美しい描写に切なさが帯びてくる。
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鶴子一家は東京へ栄転する、台風大水の被害で建物は被害を受ける、おさく師匠は亡くなる、隣人家族は独逸へ帰る、四季折々と仲の良い姉妹はそのままに、時勢と併せて彼女たちを取り巻く状況は変化していく。
結局、雪子と妙子のお嫁騒動の話題しか書かれてないのだけれど。展開も面白いし、日本の文化情緒と時代性を捉えつつ言葉遣いも巧みで流れるように読める名文。
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細雪を読んでいる間中、ずっと不思議だったのですが、どうして、延々とひとつの家庭の毎日を眺めるだけなのがこんなに面白いのでしょうか。さすが文豪。
上巻のときに、もしや…と思っていたことが本当になりました。4人姉妹(といっても長女はほとんど出てきませんが)の中だったら妙子が結構好きだなーと思ってたのですが、前言撤回です。身内にさえ秘密主義というか、腹黒いというか、どこか信用のおけない感じが苦手です。
逆に、上巻ではなにを考えているのか全然だった雪子が、中巻だと少しだけその心理を吐露してくれて、意外と男前だなという印象に。
妙子は、自称サバサバ系というか、内心がすごくドロドロしているのが苦手なのかもしれません。
そのせいか、上巻よりも雪子のお見合い話に引き込まれ、愛知の田舎でのお見合いは、読んでいて辛かったです。
しかし、小さなアップダウンはあるものの、取り立てて大きなドラマが起こるわけでもないのにこんなに面白いなんて。さすが文豪、さすが谷崎。と何度も唸りました。
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中巻。昭和13年7月3~5日の阪神大水害にはじまる。細かな描写。「海のよう」だったらしい。読むだけで怖い。
その大水害で妙子を助けた板倉と妙子の恋愛の結末。
相変わらずの安定した物語力。
谷崎の描く「蒔岡家」という一家を見つめ続けることで、「家」というものがどのようなものなのか、感じられるような気がする。
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中巻では、隣に住んでいたドイツ人が帰国するなど、戦争の跫音が次第に大きくなってくる。もっとも、蒔岡家は世間に比べればその影響は決して大きくないように見え、それでいて後に崩壊することが予期されるような不思議な穏やかさを纏った生活が描かれている。季節ごとの風流な行事も鮮やかで、起きている事件の哀しさや激しさと不思議な共存を成し遂げている。
そんな中でも一番の事件は四女妙子と写真家板倉の悲恋だろう。板倉は家柄が悪いために、三女幸子は二人の交際を快くは思うことができない。『ロミオとジュリエット』のように(・・・といっても未だに読んだことがないのだけれど)、読者は「身分違いの恋」=応援したくなる存在、と考えがちではないだろうか。
しかし、この小説では幸子視点(彼女の一人称ではない)で語られることも相まって、二人の恋は妙子たちの浅はかな行動として映りやすい。身分の違いは小説内で「人種」という強い言葉で形容されることもある。人種と聞くと、やはり想起するのはアパルトヘイトのような「非道極まる差別行為」だろうか。現に、軽薄で甲斐性なしの幼馴染奥畑ですら、人種が同じだけマシだとまで描かれているのだ。板倉が死にそうなシーンなど、幸子が「板倉には悪いけど、死んだら面倒ごともなくなって助かっちゃうな・・・」という趣旨の独白をしている。
では、この小説は人種差別を糾弾するような社会派オーラを纏っているのかといえばそんなことはない。悲劇の恋は終わるとともにあっさりと他の場面に移ってしまうし、この時代はこういう価値観だったんだよ、という程度の雰囲気しかない(ゴーディマ『ジャンプ』で描かれるアパルトヘイトだって、単純には描かれない)。
みんなで桜を見たことも、蛍狩りを楽しんだことも、お見合いがうまくいかなかったことも、大水害が起きたことも、愛する人が死んでしまったことも、そして忍び寄る戦禍の影でさえも、この物語では平等に過ぎ去ってゆく。
それは、今季を逃し周りが憂慮しているのをどこ吹く風で「ふん」としている雪子のような視点かもしれないし、人の栄枯盛衰をただじっと見守る老樹の視点かもしれない。時代に取り残される人、時代の先を突っ走る人、その狭間に立つ人、何も気にしない人。人によってその人が感じる時の流れは様々であり、その流れに身を任せるのも逆らうのもその人次第。そうした、様々な時の流れが共存することが、この小説が美しい所以なのかもしれないな。
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引き続き面白い〜淡々とした日々なんだけど、普通に続き気になるし、面白いんだよなあ。。下巻もこのまま続けて読んでしまう
社会の情勢はそろりそろりとよくなくなり、隣人のドイツ人一家も引き上げてしまう。上は三女の雪子が中心だったけど、中は四女の妙子へスポットライトが多く当たる。
まさか板倉とああなるとは、大水の際には思いもせなんだでしたが、進んでみればそうなるのも当然のような経緯で、とはいえ板倉が死んでしまうし(驚き!)、これが下巻でどうなっていくのか。。
以下好きだったところ。
…彼女(幸子)と二人の妹達の間柄は、ちょっと普通の姉妹の観念では律し難いものであった。彼女はしばしば、貞之助のことや悦子のことよりも、雪子のことや妙子のことを心に懸けている時間の方が多いのではないかと思って、自ら驚くことがあったが、正直に云って、この二人の妹は彼女に取って、悦子にも劣らぬ可愛い娘であったと同時に、無二の友人でもあったと云えよう。…(p.227)
…或る日、夕方帰宅した彼は、幸子が見えなかったので、捜すつもりで浴室の前の六畳の部屋の襖を開けると、雪子が縁側に立て膝をして、妙子に足の爪を剪って貰っていた。…貞之助は、そこらに散らばっているキラキラ光る爪の屑を、妙子がスカートの膝をつきながら一つ一つ掌の中に拾い集めている有様をちらと見ただけで、又襖を締めたが、その一瞬間の、姉と妹の美しい情景が長く印象に残っていた。そして、この姉妹たちは、意見の相違は相違としてめったに仲違いなどはしないのだと云うことを、改めて教えられたような気がした。…(p.294)
その他、歌舞伎を見に行く描写も好き。三島とかの小説にも「今月は〇〇が出ているので〜」みたいな描写あるけど、私もそう思うから親近感を覚えるポイント。
…その明くる日の歌舞伎座で、最後の吃又の幕が開く少し前…(三十三の一文目、P332)など
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「上からダラダラ名家の生活読まされてつまらないなァ」と思ったけど中の後半から一気に面白くなった。
時代の移ろいを妙子という自立した女で激しく書いている。
それぞれの姉妹が、それぞれの強さを持っていて好きになってきた。
「運」という言葉は、科学や医療が未発達だからこそある言葉なのかもしれない。
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戦争の足音が忍び寄り、時代の流れには抗えない様相になる中でも、日本の文化的行事や生活様式を変わらぬ価値観で貫いて生きる四姉妹とその家族。我々が生きる現代の日本を思うと、歴史的に見ればほんの数年の第二次世界大戦を経て日本の文化や価値観が劇的に変わったのだと実感する。敗戦とはこう言う事なのかと。。
結婚一つ決めるのも本家の許可が必要とか、戦後仕事も結婚も自由に選べる今を思えば生きづらい世の中だったとも思いますが、引き換えにならない程の今はなき良き日本もたくさんある。
神戸の大水害が実際にあった事とは初めて知りましたが、家のしきたりに逆らい奔放に生きる四女妙子がこの大水害にも巻き込まれて九死に一生を得るなど益々波瀾万丈な人生となる一方、相変わらず結婚が決まらず前に進まない三女雪子の人生がより対照的となってくる様から目が離せない。
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人の死に直面しても、社会的体裁を気にしてしまうこと。これもまた当時の文化なのかと。家柄、前年踏襲の傾向など、今の日本で『それってどうなの?』といった考え方が普通であった時代を今一度見つめ直すいい作品だと感じた。今が良くて、昔が悪いのではなく、昔を知った上で、今をどうするべきかを考える良いきっかけになった。
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上巻がまったりとした雰囲気なので、このまま続くのかと思いきや、事件勃発しすぎでした。 大洪水に縁談、隔離、手術と目まぐるしい。 幸子・妙子・本家とのやりとりで、人の描き方がまあうまいこと。 幸子の、腹は立つけど義理を通さないといけない等、心と頭の乖離がよく分かるし、情に熱いのかと思ったら、身分違いだ、とばっさり切り捨てたり、そこら辺の匙加減が絶妙。 下巻はどういう結末になるのか楽しみ
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中巻は妙子の恋愛事情を中心に、舞の会、阪神の大水害と写真師板倉の救出劇、隣に住むドイツ人シュトルツ一家の帰国、東京での台風、奥畑と板倉の確執、板倉の手術と死など。
上流社会は世間体を非常に気にして少しでも悪い噂が立つのを恐れること、何事も本家、夫、両親の了解を得ないと事が進まないことなどがうかがえる。
つらつらと人物の心情や事情が綴られるので、国語の授業的な解釈の必要がない。
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細雪の谷崎潤一郎の描写はどれも読者が情景をイメージできるように書かれていて素晴らしいと思っていたが、洪水のシーンはそれが顕著で特に驚いた。
自分は洪水の中を歩いたことがないのでイメージすることしかできないけれど、貞乃助が「どす黒く濁った、土用波が寄せる時の泥海」をかき分け進む様子がありありと想像できた。
最後の方の板倉さんに関するバタバタは衝撃的だった。こいさんどんな人と結婚するのか、下巻が楽しみ。
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谷崎潤一郎の代表作『細雪』の中巻。
上巻に引き続き執筆されましたが、私家版として刊行された上巻と違い、完成後長らく日の目は見られない状態でした。
中巻は戦後ようやく中央公論社から刊行されます。
内容は上巻の続きで、大阪の旧家の四姉妹の日々が綴られるものとなっています。
自分の人生のため、洋行の希望や、手に職をつけるための活動を始める妙子と、それを快く思わない恋人の奥畑。
そんな折に発生する大水害でヒーローのように現れて妙子を救った板倉に苛立ちが募る奥畑と妙子の恋愛事件や、お隣に住んでいた仲の良かったドイツ人一家の引っ越し、恩師の逝去、そして板倉の病気と、次から次へと発生するトラブルだらけの日々がドタバタと書かれます。
上巻同様、娯楽小説として面白い小説でした。
日本文学史上にこの作品ありと言われる作品ですが堅苦しさはなく、上中下巻の長編ですが非常に読みやすいので長さを感じさせずに読めます。
戦時中に書き始められるも国策により掲載禁止になり、戦後ようやくGHQの検閲の元で刊行を行い、昭和天皇にも献本され、今日、世界中で翻訳され読まれるという大変な作品ではあるのですが、中巻に於いては特に崇高なテーマ性なども感じられず、個人的にはただ面白い作品と思いました。
特に中巻は、要所要所にスペクタクルを感じるシーンが挟まり、エンタメ性を感じました。
下巻は衝撃展開が待っているので、中巻は4人の日々を紹介しているシーンなのかもと思います。
ただ、中巻ラストは少し驚きました。
実年齢以下に見られることが多く、奔放なようでしっかり者の妙子は、個人的に4姉妹の中で一番お気に入りなのですが、一方で奥畑があまり好きくないです。
家柄よりも出会った相手やときめきを優先して幸せになってほしいなと思っていたのですが、そんな終わり方になるなんて。
下巻もあまり良い展開にならないことを知っているので、この先は少し読むのが怖い気がします。
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大阪の名門、蒔岡家の四女(こいさん)妙子は活動的。28 歳で人形作家として一角の人物になっているだけでなく、日本舞踊にも熱心、さらに洋裁を習い、将来は洋裁で身を立てたいと密かに思っている。
自称妙子の許嫁である、同じく大阪のお坊ちゃん、奥畑啓三郎は(蒔岡家から正式に許嫁と認められていないが)、妙子が洋裁なんかで身を立て、職業婦人となることを辞めさせてくれと、仲あんちゃん(次女)幸子に掛け合う。
幸子が妙子に聞いてみると、啓三郎は、ぼんぼん育ちで、財産をすぐ使い果たしてしまうことは分かっているので、自分が家計を支えたい。そのためにフランスへ行って洋裁の勉強をしたいという。戦前に、妙子はなんてしっかりしているのだろう。四姉妹の中でも両親が二人とも早く亡くなってしまった末っこの妙子は姉たちと考え方が異なる。
それに引き換え、何も出来ないボンボン啓三郎や本家の旦那の「職業婦人」を軽蔑した態度にはイラッとくる。まあでも、この時代勿論保育制度なんて整っていないし、上流階級でなくても、「主婦」か「職業婦人」かの二択だったのだろうな。
妙子だけではなく、主婦の幸子も魅力的だ。考え方は妙子と異なり古風だが、一人娘を育てている他、二人の妹のことも母親替わりに面倒を見て、いつも二人の意見を尊重しながら、本家との橋渡しをしている。
だけど、妙子は旧家蒔岡家の中では進歩的すぎる。頼りない浮気症のボンボン啓三郎よりも、啓三郎の店の元丁稚奉公で、写真家の板倉と結婚したいともらす。板倉は洪水の時、命を掛けて妙子を救ってくれたし、一人渡米し、写真を勉強して「板倉写真館」を経営し、身を立てている。それに板倉なら妙子の生き方を理解してくれる。
板倉は少し馴れ馴れしいが男として魅力的だという妙子の気持ちに共感出来る。しかし、家庭環境が全く異なる育ち方をした人が義理の弟になるのは嫌だという、幸子や雪子の気持ちも分かる。妙子は熱意のまま突っ走る所があるのだ。
でも、まさか板倉とあんな終わり方をするとは…。板倉は運がなく、本当にいい人だったと思う。それに引き換え、蒔岡家の人々の冷たいこと。
妙子はどうするのだろう。私なら板倉のことが本当に好きだったのなら、三年くらいは立ち直れないと思うけど。
下巻に続く
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上巻は雪子の縁談が軸であったものの、二度の頓挫の後は新たな話も出て来ず。
その代わりに本巻では姉妹の内で最年少の妙子の恋愛が主題になる。
結婚において家同士の格式を重んじる槙岡家だけれど、妙子は当人同士の意思が第一と考え、女性もこれからは手に職を持つべきと、進歩的な存在として描かれる。
その彼女が家同士が同格の許嫁であった奥畑の遊蕩ぶりに愛想を尽かし、水害の折助けに来てくれた奥畑家の丁稚であった板倉との関係を深めていく。
緩やかな物語が劇的・悲劇的な展開に。
けれどその格の違う恋愛が、実は雪子を縁遠くしていたという。
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まさか板倉さんが、、続きはどうなるんでしょう!?
中巻で印象に残った場面は、出水時の板倉と奥畑の対応を比較して「人間の真価はああいう際に本当によくわかるものである」となった場面で、まさにその通りだと思った。非常時の対応は、その人の普段の行いや心持ちが如実に現れる場面である。誠実な人間は、普段からそのような行いを自然と行なっているもので、自身の行動の戒めにもなる一説であった。
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上巻は雪子の縁談が中心で、差し当たり大きな事件はなかったけれど、本巻では妙子の恋愛を中心に物語が展開される。昭和13年の阪神の豪雨の様子なども、こと細かく記されている。この豪雨が妙子に大きな変化をもたらすのだが、読んでいてとても臨場感があった。
その他に隣家のドイツ人一家や妙子の弟子のロシア人の家族との交流なども描かれている。妙子は見るからに活動的だが、おとなしい雪子のしたたかさが垣間見られた。
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中途半端な終わり方やと思ったが、三部に分けたのは筆者の知るところではないハズなので仕方ないか。
「上→中→下と、どんどん引き込まれる。」とは言えないダラダラ感。
さて、「下巻」に感動をもらえるのでしょうか・・・?
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風邪をひいたので、あまり事件が起こらない「細雪」を少しずつ読むのはちょうどよい。
大人になって読む「細雪」は妙子への印象が違う。家父長制の犠牲者だなあと思う。
谷崎は松子賛歌として「幸子」を描いているのね、というのもよくわかる。自慢なのね。
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あらすじ
1936年(昭和11年)秋から1941年(昭和16年)
春までの大阪の旧家を舞台に、4姉妹の日常生活の悲喜こもごもを綴った作品。阪神間モダニズム時代の阪神間の生活文化を描いた作品としても知られ、全編の会話が船場言葉で書かれている。上流の大阪人の生活を描き絢爛でありながら、それゆえに第二次世界大戦前の崩壊寸前の滅びの美を内包し、挽歌的な切なさをも醸し出している。作品の主な舞台は職住分離が進んだため住居のある阪神間(職場は船場)であるが、大阪(船場)文化の崩壊過程を描いている。
感想
没落商家の四姉妹、ある人からフランス語で発行された本をよんで描写が良かったと言われ日本語版を読んでみた。時代背景が違いすぎるが今も昔も
姉妹は変わらないかなって思う。
Posted by ブクログ
姉妹の中で末の妙子は、他の旧式な考えと違い進歩的である。そこが家庭に様々な気苦労や事件を巻き起こすことになる。結婚に対する家の考え方、気遣いを特に家族に対して行動するのが常識とされた昭和初期。医師のステータスも随分異なる。2020.9.5