【感想・ネタバレ】細雪(中)のレビュー

あらすじ

雪子と対照的に末娘の妙子は自由奔放な性格で、男との恋愛事件が絶えず、それを処理するためにも幸子夫婦は飛びまわらざるをえない。そんな中で一家は大水害にみまわれ、姉の鶴子一家は東京に転任になる。時代はシナでの戦争が日ましに拡大していき、生活はしだいに窮屈になっていくが、そうした世間の喧噪をよそに、姉妹たちは花見、螢狩り、月見などの伝統的行事を楽しんでいる。

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Posted by ブクログ

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上巻は雪子の見合い話が中心であったが、本巻では妙子周りの人間関係であった。カバー裏に、雪子の縁談を早く取りまとめねば、というような言葉があったので、焦燥感に駆られた蒔岡家の奔走が描かれると思いきや、そちらはほとんど進展せず肩透かしをくらった。ただ、妙子と雪子の利害上の対立が浮き彫りになった。当人たちは仲睦まじく接しており感情的な対立は見られないが、板倉の死により一つ悩みの種は消えたものの、利害上の対立は根本的には解決していない。この危うさを下巻でどう着地させるのか楽しみである。

中巻を読み終えて改めて思うのは、この小説は幸子の心の動きにこそ真髄がある。雪子や妙子は物語の中心でありながら、常に我々は幸子の眼を通して細雪の世界を見ている。上巻から変わらず、幸子の苦労は絶えない。自身の流産から完全に立ち直れない中、二人の妹と本家の意向をまとめるのにまさに東奔西走する、その細やかな気遣いに心打たれる。幸子の心理描写は精緻かつ著者の愛情に満ちているようにも感じる。幸子の幸せを切に願う。

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2025年10月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

細雪、全然事件起きないし日常〜って感じだと思ってたんだけど、中巻めっっっちゃ色んな事件起きた。上巻は雪子ちゃんの話だったけど中巻はこいさん中心の話だったな…。水害事件ではこいさんを心配に思って幸子姉ちゃんが泣き出すところでわたしももらい泣き…。そして最後は板倉までも…死ぬとは思わなかった…うそでしょ…。
「予想もしなかった自然的方法で、自分に都合よく解決しそうになったことを思うと、正直のところ、有難い、と云う気持が先に立つのを如何とも制しようがなかった。人の死を希うような心が、自分の胸の奥の何処かに潜んでいると考えることは、不愉快でもあり浅ましくもあるけれども、どうやらそれは事実なのである。」これが真理すぎて刺さった。人間を描いているなぁって感じ。
幸子姉ちゃんの人を一方向からじゃなく多方面から見てる感じがすごく好きだったのと、こいさんと雪子ちゃんの爪切りのシーンが美しかったのと、こいさんの良いように色々してあげてるのに好意を無碍にされてる気がする!って貞之助にぶうたれる幸子姉ちゃんが可愛いかった。その妻の顔を見た貞之助が小さい頃の姉妹喧嘩の時もこんな顔してたんだろうなって想い馳せちゃうの愛すぎるだろ!!この夫婦推せる!!!
こいさん中心だけど幸子姉ちゃんの物語でもあった。いよいよ下巻に進みます。

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2025年06月25日

Posted by ブクログ

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四女の妙子の出番が多い巻でした。

妙子は奥畑という「船場の坊」と駆け落ちしようとしたことがありますが、今度は阪神間に記録的な水害が起こり、川の氾濫で今にも溺れ死にそうなところに駆けつけてくれた、板倉という丁稚上がりの写真家と恋仲になります。
そして妙子は今までやっていた人形作りをやめて、洋裁の道に進み、洋行してあちらで手に職をつけたいと望むようになります。

幸子らは反対して、欧州の動乱により洋行は中止になります。
そして、板倉は耳の病気が元で細菌が体に回り、片脚を切断され、しばらくして亡くなってしまいます。

神戸の鮨屋の「与兵」に幸子、夫の貞之助、雪子、妙子で食事にいく場面の新鮮なお鮨のネタの描写がなんともいえず美味しそうでした。

コロナが収束したら、久しぶりに回る方のお鮨でもいいから食べに行きたいと思いました。
この小説は、こういった上流中流階級の家族のやることの描写を楽しむ小説でもあるのだなと思いました。

今まで読んだ小説の中でも文章の美しさが大変際立っていると思いました。

下巻に続く。

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2021年02月25日

Posted by ブクログ

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引き続き面白い〜淡々とした日々なんだけど、普通に続き気になるし、面白いんだよなあ。。下巻もこのまま続けて読んでしまう

社会の情勢はそろりそろりとよくなくなり、隣人のドイツ人一家も引き上げてしまう。上は三女の雪子が中心だったけど、中は四女の妙子へスポットライトが多く当たる。
まさか板倉とああなるとは、大水の際には思いもせなんだでしたが、進んでみればそうなるのも当然のような経緯で、とはいえ板倉が死んでしまうし(驚き!)、これが下巻でどうなっていくのか。。

以下好きだったところ。
…彼女(幸子)と二人の妹達の間柄は、ちょっと普通の姉妹の観念では律し難いものであった。彼女はしばしば、貞之助のことや悦子のことよりも、雪子のことや妙子のことを心に懸けている時間の方が多いのではないかと思って、自ら驚くことがあったが、正直に云って、この二人の妹は彼女に取って、悦子にも劣らぬ可愛い娘であったと同時に、無二の友人でもあったと云えよう。…(p.227)

…或る日、夕方帰宅した彼は、幸子が見えなかったので、捜すつもりで浴室の前の六畳の部屋の襖を開けると、雪子が縁側に立て膝をして、妙子に足の爪を剪って貰っていた。…貞之助は、そこらに散らばっているキラキラ光る爪の屑を、妙子がスカートの膝をつきながら一つ一つ掌の中に拾い集めている有様をちらと見ただけで、又襖を締めたが、その一瞬間の、姉と妹の美しい情景が長く印象に残っていた。そして、この姉妹たちは、意見の相違は相違としてめったに仲違いなどはしないのだと云うことを、改めて教えられたような気がした。…(p.294)

その他、歌舞伎を見に行く描写も好き。三島とかの小説にも「今月は〇〇が出ているので〜」みたいな描写あるけど、私もそう思うから親近感を覚えるポイント。
…その明くる日の歌舞伎座で、最後の吃又の幕が開く少し前…(三十三の一文目、P332)など

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2025年10月14日

Posted by ブクログ

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人の死に直面しても、社会的体裁を気にしてしまうこと。これもまた当時の文化なのかと。家柄、前年踏襲の傾向など、今の日本で『それってどうなの?』といった考え方が普通であった時代を今一度見つめ直すいい作品だと感じた。今が良くて、昔が悪いのではなく、昔を知った上で、今をどうするべきかを考える良いきっかけになった。

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2022年11月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

中巻は妙子の恋愛事情を中心に、舞の会、阪神の大水害と写真師板倉の救出劇、隣に住むドイツ人シュトルツ一家の帰国、東京での台風、奥畑と板倉の確執、板倉の手術と死など。

上流社会は世間体を非常に気にして少しでも悪い噂が立つのを恐れること、何事も本家、夫、両親の了解を得ないと事が進まないことなどがうかがえる。

つらつらと人物の心情や事情が綴られるので、国語の授業的な解釈の必要がない。

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2022年09月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

まさか板倉さんが、、続きはどうなるんでしょう!?
中巻で印象に残った場面は、出水時の板倉と奥畑の対応を比較して「人間の真価はああいう際に本当によくわかるものである」となった場面で、まさにその通りだと思った。非常時の対応は、その人の普段の行いや心持ちが如実に現れる場面である。誠実な人間は、普段からそのような行いを自然と行なっているもので、自身の行動の戒めにもなる一説であった。

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2020年06月07日

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