【感想・ネタバレ】普通の底のレビュー

あらすじ

「ただ普通でありたかった」
誰か教えてください。
ぼくはどう生きればよかったのでしょうかーー。
三通の手紙に刻まれた魂の叫びが、現代の精神的堕落をあぶりだす。
中学受験、トー横、起業サークル、悪徳コンサル、闇バイト。
「普通」が壊れた時代に漂う「自己本位」への誘惑。

【あらすじ】
ある青年から届いた手紙には、幼少期から「普通」を願って生活を送ってきたことが書かれていた。普通の家庭、普通の教育、普通の交友関係。多少の挫折はあっても、彼は「普通」の軌道に乗り続けている--はずだった。今、彼はとても困難な状況にいる。どこでそうなったのか。どうしてそうなったのか。両親が不仲だからか、トー横に行ってしまったからか、それとも大学時代の起業サークルが原因か、それとも重くのしかかる奨学金のせいだろうか。三通の手紙があぶり出すのは、あらゆるものが可視化された現代社会にはびこる精神的幼稚さと、その行く末。

ぼくだけが悪いのでしょうか?
見えますか?この暗黒が。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

社会の空気や言説をくみ取りながら構築された架空の物語を読んでいるという感覚と、実在する人物による手記を盗み読んでいるという感覚が交互にやってきた。やっぱりこの書き手が好きだ。

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2025年12月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

現代に生きる私たちの核心をついた1冊だった。
正直、最後のジャーナリストの感想のパートを読むまで、なんとも言葉にし難い感想を抱いた。
この本を手に取った時、普通になりたいという言葉には思わず同情してしまうような悲惨な過去や、もしくは知的障害のグレーゾーンな人物を想定していた。
だがあくまでどこにでもいそうな普通な青年。確かに両親が不仲だったことや、トー横に無理やり誘われたことなど可哀想ではあるけれど、それでもここまで道を踏み外すものなのかと考えさせられてしまった。
ただ最後のジャーナリストのパートを読み、彼のそして現代人の私たちを端的に鋭く刺す言葉に納得した。
自分の卒論で若者が推し活に夢中になる理由を調べた時もかなり似たような結論に辿り着いたこともあり、なるほど彼の抱いていた普通という言葉は普通以上の、願いが込められていたのだと気がついた。

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2025年10月19日

Posted by ブクログ

早く読めた。おもしろかった。が、すごく後味が悪い、というか…気持ちが重かった。職場で、どうかした?と聞かれるくらいに。
最初の手紙で、そんな考え方の小学生いる?と思ったのは自分のその頃を思ったから。今なら、そういう子いるよなぁ、と。
イジメの空気があるところがどんなにか人格を蝕んでいくことがよくわかった。当事者だけでなく、周りも荒んでいく。
第三の手紙。本当にどうしようもない状況に追い込まれるもの?そんな気もするし、どこかで踏みとどまれる気もするけど、わからなくなった。

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2025年08月30日

Posted by ブクログ

3つの手紙から構成される。書き手の川辺には全然共感できないのですが、なぜかぐいぐいと引き込まれる文章。夢中になって読みました。面白かったです。

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2025年08月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

どうかなと思いつつページ開けば大変読みやすく、一気読みできた犯罪小説でした。

主人公川辺優人は幼少より普通を意識して行動し、周りの人からもそう思われながら社会人になったものの過去の悪事から逃れられず死刑にもなる犯罪を犯すわけですが。

自分を顧みると物心ついた時にはもう自分が普通でない事を意識していたので(自称生まれながらのオタク)、普通である事など苦痛で仕方なかったんですけど、でも高校時代あたりから「このままだと社会生活送れなさそう」と危機感を抱き、どうにかこうにか世間一般的な普通を意識して日々送っている訳ですがそれでも気が付くと世間から離れてる自分を意識してしまうのですね。
そういう普通を意識して生活を送っていると、普通とか常識の範囲とその中心点が常に移動していることに気が付きます。その範囲や位置の観察と自分の意識の調整をしていればどうにか普通を装えるのですが、この仕組みに気が付かない人や調整をしない人がいる。

といったようなことを多分自分より賢い川辺が何故理解できなかったのか不思議でならなかったのですがそれは川辺の手紙の送り先である松井の言う人間としての薄さ、無意識で他人や社会を見下し、世間に向き合わなかった結果なのかなと思いました。
川辺には特定の趣味がないのが特徴で、賢いと言ってもテスト勉強が得意というだけで世間はおろか自己とすら対話した感じがない。終盤手紙の送り先であるジャーナリストが川辺の事を「薄っぺらい」と表現しますが、その薄さは趣味の無さや人間関係の希薄さから来てるもので、川辺と自分の違いはそれ(すいません、人間関係は自分も希薄です)なのかなと思ったりしました。

あと終盤の強盗に入ってからの描写が筒井康隆ばりのコメディで大いに笑わせてもらいました。特にメガネ。コイツヤバすぎ。って笑ってるくらいだから多分川辺とは自分も五十歩百歩なんでしょう。

現代社会に対する警鐘、その鐘の音は幾つも鳴っているけどさて、何処から鳴り止ませるのが良いのかな、と考えてしまいました。とりあえず奨学金ですかね。

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2025年09月07日

Posted by ブクログ

普通として生きたかった青年が転落するまでの克明な記録。
お受験から両親の不仲、クラスの様子など解像度が高く、読んでいてずっと沈んだ気持ちになる。
高校の時に1回ミスをしたから転落した、と読み解くこともできるだろうが、実際は"普通"と思っていた選択肢が全て最悪となるほうに転がっていったように思う。今は底に沈むシステムができているので、一旦そこに乗ってしまうと抜け出すのは難しい。
SNSで社会や政治に怨嗟の念を書いている人たちもこういうものなのかなぁ...と思えた。

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2025年09月02日

Posted by ブクログ

どこにでもいそうなのに、この違和感をおぼえる浮世離れした感じの人は身近にはいないなと思えた。子どもの時からこんなに処世術を考えてこれたなら、きっといくつかの決定的な分岐点でも「普通でい続ける」選択をできたはずなのに。相手になめられてはいけない、弱みを見せてはいけない、そのような無意識の優越感が、曇りをもたらすのだろうか。小説がめちゃめちゃリアルだからこそ、自分との違いを見つけたくて仕方なかった。

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2025年08月31日

Posted by ブクログ

今、犯罪の主流になっている闇バイトの真相を真摯に問うた本。閉塞した社会そのものそれが今の日本だということだろう。ただ世界はそんなこと言っている場合ではなかろうという気はするのだが、、、
時期を得た本。

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2025年08月26日

Posted by ブクログ

読書備忘録939号。
★★★★。

読んでてぜんっぜん!楽しくない!
メンタルを根こそぎ持っていかれる!
★5つは無理!

主人公の転がり落ちていく不幸が自分のこととして夢に出て来そう。
なんなら、既に家を出た息子とか娘の人生が破壊される可能性があるのでは?とうなされる・・・。

主人公の川辺優人。
どうやら誰かに手紙を書いている。
第一の手紙。
この世に生まれて普通に幼稚園に通い、普通に中学を卒業するまで。普通に。
第二の手紙。
高校から新卒で入社した教育コンテンツを手掛ける会社を退職するまで。
普通でいたいが為に高校でちょっと判断を誤る・・・。
さらに普通が良かったんじゃないの?と思わざるを得ない退職理由。
第三の手紙。
転職から人生破滅まで。
もうここは普通じゃないです。決して。

辛いから備忘したくない。
トー横。
未成年女子を食い物に。
奨学金返済の重い負担。
外国人差別。
闇バイト。普通のバイトと闇バイトの区別がつかなくなる末期症状。

最後にジャーナリストが言っている。
普通とは?
普通がいいけど凡庸ではないことを望む薄っぺらさ。
誰もが紙一重の時代。世代ではなく時代。

最後に。この世が若い世代にとってちょっとでも住みやすい世の中であって欲しい。
ワタクシは年金要らん!働けるだけ働く!頑張って支給開始を遅らせるよ!支給開始直後からの速攻でコロリを目指すよ!
身体鍛えるよ!健康寿命伸ばして医療費掛からないようにするよ!

だから、若い世代の笑顔が絶えない世の中であって欲しい・・・。

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2025年08月23日

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社会が悪いことはなんとなく認識しているが自分にできることはない、選挙に行っても無駄だと思ってるような人に読んでほしい

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2025年08月17日

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小学校から大学に至るまでの受験、スクールカースト、就活等、現代社会を順調に歩んできたはずの主人公が、トー横と奨学金のために闇バイトに巻き込まれていく。

誰にでも起こりうる悲劇。
学べる点があるとすれば、歌舞伎町には近寄らない、大企業は辞めない、の2点かな。

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2025年08月16日

Posted by ブクログ

こ、これは…!!
読んでいる途中で、とある小説に雰囲気が似ていることに気づきました。
それは――太宰治の『人間失格』。
ものすごく似ている。現代版・人間失格と謳ってもいいかもしれません。

まず、手紙が三つに分けて書かれている点。
主人公・川辺優人の生い立ちが、時系列で三つに分けて描かれています。
そして、自分のことなのに、どこか他人事のように綴られていて、彼が本当はどう思い、何を考えていたのか、その実態がつかめないのです。

自分があるようでいて、ない。
倫理的にまずいことでも、他人の指示に従ってしまう。
そして、逃げない。逃げられない。
読み進めるほどに、主人公の輪郭がぼやけ、気分が悪くなっていく――そんな感覚に襲われました。

彼が「闇バイト」に手を出すに至った理由は何だったのか。
生まれ育った環境か、学生時代に出会った悪友か、新卒で入った会社を辞めたことか。
どれも決定的な原因には見えません。
おそらく、原因はひとつではない。

彼の性格と選択と運命――最初はゆるく絡まっていただけのものが、年月を経て強く結びつき、ほどけなくなってしまった。
とても抽象的ですが、そんな空気を感じました。

人が落ちていくとき、その瞬間には気づけないのかもしれません。
本人が「落ちた」と自覚したときには、もう元の「普通」に戻れない条件が、いくつも積み重なっている。

彼の人生を遡っても、「彼のようにならないためには」という明確な答えは出ません。
そこに気味の悪さを覚えると同時に、恐怖すら感じました。

その感覚を、言葉にしてくれていた箇所があります。
「ジャーナリスト・松井達行による覚書」の中の、この一文です。

“私とO氏がともに抱いた根源的な恐怖。それは、今すぐにでもその<何か>を解明しなければ、明日闇バイトに応募しているのは私自身かもしれないという予感である。”

私も、いまだにその<何か>が分からない人間です。
正直、自分よりも、子どもが主人公のようにならないか…という不安が強く残りました。

この小説から私が学んだことはただひとつ。
付き合う人間は選ぶべきだ――それも、幼いころから。

「三つ子の魂百まで」とはよく言いますが、人間関係にも当てはまると思います。
小学生時代の人間関係が、成人してなお続き、人生をコントロールされることもあるのです。
自分の身を守れるのは、自分しかいません。
悪意ある人との縁の切り方を、早いうちに知っておく必要があると感じました。

小説で、ここまで心理的に不安にさせられるとは――。

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2025年08月12日

Posted by ブクログ

久しぶりに手にしたフィクションは『ノワール』で知った月村了衛先生の一作です。「普通」を望む主人公に降りかかる連鎖的悲劇を通し、現代的社会問題である闇バイトの構造と本質が鋭く描き出されていました。予測不能な展開に終始惹き込まれました。

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2025年08月10日

Posted by ブクログ

普通でありたい主人公。
でもその普通であること、維持すること、道を外れないことが一番難しかったりする。
最後の覚書がまたいい味だしててえぐってくる

普通の底 ってタイトル、どういう意味だろうって
読む前は思ってたけど読み終わるとすごい端的なタイトルだなと

現代をあらわす作品だと感動してるけど
れをもし50年後読んだときにどう感じるだろう?と
ちょっと楽しみになるような作品だった

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2025年07月29日

Posted by ブクログ

『ただ普通でありたかった』
川辺優人は3通の手紙で自分の人生を幼少期より誰かに綴る。その生きざまは、よくあるけれど、表紙の男のように、何もないもので形作られているような生き方。突出してもいないし、劣ってもいない。むしろM大(明治、慶應は書いてあるのにGMARCH以下はアルファベット)卒なので、恵まれている方だと思う。はっきりいって、本人のやりたいことや目指したいもの、好きなものが全くなくて、読んでいて気持ち悪い。だから、読み心地良いものがいいのが好きな人には向きません。
目立たないようにしていて、時に悪いものにからめ捕られると、そこでも断りきれずに巻き込まれ、どんどん堕ちていく。確かに日本で30歳くらいで非正規雇用者になってしまうと、底辺になってしまうのかもしれないけど、それでも工夫すればそれなりに生きては行ける。そこに幸せを見つけられない心根や、卑屈になる、軽蔑して下に見るのが間違っているという道徳観教育が必要なのかと。
中学生と淫らなイベントありで高校以上。

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2025年07月27日

Posted by ブクログ

主人公は最終的に特殊詐欺に手を染めることになって警察に捕まるのですが、実際に特殊詐欺をやった若者たちもこういう普通のどこにでもいる人間なんだろうと思います。
貧すれば鈍する、という言葉通り、貧困や借金、失業などで行き詰まったり追い詰められてこうした犯罪に手を出す羽目になるんだろうな、と。
一度、正規のレールを外れてしまうと、そこから這い上がることがほぼ不可能な今の日本社会はおかしい。
闇バイトに手を出す若者を、個人の責任にしている限りこういう犯罪はなくならないのだろうと思います。

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2025年12月13日

Posted by ブクログ

子供の頃から目立たないこと、普通であることを旨として生き続けた男が、人生に躓き堕ちていく姿を手紙という形で描く本編は、先に待ち受けるであろう闇を想像させてただただ陰鬱。
最後まで自分の最悪の選択を「これしかなかった」と言い訳し、親ガチャという言葉でひたすら責任転嫁する他責思考は胸糞悪い。
でも、こういう人身近にもいるよね的な怖さも。

男を取材する手紙の宛先人であるジャーナリストの覚書を読むにつれ、今の世の中に蔓延する空気のようなものへの恐怖がひたひたと押し寄せる。

「社会的炎上せず、叩かれることもない「普通」を望みながら、大衆に埋没するだけの「凡庸」である自己は認められない。親ガチャに代表される他責思考。そんな精神性を持ち合わせないと断言できる人が、今の時代、果たしてどれだけいることだろう」

このくだりが響く。

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2025年11月04日

Posted by ブクログ

普通の子供が普通の生活を送る内にドン底まて堕ちる鬱作品。語り手の手紙という体裁の一人称視点で語られるが、もどかしい気持ちで一杯になる。

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2025年10月21日

Posted by ブクログ

怖いなぁ。
どんだけ頑張っても過去の過ちで転落することが往々にしてある。

他責、と言われたらそう思えなくもないけど、やっぱり抗えないことなんて人間たくさんあるし、そんなこと言ってたら人生どこでも気が抜けない、、
確かに他の選択肢はあった。あったけど、これといった明確な正解もなかった気がする。

生運なのかなぁ、そう思わずにはいられない。

2025.10.19
195

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2025年10月19日

Posted by ブクログ

怖い。ただそう感じた、不思議な本だった。
中学受験を体験しているなど、何かと主人公と共通点が多いためどんどん転落していく様子に呆気に取られてしまった。
ひたすら救いのない物語。

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2025年09月28日

Posted by ブクログ

普通で生きたい気持ちはわかるけど、なんとなく嫌な人と話してる感覚になる本。感情がひとつも見えてこない。

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2025年09月13日

Posted by ブクログ

一人の人間が壊れて行く話しでした。
小学生の頃から妙に大人びていましたねぇ
選択が裏目裏目に出てしまいました、でもその選択をしたのは自分な訳で…

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2025年09月06日

Posted by ブクログ

「普通」の人が転落していく様子が描かれる。その思考プロセスはリアリティがあるけど、気持ちのいい話ではなかった

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2025年09月01日

Posted by ブクログ

第一の手紙、第二の手紙、第三の手紙と時系列に、誰かに宛てた手紙が書かれています。
誰に宛てたのかは最後にわかるようになっています。
主人公の川辺優人は幼い頃から争いごとは避け、人より前に出ずに普通であるように生きてきた。
普通であることを意識するあまり、誘いにはっきり断る事が出来ない。
最初は大した事ないが、それが最後は取り返しのつかないことになってしまう。

普通の人生が幸せという願望をもつ人は多いと思う。しかし、普通の人生とは?
一昔前は、男らしさ女らしさという基準があった。それが普通の基準であったと思う。
今の時代は、普通の基準がなくなった。故に基準に縋る生きるかたは、生きずらい世の中になったと思う。

周りを見渡すと積極的に人の前に出ようとせず、周りに合わせることを意識して生きている人は多いように思う。自らも積極的かと聞かれれば正直そうではないが。

周りにどう思われるかそんなことに囚われすぎていると、自分を見失ってしまう恐怖を感じさせてくれる一冊です。

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2025年08月24日

Posted by ブクログ

ある人物に向けた手紙で淡々と自分の人生を振り返る主人公。普通を望んでいただけと綴る手紙からは、他責思考でタイパコスパの理論武装でガチガチの虚ろな目をした青年の像が浮かびました。読後はただただ今の時代に漂う虚無感と不安感が押し寄せました。

"普通にやっていただけなのに。普通にやっていたはずなのに。
気がついたら転落している。ここからどうやって抜け出せばいいのでしょう。"

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2025年08月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

読みやすい文章で1時間半ほどでするすると一気読み。
トー横に行った時点でその後脅されたりするのかなと思いましたが、まさかの闇バイトからの死刑囚。本当の底まで落ちていく話で言葉を失いました。


社会的に炎上せず、叩かれることもない「普通」を望みながら、大衆に埋没するだけの「凡庸」である自己は認められない。親ガチャに代表される他責思考。

最後のジャーナリストの覚書にあったこの文言。悪目立ちしないような普通を演じながらも抑えきれない承認欲求に溢れた今の時代をすごく表していて、印象的でした。

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2025年08月12日

Posted by ブクログ

ある青年から届いた手紙には、幼少期から「普通」を願って生活を送ってきたことが書かれていた。普通の家庭、普通の教育、普通の交友関係。多少の挫折はあっても、彼は「普通」の軌道に乗り続けている--はずだった。今、彼はとても困難な状況にいる。どこでそうなったのか。どうしてそうなったのか。両親が不仲だからか、トー横に行ってしまったからか、それとも大学時代の起業サークルが原因か、それとも重くのしかかる奨学金のせいだろうか。三通の手紙があぶり出すのは、あらゆるものが可視化された現代社会にはびこる精神的幼稚さと、その行く末。

著者名を見て手に取ったのが、読むきっかけ。久々の読後感。

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2025年08月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「ただ普通でありたかった」
闇バイトという名の強盗殺人の罪で死刑判決を下された、「普通」を目指して生きてきた男の人生のお話。
幼少期から学生時代、就職し、闇バイトに手を出すまでを、3通の手紙という形で表現している。

「何も考えてなかった」というのが、大きな結論かな?
考えているようで考えてない、というか、、、最悪な選択ばかりしているというか、結局のところ他責しているだけなんだけど。
なんだろう、、、もやもやするけど、わからん。

ひとつ感じたのは、愛されてる実感がなくて、その事に気づかず成長しちゃったのかな?と。
とにかく自分のことだけなんだよね、考えてることが。親とか友達とか、それこそ「普通に」生きてきたら大切に思えるだろう存在がまるでない状態。
かと言って、生命が脅かされるほど、目に見えて虐待されているとかいじめや暴行受けているとかでもなく、表面上は問題なく生きてきた結果がこれって感じ。最悪だな。
親の立場からすると、親である自分に責任感じちゃうけど、そんな責任を感じられる親なら、こんな子には育たなかったんだろうな、と。

フィクションなので、あまり深く考えても仕方ないのだけど。
とりあえず、読み返しはしないかな、1回読めば充分。

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2025年08月03日

Posted by ブクログ

引き出しいっぱいの月村さん。何となく「普通でありたかった」という主人公が常に普通でない悪手を選択。最後は闇バイトまで堕ちるのかなと想像してたらその通りの展開。社会批判の件は共感できる部分もあるが、全体的に薄っぺらでモヤモヤした気分残り、読後感よくない。

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2025年08月01日

Posted by ブクログ

「ただ普通でありたかった。」という一文で、第一の手紙は始まる。書いているのは2001年に、会社員の夫と(結婚の際、周囲の空気に合わせるように退職をした)専業主婦の妻のもとに生まれた、ごく普通の青年。誰宛てへの手紙なのかは伏せられている。その手紙で、彼は、生まれてから幼稚園、小学校、中学校と、起こった出来事とその時に考えていた自分の気持ちを、じっくりと見つめて、逐一丁寧に明かしている。お受験をさせられたが、普通の公立小学校に通ったこと、そこでの自分の地位、周りの人たちの力関係、受験に熱心な母親、第三志望だった私立中学への進学、高校受験、大学受験。自分の目標は大手の有名企業への就職であり、学校はそのための期間である。同級生たちとは、適当に話題を合わせて過ごせばいいというスタンスは一貫していて、結果、理想的な有名企業への就職を果たすのだが、同級生によってややこしい男と引き合わされ、未成年者への暴行、強制わいせつ事件への関与が疑われ、退職してしまう。そこから職を転々として、最終、コンビニバイトまで落ち、奨学金の返済による生活の苦しさから、同級生に巻き込まれるようにして闇バイトに手を出してしまう。第二、第三と続いた三通の手紙は、民家で4人の住人が惨殺された強盗事件を取材しているジャーナリストのもとに届いた、被告からの罪を告白する手紙だったことが明かされる。

ごく中流家庭の、多少、勉強は出来たようだが、特に何か秀でたところがあるわけでもない、普通の青年。自分の人生の転落について、淡々と述べているが、すべてどこか他人事のようで、事件についても、自分はあくまで関わりたくない同級生に足を引っ張られてこうなったという意識である。それで声高に言うのは、親ガチャに象徴される、社会の不平等である。

「ぼくだって、普通に生きていければいいって思ってましたから。その結果がこのありさまです。気づいてみたら極悪人の死刑囚だ。」

「誰もが被害者でありながら、誰もが加害者ともなり得る」そんな社会はおかしい、地獄だと主張していて、「一歩間違えたら、わたしだってそうなっていたかわからない」と、思わせるような締めくくりになってはいるが、なる人とならない人との間には、ちゃんと線が存在していると思う。小学校時代、いじめっ子に、「お前もやってみ」と言われ、いじめの対象になっていた子に本気で蹴ったり殴ったりしていた、そうしないと代わりに自分が対象になってしまうからだ、というくだりがわりと早い段階であり、それを読んだ時、この主人公に対して不快な感情を持った。自己評価が異様に高く、評価されない理由を、自分の家の貧しさだとか、両親の不仲だとかに転嫁している。自分より低い位置にいるものを、ずっとうっすらとバカにしている。

だからその後の転落についても、自分が蒔いた種としか思えなかった。こうなる人間だった。ただ、そういう思考の人間が生まれるのも、今の、成功者が可視化され、正しさで簡単に人を傷つけることのできるSNS社会ゆえかと思うと、社会の犠牲者なのかもしれないな、とも思う。

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2025年07月28日

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