あらすじ
「ただ普通でありたかった」
誰か教えてください。
ぼくはどう生きればよかったのでしょうかーー。
三通の手紙に刻まれた魂の叫びが、現代の精神的堕落をあぶりだす。
中学受験、トー横、起業サークル、悪徳コンサル、闇バイト。
「普通」が壊れた時代に漂う「自己本位」への誘惑。
【あらすじ】
ある青年から届いた手紙には、幼少期から「普通」を願って生活を送ってきたことが書かれていた。普通の家庭、普通の教育、普通の交友関係。多少の挫折はあっても、彼は「普通」の軌道に乗り続けている--はずだった。今、彼はとても困難な状況にいる。どこでそうなったのか。どうしてそうなったのか。両親が不仲だからか、トー横に行ってしまったからか、それとも大学時代の起業サークルが原因か、それとも重くのしかかる奨学金のせいだろうか。三通の手紙があぶり出すのは、あらゆるものが可視化された現代社会にはびこる精神的幼稚さと、その行く末。
ぼくだけが悪いのでしょうか?
見えますか?この暗黒が。
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Posted by ブクログ
普通の人になりたかった青年が重大な犯罪を犯してしまう
それは単なる不幸の連鎖によるものなのか?
それともか彼の人間性によるものなのか?
または時代のせいなのか?
本書は結論を出していないが、誰しもに起こりうることとしているように思えるため、時代のせいと訴えているようだ
先日、Z世代の特徴について書かれた書籍を読んだが、本書の主人公によく似ている
優秀だが、それは隠し、目立つことを恐れ、出世を望まず、平均的な生活を望む
一方で自己肯定感がかなり強く、自分の能力、判断に自信を持つ
Z世代は闇バイトに陥りやすい特徴を持つのだろうか?
ふとそう考えた
Posted by ブクログ
2月6日再読。
この小説を読む度に、色々なことを考えさせられる。
私は彼と同年代なので、考え方や世の中に対して共感できる点も多々ある。
だけど一方で相容れない部分もあるが、この本を読むと自分の人生の先が怖くなりもする。
今回読んで思ったのは、私たちの社会が何かと意味や物語を求めすぎていることも今を生きる上で息苦しくなっているのではないだろうか。
シンプルに見下されたくない、怒られたくない、傷つきたくない。
こういったことを甘やかしだと過度に批判されるため、それなりの理由をつけて何事も納得する。
自分の感情にも嘘をつきながら、納得する理由を探している。
佐伯ポインティさんの動画のコメントに、Z世代は人生のネタバレを全部見せられていると書かれていたが、世の中を見渡せば、やるべき事、無駄なこと、全ての情報が転がっていて、ネットの世界では誰かを罵ることばかり。
ただこれを社会だけのせいにしてはいけない。
自分がどんな時代を生きているか知ることが大切なのかもしれない。
この本は読む度に感情がぐっちゃぐちゃになる、
改めて今を象徴する本だ。
Posted by ブクログ
現代に生きる私たちの核心をついた1冊だった。
正直、最後のジャーナリストの感想のパートを読むまで、なんとも言葉にし難い感想を抱いた。
この本を手に取った時、普通になりたいという言葉には思わず同情してしまうような悲惨な過去や、もしくは知的障害のグレーゾーンな人物を想定していた。
だがあくまでどこにでもいそうな普通な青年。確かに両親が不仲だったことや、トー横に無理やり誘われたことなど可哀想ではあるけれど、それでもここまで道を踏み外すものなのかと考えさせられてしまった。
ただ最後のジャーナリストのパートを読み、彼のそして現代人の私たちを端的に鋭く刺す言葉に納得した。
自分の卒論で若者が推し活に夢中になる理由を調べた時もかなり似たような結論に辿り着いたこともあり、なるほど彼の抱いていた普通という言葉は普通以上の、願いが込められていたのだと気がついた。
Posted by ブクログ
「普通」とは?で思い浮かべる『コンビニ人間』が「普通になれない苦しみ」を描いた純文学なら、『普通の底』はその普通を維持するコストさえ払えない者が、ちょっとした不運で闇に呑み込まれる「構造的社会の歪み」のレポートだ。
根底に、親が金持ちかどうかという「親ガチャ」で人生のコースが決まっていて、二世や三世の政治家たちが自分たちに都合のいいルールを作る裏で、持たざる者は一度レールを外れれば二度と這い上がれない。努力しても報われない「蟻地獄」という今の日本のみんなが薄々疑いながら意識的にあるいは無意識的に目を逸らしている現状がある。
主人公は決して悪人でも無能でもない。ただ「目立ちたくない」「嫌われたくない」と願う、それが安全に生きる手段と信じる。しかし、本人はただツイテなかっただけと、スマホ一つで簡単に「闇バイト」という使い捨ての駒に…
物語のラスト近く、主人公の「僕は本当に普通でありたかっただけなんです」という言葉が、あまりに重く、痛い。
高望みをしたわけじゃない。ただ、当たり前の生活を送りたかっただけ。そんなささやかな願いさえも「蟻地獄」の餌食になり、加害者へと変えられてしまう。今の格差社会では、ただ「普通に生きる」ことさえ…
Posted by ブクログ
「普通」でい続けるって難しいよ。
というか、普通でありたいと願うがあまり、誰が見ても間違った道に踏み出そうとしている時も、「これが普通に違いない」って勘違いしちゃって結局大間違いを起こしてしまう。
私も「悪目立ちだけはしないようにしよう」っていうのは特に中高生の頃は考えていたけど、この川辺の目指している「普通」は「無個性」に近い印象を受ける。そういう人は、結局誰にとっても「都合のいい人」になりがちで、だから高井戸や菊池やケーシンや五十嵐に目を付けられてしまったんじゃないだろうか。
「普通」の人生でありたいと強く願った結果、それが仇となって川辺は人生を踏み外していくけど、一番不幸なのは本人がその原因に最後まで気付けず、すべてを「社会的の理不尽」に責任転嫁してしまった所かなと思った。
Posted by ブクログ
どうかなと思いつつページ開けば大変読みやすく、一気読みできた犯罪小説でした。
主人公川辺優人は幼少より普通を意識して行動し、周りの人からもそう思われながら社会人になったものの過去の悪事から逃れられず死刑にもなる犯罪を犯すわけですが。
自分を顧みると物心ついた時にはもう自分が普通でない事を意識していたので(自称生まれながらのオタク)、普通である事など苦痛で仕方なかったんですけど、でも高校時代あたりから「このままだと社会生活送れなさそう」と危機感を抱き、どうにかこうにか世間一般的な普通を意識して日々送っている訳ですがそれでも気が付くと世間から離れてる自分を意識してしまうのですね。
そういう普通を意識して生活を送っていると、普通とか常識の範囲とその中心点が常に移動していることに気が付きます。その範囲や位置の観察と自分の意識の調整をしていればどうにか普通を装えるのですが、この仕組みに気が付かない人や調整をしない人がいる。
といったようなことを多分自分より賢い川辺が何故理解できなかったのか不思議でならなかったのですがそれは川辺の手紙の送り先である松井の言う人間としての薄さ、無意識で他人や社会を見下し、世間に向き合わなかった結果なのかなと思いました。
川辺には特定の趣味がないのが特徴で、賢いと言ってもテスト勉強が得意というだけで世間はおろか自己とすら対話した感じがない。終盤手紙の送り先であるジャーナリストが川辺の事を「薄っぺらい」と表現しますが、その薄さは趣味の無さや人間関係の希薄さから来てるもので、川辺と自分の違いはそれ(すいません、人間関係は自分も希薄です)なのかなと思ったりしました。
あと終盤の強盗に入ってからの描写が筒井康隆ばりのコメディで大いに笑わせてもらいました。特にメガネ。コイツヤバすぎ。って笑ってるくらいだから多分川辺とは自分も五十歩百歩なんでしょう。
現代社会に対する警鐘、その鐘の音は幾つも鳴っているけどさて、何処から鳴り止ませるのが良いのかな、と考えてしまいました。とりあえず奨学金ですかね。