【感想・ネタバレ】普通の底のレビュー

あらすじ

「ただ普通でありたかった」
誰か教えてください。
ぼくはどう生きればよかったのでしょうかーー。
三通の手紙に刻まれた魂の叫びが、現代の精神的堕落をあぶりだす。
中学受験、トー横、起業サークル、悪徳コンサル、闇バイト。
「普通」が壊れた時代に漂う「自己本位」への誘惑。

【あらすじ】
ある青年から届いた手紙には、幼少期から「普通」を願って生活を送ってきたことが書かれていた。普通の家庭、普通の教育、普通の交友関係。多少の挫折はあっても、彼は「普通」の軌道に乗り続けている--はずだった。今、彼はとても困難な状況にいる。どこでそうなったのか。どうしてそうなったのか。両親が不仲だからか、トー横に行ってしまったからか、それとも大学時代の起業サークルが原因か、それとも重くのしかかる奨学金のせいだろうか。三通の手紙があぶり出すのは、あらゆるものが可視化された現代社会にはびこる精神的幼稚さと、その行く末。

ぼくだけが悪いのでしょうか?
見えますか?この暗黒が。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

現代に生きる私たちの核心をついた1冊だった。
正直、最後のジャーナリストの感想のパートを読むまで、なんとも言葉にし難い感想を抱いた。
この本を手に取った時、普通になりたいという言葉には思わず同情してしまうような悲惨な過去や、もしくは知的障害のグレーゾーンな人物を想定していた。
だがあくまでどこにでもいそうな普通な青年。確かに両親が不仲だったことや、トー横に無理やり誘われたことなど可哀想ではあるけれど、それでもここまで道を踏み外すものなのかと考えさせられてしまった。
ただ最後のジャーナリストのパートを読み、彼のそして現代人の私たちを端的に鋭く刺す言葉に納得した。
自分の卒論で若者が推し活に夢中になる理由を調べた時もかなり似たような結論に辿り着いたこともあり、なるほど彼の抱いていた普通という言葉は普通以上の、願いが込められていたのだと気がついた。

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2025年10月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

どうかなと思いつつページ開けば大変読みやすく、一気読みできた犯罪小説でした。

主人公川辺優人は幼少より普通を意識して行動し、周りの人からもそう思われながら社会人になったものの過去の悪事から逃れられず死刑にもなる犯罪を犯すわけですが。

自分を顧みると物心ついた時にはもう自分が普通でない事を意識していたので(自称生まれながらのオタク)、普通である事など苦痛で仕方なかったんですけど、でも高校時代あたりから「このままだと社会生活送れなさそう」と危機感を抱き、どうにかこうにか世間一般的な普通を意識して日々送っている訳ですがそれでも気が付くと世間から離れてる自分を意識してしまうのですね。
そういう普通を意識して生活を送っていると、普通とか常識の範囲とその中心点が常に移動していることに気が付きます。その範囲や位置の観察と自分の意識の調整をしていればどうにか普通を装えるのですが、この仕組みに気が付かない人や調整をしない人がいる。

といったようなことを多分自分より賢い川辺が何故理解できなかったのか不思議でならなかったのですがそれは川辺の手紙の送り先である松井の言う人間としての薄さ、無意識で他人や社会を見下し、世間に向き合わなかった結果なのかなと思いました。
川辺には特定の趣味がないのが特徴で、賢いと言ってもテスト勉強が得意というだけで世間はおろか自己とすら対話した感じがない。終盤手紙の送り先であるジャーナリストが川辺の事を「薄っぺらい」と表現しますが、その薄さは趣味の無さや人間関係の希薄さから来てるもので、川辺と自分の違いはそれ(すいません、人間関係は自分も希薄です)なのかなと思ったりしました。

あと終盤の強盗に入ってからの描写が筒井康隆ばりのコメディで大いに笑わせてもらいました。特にメガネ。コイツヤバすぎ。って笑ってるくらいだから多分川辺とは自分も五十歩百歩なんでしょう。

現代社会に対する警鐘、その鐘の音は幾つも鳴っているけどさて、何処から鳴り止ませるのが良いのかな、と考えてしまいました。とりあえず奨学金ですかね。

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2025年09月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

読みやすい文章で1時間半ほどでするすると一気読み。
トー横に行った時点でその後脅されたりするのかなと思いましたが、まさかの闇バイトからの死刑囚。本当の底まで落ちていく話で言葉を失いました。


社会的に炎上せず、叩かれることもない「普通」を望みながら、大衆に埋没するだけの「凡庸」である自己は認められない。親ガチャに代表される他責思考。

最後のジャーナリストの覚書にあったこの文言。悪目立ちしないような普通を演じながらも抑えきれない承認欲求に溢れた今の時代をすごく表していて、印象的でした。

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2025年08月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「ただ普通でありたかった」
闇バイトという名の強盗殺人の罪で死刑判決を下された、「普通」を目指して生きてきた男の人生のお話。
幼少期から学生時代、就職し、闇バイトに手を出すまでを、3通の手紙という形で表現している。

「何も考えてなかった」というのが、大きな結論かな?
考えているようで考えてない、というか、、、最悪な選択ばかりしているというか、結局のところ他責しているだけなんだけど。
なんだろう、、、もやもやするけど、わからん。

ひとつ感じたのは、愛されてる実感がなくて、その事に気づかず成長しちゃったのかな?と。
とにかく自分のことだけなんだよね、考えてることが。親とか友達とか、それこそ「普通に」生きてきたら大切に思えるだろう存在がまるでない状態。
かと言って、生命が脅かされるほど、目に見えて虐待されているとかいじめや暴行受けているとかでもなく、表面上は問題なく生きてきた結果がこれって感じ。最悪だな。
親の立場からすると、親である自分に責任感じちゃうけど、そんな責任を感じられる親なら、こんな子には育たなかったんだろうな、と。

フィクションなので、あまり深く考えても仕方ないのだけど。
とりあえず、読み返しはしないかな、1回読めば充分。

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2025年08月03日

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