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Posted by ブクログ
2回目
序編はつまらなさすぎて閉じようかと思った。だが、本編に入って小説が始まった。
「ね、なぜ旅に出るの?」
「苦しいからさ。」
この書き出し、かましすぎてやばい。ここから最高の小説が始まった。ほんとに色んな人にすすめたい。
基本は「である」調で、穏やかな印象がある。津軽を行脚しながら、N君やSさん、たけなど、自分の愛する人たちに会っていく。津島修治という人間が、自分を形づくってきた人たちに会い直していくドラマのように感じた。
好きなのは、N君の家でのアトフキと、最後にたけを探しに行く場面。うまく話せず、ふてくされたようになり、照れたり意地を張ったり。その感じがものすごく人間くさい。
というより、この小説は終始、主人公・津島修治の人間くささに溢れている。N君もSさんもたけも、みんなめちゃくちゃ人間だ。読んでいると妙に嬉しくなる。
昔の人間関係は温かかった、という単純な話ではない。めんどくさくて、不器用で、それでも確かにつながっている。今ではもう失われつつあるのかもしれない。そんな寂しさも抱えた。
忘れていた何かを受け取った気がする。
自伝にかなり近い小説なのだろう。作品ごとにスタイルを確立する彼は唯一無二の存在だろう。
もし、彼が今も生きていたら、どんな小説を書いていたのだろうと思う。
彼が亡くなったという事実に、寂寞たる思いをいだく。
こんなに死が惜しまれる小説家に、これからまた会うだろうか。(伊藤計劃は除く)
Posted by ブクログ
昭和19年という大戦末期に突入する時代、36歳の太宰治がこの作品を残したということに大きな意味を感じる。『お伽草紙』と同じく大戦の最中に、このように生き、文章を残すことのできたことに自分は太宰治という小説家の真価を見てしまいたくなる。クライマックスの、たけとの再会の場面は本当にぐっとくるし、解説の亀井勝一郎氏が太宰治の本質を本作に見ていることに深く、深く同意する。
資料に詳しくあたって書かれたが故に注釈が多く読みにくかった点を除いて(それは仕方のないことではあるのから全くいいのだが)、35歳の今の自分にとって太宰治で一番好きな作品かもしれない。
Posted by ブクログ
苦い海に浮かぶ安寧の島「津軽」
名家津島家にとっては黒い種
友人にとっては愛すべき厄介な男、薄いつながりの糸でも大きな安らぎにしてきた哀しい人
人生では自分の人生のあざなえる縄に周りをまきこんだひと
作家として私小説という泥の浮き沈みに身を任せ、女体を巻き添えにして沈んでしまった人。生きる悲しみにあふれた生き方に流されていった人。
野獣派とはそれぞれ勝手な生き方を選んだ人々。大雑把に一括りにされた作家のひとり。
「津軽」を読めば心の底に潜んでいた悲しみに気がつく。苦しみにムチ打たれ続けた日々を書いた作品は読者を傷つける。たまたま日ごろ目を背けている自分の些細な出来事が、この苦しみの根源ではないだろうかと少し落ち込む。
太宰は苦しい人生を苦しいと作品で訴えている。
そこには目を背けてきたが、「津軽」を何日か旅した作品は、この旅で終わりにしたら、女や家族を見き込まずに生きられたのではないか。
好きな酒に酔いしれながらも、過去の暖かな思いのかけらを集めて生きていけたのではないか。
「津軽」を読んで生き下手な作家の人生に浮かんだひと時の安寧の島を読んで歩いてみた。
たぶんもう読まないかもしれない読者としてひとつだけ拠り所になった「津軽」だった。
いつだったか読んだ本に中に
太宰は親戚が集まった席で。皆が揃って自分の話に耳を傾けてくれた
と書いていた。
その一言に私は胸を突かれた。
太宰治という作家は誰も聞いてくれない(多分無視されてきた)たくさんの言葉をためて溜めて生きてきた生き下手な人で。だからこうして書き残すほど嬉しかったのはこんな些細なことだったのか。
とずっとこの一文が太宰だと思ってきた。
どこにどんな風に書かれていたか忘れてしまったが。
「津軽」は、これから私が太宰治という人を想うたび、そこに挿した淡い光のような作品になった。
Posted by ブクログ
斜陽館に行くにあたり、太宰が故郷について書いた『津軽』を初めて読んだ。
結論、やっぱりこの人の書く文章は本当に面白い。
卑屈さ、皮肉、悪口、故郷に対する深い愛情、友人・家族(育ての親や使用人すべて)への感謝が絶妙なバランスでミックスされていて、文章が生き生きしている。ユーモアを交えた軽快な台詞回しが読んでいて心地いい。
こんだけいろいろやらかしていても(笑)、憎めない愛されキャラだったんだろうなあと思う。
実際に斜陽館も、津軽読後だと2倍楽しめます。
このお部屋で蟹を食べたのかあ、とか、この洋室で中学生の頃寝っ転がっていたのかあ、とかとか。
ちなみに竜飛岬でN君とどんちゃん騒ぎしたお宿は、現在観光案内所として現存しているそう!
ぜひ見てみたい。
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