小説・文芸の高評価レビュー
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昔、石原慎太郎が「いまの若い作家連中の作品は実体験に基づいたリアルさがないよね」みたいなニュアンスのコメントをしてるのをニュースでみて、わけもなく苦々しく感じたのが強く印象に残ってるんだけど、こういう新星の作家が堂々と自分の人生経験のなさをあけっぴろげにしてくれるのはある意味マッチョな思考だよなと思う。
要素分解がうますぎて、なんなら逆に小説というものの神秘性が壊れるのではと怖くなってしまった。研究されすぎた対戦ゲーのメタが凝り固まって、同じ戦術しかみなくなる経過を小説という領域で見てるみたいだ。石原慎太郎コメントへのアンチテーゼみたいだな。
ちなみに僕はサイン本に釣られて『君が手にするはず -
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マカン・マランふたたび。そっと背中を押してくれる場所
1話目 毎日、退屈な仕事、ヒエラルキーのある職場。ニコニコみんなと同じ行動を、目立たないようにしている西村真奈。自分はなにものでもないつまらないヤツだから仕方ないと自分に言い聞かせて、この生活から抜けることも考えない。ある日マカン・マランのお店に辿り着く。
2話目 実家の兄が突然亡くなった。実家は老舗の旅館で、もう継ぐものがいない。漫画家目指して頑張ってきたが、辞めるしかないのか。もう諦めたと思っていた時にマカン・マランに辿り着く。
3話目 息子の圭は少し知能遅れ。そのため未央は知能を高める栄養素を与えようと、息子には和食、夫と自分に -
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面白い。声に出して笑ってしまった。
そしてもし私が小説家を夢見ていたとしたら、朝井さんに対して半端ないコンプレックスを抱いたと思う。
早稲田大学在学中に作家デビュー、最年少で直木賞受賞、ダンスサークルに所属して夏休みには男女問わず仲間たちとアクティブにマラソンや京都までのバイク旅、車で北海道旅行(不発でしたが)などなど、陽キャすぎる……。
元のタイトルは「学生時代にやらなくてもいい20のこと(あやふや)」だったけど、絶対した方がいい。というかしたくてもできない。
メディアで見かける時もお喋りが上手すぎるし、生徒会長や応援団長も勤めていたらしい。きっとクラスでも人気者でいろんな人に囲まれていた -
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2人の兄妹の会話劇によって物語が進んでいきました。
初めはとても運命的で、危なさのある兄妹という
関係、そしてその2人を切り裂く要因になっている兄妹(双子)だからこその通じ合うことという舞台情景に惹かれ、少し羨ましくも思っていました。
しかし、一つの事件をきっかけに、会話にズレが起こり、徐々に明かされていく真実とそれによって、感情自体が変わっていく様子がどきどきとしました。
死は生きる選択の一つというセリフが印象に残っています。
そして、恩田陸さんの情景が目の前に浮かぶような繊細な表現に吸い込まれました。
木漏れ日に泳ぐ魚たちの様子は幸せの表れなのかな。 -
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息子さんがいろんな出来事に直面しながらも、しなやかに成長し、深く考えながら自分の軸を模索していくところが、母親であるブレイディさんの視点から描かれていて、イギリスでの差別や格差のリアルを垣間見ると同時に子供の持つ柔軟性に驚いた。
正直自分の子供時代を振り返ると、人種の違いや親のルーツなどを深く考えることはなかった。幼いうちから周囲の人たちとの関わりの中で自分という存在について考えを巡らす息子さんの姿に尊敬の念を抱く。
政治や人々の暮らしのこと、私は何も知らないなと改めて思い知らされた。無知であることを受け入れながら、能動的に知ろうとする自分でありたい。 -
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非常に良かった。
半径100m以内にある息苦しさとか、実は自分が気付きさえしていない矛盾とか、理想とのギャップとか。そういったことに向き合い、言語化をしてくれる。誰かの文章を引用しつつ、彼自身が受けとめていくプロセスを提示してくれるので、こちらもまた言語化できていなかった半径100m以内のモヤモヤを受け入れられるような、感じがする。自分もやっぱり文を書いてみたいなと思えた。こういった誰かをそっと支える文章は、あればあるほどいい。その人の視点からしか書けない文章があるし、なんというかあればあるほどいいのだ。
ーーなるべくなら楽しく生きたい。深く今に没頭し、喜びに浸りたい。しかし、それができない -