あらすじ
雪の夜、木挽町の芝居小屋の裏手で、菊之助なる若衆が果たした見事な仇討。白装束を血に染めて掲げたるは父の仇、作兵衛の首級(しるし)。二年後。目撃者を訪ねる武士が現れた。元幇間、立師、衣装部屋の女形……。皆、世の中で居場所を失い、悪所に救われた者ばかり。「立派な仇討」と語られるあの夜の〈真実〉とは。人の情けと驚きの仕掛けが、清々しい感動を呼ぶ直木賞・山本周五郎賞受賞作品。(解説・中島かずき)
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Posted by ブクログ
時代小説は嫌いじゃないんですが、なかなか手が伸びないジャンルのひとつです。しかし、「直木賞」と「山本周五郎賞」ダブル受賞と言われるとさすがにおおおお!?ってなりますよね。
仇討ちというテーマに対してかなり控えめな、美しいデザインの表紙、さてどのようなお話なのかとページをめくってみると、仇討ちそのものは序盤であっさりと終わってしまいます。そこから物語は仇討ちを見た人たちの話に展開していきます。
久しぶりにとても面白い小説を読みました。時代小説なので所々難しい漢字や見慣れない言葉が出てきますが、気合いでいけます(電子なので都度検索しましたが)。
映画化もされるらしいですが、これは表紙含め文字で味わった方がいいのではないでしょうか。
Posted by ブクログ
『立派な仇討』を芝居小屋の目撃者が自身の来し方も含めて語る。
一人ひとりが『立派な仇討』を語る中で見えてくる真実がじんわりと心にあたたかさをもたらしてくれました。
こういう作品だとは知らず、少し構えて読み始めましたが、読みやすくて登場人物の人情に触れるたびに救われる。
留めておきたい言葉も多かったです。
-作兵衛…
共にやってくれるか。
Posted by ブクログ
第169回直木賞受賞作。
あ〜清々しい面白さ!
感想を書くとネタバレになってしまいそうなので、とにかく清々しい読後感でした。
あるあだ討ちを芝居小屋の面々が訪ねてきた武士に語っていく。話し口調が人情味あふれてサクサクと読み進められる。
題名からは想像もつかない面白さ。
映画化もされるようでそれも楽しみ。
Posted by ブクログ
木挽町って今も聞くよね、と、古地図アプリで検索。東銀座あたりか、と、知ったかぶりしながら読み進めたら、展開がテンポよくどんどん読める。
あだ討ちのあった木挽町界隈を、まったく新人の若手刑事が聞き込みしているよう。「義理人情」たっぷりの大人達が応えていく。
美しくも劇的な菊之助のあだ討ちは、なぜ、木挽町だったのか、なぜ、芝居小屋に関わるみんなが見守っていたのか。自分が江戸の芝居小屋に入り込んだ気がしたので、また古地図アプリを検索してみる。
Posted by ブクログ
人の良心を描いた清々しい作品だった。
あるあだ討ちを芝居小屋の人たちの視線で訪ねてきた武士に語って聞かせるという体裁になっている。
それぞれに人生がありあだ討ちをした侍との交流があり面白かった。
Posted by ブクログ
単行本が出た時から気になっていたので、文庫になって即購入!
リズミカルな文体で引き込まれました。
仕方ねえから案内してやらあ。これから奈落を見せてやるよ。
面白い絡繰りが見られるぜ。
まさにその通り。
菊之助に関わった皆の来し方を知る事で、苦労や苦悩の中から生き様が見えて来る。
よき幕引きでありました。
市川染五郎くんの菊之助観ておけば良かった…
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もう、これは素直に面白かった!!!
これまでのミステリーとは比べ物にならないくらいスッキリとした読後感で、これ一本だけで満足できる贅沢な一冊だった。
タイトルの伏線回収もさることながら、一つ一つのエピソードも重厚で、読んでいて最後まで飽きなかった。
Posted by ブクログ
今年一の満足度。菊之助に関わった人々の来し方を語る前半から中盤だけでも読者を惹き付ける物語性と人情味にあふれていて十分面白かった。が、本作はミステリ仕立てということで終盤ネタバラシも予想を越えてきた。他の役者の過去が壮絶であることが今回の結末の上手い隠れ蓑になっていたと思う。簡単に人が死むこの時代、況や仇討ちをや、と。見事に策に嵌められ、嬉しい気持ちが大きい。
何でも映画化するこの時代。読む前は反対だったが、映像化により別の魅力を醸し出せるのではという期待がある。金治は、「べらぼう」の影響か、安田顕にやってほしい。
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文庫本まで待ったかいがあった。
仇討ちの話かと思いきや、あれあれ?
久蔵の話まできても気づけなかった。。
金蔵すごい!皆んなすごい!
ホロリとするし、スッキリ読後が良い。
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直⽊賞&⼭本周五郎賞ダブル受賞作品。
久しぶりの時代小説だったので、古風な言い回しや表現に慣れず戸惑いましたが、ジワジワと真実が見えてくる感じはまさにミステリー。人情物語でもあり、映画も面白いはず!
Posted by ブクログ
木挽町で起きた仇討ち事件を、木挽町にある芝居小屋の住民たちから聞いた話をまとめたものだが、最後に実はこの仇討ちが本当はいわゆる仇討ちではないことが解き明かされる。この展開は痛快ではある。
Posted by ブクログ
江戸の芝居小屋を舞台に、木挽町で起こった「立派な仇討ち」が、目撃者の視点から語られる物語。仇討ちを成し遂げた菊之助の縁者が、彼と関わりのある人物を訪ね歩きながら、その真相に迫っていく。
物語は目撃者へのインタビュー(独白形式)で進行するが、この構成が非常に面白い。湊かなえの『告白』や『カケラ』を読んでいるような感覚を覚えるが、それを時代小説の枠組みで味わえることが新鮮だった。
本作は、仇討ちの真相に迫る過程がミステリー仕立てになっている。結末も十分に面白いが、真の魅力は、登場人物それぞれの人間ドラマにあるように思う。
五人の目撃者は、仇討ちの一部始終だけでなく、自らの生い立ちについても語る。皆、辛い過去や儘ならぬ世の中に翻弄されながら、悪所と呼ばれる芝居小屋に流れ着いた者たちだ。痛みや悲しみを知り尽くした彼らだからこそ、菊之助に何かを感じ取ったのだろう。その感情は優しさへと変わっていく。
江戸の「人情」と「粋」が詰まった、心に残る物語である。
Posted by ブクログ
直木賞と山本周五郎賞の同時受賞作品だが、歯に衣着せぬ感想を言えば、期待超えはならず。
時代物のミステリというのがざっくりした位置付け。ただ、歴史性を重んじておるわけでもなく、トリックに仰天というわけでもない。
では、なぜここまで評価されているのか。私なりの答えは「人情」の描写の手厚さと共感のしやすさにあると考える。
討ちたくない相手を仇とし、一方で武士としての生き方に縛られ、父の生き様を肯定することの背景が、普段の我々とはかけ離れた境遇のはずなのにどこか現代社会にも蔓延る理不尽さを思わせる。
嘘に救われるという解説にも納得。
辛口に書いたが、普通に面白かった。
Posted by ブクログ
何となく、終わりは読めたけど、分かっていても、感動するものはするし、斬新な描写も素晴らしく、後からジワジワなるほどなぁと思う一冊でした。
初めて読む作家だったので、また読んでみたいと思いました。
Posted by ブクログ
良い作品だった。
あだ討ちのあだはひらがなでなくてはならなかった。
その場の語り手の人物のそれまでの生き様や情も丁寧に描かれていて、結果菊之助の人となりが浮き彫りになっていく。
縦軸の仇討ちと横軸の江戸時代ならではの人としての悲哀が上手く織り成されており、ストレスなくスルッと読める。感想としてやはり良い作品だったなぁ、としみじみその一語しか出てこないそんな物語。
映画化するみたいなので観てみようと思う。