小説・文芸の高評価レビュー
-
Posted by ブクログ
物語全体を覆うのは、決して明るいとは言えない、けれどどこか洗練された静かな空気感。悲劇をいたずらに煽るのではなく、淡々と、しかし鋭く人間の空虚さを描き出すその筆致は、不思議と「スマート」で、大人のおしゃれな小説という印象を受けた。
この物語の主人公・衣笠幸夫と、事故で妻を亡くしたもう一人の男・陽一。二人はどちらも「未完成な大人」だと感じた。
特に幸夫の姿には、ある種の痛々しさと普遍的な弱さを見る。彼は幼い頃から斜に構え、他者との距離感を測りすぎて、本来経験すべきはずの泥臭い人間関係を避けてきたのではないか。その足りない部分を、ずっと妻のナツコに補ってもらっていた。夫婦というよりは、自分の欠落を -
Posted by ブクログ
面白かった!!
第1話 蜷川という受刑者が薬をアルミケースごと飲み窒息しそうなところに、火石は口の中だけ取り出して救急車を呼ぶ。意識は戻らない。受刑者たちに薬を配っていたら、ドスンという物音がした。若年性の認知症が疑われていた。
刑務所では暴動、逃走、事故死は防がねばならない。
昨日出所したばかりの源田が行方不明。源田を探しに叔父のところに向かう。来ていないし、連絡もないと言われる。彷徨うように探したが見つからない。墓で見つけた。更生施設には昔のムショ仲間がいたので、逃げてきたという。
蜷川が亡くなる。親族には引き取りを拒否される。本の間から遺書が見つかった。自殺だ。
第2話 勝田は極 -
Posted by ブクログ
ネタバレオゴダ藩の海上の島へ攫われたアイシャとオラムはあり得ない光景を目にする
その間も、はるか昔に絶えたはずのオオヨマは数を増やしオアレ稲を食い尽くす勢いで、オゴダの藩王母と帝国はオラムの提案に乗り危機を乗り越えたかに見えたが、アイシャの耳にはずっとオアレ稲の呼び声が聴こえていた
呼び声に惹かれてやってきた、新たな脅威の出現に脅かされる3巻です
初代の香君たちがオアレ稲を手にした時も、餓死者を減らしたい 民を救いたいという気持ちだったでしょうに、オアレ稲は人には扱いきれない正に「喜びと悲嘆の稲」らしい展開になりました
必死に足掻くアイシャを始めとした香使たちと、この世界の理を超えたオアレ稲がどう決 -
Posted by ブクログ
ぼろ鳶第十巻にして、零話、再読完了です。
やっぱり面白いですね。面白すぎます。
今回は、いわゆるエピソード0。
源吾さんが若い頃のお話です。
源吾さんの親父さんは、やはり火消頭取ですが、その手腕は派手なものではなく、目立ちません。というか、むしろ全然活躍してないようにも見えます。
なので源吾さんは親父さんを嫌います。
そんな中、火も煙もいつもと変わらず、人が一瞬で倒れる面妖な火事が起こります。
これを重く観た江戸の火消たちは、次代を見据えて、若い火消に対し火事場には出ないように厳命します。これに反発するのが、源吾さんをはじめとする「黄金の世代」。
それから、てんやわんやでスリリングな展 -
Posted by ブクログ
めっちゃ面白い。芸人ミステリー。
終始どこかコメディチックなのだが、ミステリーとしてもしっかりしていて文体とリアリティの塩梅が絶妙だった。最後には「人はどういう時に笑うのか」まで踏み込んでいたのがすごい!
あらすじ
主人公は矢場北太郎というピン芸人。鳴かず飛ばずの芸歴15年目。
ふだんは劇場でピン芸を披露しているのだが、すべり続けている。
(鯉劇場という劇場の名前が面白い。上のクラスの芸人が出演している龍劇場にはもちろん出演できていない)
そんな北太郎の唯一の救いは、ローカル局の情報番組のロケのレギュラー。
なんとも運が強く、交通事故で急遽休むことになった先輩の代演を探していたマネージャー -
Posted by ブクログ
タイトルに「入門」とあるように誰にとってもとっつきやすいよう分かりやすく書いてくれているため、情報工学など理系分野に疎い自分でも読み進めることができた。
初版は2023年。それから3年近く経過しているため、今この本を読むのは有用なのだろうか?と思ったが、読んでよかったと感じている。著者自身がAI進化のスピードが速いことを認識しているため、長い歴史の中で人類が大切にしてきたことを根底に置きながら話を進めてくれているからだ。AIを活用して最終的に目指すのは人類の幸福。その幸福の基盤となるのは、基本的人権、民主主義、経済成長、サステナビリティなどの基本的価値。長い歴史の中で築き上げてきた基本的人権と -
Posted by ブクログ
慈恵尼(じけいに)が庵主(あんじゅ)を務める、目黒の尼寺・千光寺(せんこうじ)のシリーズ第2弾。
人の懐にするりと入り込む、ほんわかした雰囲気の慈恵尼。
そして、人を使うのがうまい(和清尼/談)
やってみる? やってみて、簡単だから。 それじゃお願いね。
誰も断れない(笑)懐に入り込まれてしまうから。
摘み草に誘い、一緒に料理を作り、手を動かしながらだと不思議と話が引き出しやすくなる。人前では話しづらい事もあるから。
五のつく日に女たちの話を聞く集まりがあり、終わった後にはみんなでお経をあげて、食事をする。
慈恵尼たちの素朴だが心尽くしの美味しい料理に、泣いていた女も、人の話に割り込んで憎 -
-
Posted by ブクログ
本が読めない体質の大輔は、普段はとても人見知りだが本のことになると人が変わったように饒舌になる美しい女性、栞子のもとでビブリア古書店の店員として働くことになった。栞子に内心心惹かれていたところ、昔の恋人が現れる。彼女との再会を機に、大輔は栞子との仲を少しだけ深めることとなる(栞子は本のことだけに夢中で恋愛感情などないのだが、大輔とはお互い名前で呼び合うようになる。)。そして明らかになる栞子の過去、母親のこと。
本にまつわる謎をわずかな手がかりから解き明かす栞子がすごい。普段はとても内気なのに。
そして女性慣れしていない大輔の栞子に対する恋心の行方は。続きがとても楽しみ。