小説・文芸の高評価レビュー
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Posted by ブクログ
ネタバレネット、子ども、芝居、ラップ、小説、AI、短歌や和歌など、あらゆる場所での言葉の使い方を考察し、俵さんの実体験と共に語られた一冊。
クソリプの分類からの、喋る家電のクソリプセンサーの話が面白い。「あと三分で洗濯が終わります」だと「洗濯が終わりますだと?この後干すのが大変なんだよ、干して乾かして畳むまでが洗濯なんだよ!」になってしまうリスクがあるので、「あと三分で洗濯ものが取り出せます」なのか。
子どもからの質問に答える章は子育て中の自分には大変勉強になった。特になぜ勉強しないといけないの?に対する答えは、石垣島に移住して子育てをしていたことがある俵さんだからこそ説得力がある。
歌舞伎町の -
Posted by ブクログ
ネタバレ霧に包まれたような、モヤモヤとした不思議な読後感だった。
濃霧が立ち込める宅配所でライン作業をしている従業員視点の話。
視点がコロコロ変わるので、今誰の話だ?と一瞬なるのが読みにくく感じた。でもそこがこの本の不気味な雰囲気を作っているとも感じた。
箱を盗んでしまう従業員。箱の中身からドラマが生まれるかと思いきや、箱を盗むことそのものに陶酔してしまう。
他にも色々問題を抱えている人たち。
工場現場って、低学歴や年配、移民の集まりみたいにまとめられているけれど、蓋を開けるとその辺のそこそこの企業の会社員よりも、問題を抱えている、不謹慎な言い方をすればドラマがある人たちが多いのかもしれない。
本作 -
匿名
購入済み昨年12月当時の尹大統領が突然戒厳令を宣布した。台湾などと同じく韓国も冷戦終結前後から自由民主主義体制に移行したと思っていたがゆえに大変な驚きと共にそのニュースを見守っていた。もちろん知識として韓国の軍政と、市民による民主化の現代史は知っていたが、それが今になって繰り返されることが自分の中で合点がいかなかったのだと思う。
本書ではそれを韓国(というか朝鮮半島)が抱える分断という現実ゆえに起こったものだと論じる。尹が従北勢力の駆逐を口実に戒厳令を宣布したように、韓国の民主主義は分断の問題を解決しない限り、これ以上発展しないのではないかという危惧を著者は抱いている。
そこで著者は北朝鮮を一つの -
Posted by ブクログ
一人の女子高生が公園で絵を描く老人男性に話しかけることで始まる連作短編集。
女子高生は老人男性に関心を持ち、人物像を浮き彫りにしていく。
一人の男性が生涯抱えていたもの、一人の女性が生涯背負ってきたこと。一つのタイミングがずれてしまったことで、様々なタイミングがずれて人生が大きく変わってしまっていく。一人の男性と女性の純愛を描いた作品。
そして、今回行動を起こした一人の女子高生の成長を描いた物語でもある。
女子高生と幼馴染の二人がうまくいってくれることを願うばかり。
夫婦、セクシャリティ、親子関係、男性女卑、寡婦制度、時代のハラスメントなど、生きづらさの中でもがいている人たちに寄り添ってい -
Posted by ブクログ
リフォームジュエリー会社で再会した中学の同級生4人の物語。
そのうちの一人、ジュエリーデザイナーの永瀬珠の視点で物語は進み、45歳の時点から5歳ずつ遡ることで4人が各々抱えている背景や関係性が明確になっていく。
とても不器用でひたむきに生きる人たちの物語。慈悲深い。
タイトルにも表紙にもデザインされている『しずく』
しずくには大切な意味があり、この4人に関係のようにも思えた。
大人になる過程で人生はうまくいくわけではなくてままならなさと転機、そして決意の連続であって。物語は過去をさかのぼる形で進んでいたが、新たな決意をした45歳以降の物語も気になる。
とてもよかったが、言葉で表すことが難し -
Posted by ブクログ
大人たちが抱える呪縛。それは子供たちにも伝染していく。
そんななか、たくさんの人に支えられ成長してく宙は、様々な苦難に対して、守られる立場から守そうとする存在へ、どうしたらよいのだろうと苦難を受け止め悩みながらも向き合う。
そこには、やっちゃんとやっちゃんの料理の存在が大きい。
宙のまっすぐな姿勢は、周りをも幸せにしていく。
読後、様々な感情があふれて何をどう伝えたらよいかわからない。
次々とおとずれる苦難、これでもかと読みながらも心が削られ揺さぶられ、涙が止まらなかった。泣きながら読んだ。
読んでいて苦しいのに読むのをやめることができず、最後、明るい兆しが見えたことに本当に救われた。
読