あらすじ
セシルはもうすぐ18歳。プレイボーイ肌の父レイモン、その恋人エルザと、南仏の海辺の別荘でヴァカンスを過ごすことになる。そこで大学生のシリルとの恋も芽生えるが、父のもうひとりのガールフレンドであるアンヌが合流。父が彼女との再婚に走りはじめたことを察知したセシルは、葛藤の末にある計画を思い立つ……。20世紀仏文学界が生んだ少女小説の聖典、半世紀を経て新訳成る。(解説・小池真理子)
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Posted by ブクログ
主人公の家に台風がやってくるところからはじまります。台風はパリの海でバカンスをしていた「わたし」と父の夕食の時間を襲います。台風によって別荘の窓は割られ、そこから吹き込んできた暴風雨がサラダやコーヒーの容器を壁に叩きつけ割ったりと大惨事で、「わたし」はもうバカンスは中止になるだろうといらいらを募らせました。そこで「わたし」はこの一夏の海で起こったさまざまな思い出に再会します。「わたし」の身に起こったさまざまな思い出に彼女は胸を詰まらせ、名状しがたいさまざまな感情の渦にのまれてしまうのです。ユニークな書き方で笑ったり、深刻になったり、とても感情を揺さぶられました。最後の「わたし」が感情を抑えきれずに涙を流し続け、熱帯低気圧の中心で世界中に「わたし」の涙の雨を降らせるシーンは神秘的で笑えました。
ポール・エリュアールの詩の一節にある「悲しみよこんにちは」というのがタイトルになっています。当時、この詩からインスピレーションを受けて小説を書いたという作家は沢山いたのではないかと推測します。こんなに創作の意欲がかき立てられるような含意を持った詩は数少ないですから。「悲しみよこんにちは」の悲しみの描き方が沢山あったとしてもサガンの描いた悲しみは複雑でかつ、フランス文学の王道の物語を用いて組み立てられています。
僕も同じく悲しみについて書きたくなり冒頭の物語をつくりました。
Posted by ブクログ
これを18歳が書いたのか!と最初は驚いたけれど、18歳だから書けたのかもしれない。
恋愛は人をどうさせるのか、自由を求める気持ち、全編がなんだか哀しくて愛しい。
舞台は南仏の夏、退廃的で虚無的な雰囲気にはいい大人きなってもやっぱり憧れます。
新訳の新潮文庫の装丁も素敵。
Posted by ブクログ
あまりに繊細で儚く悲しく、そして美しい
日本語に訳した文章ですら洗練されていて美しいのに、原文で読むとどれほどの感覚になるのかと思うと、好奇心をそそらられるようで、しかし少しためらいたくなる。
彼女の言葉遣いや言葉の選び方が、なぜこんなに美しいのか?と衝撃を受けた。
小説の最後に『悲しみよ こんにちは』の題名の意味がわかり、腑に落ちると同時になんとも言い表しづらい虚無感と淡い空気を感じた。
恋愛、家族、人間関係など、私も思春期の頃は主人公のように白黒つけるかのように、今見えていることが全てだと物事を捉えていたように思う。
主人公にとってはアンヌの言っていることがすぐに理解できなかったり、言葉の意味を履き違えて捉えてしまうのも共感できるところがあったし、周りから理解されづらいアンヌの孤独感も同時に伝わってきた。
人の欲望や願望が重なり合ったり、相反したり、なんだかその深い人間ドラマを覗き見してしまったような気がする。
Posted by ブクログ
きびしいアンヌの視線が、重くのしかかってくるようだ。誰でもいいからどうにかして、この時間を終わらせてと私は必死で願った。アンヌの両手が、私の顔を上向ける。わたしは視線を合わせるのが怖くて、きつくまぶたを閉じる。そこから涙があふれ出すのを、私は感じていた。衰弱の涙、不手際の涙、快楽の涙。するとアンヌは、あらゆる質問をあきらめたかのように、なにも知ろうとしない静かな動作で両手をおろし、わたしをはなしたのである。
Posted by ブクログ
読んでいる最中も、読み終わった後も、心の奥に仕舞われた感情にそっと触れてくるような小説だった。
作家に秀才と天才がいるなら、サガンは間違いなく後者だと思う。
主人公の17歳の女性シリルの心理描写をメインに話は進んでいく。
彼女の考え一つひとつがユニークであり、瑞々しく、活力に満ち溢れているが、その一方で、親しみやすくもあり、そして、寂しくもある。
若い欲望の中で本能に従いながらも理性を残している彼女の思考を追うことは、自分の中の本能と理性の対立に目を向けることになり、深い没入へと至る。
フランス文学らしい恋愛を主軸とした心理小説だったが、他の作品との特筆すべき差異は、寂しさや孤独感、空虚感が薄いことかもしれない。だが、それは表面的な感覚で、実際には一貫して主人公シリルには逃れようのない悲しみに苛まれているようにも感じた。
最後の最後に、その悲しみが、自らの理性の本能のバランスの取り方の結果として現れる。
その時、彼女も、読者である私も、その存在に目を向けなければならなくなる。悲しみの存在に。
Posted by ブクログ
考える自由、常識はずれなことを考える自由、少なく考えることの自由、自分の人生を選ぶ自由、自分自身を選ぶ自由。私は「自分自身で在る」と言うことはできない。なぜなら私はこねることのできる粘土でしかなかったが、鋳型を拒否する粘土だった。
Posted by ブクログ
南フランスの別荘を舞台に、一夏のバカンスで起こった恋愛が主人公セシルの回想のような形で描かれる。セシルは17歳。母を15年前に亡くし、プレイボーイな父と2人で暮らしている。
南フランスの別荘へバカンスに来たセシルと父レイモン、そして愛人のエルザ。ある日、レイモンは別荘にアンヌという、亡くなった妻の友人である女性を招待する。アンヌは地位も教養もある立派な女性で、セシルは彼女から女性というものを学んだのだった。この「超然的な」女性の訪問は、3人の生活を一変させる。
レイモン、エルザ、アンヌの三角関係や、セシルとレイモンの父娘関係、セシルとシリルの恋愛関係が、「悲しみ」のベール越しに語られる。
フランス文学を読んだのは『ボヴァリー夫人』ぶりだったが、良い意味でフランス文学特有の長ったらしさや回りくどさみたいなものがなくて読みやすかった。セシルの17歳らしい感情の機微が、回想の体をとることで細やかに巧みに表現されていて、少女らしさと女性らしさの入り混じった描写がとても良かった。恋愛における性的な匂わせも、生々しくなく、かといって神秘的でもなく、重くも軽くもなく、まるで詩の一節を読んでいるようだった。全体として、一つの芸術作品を見ているかのような、詩的で、絵画的でもあって、音楽的でもある、そんな小説のように感じた。
セシルの少女ゆえの未熟な愛と、大人の女性であるアンヌの超越した愛、レイモンの軽薄な愛やシリルの実直な愛、そして愛を語らないエルザを含めたその他大勢のレイモンの愛人たち、様々な形の「愛」が美しく多彩な言葉で綴られる。善悪や正解不正解といった価値観が登場せず、人物のもつ愛をそれぞれの姿のままに描いているのも、芸術作品のように浸ることができる要因だろう。
焼け付くような夏と肌に滲みる水、甘美な恋と闇に葬られた悲しみ、大人と子どもの境界を生きる少女だからこそ見るのことのできた「あの夏」であった。
Posted by ブクログ
主人公と父親の関係が第三者が加わることで変わっていく、いや元々お互いにわかっていた関係が第三者が加わることでくっきりとしてくる。そんな個人の中で留まってしまう厄介で愛おしい感情をさわやかに描いている作品でした。時間がたったらまた読みたいです。
Posted by ブクログ
とんでもない話です。
多感で奔放な一面のある少女が、彼女をとりまく大人たちから、愛について、家族について、形のないなにかを受け取ったり渡したりしてゆき、ゆっくりと事態が動きながらしかし突然に結末が訪れます。
正直なところ「悲しみよ こんにちは」じゃねえよ、と言いたくなってしまう気持ちもあります。でも、彼女にはどうしようもなかったのではないかという気もします。
そのような、若さゆえともいえる多面的で変わりやすく繊細な心情を、写真のように瞬間でとらえつつ、刻々と移ろっていく様を映像のように巧みに文章に写し取っていて、とても10代が著したものとは思えませんでした。
Posted by ブクログ
今なんで今年の新潮プレミアムがあの色なのかわかって!!!やばい!!って気持ち!!!
読み終わった。ポップに表現すると「どんより」が漂う作品だった。てかこれを18で書けるサガンすごすぎんだろ…
以下ネタバレ含むぐちゃぐちゃな感想
このさ〜、何か決定的なことが書いてあるわけではないのにこの人物死にそうだなって読者に思わせるのすごくない???精神疾患でも病気でもなく、思考も生き方もまともな1人の人間なのに。
どこかでアンヌ死にそうだな、自殺しそう〜って思ってたら本当に亡くなってしまってびっくりした。
セシルの、急になんなの?!の気持ちもわかるんだけど…なんか上手く言葉にできないんだけど、こういうことって自分に返ってくるからよくないよね。
アンヌに関して私はその行を読んだ時にほぼ自殺だと思った。わからないよ、死ぬ気なんてなくて本当に事故だったかもしれないけど、アンヌはあの時絶望していたに違いなくて、未来の伴侶の不貞を見た後、その娘にとどめを刺されているような状態。
私がアンヌだったらもし偶然ハンドル操作を間違って、その瞬間普通なら助かりたいから最善を尽くすけど、そのまま流れに身を任せちゃうかも!
もし私が助かったら2人を許そう、みたいな。
アンヌは今までちゃんとしていたから、こんな仕打ちをされてタダで許せなくない?自分へのプライドっていうか、なんかそういうのがありそう。自分がただで許すことは許さないみたいな。自分が助かって初めて2人を許す許可を貰えるみたいなね。
さらっと読めたけどすげ〜作品だったわ。
てか薄紫、きっと2人とアンヌが最後に会った時の服で、亡くなる時もきてた服で、彼女の瞳の色だよね〜〜〜この色のプレミアム装丁、最高です。
Posted by ブクログ
南仏でのバカンス。青い空、青い海。
そして"不健全な"登場人物たち。
妻と死別した浮気性の父も、男手一つで育てられた天真爛漫な娘も、父の愛人である下っ端女優も、そして品行方正を擬人化したような女性アンヌでさえも。皆不安定で、皆お互いを分かり合えず、皆いびつな人間関係の中、それを見ないように過ごしている。
主人公の娘の不安定に揺れ動く心理描写が圧倒的。好感を持っていた人を次の瞬間激しく憎むような矛盾が納得感を持って表現されている。
これを19歳で書いたなんて。
Posted by ブクログ
映画を観た後のような満足感を堪能。
18歳でこの作品を書いたサガンは、どういった世界を生きて、どういうふうに世界を見ていたのだろう。登場人物ひとりひとりのキャラクターが際立っていること、セシルの感情の揺れ、10代で経験する大胆な行動による失敗のあれこれ、そういったものが共感を呼び起こすように練られていて、ページをめくる手を止めることができなかった。
Posted by ブクログ
父親の恋愛をまるで自分のことのように捉え、無意識のうちにコントロールしてしまう。自分とは価値観が異なる人間を、制御できない異物のように感じて遠ざけてしまいたくなる瞬間。手放したいけど自分のせいで失うのは耐えられない。刹那の感情に振り回され、先々の実感しにくい幸福を自ら捨ててしまう。そういった少女から女性へと移り変わっていく時期の心理描写が見事だった。
Posted by ブクログ
身も蓋もない言い方をすれば、フランス映画が好きならこの作品も好きだと思う。(本当に身も蓋もない)
詳しくないなりにギヨーム・ブラック作品とかレオンとか君の名前で僕を呼んでとか好む人間なので、この小説とも相性は悪くなかった。
フランス映画でよく観る【太陽の光と水面と日焼けする人間と…】みたいな典型的なバカンスの匂いをさせつつも話の雰囲気はどこか仄暗く、気づいたら緊張感のある展開になっていくので退屈しない。
この作品をサガンは18で書いたというのでおったまげる。瀬戸内寂聴が40歳の時に書きましたと言われても私はたぶん信じたと思う。知らんけど。
ものすごーく平たく言えば愛とか恋に狂った人間たちの話なので、ある意味で普遍的なテーマだけどとにかく主人公の心の機微が美しく精彩に富んだ文章で描かれていてうっとりする。
(これは翻訳の河野万里子さんの力量のおかげもあると思う)
後悔したのは読んでいる途中でこの作品のwikipediaで結末を知ってしまったこと…
これがなければもう少し衝撃的な読書になったと思う。これから読む人、ネタバレは見るな!!
Posted by ブクログ
この文章を18歳の少女が書いたということは本当に凄いの一言なんだけど、逆に18歳だからこそ書けた文章という気もする。
日々刻々と移り行くセシルの心情はまさに思春期そのもので、痛々しい程の全能感に酔いしれたと思ったら、アンヌへの畏れや自らの青さへの恥によって縮こまったり卑屈になったり、それがひとときの恋愛によって簡単に慰められたり。
何気にフランス文学は初読だったのだけど、原題の「Bonjour Tristesse」という響きの美しさよ。
Posted by ブクログ
これ18歳の女の子が書いたのすごいな。すっごい読みやすかった。そして誰もいなくなったと舞台が似てて、あっちにも主人公みたいな女の子とアンヌみたいな大人の女性が出てきた気がする。
てか超セクシーでモテモテでかっこよくて危なっかしいお父さんとか憧れすぎるだろ。フルハウスのジェシーおいたんでイメージして読んだらぴったりすぎた。アンヌはアンハサウェイ。
小説っていつもは語り手から語られたことが全てとして読んじゃうけど、これはいい意味で語り手が信用できないというか、若い未熟な女の子から見たできごとの数々でしかないと感じさせられるのが面白かった(この感覚、アルジャーノンに花束と少し似てるかも)。きっとここに書いてあることだけが全てじゃなくて、語り手だけではアンヌや父や周りの人を本当に理解はしきれていなくて、彼らは彼女が断言しているものとは違う意図の元で本当は動いているんじゃないかなと思えたのが、すごく物語に奥行きを与えていたように思う。セシルという主人公の目を通して見た周りのできごとでしかないんだという実感。若い女の子の日記をこっそり読んでいる感じ。
熱いブラックコーヒーとオレンジを交互に食べているシーンがビビッと頭に残っている。おっしゃれ。
Posted by ブクログ
めちゃくちゃフランスリアリズムを感じた。内容は全然違うけどモーパッサンの「女の一生」に似たものを感じた。何かしら系統とかあるのかな。
いやー世間知らずの女の子が父の再婚相手の束縛に耐えきれず、罠に嵌めて追い出そうという物語だが、セシルがどんどんアンヌの良さに気づいて好きになっていって、罠にかけた後には手遅れというシナリオ、セシルの後悔は心に来る。来月もう一回読もう。失敗を乗り越えて大人になる過程を表した青春小説かと思いきや、セシルもレイモンも何も学習せずに放蕩生活に戻っていく。このもどかしさ、やはり古典は素晴らしい。
Posted by ブクログ
推しがおすすめ本に選んでいたのを、やっと読みました。
今の私は大人すぎて、主人公が好きになれない…
あまりにも身勝手で理不尽な振る舞い…いやそれがいいのかもしれないけれど…
高校生の頃にこれを読んだらまた違った感想だったのかもしれないと思いました。
でも言葉が綺麗で、スルスルと入ってきて読みやすかったです!
訳者あとがきにもありましたが詩的だし情景もすっと浮かんでくる文章が本当に好きになりました。
Posted by ブクログ
主人公のことは、最後まで好きになれなかった。彼女は愚かだったと思う。そしてその父も。
18歳の頃に読めば、感じ方が変わったのだろうか。
最初から最後まで、私にとっては(恐らく、アンヌにとっても)この物語はずっと悲劇だった。
ただ、情景描写、心理描写は真に迫るものがあったし、どことなく退廃的な雰囲気が魅力的な小説だった。
個人的には、アンヌに自殺の意思は無かったと思いたい。身勝手な恋に振り回され少女の悲劇の材料にされるほど、彼女は弱くなかったと信じたいから。
追記: 他の方の感想で、2026年新潮文庫のプレミアムカバーが最期にアンヌの着ていた服と、彼女の瞳の色だと知った。新潮文庫の粋な計らいには脱帽する。素敵な色なので、ぜひ手に取ってほしい。
Posted by ブクログ
3.2
夏のプレミアムカバーが素敵だったので、手に取りました。
思春期特有の心の揺れ動きが細かく描写されていてファンになる人の気持ちもとてもよく分かる。
繊細だけど、なんか洒落てて、まるで本から海外の匂いが漂ってくるようです。
Posted by ブクログ
2026年のプレミアムカバー版を購入。
なんとなく読んでみたくなった。
結果が違えば、新しく母親になる人への反抗とか思春期だったねー的な笑い話で終わってたかもしれない。
本当に事故なのか、自殺なのか分からないけど、とっても悪い結果に。最後の終わり方も私は好きでした。なんやかんや新しい恋人出来たりしてていいと思います。一生心に残る傷でしょうが。
今まで自由にやってきた自分が好きだったのに、アンヌがいるとそれを否定されて落ち込む。というくだりが好きでした。なるほどと思いました。
父親との間でアンヌの話は厳禁になりそうw
野暮なツッコミですが、事故に遭った崖、今夏で6回目って大分異常だと思うのですが、対策はしてないのかw
あと、アンヌみたいな性格の人がなんで父親みたいな人好きになったのかとても疑問。恋は理屈じゃないんですね、きっと…
Posted by ブクログ
間違えて感想消してしまったので簡潔に……。
セシルの一貫性のなさにやや腹が立つが、「一貫性がないキャラとしての一貫性」がある。
アンヌも思ったより子供っぽくて登場人物みんな未熟。でも人間ってそんなものかも。フランスらしい。
空気感や文体は好きなので、もっと深くまで理解したいと思った。
Posted by ブクログ
解説で小池真理子さんが「虚無」や「倦怠感」が漂う物語と書かれていて、激しく同意。
それに加えて、人生をどこか俯瞰して見ているような「諦念」を感じた。
18歳でこの作品を書いたサガンが、人間の未熟さや矛盾をここまで冷静に見つめていたことに驚く。
アンヌは理性的で成熟した大人というより、自分の理想の家族像へセシルと父を当てはめようとする人に見えた。
一方でセシルも父との自由な生活を守るために人をコントロールしようとする。
結局は誰もが自分のエゴを抱え、相手を変えようとしていた。
印象的だったのは、セシルが葛藤を「分裂」と表現する場面。
アンヌを慕う気持ちと失いたくない日常、そのどちらも本心というのが、この「分裂」という表現でよく分かる。
若さゆえの残酷さも生々しい。
人を思い通りに動かせるという小さな万能感、自分の行動が生む結果を想像しきれない未熟さ、そして失って初めて自分のしてしまったことに気づく痛み。
それらが18歳という年齢ならではの瑞々しさで描かれていた。
エゴのぶつかり合い、若さゆえの過ちと後悔というテーマは序盤から予想でき、その印象を最後まで大きく覆されることはなかった。
それでも、「人を変えようとすることの傲慢さ」や「経験の少ないうちに自分を決めつけてしまう危うさ」というものをまざまざと見せられ、心に澱のように残る作品だった。
Posted by ブクログ
18歳の少女が書いたとは思えないほど、繊細な心理描写と南仏の美しい情景、世界観に引き込まれた。
知的で真っ当な父の恋人と、欲望に忠実で自由な親子の相容れない人間関係、愛について…
感じることが沢山ある小説だった。
Posted by ブクログ
17歳のセシルは、魅力的な父とその愛人エルザと
ヴァカンスを過ごす。海が近い別荘だった。
シリルという年上の青年と出会い、惹かれ合う。
そこに、もう一人の愛人アンヌがやってくる。
セシルや父と正反対の、真面目で品がある美しい人。
でも、セシルの意見が軽んじられる場面が何度もあって
それでもアンヌのことを尊敬している、
そう思えるのはとても賢い証拠だと思う。
アンヌと父が結婚する、という話が出なければ平和に
過ぎたのに!父が取られてしまうことが嫌だったのかもしれない。セシルは父の気持ちを逸らそうと計画する。
エルザとシリルをくっつけて、父に見せびらかすことで
父の闘争心を煽ろうと!最後、父とエルザがいるところをアンヌに目撃される。作戦としては成功したが、
アンヌは別荘を飛び出した先で事故に遭い
亡くなってしまう。事故か自殺か分からないように死んだことが、アンヌの最後の贈り物だとセシルは感じる。
この事件の後も、父もセシルもそれぞれ新しい恋をして「わたしたちは幸せだ」という。こんな親子に惹かれた
アンヌも、厳しく言えば自業自得なのかもしれない。
「ときどきあの夏の思い出が蘇ると、
何かが胸に込み上げる。悲しみよ、こんにちは。」
セシルの憂い、罪悪感や後悔は、
この言葉に含まれているんだろう。
Posted by ブクログ
子供なのに大人のようなそんな風に感じた序盤の主人公
でもそれは彼女の主観としての景色だったから
実際はそんなことはなくて
子供でいい意味でも悪い意味でも無垢な少女
ただその無垢さに父親の奔放さが長年の蓄積で
価値観として埋め込まれているような気がして
そんな考えの主人公とそんな主人公と長年過ごした父親
今回は悪い意味で父親は主人公に曝け出しすぎていた
曝け出すということは手品と同じで
手に取るように動きや考えが分かってしまう
だから主人公の行動はあまりにも子供だったにも関わらず
父親はその手のひらのうえで転がされ
その父親はどうなったかというとあんな結末
落ちるなら一人で落ちればよかったのに
犯人のわからないひき逃げをみたような気分だった
でもその変わらない父娘を見て
あーやっぱりか、、と思わされた私は
この小説のなかで誰よりも
彼女らに期待していなかったのかもしれない