【感想・ネタバレ】悲しみよ こんにちは(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

セシルはもうすぐ18歳。プレイボーイ肌の父レイモン、その恋人エルザと、南仏の海辺の別荘でヴァカンスを過ごすことになる。そこで大学生のシリルとの恋も芽生えるが、父のもうひとりのガールフレンドであるアンヌが合流。父が彼女との再婚に走りはじめたことを察知したセシルは、葛藤の末にある計画を思い立つ……。20世紀仏文学界が生んだ少女小説の聖典、半世紀を経て新訳成る。(解説・小池真理子)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

主人公の拙い策略による父の婚約者の事故死。文字にしたらすごく衝撃的だけど、割と深刻に書かない風。
模範的で聡明な淑女で、孤独をはらう「結婚」に夢を見るアンナ。父を手に入れるために策略的にバカンスをする駆け引き上手だけど、やっぱり善良。刹那に生きるプレイボーイの父。その血を引いた遊び人の娘、セシル。まずこの三人の人物描写がすごく上手い。父の見栄や、セシルが父と二人の考えなしな生活を堅実に塗り替えようとするアンナを憎むところが、本当に人物が息づいている。セシルがただひたすらアンナを憎んでいるわけではなく、本文に書かれていたように、「相反する二つの気持ち」、アンナを尊敬する気持ちを持っているところもリアル。
結局、父を理解した娘の策略よって、父はアンナを裏切り、アンナは傷ついてバカンス先から逃げ出す。ここも「出ていって欲しい」と思って企んできたセシルが「出て行かないで」と縋りつき、アンナを実体していないもののように思って攻撃していたセシルが、「アンナにだって幼少期があり、血の通った一人の女の子だったんだ」と気づく所も壮絶。小さい頃私も、自分以外の人に思考も心もあるって気づいてなかったな、と思う。完璧の殻を被ると、傷ついていないように振る舞うと、人ってどんどん攻撃されるんだなと回想。
主人公セシルの未熟さ、「大きな子供」な父、二人の刹那的快楽に身を任せるも、「これでいいのかな」と不安が奥底にある暮らしなど、リアリティに富んだ作品。

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2025年12月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

初めて読んだのが高校1年の夏とかで、それ以来、毎年夏にこの小説のことを思い出していた。

コーヒーと一緒にオレンジを丸かじりするシーンがやけに印象に残っていて真似っこするんだけど思ってたのと違う、を夏が来る度に繰り返してる。
セシルの父譲りの自由奔放さに憧れたり、フランスのヴァカンスに憧れたり、この作品は小説としてより映像的なアイコンとして私の中に君臨している。
セシルの万能感やわがままっぷりが可愛くてたまらなかった。
父親の子供らしさやいい加減なところもキャラクターとしてチャーミング。
親子共々の子供らしさが素敵なんだけど、それがこの物語の悲劇の輪郭を強くしている。

セシルの言動によって周りの人間が変化していくことに少しの恐怖や不安を感じるのがリアル。
人を愛で弄んではならない、教訓です。

ラスト、セシルからシリルに対しての「この人を愛したことは一度もなかった(中略)この人が与えてくれた快楽は、たしかに愛した」という文章を初めて読んだとき衝撃で身体がびりびりしたのを覚えている。
ラストまで読んだときこの一文を読むとやっぱりびりびりするし、この一文を読む為だけにこの作品を読んでるまである。
それくらい強い印象を残した一文。

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2025年11月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

めちゃくちゃフランスリアリズムを感じた。内容は全然違うけどモーパッサンの「女の一生」に似たものを感じた。何かしら系統とかあるのかな。
いやー世間知らずの女の子が父の再婚相手の束縛に耐えきれず、罠に嵌めて追い出そうという物語だが、セシルがどんどんアンヌの良さに気づいて好きになっていって、罠にかけた後には手遅れというシナリオ、セシルの後悔は心に来る。来月もう一回読もう。失敗を乗り越えて大人になる過程を表した青春小説かと思いきや、セシルもレイモンも何も学習せずに放蕩生活に戻っていく。このもどかしさ、やはり古典は素晴らしい。

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2025年12月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

子供なのに大人のようなそんな風に感じた序盤の主人公
でもそれは彼女の主観としての景色だったから
実際はそんなことはなくて
子供でいい意味でも悪い意味でも無垢な少女

ただその無垢さに父親の奔放さが長年の蓄積で
価値観として埋め込まれているような気がして
そんな考えの主人公とそんな主人公と長年過ごした父親
今回は悪い意味で父親は主人公に曝け出しすぎていた

曝け出すということは手品と同じで
手に取るように動きや考えが分かってしまう
だから主人公の行動はあまりにも子供だったにも関わらず
父親はその手のひらのうえで転がされ
その父親はどうなったかというとあんな結末

落ちるなら一人で落ちればよかったのに
犯人のわからないひき逃げをみたような気分だった
でもその変わらない父娘を見て
あーやっぱりか、、と思わされた私は
この小説のなかで誰よりも
彼女らに期待していなかったのかもしれない

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2026年01月05日

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