あらすじ
「たいへん遺憾ながら、美しく生まれてしまった」川村七竈は、群がる男達を軽蔑し、鉄道模型と幼馴染みの雪風だけを友として孤高の青春を送っていた。だが、可愛そうな大人たちは彼女を放っておいてくれない。実父を名乗る東堂、芸能マネージャーの梅木、そして出奔を繰り返す母の優奈――誰もが七竈に、抱えきれない何かを置いてゆく。そんな中、雪風と七竈の間柄にも変化が――。雪の街旭川を舞台に繰り広げられる、痛切でやさしい愛の物語。
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大好きな桜庭作品。こちらも10代の時に単行本で読んだ。美人が故に他人に放っておいてもらえない人が主人公。文章が綺麗。実家にあるのでまた読みたい。
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大好きな桜庭一樹先生の作品。これで4冊目!全部読みたいです。どの作品も先生のワールドか広がって、美しい、独特な言葉の使い方、雰囲気。どれもが私のタイプだ。独特な世界観の中に、いつも突きつけてくる切ない現実、そこがすごくいい。私の男、砂糖菓子の弾丸、本作も、母、父、
決して切ることのできない恨みたいけど恨めない血の繋がりをどの作品も感じた。
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この頃の桜庭一樹の美しい文体、単行本のときの美しい装丁
自分が読んでいた時の年齢と環境
今も大切に本棚にある。
内容云々ではなく私が「美しい文体」が好きだと認識した作品。
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切ない。互いに惹かれ合う七竈と雪風が、血のつながった姉弟であるかもしれないという設定が秀逸。しかも母の昔の男遊びのせいで。
ラスト、進学を機に離れ離れになる終わり方は哀しかった。
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中学生の時に読んで、衝撃で、もう一度読みました。
これまでの人生で読んだ最も好きな本のうちの一冊です。
一、二を争う!
地方都市特有の世界の狭さ、居間のワールド、七竈と雪風の関係……。
緒方みすずも良いキャラしてる。
最後の「ゴージャス」は7話の余韻が終わってからをお勧めします。
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桜庭一樹さんの本が好きで読みました。表現や擬音が独特なのでじっくり考えて読む本かなと思います。登場人物のそれぞれの人生の中で感じていることが、綺麗な景色と一緒に頭に流れてきて楽しかったです。だれもが得体の知れない使命感に支配されているのかもしれないですね。
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捨てたい捨てたくないここにいたいいられない 「まことに遺憾ながら」美しく生まれてしまった少女・七竈が、ずっと縛られていた地元・旭川を捨てるまでの話。閉塞的な田舎では目立ち過ぎる美貌のせいで常日頃生きにくさを感じている七竈に対し、彼女の目の前に現れては彼女の「こころのかたち」を少しずつ変えていく「可愛そうな大人」の様子を、七竈本人や飼い犬で元警察犬のビショップ(!)、七竈の母・優奈やその親友の多岐、その息子であり七竈と瓜二つの顔を持つ少年・雪風の視点でどことなく芝居かかった大袈裟な語り口で描かれています。リリカルな雰囲気ながらも時折突き刺すような応酬が印象的です。
物語は厳しい母に育てられただ感じのいい女性としてデザインされた自分の「こころのかたち」を変えるために、優奈が「辻斬りのように」男遊びをするところから始まります。その過程で体を重ねた美しい男との間に私生児として生まれ落ちたのが七竈なわけですが、七竈も「いんらんな母」のせいでとても生きづらさを感じることになっていきます。美しすぎること、雪風と顔が似ていくこと、雪風が自分と血を分けた兄弟であること、だから自分の初恋が間違いなく叶わないこと。呪縛を捨てたいこと、でも少年とは離れたくないこと、だけど一緒にはいられないこと……。物語の中で、七竈を芸能界にスカウトしに東京からやってきた元アイドル・乃木坂れなが「女の人生は母を許す、許さないの長い旅だ」と七竈に告げるシーンがあるのですが、この言葉がこの話のテーマに対するアンサーである気がします。優奈も自分の母への怒りからこころのかたちを変えようとした。七竈もそんな母の呪縛を解くために何もかもを捨てた。七竈は多分ある瞬間には母を許せるかもしれない、だけどやっぱり許せないかもしれない。
決別の際、「母を許さないことが私の純情です」「なら僕も父を許さないことにする」という会話を七竈と雪風はするのですが、作中でも述べられているように時の流れは大事なものを容赦なく墓標にしてしまいます。だからおそらくこの約束も思い出として風化してしまう。それでもこの瞬間だけは、彼らが間違いなく固く誓い合ったという事実が残るのだと思います。これから先、二人が母を、父を、許す許さないの折り合いをつけていかなければならないしても。大切だったはずの何かが墓標になってしまっても、確かにそこにかけがえのないものがあったという事実は変わらないので。
長くなりましたが、雪風との決別のシーン、乃木坂れなの前日譚のラストシーンともに切ないながらも爽やかな読後感は流石です。桜庭一樹さんの書く賢明でなくとも懸命な少年少女の生き様を存分に味わえる一冊でした。
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美しい男女が青春の終わりを受け入れるまでの物語。
ラストシーン、雪風と七竈が作中で唯一、互いへの感情を言葉にして伝え合う場面。
「母をゆるさないことだけが、わたしの純情です」
「そんなら、ぼくは父をゆるさないことにする」
それは決別であり、同時に永遠の約束にも見えた。未来で交わることはなくとも、同じ傷跡で繋がっている。許さないという選択をとることで、思い出とともに沈む心中のような響きすら宿していた。
あたり一面が真っ白な銀世界のなか、一際鮮やかに映える真っ赤な実――名は体を表す。それが七竈という少女だった。読後に残るのは、切なさとどこかやるせない余韻。そして微かに雲間から差し込むような一筋の光。
このふたりの静かで痛ましい関係性こそが作品全体の読後感を形作っているのは言うまでもない。だが、その余韻をさらに深く、どうしようもなく切ないものへと押し上げているのは、七竈の「上京」が、時の流れや彼女を取り巻く凡ゆるものへの降伏として描かれていたからだろう。
七竈の上京は、一般的に「上京」という言葉がもたらす自立や挑戦の響きとはかけ離れている。ただ「この街では生き残れない」という、どうしようもない現実から生まれた決断だった。夢も希望も伴わない、生存戦略。平穏に生きるためには旭川を出るしかなかったという事実。
雪風と血がつながっている現実を受け入れたことも、故郷にすべてを置いていく痛みも、母から与えられた呪いのような名前も、すべてが彼女を押し流した。だからこそ、東京へ向かうことが唯一残された出口のように見えて、ひどく切ない。
七竈の祖父の「自分で選んだつもりでもね、じつは選ばされている。それしかない道を、わけもわからず突きすすむこともある」という台詞は、まさにその残酷さを言い当てていた。だが、たとえ選ばされた道にすぎなくとも、それを「自分で選んだ」と信じることが支えになるのだと教えてくれているようだった。
七竈と雪風のあいだには、単純な恋慕というより、自己愛の延長という気配があった。それぞれが抱えた孤独が、音の反響のように互いを引き寄せたのだと思う。誰かを他者として愛するというより、自分の“似姿”を介して自分の傷を撫でているような関係。七竈は雪風を、雪風は七竈を、自分の鏡像として見つめていた。痛みの質、孤独の輪郭、世界との距離感。それらが驚くほど一致していたからこそ、分身への陶酔に近い静かで危うい自己愛の砦が生まれた。そこには触れたら一瞬で溶けてしまう雪の結晶のような儚さがあった。
その象徴が、七竈の部屋に広がる鉄道模型の世界。鉄道模型は単なる趣味ではなく、雪風との時間、生まれた街の匂い、そして自分自身の骨肉を乗せて走らせる小さな世界そのもの。七竈にとってそこは唯一自由でいられて、外界から切り離された聖域でもあった。
けれど上京の時、七竈はその世界すら置いていく。模型の一部を緒方後輩に手渡すことができたのは、これから七竈が世界を広げていくかもしれないという微かな希望にも見えた。
最も気になった存在は、冒頭の語り手である七竈の母・優奈。
なぜなら七竈だけでなく、雪風との関係の始まり、多岐とのねじれた友情、夫婦関係の破綻、町の空気――すべては優奈が最初に投げた石から波紋のように広がったものだからだ。いわばこの物語の舞台を生み落とした創造主的存在。
優奈の叶えられなかった恋、未練、自己像への執着、罪悪感の欠落。それらが物語の底に澱のように沈んでいる。
優奈の奔放さは空白を埋めるための暴走だった。彼女が抱えていた最大の恐怖は、母の矯正から外れたとき、自分が何者かわからなくなること。毒でありながら、同時に彼女の“形”を決めていたもの。彼女はおそらく旅人のような生き方を死ぬまでやめられないと思うが、だからこそ優奈は最も「自分が何者か」という問いに、誰よりも苛烈に向き合っていた人物にも見える。単に嫌悪や忌避を向けるだけにとどまらない不思議な存在だった。
そしてそんな優奈をはじめとした可愛そうな大人たちが感情に敗れ、愛憎に振り回されている姿を見せつけられるからこそ、その余波を受ける七竈の抑圧がいっそう際立っていた。
けれど、七竈の行く末はきっと大丈夫だ。
「わたし、赤いまま打ちる、七竈の実にはなりません。わたしは熱して、食され、わたしを食って羽ばたいた鳥の、やわらかな糞とともにどこか遠い土地に種を落として、また姿をかえて芽吹く。そういう女になろうと思います」
この母への決意表明にもあるように、雪風の存在が彼女の中から完全に消えることはなくとも、もう母の影に囚われることなく、他の光を受け入れる未来へ歩み始めている。
七竈は、母に与えられた名前の意味を、自分の人生をかけてゆっくりと上書きしていくのだろう――そう信じられる終わり方だった。
Posted by ブクログ
世界観がかなり独特。
読み始めた時はあまり没入できずにいたのですが、結婚式の場面でカメラを機関銃に例えるところの表現が美しくて惹き込まれました。
桜庭さんの小説はこれが初めてでしたが、他にも読んでみたくなりました。
Posted by ブクログ
辻斬りのように
川村優奈
二十五歳。旭川に住んでいる。地元の進学校を出て地元の国立大学に入り、いちどだけ生真面目な恋愛をして別れ、父の口利きで地元の小学校教師となった。容姿はとても平凡。妊娠して小学校教諭の職を辞した。七竈の母親。
優奈の父
七竈の祖父。旭川市役所に勤めている。
川村七竈
優奈の娘。
優奈の母
専業主婦。病で亡くなる。
田中
優奈の同僚の小学校教師。優奈より一つか二つ年上で、同僚の女性教師と結婚した。
田中の妻
同僚だった田中と結婚し、別の小学校へ赴任した。
金原
優奈の大学の同級生で、当時あつきあいしていた人の友人であり、その人が別れた後もずっと、つかず離れずの友人関係にあった。商工会議所勤務。優奈と関係をもった一人目の男。
二人目の男
同じくらいの年。やけに無口で、必要最小限の単語以外の言葉を、事が終わるまでついぞ、言わなかった。
三人目の男
少女の如き若い男で、瞳をきらめかせて自分の夢や、理想の女や、生い立ちについて語った。
四人目の男。
とても美しい男。その町でも有名な女たらしの、しかし同じぐらい美しい女にしか手に入らないの最上級の相手で。
五人目の男
六人目の男
七人目の男
うそつき。おもしろくなるぐらいたくさんのうそをつきながら、ゆっくりと優奈と寝た。
一話 遺憾ながら
川村七竈
十七歳。たいへん美しい。鉄道模型と親友の雪風だけが友達。北海道立旭川第二高校。
桂雪風
七竈の幼なじみで唯一の親友。母親がいんらんだと娘は美しくなる、という仮説を立てた。鉄道好き。美少年。同じく鉄道好き。公団住宅に住む。
七竈の祖父
緒方みすず
オカッパ頭に、点をふたつおいたようなちいさな瞳。七竈の一学年下の生徒。雪風のことが好き。雪風と付き合っているのかと、七竈に下らない質問をした。
小学校の時の担任
桂多岐
雪風の母親。
雪風の父親
ばか一世。
二話 犬です
ビショップ
元旭川警察署の警察犬。引退後は川村家に引き取られた。七竈を「むくむく」と呼ぶ。
東堂
七竈の実父を名乗る男。優奈の7人目の相手。失明している。
三話 朝は戦場
桂多岐
雪風の母。七歳から十七歳までの六人の子供がいる。旧姓田中。旭川の駅前の大型チェーンの書店で働いている。
ばかな夫
てこでも働かない。
桂夢実
七歳で長女。
既に美しさを醸し始めており、七竈と姉妹と見紛うほど似ている。
友人Y
毎週火曜日に電話をくれる。川村優奈。
緒方みすず
四話 冬は白く
川村七竈
祖父
雪風
緒方みすず
梅木美子
七竈をスカウトに来た。九州から北上しながら美少女探しをしてきた。かつてアイドル・乃木坂れなとして人気を博した。
夢実
田中
小学校で七竈の担任。多岐の兄。
慶
七竈のはとこ。田中南と結婚する。
田中南
風雪のいとこ。
五話 機関銃のように黒々と
桂雪風
七竈
川村慶
田中南
田中
六話 死んでもゆるせない
ビショップ
トラックにはねられた女
夫が入院する病院に行く途中、トラックにはねられた。その後、夫は死亡。
祖父
七竈
夢実
緒方
優奈
五月雨のような
川村優奈
田中
七話 やたら魑魅魍魎
川村七竈
優奈
田中
亡くなった。
多岐
雪風
緒方
ゴージャス
乃木坂れな
七人の大人
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田舎は特異な性質や、一般的ではない価値観を持つ人間にとっては害にしかならないと思った。
比類なきかんばせをもつ七竈はこの先都会に出て新しい人生を歩むのだろう。
七竈は雪のことが好きだが、父親が同じだと気付いたからお互いにその恋が禁忌だと知っていたに違いない。母親がいんらんだから。
Posted by ブクログ
がたたん、ごととん。がよく分からんかったけど面白かった!!!
口癖になった。
重めだし、描写が生々しいところも沢山あったけれど、最後はいい感じでほっとした。
Posted by ブクログ
「辻斬りのように男遊びをしたいな、と思った。ある朝とつぜんに。そして五月雨に打たれるように濡れそぼってこころのかたちを変えてしまいたいな。」
この冒頭に心掴まれた。桜庭一樹の独特な文章とキャラクター造形はなんか中毒性がある。
Posted by ブクログ
“女性の見た目”が一つのテーマになっている話。
最後の「ゴージャス」が私は一番好きだった。
二十歳を超えた今、老いを恐れ始めている私にとても刺さった。
Posted by ブクログ
薄暗い靄がかかった幻みたいな狭い世界でも
降り積もる雪が真っ白なことは隠せない
そんなことを思ってしまう
不思議な不穏なそれでいて蠱惑的な
桜庭一樹さんの小説
「砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない」や
「私の男」もなぜか惹きつけて離さない魅力があった
本書でも気味が悪いほど美しい描写や
浮世離れしたような人たち
この世界観をまた味わいたくて読んだと思う
七竈と雪風、独特な話し方でさえも綺麗と感じる。
北海道の広くて狭い世界で生きたお話。
Posted by ブクログ
桜庭一樹さんの作品はハマったばかりで、これで呼んだのは5冊目です。
中学生の頃から夏に読みたいみたいなのでオススメされているのを知っててやっと読みました。
美しい少女と少年
そしてその周りの大人たち
どこか達観している七竃が大人たちと出会い自分も大人になっていく
Posted by ブクログ
ちょいと深いストーリーが理解できずに完読。日常の生活から逸しているが、日常の生活リズムも感じられる。この違和感がファンには魅力なのかな? サラッと読ませていただきました
Posted by ブクログ
あぁ、人が死ななくてよかった。
まずそれが私の一言目で。他の作品と比べるとちょっとだけ読みにくいかもしれない。長旅の電車の中1/2ほど読んだせいだろうか、話の内容はあやふやで。
見た目というのがこの本のどちらかと言うとメインの話で、「大変遺憾ながら、美しく生まれてしまった」そして鉄道好きである七竃、同様の容姿と鉄道好きである共通点持つ雪風。その他七人の可哀想な大人たちの話。本当にタイトル通り。
雪風と七竃が名前を呼び合う文章。そして
「母をゆるさないことだけが、わたしの純情です。雪風」→「それなら僕は父をゆるさないことにする。」
このセリフが私の中で印象に残った。
優奈に関しては話の内容的にだいぶ好みは分かれるだろうし、決していい思いはしない。本当に可愛そうな大人、なのかもしれない。
Posted by ブクログ
美しく生まれてしまった少女『七竈』
同様な容姿の幼馴染みの友『雪風』
孤高の2人の青春を可愛そうな大人達が惑星の如く干渉してくる。
雪の街旭川を舞台に繰り広げられる痛切でやさしい愛の物語
17歳から18歳のあいだになにが起こる?
本文中に出てくるこの言葉にその時期にタイムスリップした様な気がした。
夢があってもなくても、美しくてもそうでなくても、非凡でも平凡でも・・・
「とくべつな自分と。とくべつすぎる自分と。みんな、そういう自分とむきあって~怒涛のように変化していく季節なのだ」本文中
自分もそんな季節を過ごしたのだと、遠い昔の事の様な、昨日の事の様な、思いになりました。
主人公の少女『七竈』の語り(話し言葉)が古風で変わった少女と思わせるところが「昭和」という時代も感じさせてくれた様な気がします。
七竈という植物にも興味をそそられました。
Posted by ブクログ
語り手がどんどん変わっていく形式。
自分が美しいがゆえに物心がついた時から
周囲の人から視線を集めている。
高校生ながら、自分を見て消費するな
って台詞がでるのはずーっと見られてきた
からこそでる台詞なのかなと思った。
高校生で考える言葉ではないよなあ。
唯一、心を開いている雪風も、
成長するにつれて自分と顔が似ている…
つまり、血がつながっているということ。
自分の母親と雪風の父親と何があったのか
想像するのは簡単ということになる。
そんな雪風のことを好きだったのか
そういう直接的なことは書かれていなかったけど
お互い見つめあって、名前を呼び合っていたのを
見て、そういう気持ちがあったのかなあとも
思わずにはいられなかった。
そんな人と血が繋がっていると分かれば…
自分の母が、自分の住む地域の人と
誰かのお父さんやおじさんだったりする人と
寝ていたと分かったらどうするだろう。
七竈も雪風も後半になるにつれて
お互い、どんな気持ちで会っていたのだろう。
それでも母のことを少しでも
母親と呼びたくて、母親らしいことをしてほしいと
思う七竈がかわいそうで仕方なかった。
七人の可愛そうな大人というタイトルだけど
私は、てっきり優奈と寝た
男たちのことかと思ったけれど、
多分、優奈、多岐、梅木、田中先生、
田中先生の妻、多岐の夫、祖父
になるんじゃないかなあと思った。
でも被害にあたのは優奈意外だけど
優奈も優奈で心が枯れていたんだよなあ。
すこし大人びたような不思議な口調の
七竈は一人で生きていくがゆえに
そういう口調になってしまったのかな。
誰の視点をとっても
救われた人がいないようなお話だったきがする。
Posted by ブクログ
旅のお共として。少女シリーズ3作目。狭い旭川の地で、美しい七竈と雪風、その周りの大人とビショップの話。急に変わっていく高校の時期。田舎から上京する人間とずっと東京で過ごしている人間とは何か違っているような気がする。何か少女感が強くて、読むのがしんどかった。若い頃に読んでたらまた違った感じ方をしたんだろうなぁ。かんばせ、が度々出てくるけど、意味分からなくて調べたよ。メジャーな言葉なのか?やっぱ美人に生まれなくて良かったと思う。
Posted by ブクログ
旭川に住む25歳教師は思う。いんらんになろうと。そして子供を授かった。七竈と名付けた。七竈は祖父のもと、すくすく美しく育つ。なぜならば、相手の男は美しいかんばせだったから。
ファンタジー。親の業。北海道(寒い地域)の閉鎖性。みんな知り合い。
作者、北海道出身の方なのかな。寒さゆえ、寒さが身に染みる、そんなファンタジー書くね。
七竈、雪風。美しいかんばせで幸せになってね。
Posted by ブクログ
同期に借りた。感想欄に高評価のコメントが多くて正直驚いた。とある田舎の超美少女を取り巻く物事(彼女の母親の優奈を元凶とした愛憎劇が結構な割合を占める。)が淡々と記されている。七竃と雪風の関係は好きだし美しいなと思うけれど2人の変に堅苦しくて古臭い話し方は気になった。かんばせって文面から意味は察せたけれど聞いたことない単語だった。最初ウザいなってムカついていた後輩の緒方みすずのことは最後ちょっと好きになった。七竃は淫乱な母親を恨んで忌み嫌っていると思っていたけれど案外そうでもないというか甘えたいという気持ちがあるのが以外だった。母親の優奈も別に七竃のことを嫌いでは無いわけだし奇妙な家庭だよね。一般的に美化されがちな恋を『ぐじゅぐじゅに腐った醜くて利己的な感情』って表してるのがなんか良かった。全体を通して何も起こらないし綺麗なのか汚いのかよく分かんないけれどぼんやりと儚い感じの話だった。
Posted by ブクログ
去年砂糖菓子を読んだ時に他のもの読みたくなって買った中の1冊。相変わらず表現や言葉の使い方が独特で。七竈と雪風を取り巻く環境が一つ一つわかってくると途端に切ないお話だった。とはいえわたしは冒頭と中盤の優奈の話が好きでしたね。
最初七竈は母に対してドライなのかと思いきや、ちゃあんと母に甘えたい子どもだった事がわかって、切なくて安心した。
Posted by ブクログ
桜庭一樹らしい儚さと暖かさがあった。
キャラクターの不明瞭さを引き立たせる文章の書き方が、よく機能していて結構好きだった。
七竈と雪風の関係性や、後輩みすずの掛け合いなどとても良かった。
言葉の使い方など、どちらかと言えば古風な竹を割ったような性格からか平成っぽさはあまり感じられなかったが、アイドルや恋愛に絡めた女の呪いなどはとても面白いモチーフだなと思った。
自分はゴージャスの章が1番好き。