あらすじ
1950年、あるSF雑誌に無名の新人の短篇が掲載された。異様な設定、説明なしに使われる用語、なかば機械の体の登場人物が繰り広げる凄まじい物語……この「スキャナーに生きがいはない」以来、〈人類補完機構〉と名づけられた未来史に属する奇妙で美しく、グロテスクで可憐な物語群は、熱狂的な読者を獲得する。本書はシリーズ全中短篇を初訳・新訳を交え全3巻でお贈りする第1巻。20世紀から130世紀までの名品15篇を収録。解説/大野万紀。
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Posted by ブクログ
謎多い作家コードウェイナー・スミスの人類補完機構シリーズを年代記風に並べた短編集(50年代から発表されておりエヴァンゲリオンとは全然関係ない)。古いSFマガジンで何かの短編を読んで衝撃を受けて以来虜になってししまった。
物語は第二次大戦のナチスの話から1万6千年先までの人類の趨勢が描かれています。戦争によって人類は絶滅しそうになるのですが、そこからの復活がなんとも皮肉が効いていて印象的です。非常なドライでもなくかといってベトベトウェットでもなく、その一歩引いた姿勢がかっこいい。ドイツ人以外の人類を殲滅するための人間狩猟機(メンシェンイェーガー)が何千年も経て文明が崩壊しマンショニャッガーとなまって言われる殺戮機械としてのこっていたり、猫の遺伝子を組み込んだ生命爆弾兵器やら精神障害者の特化した能力を宇宙船に組み込んで宇宙を航行したりと異様な世界が描かれます。政治学者でもあった著者の思考は独特ではあるけれどリアルな感触を持たせるところも魅力。がちがちなハードSFとは違うけれどなんでもありありファンタジーとも違う。やっぱりスミスの作品は他の何とも似ていない唯一無二の存在。遺伝子操作された結果である言葉を話すクマ人間やカメ人間とかネコ人間出てきて、シドニアの騎士とかに影響を与えたんだろうなとも想像してしまいます。古びない作品群は今読んでも想像力を刺激します。
Posted by ブクログ
SF。連作短編集。はじめての作家。
20世紀から130世紀にわたる未来史。時間的なスケール、世界観的なスケール、どちらも驚異的。
内容は、背表紙にあるように、「奇妙で美しく、グロテスクで可憐」。一言では表現出来ない、あらゆる魅力がある。
好きな作品は「マークエルフ」「昼下がりの女王」「ガスダブルの惑星より」「スズダル中佐の犯罪と栄光」。
以下、印象的な作品のメモ。
「第81Q戦争」
見世物としての戦争。森博嗣『スカイ・クロラ』に酷似。
「マーク・エルフ」
主人公カーロッタの生い立ちが素敵。マンショニャッガーがよいキャラ。
「昼下がりの女王」
前話から続く物語。後半はジュヌヴィーブ夫人代筆らしい。ロマンチック!
「スキャナーに生きがいはない」
デビュー作らしい。65年前の読者は、この異様な物語をどう感じたのか?
「星の海に魂の帆をかけた女」
夫人との合作。ラブロマンス。夫人が絡むとロマンチックな作品になる傾向が。
「人びとが降った日」
8200万人が空から降ってくる、この設定だけでも刺激的。
「青をこころに、一、二と数えよ」
タイトルのセンスはベストか。
「鼠と竜のゲーム」
ネコSF。ネコ可愛い。
「ガスダブルの惑星より」
夫人との合作。ショート・ショート。グロテスクなファーストコンタクトもの。ブラックさが良い。
「スズダル中佐の犯罪と栄光」
短編としては濃密すぎる世界観。