【感想・ネタバレ】ミライの源氏物語のレビュー

あらすじ

現代人が「源氏物語」を読むときのハードルとなるのは、ひとつは言葉の違い(古文の読解)、そしてもうひとつは倫理観や社会規範の違いです。本書は、社会の在り方に長く向き合ってきた作家・山崎ナオコーラさんが、深く愛する古典「源氏物語」について、現代人ならではの読み方を考えます。より現代的な訳を目指した「ナオコーラ訳」も読みどころのひとつ。

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Posted by ブクログ

第33回(2023年度)Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞作とのことで、東急線の電車内広告でたびたび見かけたために気になって買ったのですが、ずっと積ん読にしていて、今月ようやく読み終えました。
ちなみに、『源氏物語』は高校時代に古文の授業でいくつかの節を学んだほか、大人になってから瀬戸内寂聴訳で途中まで読みました(「藤裏葉」の途中で挫折)。

平安時代に作られた『源氏物語』には現代では受け入れ難い、現代の社会規範に反する描写がたくさんあります(ルッキズム、ロリコン、不倫など)。それでも『源氏物語』の読書を楽しむにはどう読んだらよいか、を解きほぐしているのが本書です。

語り口はやわらかで、『源氏物語』を読んで面白いと思うことも逆にもやもやすることも否定されず、とても読みやすいと思います。

平安時代の社会規範と比較して現代の社会規範も丁寧に解説されているので、道徳の教科書にもなるのではないでしょうか。

たとえば、「マザコン」の章では、光源氏が母親以外の人物に死んだ母親の影を求める姿について、「やっぱり気持ち悪い」と言いつつ、「『人間の変な見え方』の描写が、ものすごく面白い」と書かれています。
「人間の変な見え方」とは、人は目の前の個人に向き合わなければいけないにもかかわらず、人間の目にはどうしたって他人という存在が一塊に感じられる、その見え方のことです。親ではない異性に対しても「母親役」を求めてしまう「マザコン」がその典型的な例ですね。

また、「貧困問題」の章で著者は、『源氏物語』の平安時代の読者であった菅原孝標女が夕顔と浮舟に憧れた理由について、「貧乏って、うっとりする設定だから」だと想像しています。
貧乏って、うっとりする!
ここだけ切り取ったら炎上しそうですよね。笑

現代の社会規範には反していても、人間ってそういうものだよねというところをうまく描いているから、『源氏物語』は面白いのだと筆者は指摘しているのだと思います。

が、著者が舌鋒鋭く批判している読み方、許されないことは許されないのだと厳しく断じている行いもひとつあります。
「性暴力」の章です。
柏木が女三宮の意思に反して性行為を行ったことに対し、後世の読者や研究者たちの多くも、「密通」という言葉で表現し、「レイプ」や性暴力といった言葉は使ってきませんでした。そして、女三宮は「『密通』をして光源氏を裏切った」という設定にされてしまっています。
が、女三宮は性暴力の被害者です。悪いことは何もしていないのです。
「少なくとも、今後の研究の場では『密通』や『不義』という言葉は使わない方がいいのではないでしょうか? 女三宮の痛み悲しみにも寄り添って読んでいきたいです。」という筆者の指摘はもっともだとわたしも思います。
やわらかな語り口のなかで、「性暴力」については筆者の固い意志が際立っていました。

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2025年12月13日

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古典の読み方は時代に沿って更新し続ける必要がある。源氏物語研究の主立った面子が男性だった昭和を経て女性研究者が出てくると全く違った読み方や解釈がなされ、これまでのスタンダードとされる読み方がいかに男性主義的であったかが浮き彫りになっているという話もあるし、その中でこれは山崎ナオコーラさんが読み方を模索していく試みで、とても興味深く読んだ。しかも現代的な視点で読んだとて、それに応えうる強度をもつ「源氏物語」のすごみもまた感じられた。浮舟をめぐる読み方、とても良いなと思った。ジェンダーにとらわれない描き方で、ナオコーラさんの完訳をぜひ読んでみたい。

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2025年02月25日

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ネタバレ

古文を読む機会が無さ過ぎて、かなり懐かしい気持ちになった。

主語に実名を使わないのは、貴族は正体も襖などで隠すように名前も隠すことが通例だった、みたいな話しとか新鮮だった。

あと、紫式部の書き手からの一言が文章の途中で挟まる(だれかが書いている、という設定らしい)のも独自で面白い。

現代から見れば、マザコンだしルッキズムだけど・・・という批評性のある文章にとどまらず、源氏物語の面白さや魅力について触れてて好きなのが伝わって良かった。

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2024年12月02日

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Podcastで薦められていたので山崎ナオコーラ氏、久しぶりに読んだ。
源氏物語を現代の視点を用いて解説し、新たな解釈を与えている。
「ルッキズム」「マザコン」「性暴力」など、うげっ、と眉を顰めたくなるような目次だが、それらに対して極めて冷静でやわらかい眼差しで語っている(ように自分には読めた)。

人の価値観は時代や地域によって変わる。
それでいて想いはいつの時代も同じである。
この本は源氏物語の書かれた過去からまさに「ミライ」にこの物語を繋いでいくための中間点としての役割を果たそうとしている。

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2024年06月21日

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今日、京都新聞社で対談。石山寺座主の鷲尾龍華さんと。ナオコーラさんにをサイン頂きました。写真も撮ってもらいました。

時間があるのでゆっくり読めました。

『源氏物語』を現代に当てはめる。なるほどーーー。私も違う取り方してたな。でも人それぞれでオッケー。「文学は旅です」ナオコーラ♡

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2025年11月01日

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源氏物語を学校で読んで、雰囲気は良さそうだけど、読み解けないもどかしさを永年、持ち続けていました。
私と同じように読み進めたいけどギブだわ、と言う人にお勧めしたいです。

著者の思い切った切り口での分類も「なるほど納得」
若干、過激?ストレートな切り口なれど、、、
新しい源氏物語の導入本になると思います。
ナオコーラさん、アッパレ!

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2024年03月24日

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受験対策として源氏物語の漫画を読んだことが出会いでそこから瀬戸内寂聴、田辺聖子などの現代語訳をいくつか読んできた。でも今の感覚で源氏物語を読むとこんなに捉え方、物語が違うんだという驚きを持って読み進めた。「え?そうかな?」と読み始め「あ、そっか。ほんとそうだ」と腑に落ちる。差別というのは無意識で善意の差別というのは生活の中で起こりうるし、お年寄りに対しての対応のくだんで膝を打った。自然としてるかも、、、と。源氏物語の登場人物を現代の感覚にあてはめて読むと新たな気づきがあるかもしれない?かな。山崎ナオコーラさんの源氏物語現代語訳を是非読みたいです。待ってます。

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2024年02月13日

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大河ドラマ「光る君へ」の導入として(今年は10年以上ぶりに大河ドラマを観ようとしている)。現代におけるいろいろな角度からの視点で『源氏物語』を切り取る試みは他書とは一味違ってなかなか面白い。「ロリコン」「マザコン」「マウンティング」「トロフィーワイフ」「エイジズム」など。山崎さんによる『源氏物語』現代語訳フルバージョンを読んでみたい。

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2024年01月29日

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受験以来触れてない源氏物語。登場人物の気持ちが全くわからなかった学生時代。今だってわからないが、それは当然。だって生きている時代が違うから。山崎さんの指摘はシンプルで明確。その上で新しい物語の楽しみ方を教えてもらい非常に興味深い本だった。

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2025年12月05日

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平安時代のベストセラー、源氏物語をただ訳すのではなく、
現代の視点でテーマごとに比較するという視点が面白かったです!

人はその時代の価値観で差別をしてしまうし、社会と切り離して生きてはいけないけど、理解しようと悩んで思考することを辞めない
それがいつの時代も文学に反映され、時代を通して繋がっていくというのがグッときました!

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2025年10月11日

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ネタバレ

面白かった!
源氏物語とか光源氏とか紫式部とか
今まで幾度となく耳にしてきた名前だけど
ぜんっぜん興味なかったんだなーって痛感してしまった。
こんなにも面白い話なのに
学校の授業では難しすぎて、全く好きになれなかったもんなあ。


この物語が、どの程度事実を反映しているかはわからない。
だけど、女性に対する目の向け方や、接し方があまりにもひどくて
憤慨しそうでした。

兎にも角にも、全体的に
その人物を愛しているというよりも
誰かに似てる、誰かの血縁だから愛するっていう方向性で
なんだか、これを純愛と言っていいのか?な話が多かった。

男性陣は好きに恋をして、相手の気持ちなんてほとんど考えずにアプローチする。
時には、無理矢理したり騙して性行為をすることもしばしば。
なんだが、女性があまりにも軽視されていて
悲しい話でした。

他の源氏物語も読んでみたい。
もっと深く知りたい。

登場してくるヒロインの中では末摘花がすきでした。
見た目に自身がない末摘花でも、芯を持って光源氏を愛し続けていてかっこいい。

外見ってどんどん廃れていってしまうけど
性格の良さや、気丈さ、人柄、自分を持っている輝き、愛の深さって
もしかしたら歳を増すごとに増ていくのかも。
だから、歳を取ればとるほど魅力的になる女性って
本当に素敵だなあ。って感じた。

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2025年09月27日

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この本も併せて読むと面白さが増すと思う!読んでいて「ん?」と違和感があるところを言葉で表現されている感じ。ラストの解釈がナオコーラさんと同じで嬉しかった。ナオコーラ訳も面白い。

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2025年09月04日

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面白かったです。
高校生の頃、これを読んでいれば、授業で退屈しなかったと思う。
山崎ナオコーラさんの、それでいいんだと頷ける言葉の数々が大好きです。

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2025年03月23日

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「源氏物語」の読みにくさには2つの理由がある。1つは1000年前の言葉で書かれている、所謂古典文学ということ。もう1つは、現代とあまりにもかけ離れた1000年前の社会規範が根底に流れているということ。前者は優秀な訳者によって乗り越えることは容易いが、後者はそれが難しい。ゆえに、現代の社会規範でもって、この壮大な物語を読み解き、楽しんでしまおう、というのが本書の趣旨となる。
引用文に関しては筆者による現代語訳も併記されているので、難なく読むことができる。その上で、現代にも通ずる社会問題(貧困問題やジェンダーの多様性など)を考えていくのは面白いと率直に思った。1000年前には論点にすらなり得なかったいくつものキーワードを目次で確認しているうちに、今、古典を題材にこれらを考えていくという試み自体が新鮮で受け入れやすいと感じた。
個人的に納得したのは、「トロフィーワイフ」「性暴力」の項目で取り上げられている女三宮の評価だった。当時の人はもちろん現代の人にも彼女は「なんとなく嫌」という風にイマイチ人気がないように思うのだが、一つ一つ丁寧に紐解いていくとその理不尽さに気付かされ、自分の中の評価もだいぶ変わった。それもまた面白いと思った。

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2025年02月14日

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「文学には目指すところも答えもありません。ただの旅なのです」
源氏物語を現代の社会規範から見るととんでもないモラル違反になる。しかし文学ただの旅、時間も場所も年齢も性別も自由。
ただ迷い、楽しめばいい

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2024年09月25日

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大河ドラマ「光る君へ」を観ているので、源氏物語に関する本に興味がありました。とはいえ源氏物語をちゃんと読んだことのない私ですが...キャラの特徴、恋愛観、現代との違いなど分かりやすくて面白い〜!ひとつ言えるのは外見似てる人好きになりがち(笑)

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2024年08月18日

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ネタバレ

言葉以上に、社会制度の方が、馴染めないという問題意識はなるほどと思えるものだった。
 その上で、現代的なキーワードで登場人物を論じていく。その掘り下げについては、それほど深くはない。一般読者に届くようなレベルで説明してくれる。
 まだまだ分析できる言葉はあるな。

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2024年08月05日

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源氏物語についての本がたくさんある中、この本は平安時代と現代の「社会規範」の違いから、各ヒロインを見ていて、とても興味深かった。
古い映画を見ていても(と言ってもたかだか100年以内で、源氏物語とは一桁違うが)、この社会規範の違いが気になることがとても多い。「1000年違うから、まあそこは仕方がない」「立派な古典文学作品だから」とスルーしてきたことが、ことごとく指摘されていて、目を開かされた。

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2024年07月01日

Posted by ブクログ

山崎ナオコーラさんの源氏物語を主としたエッセイ。解釈がナオコーラさんらしくて面白い。紫式部の考えの変遷も垣間見える。ナオコーラさんのお言葉『文学は旅』とても深い言葉だなぁと思いました。わたしが今、源氏物語に魅せられてるように未来の誰かも読み、その世界観にのまれるんだろうなぁー。

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2024年06月30日

Posted by ブクログ

『源氏物語』を現代の常識で考えると恐ろしいことになります。
当たり前だけれど。
現代の常識とはかけ離れた物語ではあるのだけれど、面白い。
1000年経って、変わっているところもあるけど、実は変わっていないことも多々ある。
それが楽しい。
『源氏物語』は永遠ですね!

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2024年05月14日

Posted by ブクログ

源氏物語の、ご都合主義な部分や現代の価値観にはそぐわない部分も認めつつ、それだっていいじゃない、または、それはおかしい、という点を、テーマごとにポイント解説している本。と書くと参考書みたいだけど、実際こういうのが高校の古文の授業であれば面白かったのにと思った。

平安時代、天皇を頂く貴族の男性中心社会で、(貴族の)女性はその道具でしかないというのは、今の価値観で考えるとひどいけど、世界史を振り返ればどこの王国やら帝国やらでも婚姻関係で繋がりまくりだった、そういえば。
一部の権力者や政治家等は、今も引き続きその伝統を守っていそう。

平安時代に限らず、結構最近まであったと思われる「夜這い」について。
いくらその前後に歌だの贈り物だのを散りばめたとしても、合意がなければレイプだよね、と言い切ってくれたことにはスッキリ。マザコンやロリコンについても、肯首。

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2024年03月21日

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源氏物語に触れるのは受験のとき以来。現代の感覚で読むとアウト!なできごとが多すぎて、もう笑ってしまう。
今の社会にはびこっている悪い習慣も、1000年後には、やっぱり笑ってしまうくらい滑稽だろうか。

ナオコーラさん訳の完全版が読みたい!

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2024年01月16日

Posted by ブクログ

「ドゥマゴ文学賞」受賞の記事を見て、ずっと読みたかった古典エッセー本。
ナオコーラさんの文章はとてもわかりやすく、
平安時代が丸ごと現代にやってきたようなワクワク感があった。

「源氏物語」の読みにくさを越えるには
①現代語訳で物語を楽しむ
②平安時代の社会規範を知る

平安時代の身分制度はしっかりあるのに、婚姻制度はなく「正妻」のような人がいて「妾」のような恋愛相手が何人もいて…と、次第に「雅な世界」を裏側から覗き見ているような心境にさせられた。ルッキズム(容姿差別)、ロリコン、マウンティングなどの視点で登場人物をみていくと、これはさすがに酷いのではと思う場面も少なくなかった。
「若菜下」で柏木が女三宮にした行為は今なら犯罪だが、女三宮を「光源氏を裏切った人」との描かれ方は私でもモヤモヤしてしまう。

ジェンダーに興味を持つナオコーラさんは「なぜ人間はカテゴライズをしてしまうのか?」と問い続けていると言う。
文中で「女性」「男性」の言葉を排し「その性別の人間には〜」と書かれてあった理由がようやくわかった。
〔ナオコーラ訳〕はとても滑らかだ。
現代語訳『源氏物語』が出たら是非読んでみたい。

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2024年01月11日

Posted by ブクログ

千年前に紫式部によって書かれた源氏物語。
大昔の名作を現代の社会現象、そして時には問題にもなりうる、ルッキズム・貧困問題・ジェンダー・性暴力等に照らし合わせながら読み解く本。

浮気、不倫しまくりな光源氏を支える沢山のヒロイン達。
彼女達の機微までは分からないが、現代の女性達となんら変わりない心情が描かれていていつの時代も恋愛って難しいよね…..って思わされる本

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2023年11月28日

Posted by ブクログ

源氏物語って古典の授業でやった車争いのイメージが強かったけど、そんな話もあったんだ〜となった。原作を通して現代社会の問題について考えさせられる一冊でした。

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2024年11月11日

Posted by ブクログ

懐かしい気持ちになりました。
もう30年以上前に、何度も何度も読んだ『あさきゆめみし』
思春期なので色々思うところもありましたが、大体において、男性陣に腹をたてていました。
みんな浮気もので、自分勝手で腹立つ〜!と。

大人になってちょっと離れた視点からみるとまた違った発見もあっておもしろいです。

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2024年08月16日

Posted by ブクログ

美化されがちな古典も、現代的な読み方をするとこうなるのかという本。たしかにね、と思いながら読み進めました。でもやっぱり源氏物語は長く長く読まれてきた魅力もあり。
ナオコーラさんの訳もおもしろかったです。

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2024年05月21日

Posted by ブクログ

時代の移り変わり、当たり前の感覚の変化、
近年よく言われるトピックだが、源氏物語の時代とつなげるとより面白い。
未来の人が今の本を読むとどう思うのかな。

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2024年04月01日

Posted by ブクログ

源氏物語を現代の価値観で読み解くとどうなるか……という文学解釈?本。
まあ、前々から言われていることですが、現代の価値観で見ると大分酷い。

読んだことないけど、江川達也の源氏物語もこういう観点だなと思った。
(エロが多いけど)

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2024年02月18日

Posted by ブクログ

源氏物語が大変分かりやすく解説されていて読みやすかった。しかも、ナオコーラさんの訳がよくわかる。
源氏物語と言いつつ、ナオコーラさんの人権や差別に関する考え方が熱く語られていたのが印象的。
「ミライの」と付いていることにも納得。

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2023年11月18日

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